ほごログ(文化財課ブログ)

カテゴリ:郷土資料館

#ハルカイト 見学のススメ(4) 大型改良農機具

ハルカイト(大凧文化交流センター)の展示室には、郷土資料館では展示できない大型の民具が並んでいます。

今日は、その一つ「籾摺り機」に焦点をあててみましょう。2階の展示室3では、改良された大型農機具を陳列しています。

写真:籾摺り機

動力は人力や家畜(馬・牛)ではなく、石油で動く発動機です。エンジンを動かし、歯車を回して、ベルトを動かします。

大型で重量のある民具ですが、展示する機会もなく、皆さまに披露する場がありませんでした。資料館や博物館では、古い道具を展示する機会が多く、動力で動く改良された農機具を正面から展示することは、それほど多くないようです。そういう意味で、この籾摺り機はとても貴重だと思います。

展示の趣旨としては、産業技術が合理化・効率化され、社会が豊かになっていく。「農村から町へ」というイメージですが、パネルがなく言葉足らずな感じもします。

さて、展示設置にあたっては、階段やエレベーターで持ち上げることが難しい重量物だったので、

写真:クレーンであげる籾摺り機

業者さんにクレーンで吊って搬入していただきました(今年の夏ごろ)。空飛ぶ籾摺り機です。レアな写真です。

さて、館で資料を取り扱っていたところ、ハルカイトの籾摺り機と同型の農機具のチラシを発見しました。

画像:籾摺り機チラシ

残念ながら、資料の年代が不明ですが、下の販売店が三輪野江村(昭和30年合併し吉川町となる)とありますので、昭和20年代ではないかと思われます。

「鬼に金棒」という言葉は、あまり使わなくなりましたが、発動機の自動籾摺り機が、当時いかに画期的な籾摺り機であったことがわかるチラシです。

現状、ベルトが紛失し、発動機とつなぐことができず、また発動機も動かすことが叶いませんが、町の農産業を支えてきたことを物語る道具です。

戦後の農機具は、博物館や資料館ではあまり展示されない、珍しいものだと思います。ぜひご覧ください。

 

【講座ができるまで(後編)】“しめ縄づくり”はこうして開かれる

先日のブログで、しめ縄づくりの講座が開催されるまでの道のりについてお話させていただきましたが、今回はその後半戦です。

 

稲わらを干して、青の色味が抜けてきた11月某日。
藁すぐりという“ハカマ”を取って、藁の茎だけにする作業を行いました。

藁すぐり作業中です

乾燥してゴワゴワした稲わらの下葉を丁寧に取っていくと、ピンとした茎が現れます。体感ですが、体積的には1/2~1/3くらいに減る印象です。
4人で3時間程度作業し、できるのは25束くらいでしょうか。実際には“縄ない”の工程にも稲わらを使用するため、しめ縄20本分程度になります。今年は粕壁市民センター(中央公民館)でもしめ縄作りを開催するため、この倍量は必要です!

 

講座当日の朝には、藁打ちを行います。

藁打ちは当日の朝に行います

稲わらを水で濡らし、木槌で叩いて繊維をほぐしていきます。
12月の冷たい水にも負けず、講座を楽しみにしてご来場くださる皆さんのために朝から頑張ります!

 

こうしてしめ縄作り講座は開催されます!
どうしても準備に要する時間や当日の人員確保の都合のため募集人数が増やせず、定員オーバーにより参加をお断りすることもあり大変心苦しいのですが、毎年受講者の方からは“非常に満足”とのお声を多くいただき、主催者側としてもありがたく、やりがいのある講座です!

 

今年のご予約も満員となりました。
講座ご予約済みの方、当日お待ちしております!
ブログを読んで興味を持ってくださった方、次年度も開催予定ですので是非チェックしてみてください!

放課後子ども教室 幸松っ子くらぶ「郷土カルタすごろくで遊ぼう」

令和6年11月18日(月)に幸松小学校で行われた放課後子ども教室「幸松っ子くらぶ」で、“郷土カルタすごろくで遊ぼう”を開催しました。

 準備風景

幸松小学校の各部屋で、児童たちがそれぞれ興味のある活動に参加するイベントです。
昨年度も郷土カルタすごろくを携えて幸松小に伺う予定だったのですが中止になってしまったので、2年ぶりの開催となりました!

