ほごログ(文化財課ブログ)

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古文書勉強会の成果(その9)

平成30年12月1日(土)古文書勉強会を開催しました。市民の方々が主体的に市内神間地区ゆかりの江戸時代の古文書=神間村文書(春日部市郷土資料館所蔵)を解読しています。
写真:勉強会の様子
今回は、延宝3年(1675)3月「神間村屋敷御検地御水帳写」(史料番号332)と文久2年(1862)3月「入置申一札之事」(史料番号42)を講読しました。

延宝3年「検地帳写」は、代官南條金左衛門による総検地の時に作成されたものであり、神間村にとっては、開発直後の慶安3年(1650)の検地に引き続いて2度目の検地になります。今回は、当村の屋敷地の持ち主や広さなどが記載されている屋敷分を読みました。以前、講読した慶安3年の屋敷地と比較すると、全体的に屋敷地の面積が拡大していること、高入れしていない藪地が屋敷地に付属していること、藪地は屋敷の面積を合わせると全体の4分の1程度であることが明らかになりました。おそらく藪地は屋敷林(防風林)のことと考えられます。事実上、村が成立した慶安3年から25年の間に、耕地の開発がすすみ、そこに暮らす人々が屋敷に屋敷林などを備えて、村に定着していったことがうかがえます。
また、参加者からは、他の村には「藪」があったのか、と疑問が投げかけられました。当日もお見せしましたが、神間村と同じ下総国葛飾郡庄内領の水角村の延宝3年検地帳(当館蔵)にも屋敷地に藪が付属しています。防風林をそなえた屋敷が点在する中川低地の農村の風景は、このころに形成されていったと考えられます。

ところで、みなさん、古文書を読むのに慣れてきましたが、その一方で「検地帳や人別帳は読みやすいが単調」という意見も出始めました。そこで、今回は続けて、一紙文書の文久2年(1862)3月「入置申一札之事」を読んでみました。この文書は、土地を質入れして金5両を借用したことを証明する質地証文について、その作成を十二月まで引き延ばすことを取り決めた文書です。以下、釈文です。

【史料番号42】
     入置申一札之事

一、其御組合御水帳面傳左衛門名前屋敷畑

壱反歩、私義年来所持致居候処、追々

身上向不如意ニ罷成、勝手合を以親類相談仕、

此度貴殿江立而御無心申入、質地代金五両也、

不残御聞済被下、書面之金子證人立会、

慥ニ請取申処実証ニ御座候、然ル処我等勝手

合を以質地證文取極メ候儀は、当戌十二月

迄引延、就而は貴殿方ニ而御聞済被下質地證文

対談之通り期月ニ至り候ハヽ、貴殿方ニ而被仰

付次第無違変御組合一同我等ニ而相頼、質

地證文取極メ可仕候、若其節右地面二付

横合より少も変乱申もの御坐候ハヽ、加印

之もの引請急度埒明、貴殿江少も御苦

難相掛ケ不申、質地證文書替可申候、為後日

一札入置申処如件  

   庄内領神間村

               出石地主

   文久二年         文右衛門㊞

     三月       親類

                亀蔵㊞

            源兵衛殿       

前書取極メ対談仕候上ハ、当年より

公議様御年貢諸夫銭共貴殿方ニ而

御勤可被成候、依之奥書相添一札入

置申処如件        

             出石地主 

               文右衛門㊞

             親類

               亀蔵㊞

            源兵衛殿

次回の勉強会は、年をまたいで1月12日(土)14時~を予定しています。
原本をみながら、古文書を講読できるのは、春日部でたぶんココだけです。ご興味のある方のご参加をお待ちしています。

年末恒例の体験講座

平成30年12月9日(日)春日部市郷土資料館でしめ縄づくりの講座を開催しました。リピーターも多い毎年恒例の人気講座です。
写真:しめ縄完成
この講座は、郷土に古くから伝わる風習についての理解のため、稲わらを細工して、正月飾りになるオリジナルのしめ縄をつくっていただくものです。受講者のみなさん、わらの扱いに苦労されながらも、立派なしめ縄を拵えていただけたようです。

講座では、はじめに、しめ縄に垂らす「紙垂」(しで)をつくり、その後、しめ縄をしばる縄をつくるため縄ないをしました。
写真:縄ない

そして、しめ縄づくり。郷土資料館でつくるのは「ゴボウジメ」と呼ばれる、わらを3つ編み状にしたしめ縄です。単純に3つ編みにするのではなく、3つ編みにするのと反対方向にわらをよりながら編み込んでいきます。
リピーターで毎年参加されている熟練の方は、一人で作ってしまいますが、皆さんには二人一組で協力してつくっていただきました。下の写真は、ご家族総出での製作の模様です。
写真:しめ縄をつくる
家族で作ったオリジナルのしめ縄で、よいお年をお迎えいただけますよう、お祈り申し上げます。
郷土資料館のしめ縄づくり体験講座は、今週末12月15日(土)にも開催いたします。定員はわずかです。ご興味のある方はお早めにお申し込みください。

