ほごログ(文化財課ブログ)

ほごログ

アナログで世界とつながる スペインの方の生の声

地域学習展では、大人でも、子どもでも楽しんでもらうために、ハンズオン展示(観覧者がさわったり、感じたりする展示手法)を採用し、「たいけんこーなー」をもうけています。

写真:たいけんこーなー

このなかで、今回新たな試みとして、カセットテープに感想を吹き込んでもらう、体験をもうけました。

題して、「ラジカセに感想をふきこもう♪」

写真:ラジカセ

統廃合された小学校から譲り受けたラジカセを活用して、カセットテープを使ったことのない世代の方を含め、声を吹き込んで楽しんでいただき、かつ、アンケート(入館票)を書かない方(特に外国の方)から郷土資料館の感想をもらう(集める)、という、手前味噌ですがナイスなアイデアです。

数日、様子をみていたところ、次のような音声が録音されていました。

 こんにちは みなさん えっと わたしたちは すぺいんからきました

このびじゅつかんは とてもむずかしいですね

えっと むずかしいじゃない えー おもしろい

おもしろい ありがとうございます アディオス

 わずか20秒ほど、少したどたどしい男性の声で、音声が吹き込まれていました。

スペインの方のようで、日本語が上手なので留学生の方でしょうか。

郷土資料館を「美術館」といっていただきました。スペイン語では、博物館・美術館のことをmuseoというそうです。「むずかしい」との声をいただき、一瞬ドキッとしましたが、「おもしろい」と言い直していただき一安心。

 

SNSやデータベースなどデジタル技術で簡単に世界とつながれる時代に、もはや死語にもなりつつある「ラジカセ」(アナログの機械)で世界とつながれる可能性を感じました。「ラジカセ」まだまだ色々と使えそう。郷土資料館にとっては、多分な可能性を秘めた逸材です。

こちらが展示等々で発信するばかりでなく、観覧者・来館者も足跡を残せる仕組み・仕掛け、さらに進化させてもよさそうですね。「ラジカセ」今後も活躍します。お楽しみに。

それでは、アディオス。

「くらしのうつりかわり」 地域学習展の準備から

現在開催中の地域学習展、準備する過程で気づいた(驚いた)ことがありました。

同展は、小学校3年生の郷土学習向けでもあるので、以下のようなイラスト風年表をつくって、時代の流れ、移り変わりを数字やイラストで紹介しています。

画像:くらしのうつりかわり年表

今回、数年ぶりに年表を改訂しました。改訂するといっても、現在の人口、農業の状況の数字を最新の統計書を参照して修正する程度なのですが。

その作業のなかで、驚いたことがありました。

一つは、市の人口。ついに23万人を割り込んでしまったこと。そして、1世帯当たり人数も2.0人。2人を割り込むことも近いかもしれません。現代は人口減少社会ですから、これは小驚き。

もう一つは、農業の状況。農業に関わる統計は、農業センサスという統計で5年に一度調査が行われています。

最新は令和2年(2020)の統計。市内の農家の戸数は957戸となりました。

これは、前の調査平成27年(2015)の1305戸から大きく減少する結果となっています。ちなみに平成22年(2010)は1568戸でした。1000戸を割り込んでしまったことに、年表をつくりながらショックをうけました!

昭和35年(1960)は全世帯の6割が農家だったのですが、農業ばなれ、農家の方々のご苦労がうかがえる数字です。

少し昔(60年前)との比較も大事ですが、ここ数年間での大きな変化もある。所詮は数字ですが、奇しくも、担当者が年表づくりから春日部の「くらしのうつりかわり」を学ぶことになりました。

映像上映+講演会「春日部の水害と水防」

11月1日(土)に開催される、映像公開ライブラリー出張上映会の受講申し込みがはじまりました。

本講座は、今年度の彩の国ビジュアルプラザから提供いただき、郷土資料館とハルカイトに設置している端末(移動公開ライブラリー)の関連事業です

題して、「映像上映+講演会 映像と資料でひもとく!春日部の水害と水防」。郷土資料館と、埼玉県・彩の国ビジュアルプラザ共催で、春日部市教育センターで開催します。

講座は映像上映、すなわち、彩の国ビジュアルプラザから提供される古い映像をご覧いただくパートと、映像を踏まえて「春日部の水害・水防」の歴史をお話しするパートの2部構成になっています。今まであったような、なかったような構成です。なかなか見ることのできない映像資料が上映されますので、ぜひお越しください。

彩の国ビジュアルプラザのご尽力もあり、市内の図書館、公民館では、下のカラー刷りのチラシを配布しています。

チラシは、今年の博物館実習生(大学生)の皆さんにデザインしてもらいました。Z世代ならではのデザイン(?)になりましたでしょうか?

