カテゴリ:郷土資料館
実習3日目です!
博物館実習3日目、無事終了しました。
午前中は、教育センター内の一室で、考古学資料である土器を使用した梱包作業の実習作業と、「ふとん」と呼ばれる梱包作業に必須の道具の作成作業を行いました。
考古資料の梱包については、初めて行う作業だったのでうまくできるかの心配は少しありましたが、他の実習生の手順をしっかりと見学したうえで行ったため、すんなりと行うことができました。個人的には、資料をしまっていた箱をビニール紐で縛る作業より、考古学資料を包んでいるふとんを縛る作業の方が、資料を気にしながらの行動になるため、緊張しました。
「ふとん」の作成作業は、2人1組で行いました。実際に実習の事前指導や今まで大学の授業で学んでいた物を実際に見るだけでなく、作成する作業を通して何故、梱包の際に必要になってくるかを学びました。作業をしていくうちに、要領は掴むことができましたが、屈んで作業を行ったため、後半は体勢の維持が大変でした。また、途中でちょっとしたハプニングもありましたが、作業は終了することができました。
午後は、館外見学に行ってきました。郷土資料館で紹介している神明貝塚と、花積貝塚を見て来ました。神明貝塚は、令和2年に国指定の遺跡に登録され、今は公有地化を進めています。神明貝塚では地上にたくさんの貝殻があるのが、特徴的でした。
花積貝塚は、春日部市の指定遺跡です。貝殻は地中に埋まっているのか、地上にはほとんどありませんでした。貝塚は、個人的にこんもりとした山のような形を想像していましたが、そのようなものは一切なく、地面に散らばっている貝殻が、貝塚があったことを主張していて、とても興味深かったです。
(令和7年度博物館実習生)
「実習二日目を終えて」
実習二日目が無事終わりました。
今日は、午前にミュージアムトークに参加、午後は講演会のポスターの製作・発表に加えて資料のデータ入力をしました。
ミュージアムトークでは、学芸員の方に企画展示「麦わらのかすかべ」についての解説をして頂きました。麦わら帽子の歴史や製造方法、春日部とどのような関りがあったのかなど、様々なことについて知る事が出来ました。また、私自身春日部に麦わら帽子の生産が盛んだったというイメージが無かったので、過去には帽都の春日部と呼ばれていたことを知り驚きました。また、麦わら帽子の元となるひもを編んだり、材料の麦に触れてみたりと貴重な体験をすることが出来ました。
午後には、皆それぞれが製作したポスターの発表を行いました。皆、様々な工夫をポスターに凝らしていて、見ていてとても楽しかったし勉強にもなりました。ただ、写真の資料を使う際には写真の出典を書くようにする等、注意しないといけない点も学ぶ事が出来ました。発表が終わった後には、資料のデータ入力も行いましたが、画面と資料の二つに視点を行き来させているせいか、目がどんどん疲れてしまい中々ハードでした。
今日は作業を色々とした為、学芸員の仕事について少しずつ分かってきた1日になりました。
(令和7年度博物館実習生)
「麦わらのかすかべ」展が開幕!帽子の歴史を探る旅へ
本日、7月23日(水)から企画展「麦わらのかすかべ~帽都いま・むかし~」展がはじまりました。
無事に展示の設営を終え、一安心。ですが、これから、チラシなどの送付やら、SNSでの告知やら、関連イベントやら、滞っていたもろもろのことがまっています。
初日の今日はありがたいことに、朝から取材ラッシュ。近いうちにテレビや新聞で露出されることでしょう。
しかし、これも企画展示を多くの方に知っていただき、多くの方に足を運んでいただくため。まだ終わらんのです。
手前みそですが、今回の展示で工夫した点は、空間を活かすこと。展示室内にUFOのように帽子をつるしたり、古写真を掲示したり、帽子自体や写真類を手に取ってご覧いただけるようにしたところです。
また、最近、外国人の観光客が多く来館されているので、掲示物を一部英語表記しました。帽子や真田編みの体験など外国の方も手にとっていただき、某アニメキャラだけでない春日部の魅力を知っていただけると、うれしいです。(個人的には春日部の町の歴史が背景にあり、春日部が某アニメキャラの舞台になっていると思っています)。
「えっ!歴史の学芸員の方、英語がご堪能なのですね」と思った方。お察しがいいですね。
実は、今回の新しい試みとして、市役所に導入されたAIを活用し、英訳をお願いしました。たぶん通じると思われます。
それから、このブログの記事のタイトルもAIに考えてもらえました。「帽子の歴史を探る旅へ」だそうです!ほかには「歴史とファッションの融合」。これも捨てがたいなぁ、しかし展示を見ていないのに、よく思いつくなぁ(ホントかなぁ)と感心しました。
AIの肩をもつわけではないですが、「帽子の歴史を探る旅へ」「歴史とファッションの融合」の企画展示だと思います。ぜひ、ご覧ください。
夏季展示「麦わらのかすかべ」関連イベント
7月23日より開催される、夏季展示「麦わらのかすかべ」。
展示だけでなく、麦わらに親しむ関連イベントも開催予定です。告知させてください。
- 記念講演会「関東の麦わら細工」
- 講 師 山田淳子先生(小山市立博物館)
- と き 令和7年8月31日(日)14時~16時
- ところ 春日部市教育センター
- 申込み 直接、または電話(048-763-2455)、電子申請で受け付け
- 展示解説講座「春日部の麦わら帽子と関連産業」
- と き 令和7年9月6日(土)10時~正午