 

すごろくの前にはひとつ紙芝居を読みました。
紙芝居を真剣に聞きます
「牛島の藤の伝説」というお話で、紙芝居の内容は知らないまでも、牛島の藤なら知っているという子はチラホラ。
お話の中に、この後のすごろくを有利に進めるヒントがあると伝えると、みんな真剣なまなざしで聞いてくれました(笑)

 

いよいよメインイベントの郷土カルタすごろくです!
いよいよすごろくスタート
サイコロの出目の数だけ進む通常のすごろくとは違い、出目に割り当てられたマスにワープするオリジナル仕様です!
何が出るかはサイコロ任せよ♪
大きなサイコロを振ります!
これだけでも楽しそう♪
頭をフル回転!
すごろくのマスの中には「幸松チャンス」というクイズに答えてポイントをゲットできるマスがあり、それが大盛り上がり!
じっくり時間をかけて考え、思い出し、相談するという、勝負にかける真剣な思いが伝わってきます!こども達にとってはすごろくと言えど、もはや遊びではないのです!

 

“遊び疲れた”という子がいるほど(笑)
すごろくの後には、郷土資料館の紹介を兼ねて、持参した昔のおもちゃでも遊んでもらいました!

 

毎回“すごろくでどの程度楽しんでもらえるだろうか”と、ちょっと心配な部分もあるのですが、そんな心配を吹き飛ばしてくれるこども達のはしゃぎっぷりでした!
今度はぜひ郷土資料館にも遊びに来てください!

#桜川小 の皆さんから見学のお礼のお手紙をもらいました

10月18日に郷土資料館などの社会科見学に来た桜川小学校3年生の皆さんから、お礼のお手紙をいただきました。

写真:感想の掲示

大きな模造紙にポストイットで一人一人、イラストを交えながら、印象に残ったこと・モノを知らせてくれています。一般のお客さんにもご覧いただけるように、出口の扉に掲示させていただきました。

感想とイラストで一番多かったのは、縄文時代の竪穴住居(原寸大模型)です。約5000年前の暮らしがどうだったのか、イメージしやすく、当館の人気の展示資料の一つです。上に紹介した子は、竪穴住居とともに、市内を縦断した江戸時代の街道「日光道中」というキーワードも忘れずに帰ってくれたようです。

 写真:竪穴住居

団体見学では常設展示の模型ばかりでなく、3年生が3学期に学習する昔のくらし・道具についても解説しました。

写真:昭和の指摘

平成末期に生まれた子どもたちにとって、「昭和」は遠い過去のようです。

 古い道具から、彼らなりの「昭和」を感じ取ってくれたようです。

また、昔のアイロンにあたる「こて」の説明も印象に残ったようで、イラストも描いてくれた子もいます。

 画像:こて

おしいのは、竪穴住居の5000年前と印象が混ざってしまったこと。短時間での見学になると、「時代錯誤」が生じてしまうようです。ぜひ、お家の方といらして、じっくり見学する機会をつくって、「復習」してみてください。

最後に「うめわかくん」のイラストを描いてくれた子もいました。

画像:うめわかくん

当日、時間もなく「うめわかくん」まで説明が至らないのですが、展示室のあらゆる所に散りばめられています。念のため説明すると、「うめわかくん」は、市内の古隅田川沿いの新方袋の伝承「梅若塚」の梅若丸をモチーフにした、二頭身キャラです。設定は、平安時代の少年ですが、大凧を揚げたり、桐たんすに入ってみたり、「なぞとき」では探偵になったり、天使になったり、いろいろなバリエーションもあり、隠れ支持者も多いようです。「うめわかくん」に注目してくれて、どうもありがとう。これからも「うめわかくん」を応援してくださいね。

#春日部市 郷土資料館 #体験講座 「桐の貯金箱づくり」を実施しました

11月16日、体験講座「桐の貯金箱づくり」を実施しました。

この講座は、春日部桐箱工業協同組合の皆さんのご協力のもと、令和3年から継続して実施しています。今年は、定員を超過する申込みもあり、資料館の体験講座のなかでも不動の人気を誇る講座です。