修善寺・熱海温泉紀行『新編図録春日部の歴史』ーその69

明治16年(1883)4月、当時の下柳村に住んでいた染谷保次郎さんは、伊豆の修善寺、熱海まで、旅行をしました。その際の記録が、『修善寺・熱海温泉紀行』です。郷土資料館で保存している資料は、後年の明治25年に書き写されたものです。

『修善寺・熱海温泉紀行』には、約1か月の行程が詳細に記されており、下柳から粕壁を経て、馬車、人力車、鉄道を乗り継いで伊豆に行った交通事情の様子がわかります。
当時、浅草から宇都宮間には1日3便、旅客10人の馬車が運行されており、浅草と粕壁間の運賃は一人63銭でした。

『修善寺・熱海温泉紀行』春日部市郷土資料館
「宿場町粕壁と交通の変容」『新編図録 春日部の歴史』160ページ

修善寺・熱海温泉紀行

第8回民俗芸能公開事業を開催しました

12月2日(日)に市指定無形民俗文化財を伝承されている「赤沼民俗文化財保存会」、「東中野獅子舞保存会」のみなさまによる『伝承300年の舞-守り継承されてきた獅子舞‐』を正風館大ホールで開催しました。当日は、第1部で地元の祭礼で演じられる主要演目を演舞していただきました。
赤沼の獅子舞弓くぐり
▲赤沼の獅子舞「弓くぐり」
 夏の祭礼で五穀豊穣を願って弓をくぐる迫力のある舞です

東中野の獅子舞花掛り
▲東中野の獅子舞「花掛り」
 三匹獅子に加え、道化きつねが絡むストーリー性のある舞です

第2部では地域の家内安全、疫病退散を祈願し、地域の辻つじで演じられる「辻きり」「追い出し」と呼ばれ、舞台上で初めて舞っていただきました。
赤沼の獅子舞悪魔払い
▲赤沼の獅子舞「悪魔払い」
太夫獅子が模造刀で邪気を追い出す演目で、平成26年に復活させました

東中野の獅子舞大祓い
▲東中野の獅子舞「大祓(おおばらい)」
神職姿の役員さんが祝詞を唱え、幣束を模造刀で断ち切る「辻きり」の一場面


当日は多くの皆さまに郷土春日部の伝統の舞を堪能いただきました。来年も開催いたしますので、ご期待ください!!
また両団体の皆さま、ご熱演いただき、ありがとうございました。

12/2(日)「伝承300年の舞」が開催されます

12月2日(日)13時10分より、正風館大ホールにて、第8回民俗芸能公開事業「伝承300年の舞ー守り継承されてきた獅子舞」が開催されます。
春日部市指定文化財の赤沼の獅子舞(あかぬまのししまい)、東中野の獅子舞(ひがしなかののししまい)が舞台で披露されます。

今回出演する2つの獅子舞は享保(きょうほう)3年(1718)、享保5年(1720)に、ともに現在の越谷市下間久里(しもまくり)から伝承されたものです。
実に300年という長い歳月にわたって、今日まで地域のみなさまが守り継承されてきた郷土春日部の獅子舞を、ぜひご堪能ください。

開催日時:平成30年12月2日(日)13時10分開演(12時50分開場)
開催場所:庄和地区公民館(正風館)大ホール
所  在  地:春日部市大衾307番地1(南桜井駅北口より徒歩8分)
定員:500人
費用:入場無料
申込:不要。直接会場へお越しください。
※駐車場に限りがありますので公共交通機関のご利用をお願いいたします。

古文書勉強会の成果(その8)

更新がだいぶご無沙汰になってしまいましたが、春日部市郷土資料館の市民による古文書勉強会の成果を紹介します。9月、10月、11月と数回にわたり、神間村文書のうち検地帳・宗門人別帳を講読しました。
写真:講読の風景
まず、慶安3年(1650)「神間村新田屋敷御検地御水帳写」(史料番号334)は、神間が開発され、はじめて検地の時に作成されたもので、元文4年(1739)に書写されて、今日に伝わったものです。今回は五冊のうち、住民の屋敷を書き上げた一冊を読みました。参加された方が内容を表にまとめてくださいました。
画像:検地帳の集計表
住民に屋敷の大小があること、「〇〇分」の記載から、いわゆる分付主という存在がいたこと、検地の案内人には除地が与えられていることなどを読み解きました。また、史料の写し間違えがあり、屋敷地の合計が計算上合っていないことも明らかになりました。

