カテゴリ:郷土資料館
粕壁小学校6年生が資料館を見学しました
6月24日(火曜日)から25日(水曜日)にかけて、粕壁小学校の6年生が、1クラスずつ郷土資料館の原始時代のコーナーを見学しました。
竪穴住居模型から塚内古墳群の埴輪のコーナーまでを、時間をかけてじっくり見てもらいました。
6年生ともなると、体も大きく、土器のケースの前の通路にいっぱいになってしまいました。
せまかったと思うのですが、みんな熱心にメモを取りながら説明を聞いてくれました。
郷土資料館の展示は竪穴住居模型から、神明貝塚、縄文土器、花積貝塚と縄文時代の展示が多いので、説明も縄文時代のことが多くなってしまいましたが、須釜遺跡の弥生土器に籾の痕跡が残っていることや塚内4号墳の武蔵系・下総系の埴輪に興味をもってくれた人もいました。
またのご来館をお待ちしています。
【デジタルミュージアム】収蔵資料データベース公開されました!
春日部市郷土資料館の収蔵資料データベースが公開されました。
データベース自体は、昨年度から導入していましたが、この7月に開館10000日を迎えることから、その記念としてこのたび一般の皆様にも公開しました。
普段は収蔵庫に眠る郷土資料をはじめ、ちょっと懐かしい資料や写真、指定文化財など、写真と簡単な解説文をまじえ、紹介しています。
現在の公開件数は150件ほどですが、収蔵資料件数は現在90000件を超えています。少しずつですが、皆さんが利活用しやすい古写真、学校や生涯学習でも活用可能な資料、知的好奇心をくすぐる資料を、順次公開に供していきますので、定期的にのぞいてみてください。
6月の考古学関係展示会、イベント情報
6月の近隣博物館・資料館の考古学情報をお届けします。
(毎月28日ごろに掲載します。随時、情報を更新します。)
(東部地区文化財担当者会リレー展示ー埼玉東部と古代の幸手)
・6月3日(火曜日)~7月21日(月曜日・祝日)幸手市郷土資料館(資料展示)
(展示会_閉会日順)
・7月6日(日曜日)まで 熊谷市立図書館郷土資料展示室
令和7年度市立熊谷図書館・立正大学博物館連携展示「立正大学を掘ってみたー熊谷校地内遺跡発掘調査の記録」
・7月6日(日曜日)まで 宮代町郷土資料館
企画展 「発掘された地蔵院~テーマで探る人々の姿~」
・7月6日(日曜日)まで 杉戸町文化財展示室(エコ・スポいずみ内)
令和7年度企画展「モノ云うモノ」
・7月20日(日曜日)まで ふじみ野市立上福岡歴史民俗資料館
最新出土品展「ふじみ野に海があったころ」
・7月21日(月曜日)まで 市原歴史博物館(千葉県市原市)
令和7年度企画展「ここまでわかった市原郡衙―古代いちはらの官衙遺跡―」
・8月30日(土曜日)まで 帝京大学総合博物館(東京都八王子市)
企画展「ホネホネワンダーランド-骨の不思議を探る-」
・8月31日(日曜日)まで かみつけの里博物館(群馬県高崎市)
企画展「わくわく!はにわ体験‘25」
・8月31日(日曜日)まで 埼玉県立さきたま史跡の博物館(行田市)
令和7年度埼玉の考古おひろめ展「地中からのメッセージ」
・10月13日(月曜日・祝日)まで 国立科学博物館(東京都台東区)
特別展「氷河期展 〜人類が見た4万年前の世界〜」
【学芸員がやってみた】ショート動画「麦わらのかすかべ」展をつくってみた
今日から思いつきではじまった「学芸員がやってみた」シリーズ(初回にして最終回かもしれない)。「麦わらのかすかべ」展の告知のショート動画をつくってみました。若い世代の方々向けに(!?)縦づかいの動画です。
麦稈真田を職人さんが縫い、麦わら帽子が一つ一つ丁寧につくられている工程をイメージして、15秒の動画をつくってみました。まだまだ粗削りですが、一般のソフトで作っていますのでご容赦を。
市役所内のデジタルサイネージで7月中旬ごろから放映される予定です。市役所に公用でたまに訪れる出先の担当者も見れたらラッキー。映像が流れたときは、ぜひ立ち止まって見てみてくださいね。
【展示情報】
展示会名:春日部市郷土資料館夏季展示(第72回)「麦わらのかすかべ~帽都いま・むかし~」
会 期:令和7年7月23日(水)~9月7日(日) 月曜・祝日休館
会 場:春日部市郷土資料館 企画展示室(春日部市粕壁東3-2-15 教育センター内)
入 館 料:無料
麦稈真田を編みを再現したい!