- ところ 春日部市教育センター
- 講 師 展示担当学芸員
- 申込み 直接、または電話(048-763-2455)、電子申請で受け付け
- みゅーじあむとーく
- と き 令和7年7月27日(日)・8月20日(水)いずれも10時30分~、15時~
- ところ 郷土資料館企画展示室
- 申込み不要
記念講演会は、小山市立博物館で麦わら細工の製作体験などを実践されている、山田淳子先生に、関東地方における麦わら細工について、実際の経験や民俗学的な見地からお話しいただきます。
展示解説講座は、春日部市域における麦わら帽子産業(麦稈・経木・麻真田を含む)の歴史的な展開を、様々な史料から検討するものです。今回の展示のウラテーマは女性とグローバルヒストリー。そのあたりのことを少し意識しながら、史料をネチネチ読んでお話します。また、余興で真田編みも実践します(時間があれば笑)。
みゅーじあむとーくは、展示担当の学芸員が展示室で展示をレクチャーします。諸般の都合により、チラシでh8月20日(水)の開催のみと表示していましたが、追加で7月27日(日)も開催することになりました。申込みは不要、出入り自由ですので、時間が合えばお越しください。
経木真田がないなら、帽子を解体すればいいじゃない
7月23日から開催される、夏季展示「麦わらのかすかべ~帽都いま・むかし」展の準備も佳境です。目下、展示の設営にとりかかっているところです。
陳列をしていて、どうしてもほしい、物足りないものも出てきています。それは、取材・調査をしても入手困難だった資料=経木真田です。
春日部の麦わら帽子づくりは、元々は麦稈真田製造からはじまったことは、これまで知られてきたことではありますが、実は、その麦稈真田製造自体は、春日部においては息は短かったことが、今回の展示に伴う調査で明らかになりました。
国内の麦稈真田製造は、明治30年以降は関西地方がメインになり、反対に関東地方では、麦稈にかわる新たな素材として経木を真田に編む技術が開発され、経木真田が生まれ、この製造がメインになっていくのです。
春日部のいわゆる「麦わら帽子」は、中国産の麦稈真田を縫う麦わら帽子づくりと、地場で編んだ経木真田を縫う経木帽子づくりの二つの製品が主力となり、戦後には特に経木帽子がレジャー用で安価な帽子として流行し、多く製造されました。
このように、経木真田、経木真田帽子は、春日部の麦わら帽子産業を語る上で、重要な製品なのですが、現在、市内の製帽所では、ほとんど作られていません。若い職人さんは、「経木って何ですか??」というほど。
そもそも「経木」がない。どうやら、現在、木材を薄く挽いた「経木」自体を製造する方が国内にはほとんどいない模様。桐材の調査をした時にも、山や山林を管理する人や木材を扱う人材が減ってきている、と桐材屋さんが話されていました。国産材木産業ですら厳しいのですから、ましてや「経木」は・・・
というわけで、現代の春日部では経木帽子すら入手が困難であり、また経木真田を入手することも難しそうなので、学芸員が自腹で経木帽子を入手。経木真田帽子はこんな感じです。
白色の木材(ドロヤナギやイモノキなど)を薄くした経木を編んだ経木真田を、ミシンで縫製し作られています。
経木帽子のツバをみるとこんな感じ。頭の天頂から渦をまきながら縫製され、麦わら帽子と同じ技術・構造をしています。ただ、経木真田は、麦稈真田に比べ、軽くて薄く、強度がありません。
どうしても経木真田を展示したい。
担当者のなかのマリー・アントワネットがつぶやきました。
「経木真田がないなら、帽子を解体すればいいじゃない」
経木帽子を縫製された四国地方の帽子職人さんには大変申し訳なく思いますが、経木真田を取り出すために、心を鬼にして、帽子を解体することにしました。
経木帽子は、経木の質感の特性からか、必ずといっていいほど、ツバの縁には「テープ」とよばれるカバー(リボン)がミシンで縫い付けられています。
ミシンの糸をはさみで切り、「テープ」をはずしました。「テープ」をはずした部分はこんな感じです。
そして、帽子の縫い終わりの部分の糸を切り、ペリペリと真田を外していきます。
縁の「テープ」も真田も、麦わら帽子と同じミシンの環縫いミシンで縫製されています。
環縫いミシンは下糸がないミシンで、1本の糸を環縫い=チェーンステッチで縫製していきます。下の写真は環縫いの糸目です。縫い目の裏側に輪っかが出来ているのがわかるでしょうか。この輪っかに糸をくぐらせ、鎖のように縫っていくのが環縫いという縫い方、なのだそうです。
環縫いにするメリットは、伸縮性に優れていること。帽子がギチギチだとかぶりづらいですので、麦わら帽子などの紐状(真田)をつかう帽子で使用されるそうです。
さて、ペリペリを解体した紐が、念願の経木真田です。
さらに、経木真田を経木紐に解体。
下の写真では判りづらいですが、この経木真田は、三本の経木紐を編んでいるので、「三平」(さんぴら)という経木真田であることがわかりました。
解体した経木帽子も、解体前の経木帽子も、展示する予定です。
今回の解体でよくわかったのは、経木帽子も麦わら帽子と同じ技術・製造方法がとられているということです。素材が替わっても帽子縫製の技術はかわらない。今は忘れられつつある経木真田ですが、現在までつづく春日部の麦わら帽子産業の歴史においては、とても重要な素材であり、帽子だと思います。
ぜひ、麦わら帽子との違い、そして共通点をかぶって体感ください。