次に、享保21年(1736)「下総国庄内領神間村宗旨人別帳」(史料番号339)を講読しました。
写真:享保21年人別帳
こちらも内容を表にまとめていただきました。
表:享保21年人別帳の分析
家族構成や年齢、旦那寺、本百姓でない「地守」「水呑」という肩書の農民の存在など、当時の神間村の住民構造を読み解きました。神間村には寺院がなかったため、各家は他村の寺院を旦那寺としており、とくに西宝珠花村の宝蔵寺を旦那寺とする家が多いことから、近世前期の新田開発にあたって、台地上の宝珠花から入植があったことがうかがえます。また、この宗門人別帳には「本家立三間、横弐間半」というような記述がみえます。「本家」の厳密な意味はわかりませんが、おそらく各家の母屋の面積を示したものと推察されます。
ある参加者の方は、この面積の数値と家族人数を合わせて、分析してくださいました。
画像:参加者の分析図
検地帳、宗門人別帳を講読して、当時の神間村の人々のくらしがイメージできましたでしょうか。
また、前回の11月17日(土)には、講読後に新規受け入れ資料の加藤楸邨・水原秋櫻子の短冊を熟覧していただきました。楸邨・秋櫻子は春日部ゆかりの俳人ですが、近世の古文書とはまた違った草書を読んで、昭和の俳句の世界に思いをはせていただきました。
写真:加藤楸邨等の短冊の熟覧
次回の勉強会は、12月1日(土)14時~、次々回は1月12日(土)14時~です。一緒に古文書を読んでみたいという方も大歓迎です。

春日部中学校図書館『新編図録春日部の歴史』ーその68

昭和34年(1959)11月25日、全国で初めて、春日部中学校に中学校図書館が開館しました。鉄筋コンクリート製の平屋で、面積349.2平方メートル、総工費は630万円でした。円形バルコニー、明かり天井が採用されるとともに、会議室、司書室も備わり、図書館司書が配置されました。
昭和41年(1966)に春日部中学校で火災がありましたが、図書館は鉄筋コンクリート製であったために、その被害は免れました。

「落成した春中図書館」『春日部市政だより』昭和34年12月10日号
「公共施設の整備」『新編図録 春日部の歴史』252ページ
春中図書館

高齢者施設の皆さんにご来館いただきました

11月20日(火)、市内の高齢者施設の皆さんが団体見学で春日部市郷土資料館にいらっしゃいました。
写真:こての使い方を説明される方
「くらしのうつりかわり」展では、昔のおもちゃや道具に触っていただきました。こての使い方やベイゴマの回し方を教えていただきました。
個人的に驚いたのは、アルマイトの弁当箱のこと。梅干しをのせた日の丸弁当を毎日食べていると、梅干し酸によって、弁当箱のフタの真ん中に穴が開いてしまうんだそうです。「ただでさえモノがない時代だったのに困った」と昔を思い出されていました。

写真:回想法ボランティアの活動
映像コーナーでは、回想法ボランティア「ふれあい幸齢倶楽部」にご協力いただき、回想法の映像を上映しました。昭和33年の皇太子殿下のご成婚の映像や昭和30年代の県内の映像をご覧いただき、クイズや会話を通して、昔のことを回想していただけたようです。

皆さん、笑顔でお帰りいただきました。またのご来館をお待ちしております。

テレビ局の取材と帰ってきた埴輪

春日部市郷土資料館、昨日月曜日は休館日でしたが、動きのある一日でした。お知らせもかねて、話題をニつ紹介します。

一つ目。
テレビ埼玉の番組「魅力まるごと いまドキッ!埼玉」の取材があり、リポーターとして活躍されている小堺翔太さんにご来館いただきました。
写真:模型をみる小堺翔太さん
小堺さんと一緒に春日部大通りを歩いて、日光道中粕壁宿の昔の町並みをご案内しました。一見気づかない昔の面影をご覧いただき、喜ばれていました。写真は、当館の宿場町の模型をご覧になる小堺さん。ちゃっかりサインもいただいちゃいました(資料として保管します)。
写真:小堺さんのサイン
この模様は、11月24日(土)8時30分~9時にテレビ埼玉(地デジ3チャンネル)で放送されます。宿場の町並みだけでなく、市内の伝統手工芸品やスイーツなども紹介されるそうです。お楽しみに。

話題の2つ目。埴輪(はにわ)が帰ってきました。
県立さきたま史跡の博物館の企画展示に出展するため、行田市に旅立っていた人物埴輪が、常設展示に無事に帰ってきました。春日部唯一の人型の埴輪です。ところで、この埴輪がかたどった人物は男性?女性?どちらでしょうか?答えは収蔵資料紹介のページをご覧ください。
写真:人物埴輪

郷土資料館体験ワークショップを開催しました

平成30年11月18日(日)、郷土資料館で「体験ワークショップ」が開催されました。
蓄音機による音楽鑑賞が行われ、やわらかく温かみのある音に皆さん聞きいっていました。

蓄音機

電気を使わず再生することや、レコード1枚で約5分間しか聞けないということに驚かれ、郷土資料館で、少し昔にタイムスリップを体験してもらいました。

蓄音機演奏

次回は、平成31年1月20日(日)を予定しております。
事前申込み不要、当日の飛び込みも大歓迎です。ご参加をお待ちしています。