そして、11月は、

  • 11月15日(土)10時~12時 学芸員講座「須釜遺跡の再葬墓」
  • 11月22日(土)14時~16時 平社定夫先生 歴史文化講演会「古利根川の変遷」

の講座・講演会の受講者も絶賛受付中です。

文化の秋にあわせてお楽しみください。

【なぞとき郷土資料館The Fourth Impact!】なぞとき郷土資料館第4弾です!

先日ブログでお伝えしました「なぞとき郷土資料館」の第4弾が令和7年10月7日(火)からスタートしています!

なぞとき郷土資料館ポスター

なぞとき希望の方にはワークシートをお渡ししますので、郷土資料館の受付で「なぞときやります」とお声がけください。

 

易しめの問題になっている“ゆるふわコース”と、難しい問題になっている“ゴリゴリコース”がありますので、お好きな方をどうぞ♪(もちろん両方やってもOKです!)

 

“ゆるふわコース”なら15~20分、“ゴリゴリコース”なら25~30分くらいが目安かと思います。それぞれヒントも用意していますので、適宜ご活用ください。

ゆるふわコース解答ボックス

毎年、手作り感満載でやっている本企画ですが、「難しいけど面白い!」「本格的!」など嬉しいお言葉をいただいております(感涙)
ぜひ今年も郷土資料館でなぞときにチャレンジしてみてください!

 

もちろん参加費無料!こどもから大人の方まで対象です!ささやかな記念品もありますよ♪
みなさま奮ってご参加ください!

 

“気づいてみれば第4弾”
【なぞとき郷土資料館The Fourth Impact!】
期間:令和7年10月7日(火)~令和8年3月1日(日)
場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)
内容:なぞときプリントの配布(受付で「なぞときやります」とお声がけください)
   クリアした方には記念品をプレゼント
   自由参加
※期間中は第42回小学校地域学習展「くらしのうつりかわり」展を開催しています。合わせてご覧ください。

地域学習展、はじめました。今年は戦後80年

毎年、秋から冬にかけて開催する小学校地域学習展(第42回)が、本日10月7日からはじまりました。

少し昔のくらし、生活でつかわれていた様々な道具を紹介し、小学校3年生の社会科の郷土学習に寄与する内容です。

今年は、戦後80年の節目の年であることから、アジア・太平洋戦争ゆかりの資料を展示しました。

チラシ・ポスターも、半分は戦時下の銃後の生活を写した写真です。

画像:チラシ

市内から出征した方が戦地で使った道具や、地元や家族から無事を祈り贈られた寄せ書き、手紙、戦時下の小学校(国民学校)の資料など、戦時下のくらしを物語る資料を一堂に会しました。資料を扱い、陳列するなかで、世の中が戦争一色に染まり、暗く、苦しい時代であったことを、担当者も目の当たりにしました。

終戦から80年。当時のことを知る方は少なくなってしまい、段々と戦争・戦後は風化しつつあります。当時の資料が語りかけることを読み取りながら、戦争とは、平和とは何なのか、考えていただければ幸いです。

【企画展示情報】

展示名:小学校地域学習展(第42回)「くらしのうつりかわり~なつかしのくらしの道具展~」

会 期:令和7年10月7日(火)~令和8年3月1日(日) 会期中の休館日は、月曜・祝日(祝日が月曜日と重なる場合翌火曜日も休み)

会 場:郷土資料館 企画展示室

【手作りおもちゃクラブ】からくり屏風を作ろう!

10月12日(日)に“手作りおもちゃクラブ”を開催します。

 

今回作るおもちゃは「からくり屏風」です。
からくり屛風画像
写真ではどんなおもちゃかイメージがつきにくいと思いますので、以下の動画もご覧ください♪


実はこれ、屏風をクルクルと回して、4つの面が現れる仕掛けになっています!
動画内では色紙を使って4色の色を出現させていますが、例えば動物の絵を使えば4体の動物を出現させることもできます。好きな絵柄で試してみましょう♪
仕掛けがあるため、おもちゃの作成には少し手間がかかりますが職員もお手伝いしますので、安心してご参加ください!

 

手作りおもちゃクラブは申込不要、おもちゃの材料も資料館で用意しています。
当日の午前10時30分と午後2時からの計2回開催しますので、お時間までに郷土資料館にお越しください!

