カテゴリ:文化財の保存と活用
新たに文化財に指定されました「旧石器時代の石器」を公開します!!
令和7年4月17日付けで新たに春日部市の有形文化財に指定されました「馬場遺跡旧石器時代石器群」について、教育センター1階エントランスホールで展示・公開を開始しました。
▲教育センターエントランスでの展示状況
馬場遺跡は、西金野井地区に所在し、国道16号と江戸川が交差する金野井大橋の北側に広がる台地上に立地します。これまでの発掘調査では縄文時代7,000年前のいろりや4,500年前の住居跡、平安時代のムラなどを確認した遺跡でしたが、平成29、30年の調査で旧石器時代の石器製作の跡が発掘されました。今回の文化財指定で、市指定51件(国指定5件・県指定15件)、総数71件となりました。
《文化財の特徴 その1》
馬場遺跡では現在の地表から90㎝ほど掘り下げた関東ローム層から119点の石器が発掘されました。関東ローム層は富士山、浅間山、榛名山、赤城山など関東周辺の火山から噴出された鉱物類が風化した土壌です。特に3万年前に大噴火を起こし日本列島一帯に噴出物をもたらした鹿児島県姶良(あいら)火山の噴出物に含まれる「火山ガラス」(AT)は関東ローム層の年代確定の目印になっています。石器はその下のローム層から発掘されたことから、埼玉県内でも旧石器時代の初期の約3.4万年前にあたるという、最古級の石器です。
▲石器の発掘状況~まとまりをもって同じローム層の中から発見された~
《文化財の特徴 その2》
馬場遺跡は、標高13.5mを測る下総台地の西縁に立地します。東方50mには江戸川堤防下に埋もれた谷があり、緩やかな東向きの斜面地で旧石器時代の石器製作の場が発掘されました。この石器製作の場は南北23m、東西17mの範囲に広がり、4か所の集中区からなる旧石器時代初期の石器製作の集合体です。こうした石器製作の場は、埼玉県内の下総台地にあたる幸手市・杉戸町・春日部市、そして松伏町では初めての検出であり、旧石器時代の文化の示標となります。
《文化財の特徴 その3》
発掘された石器は、狩猟具の「台形様(だいけいよう)石器」や石器を製作する「ハンマー」「砥石」(といし)、植物の加工具である「磨石」(すりいし)と、道具類は極めて少なく、完成品を携えて移動生活を繰り返したものと推定することができます。石器の材料は、関東周縁から採取できる8種類の石材が用いられました。なかでも流紋岩(りゅうもんがん)やガラス質黒色安山岩の2種が全体の7割を占め、いずれも群馬県や長野県境の山地、利根川上流で産出される石材が中心でした。また、旧石器時代から縄文時代の長きにわたって人びとが愛用した利器に加工しやすい「黒耀石」は科学的な分析により、栃木県矢板市の高原山産であることが判明し、北関東地方と春日部周辺のモノとひとの交流がうかがい知ることができます。
▲主な石器(上:台形様石器、下:ハンマー、磨石、砥石)
実物の石器に加え、写真やイラスト、北海道白滝産の黒耀石を用いて展示しておりますので、郷土資料館や教育センターにお立ち寄りの際はご覧ください。
【市ホームページでも紹介しています「新指定文化財」のお知らせ】
不動院野の神楽(市指定無形民俗文化財)が公開されました
あいにくの雨の中でしたが、令和7年4月13日(日)、大杉神社の祭礼にあわせ、東不動院野の集会所で、市指定無形民俗文化財の不動院野の神楽が公開されました。
お囃子のあと、「天狐(てんこ)の舞」、「お地蔵様」などの神楽が演じられました。
「天狐の舞」は、神の使いである狐が、人々の願いを神に伝え無病息災、五穀豊穣、家内安全などを祈る狐の舞です。
「お地蔵様」は、源頼朝(みなもとのよりとも)の厄年(やくどし)にあたり、厄除(やくよけ)のため、頼朝の家臣の梶原景時(かじわらのかげとき)が石屋の名工である五郎太(ごろうた)に一夜のうちに6尺のお地蔵様をつくるよう命じるストーリーです。困り果てた五郎太は弟子をお地蔵様に扮装させる妙案を考えて実行しました。この結果、世間の評判となり参詣する人がたくさん訪れ、ついには参詣者の武将に見破られ、太刀(たち)で乱闘騒ぎとなる中で幕を終える演目です。
お神楽は、地区内外の方を問わず見学に訪れた方を交えて、地区のほのぼのとしたコミュニティーの中で演じられました。お囃子の音色、凜とした狐の舞、余興を交えたお地蔵様の演目などのおもてなしにより、皆さん楽しいひとときを過ごしました。