今回は、普段は市内で桐箱製造などに取り組まれている5名の職人さんにご指導いただき、オリジナルの桐の貯金箱づくりを体験していただきました。

写真:講座の模様

講座用にご用意いただいた、製作キットの中身を確認して、まずは、箱を組んでいきます。

「のり」は、水性の木工用ボンドです。桐材の木っ端をヘラにして、糊付けしていきます。

写真:のりづけ

参加者の皆さん、はじめは、手に付かないよう恐る恐る糊付けをしていましたが、職人さんの指導をうけ、最後は指で塗っている方もいました。また、二枚あわせて糊を塗るコツも伝授されていました。繁忙期にはとても忙しい春日部の桐箱製造。大量生産のために作業効率を上げることも「技術」の一つです。

糊を付けた後、枠組みにします。

写真:わくづけ

糊を付け、枠組みにして、この後、圧着させるために輪ゴムをかけるのですが、小さいお子さんは、少し難しかった模様。ご家族に助けてもらいながら、集中して作業をしていました。

段々、箱型になってきたら、次は「オリジナル」の部分。

写真:下絵を描く

箱の背板にあたる部分にオリジナルの図柄・デザインを描きます。この後、職人さんに切り抜いていただくので、下絵を描いています。皆さん、どんな貯金箱にしたいか、事前に考えてきてくれていました。今年も、ポケモン、にゃんこ大戦争、推しの子などアニメやゲームのキャラクター。絵本のパンどろぼう、オリジナルのデザインを描いていた子もいました。

下絵が描けたら、職人さんに電鋸で切り抜いていただきます。

写真:電鋸

一般の方、ましてやお子さんでは、柔らかい桐材(板)といえども、細かい細工で切り抜くことはできません。普段から木工をされている、職人さんに、普段はあまりみない電鋸をつかって、オリジナルのデザインに切り抜いていただける。ここがこの講座のポイントです。

今年は二台編制で進めていただきましたので、待ち時間も長くなく、スムーズに進行しました。

自分で描いたデザインの形に切り抜いていただける、子どもたちは職人さんを羨望のまなざしでみていました。子どもたちだけではありません。

写真:電鋸を撮影

大人の参加者の方も、スマホで切り抜きを動画撮影。

こうした実演を目の当たりにすることで、何気なく消費しているモノの有難みや、「ものづくり」の素晴らしさを実感することができたのではないでしょうか。電鋸の切り抜きの時間は、「ものづくり」を担う職人の皆さんが、最も輝いている時間でした。

切り抜きの後、背板と表の板を糊付けします。

ズレないように、また背板はお金を取り出せるフタの細工があるので、慎重に糊付けをします。

写真:職人さんに指導

職人さんにやさしく、丁寧に教えてもらいながら作ります。

写真:表板のはり付け

お子さんだけでなく、ご年配の参加者の方も。

この男性は「春日部市のためにマスクを取ろう!」といって撮影に応じていただきました。「広報誌に載せてくれ」とご要望いただきましたが、「ほごログ」でご勘弁ください。

そして、完成。

写真:完成1

姉妹で参加してくれた二人は、仲良く丁寧に造っていました。

色付けはご自宅で。水性やアクリル絵の具などでできるようです。

こちらも姉妹で参加。

写真:完成2

イラストをプリントした紙を貼りつけて完成。紙やシールをはれば、色を塗る手間も省け、クオリティーの高い仕上がりになります。これもオリジナルです。

アンケートでは、「職人さんが丁寧に教えてくれて子どもでも作ることができた。また開催してほしい」「ただの板がだんだん箱になっていくのが楽しかった」「板に溝をつけるところを見てみたい」など、皆さん、満足のいく貯金箱がつくれたようです。春日部の伝統の桐箱づくりを肌で感じていただけたようです。

貯金箱完成後も、展示用の多種多様な桐箱に親しむ子どもたちがみられました。

写真:桐箱に親しむ

貯金箱をつくったり、見本や製品に接して、春日部の伝統産業に触れる機会になったのではないかと思います。

参加者の皆さま、春日部桐箱工業協同組合の皆さま、どうもありがとうございました。