【手作りおもちゃクラブ】
日時:令和7年10月12日(日)午前10時30分~・午後2時~
場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)
内容:蓄音機と紙芝居の上演
   おもちゃづくり(からくり屏風)
費用:無料
申込:不要(開催時間までに郷土資料館にお越しください)

10月の指定文化財の公開ー榎の囃子神楽・赤沼の獅子舞・銚子口の獅子舞ー

 残暑の厳しい日々が続いていますが、今年も民俗芸能の秋季例祭の季節がやってきました。10月は3つの市指定無形民俗文化財が公開されます。

《1.榎の囃子神楽》

祭礼日時:10月15日(水) 午前11時~11時30分

場所:富多神社(神間663)

 榎地区では、江戸川小中学校の4年生が総合的な学習の時間で、「榎の囃子神楽」を継承する榎囃子神楽連の皆さんの指導を受けています。毎年恒例の富多神社の祭礼では、児童の皆さんによって囃子と神楽が披露されます。

 ▲過去の祭礼の様子 

《2.赤沼の獅子舞》

祭礼日時:10月19日(日) 午後1時~3時30分

場所:赤沼神社(赤沼770)

 赤沼地区では、「赤沼の獅子舞」を継承する赤沼民俗文化財保存会の皆さんによって獅子舞と神楽が奉納されます。収穫感謝祭である秋季の祭礼では、江戸時代以来の伝統ある三匹獅子舞に加え、ユーモラスな神楽も奉納されます。当日は子ども獅子なども披露されます。

 

 ▲赤沼民俗文化財保存会から祭礼のポスターをいただきました

  《3.銚子口の獅子舞》

祭礼日時:10月19日(日)午後2時~3時30分

場所:銚子口香取神社(銚子口551)

 銚子口地区では、「銚子口の獅子舞」を継承する銚子口獅子舞保存会の皆さんによって獅子舞が奉納されます。銚子口の獅子舞は、赤沼と同じルーツをもつ、江戸時代以来の伝統的な三匹獅子舞です。秋の祭礼では五穀豊穣を祝い、健康への感謝をこめて舞われます。

 

 ▲銚子口獅子舞保存会から祭礼のポスターをいただきました。

 

春日部市の民俗芸能を継承していくために、市内・市外を問わず、多くの方にご覧いただけますと嬉しいです。芸術の秋を楽しむ機会としても、ぜひお出かけください。

 

「幸松っ子クラブ」でのお囃子教室(第2回)

9月29日(月)に幸松小学校の放課後こども教室である「幸松っ子クラブ」の第2回目が開催されました。この中の「お囃子教室」では、幸松地区に江戸時代から伝わる市指定無形民俗文化財「不動院野の神楽」を継承する、「東不動院野神楽保存会」の皆さんが、講師として招かれています。

今回は、総勢13名でのお囃子教室です。半分くらいの子どもたちが第1回に続いて2回目の参加でした。最初に保存会の皆さんによる「ニンバ」というお囃子のお手本を見学します。皆さん興味津々です。

 今回は第1回と同様に「ニンバ」の太鼓を叩く練習をしました。まずはバチの持ち方を確認します。手首をやわらかく使えるように、やさしく、でもしっかりと握る力加減が難しいようでした。

バチを持ったら、「天スク ステスク 天ツクツ スク」のリズムに合わせて太鼓に見立てたタイヤを叩きます。タイヤで練習をしつつ、交代で本物の太鼓を叩きました。子どもたちは、生の太鼓の音を楽しみながら、笑顔で叩いていました。

 

  

 休憩時間には、「7月の春日部夏まつりでお囃子を見ました!」と教えてくれる子もいました。神楽やお囃子に興味をもってくれる子どもたちが、少しずつ増えているようです。

2026(令和8)年2月の春日部市民俗芸能公開事業では、神楽やお囃子の保存会の方々にご出演いただく予定です。詳細が決まりましたら、またお知らせします。

保存会の皆さん、ありがとうございました。

よくあるレファレンス(道しるべ)

よくあるレファレンスの記録。

先日、郷土資料館に展示する近世の道しるべについて、同じ質問が2日連続でありました。

郷土資料館には、2つの道しるべがありますが、うち1つはレプリカ。原物は粕壁の町並みの仲町の東屋さんの店先にあるものです。

画像:資料館内の道しるべ

質問があったのは、写真奥のレプリカ(というか東屋さん店先の道しるべ)について。

「行先の文字は読めるが、背面に彫られた文章はどんな意味なのか。読んでほしい。」という質問が、奇しくも2日連続でありました。気候も秋めいてきましたから、まち歩き、散策のシーズンにあわせ、重なったのでしょう。2日連続ならば、よくある質問といえそうです。

市域の道しるべについては、かつて紹介したことがあります。市や行政で編さんした様々な図書で調べることができますが、完ぺきな悉皆調査がされているかと問い詰められると…( ;∀;)

今回の道しるべも、行先が刻まれた3面は『埼葛の道しるべ』に掲載されていますが、背面は紙面の都合もあり、調べる手はずがありません。

では、ここで紹介してしまおう。というのが今回の記事。

「ほごログ」に記すことで、後の備忘とするものです。

 

道しるべには次のように刻まれています。

(正面)東江戸 右之方陸羽みち
(右)北日光
(左)西南いハつき

東は江戸、北は日光、西南は岩槻。

「陸羽みち」とは日光道中のこと。「陸羽道」とは「陸羽街道」のことで、明治以降の奥州道中(日光道中)の別称です。「右之方陸羽みち」の線刻は浅いので、後年に追記されたものかもしれません。

道しるべに刻まれた行先から、この道しるべは、粕壁の上町、新町橋に向かい街道がクランクするあたりに建てられていたものと推定されます。

さて、肝心の背面には次のような字が刻まれています。

(背面)

古来立木表以記岐路方向、今胥議
以石代之
天保五年二月 春日部駅長 熈等立

文を訓釈すれば、次のようになるでしょうか。

古来、立木を表として以て岐路の方向を記す。今、胥議して石を以て之に代う。

意味は、昔は木表(木標・木柱)を立てて方向を示していたが、(宿内で)相儀(議論)して、今は石に代えて(立って)いる。天保5年(1834)2月、「春日部駅長」の「熈等」(関根次郎兵衛孝熈ら)がこの石柱を立てる。

という感じでしょうか。

関根次郎兵衛孝熈は、当時、粕壁宿の名主をつとめていました。「春日部駅長」は粕壁宿の長、すなわち名主の意と考えられます。当時、宿の行政は、複数の役人で相談しながら運営されていましたので、相談の上、木製の道しるべから、石の道しるべに建て替えたというものです。

粕壁宿の辻で行き交う人々を見守ってきた道しるべ。今は数少ない粕壁宿の面影を物語る石造物となっています。

ご参考にしていただければ幸いです。

幸松小4年でばりぃ資料館と子どもたちの声

9月18日(木)、幸松小学校で出張授業を行ないました。テーマは、毎年恒例になりつつある「幸松と水害」です。昨年度の模様はこちら。

4年生の皆さんには、幸松地区で起きた水害の歴史や、地区の先人たちが水害を克服するために講じた工夫をスライドとワークシートで学んでもらいました。授業の内容や様子は、幸松小のブログで紹介いただきました。

ブログでも紹介いただいたように、幸松地区ならではの、幸松小学校ならではの水害の歴史をお話しました。児童の皆さんは、災害の脅威、恐怖もあり、終始、真剣な表情で、話を聞いてくれました。授業の後、児童から「難しかったー」と正直な感想ももらいました。こみいった話題、初めて聞く言葉も多く、ちょっと難しかったのかもしれません。

後日、授業のアンケートをいただきました。これをみると、もちろん「難しかった」「わかりにくかった」と答えている子もいましたが、おおむね、講師が伝えたかったことを理解してくれているようでした。

今回は、アンケートをいくつか紹介し、幸松小の皆さんがどんなことを学び、考えたのかを紹介してみることにします。以下のアンケートは、印象に残ったことは何ですか、という設問に対する回答です。

まず、授業のメインの話題となった、めがね橋のこと。

画像:めがね橋

「めがね橋はただの橋じゃない」という切り口は、通学路にもなっている身近な橋が災害に深く関わり、災害時に役立つモノという意外性もあり、印象に残る子が多かったようです。

そして、「樋門(ひもん)」であるという説明も理解してくれたようです。

画像:樋門

樋門の「樋」はシンニョウの点が二つだよ、と板書した甲斐もありました。4年生では習わない漢字もしっかり書いてくれています。

 学年には、農村部の不動院野に住む児童もおり、

画像:用心船

 地区の古い農家の納屋に用心舟(ようじんぶね)を吊るして、水害に備えていること、身近に感じ、印象に残ったようです。

先生からは、事前に当時の資料を間近に見せてほしいというご要望もあり、当日は、明治43年(1910)の幸松地区の水害記録である「幸松村水害誌」を持参しました。

「幸松村水害誌」は、幸松尋常小学校の先生が執筆したこと、その先生は序文に「過去の災害の悲惨な状況を克明に記録し、その記録を後世の人たちに活かしてほしい」と記していること、この記録が、小松小学校に残されていたことを児童の皆さんに伝えました。

画像:水害誌

小学校の先生の本とは、「幸松村水害誌」のこと。100年以上前の記録(本)を手に取り、幸松の皆さんにとって貴重なものであることを体感してもらえたようです。

記録もあわせ、幸松地区には、水害(湛水)時の古い写真がいくつものこっており、写真もスライドでみてもらいました。

画像:写真

昔の状況をきちんと理解したうえで、今、そして未来に活かしていくこと、先生やおうちの方と一緒に考えてみてください。

幸松小学校の皆さん、どうもありがとうございました。