7月23日からはじまる、企画展「麦わらのかすかべ~帽都いま・むかし」展、目下準備中です。
本展は、春日部の特産品「麦わら帽子」産業の歴史、そして今を紹介する展示ですが、以前にも紹介した通り、市域におけるその始まりは、麦わら帽子の原料である「麦稈真田」(ばっかんさなだ)を、農家の副業としてはじめたことのようです。
日本で麦稈真田をつくるようになったのは、明治初めのことです。東京の大森(現大田区)の川田谷五郎が、横浜で外国人がかぶっている麦わら帽子に着目し、大森に伝わる麦わら細工の技術を活かし、麦稈真田を開発したといわれています。川田の開発後、麦稈真田は、欧米の麦わら帽子の材料となり、明治10年代半ばには輸出の需要に応えるように、製造が盛んになっていきました。川田は、麦稈真田の編み方を考案しただけでなく、麦わらの漂白方法や品種の選定までに手をかけたといわれ(『大田区史 資料編 民俗』)、政府の産業奨励とともに、麦稈真田製造を新興の輸出産業に育てていった重要な人物といわれています。
春日部市域に、麦稈真田製造がどのように伝わったのか。それを示す一次資料は現在のところ見出されていません。当時の状況をもっとも詳しく活写するのは、大正元年(1912)刊行の埼玉県の郷土誌『埼玉縣誌 下巻』です。
これによれば、粕壁町周辺では、明治11年のころは東京・大森に麦稈(麦わら)を送っていたが、明治13年に神奈川県川崎町の鳥飼(鳥養か)氏が婦女の副業として麦稈真田製造が有益であると説き、粕壁町の高橋氏、幸松村の野口氏に勧め、両人らの尽力もあって、市域周辺で麦稈真田製造がはじまったが、しばらくは不振で、明治15年以降にやや盛大になっていった、とあります。
麦作が盛んだった市域では、はじめは麦わらの供給地として大森方面の麦稈真田製造を支え、明治13年に川崎町の鳥飼(鳥養)なる人物が技術を伝え、明治15年以降、婦女子の副業=地域の産業として根付いていったということです。春日部市域での起こりを年代・人名を明確にして記述するものは、このほかには管見の限りありません。残念ながら典拠は示されていませんが、『縣誌』は大正元年刊行なので、30~40年前の出来事を知っている人もいたでしょうから、市域の麦稈真田産業の始まりを伝えるものとして信憑性が高い記事だと考えられます。
そうしてはじまった、麦稈真田製造。明治30年(1897)『日本農業新誌』6-11によれば、粕壁地方では、麦稈真田の原料には、大麦の半芒種「ザンギリ」という麦わらを使っていたそうです。市域周辺の麦稈真田製造は明治30年半ばにピークを迎え、その後は中国産の麦稈真田がとってかわることになります。また、明治末期から大正期にかけて、国内では麦稈にかわる素材で編む真田=経木真田、マニラ麻真田が考案・製造されるようになります。ですから、実は、市域では国内産の麦わらをつかって編む麦稈真田製造は、明治13年ごろから明治30年代ごろまで(遅くても大正初めまで)であり、大正初めまでにはほとんど製造されなくなってしまうようです。
ただ、国内では、岡山県・広島県・香川県などで麦稈真田製造は続けられ、中国・四国地方には様々な文献や製造用具が伝来しているようです(野田繭子「資料紹介 岡山県立博物館所蔵麦稈真田関係資料について」『岡山県立博物館研究紀要』37、2017年)。おそらく、春日部市域でも同様の用具が使用されていたものと考えられます。
市域では短命に終わった麦稈真田製造ですが、かつてかなり盛んだった真田編みを再現してみたい!
岡山県立博物館では、紙テープをつかって三本編みの真田(三平・さんぴら)編みの疑似体験をされていたことが、前掲野田氏の文章にみえましたので、参考にさせていただき、まずは紙テープ三平に挑戦(といっても、担当者は鶴の折り紙がギリギリできるくらいの「不器用な男」なので、手先の器用なパートさんの協力を得てつくってもらいました)。
意外と簡単で、楽しい。お子様でもできるかも。
では、5本編み(五平・ごひら)はどうか。はじめ、一戸清方『麦稈真田製造法』(1906年)の図を参考にしながら編んでもらいましたが、図や説明が不完全でどうしてもできない。諦めかけたとき、藤原覚一『図説日本の結び新装版』(築地書館、2012年)に出会いました。そして、できたのがこれ。
三平よりは複雑で難しいですが、手順さえ間違えなければ意外とできるかも。
不器用な男も、ラッピング用の針金でもやってみました。
針金はキラキラして綺麗ですが、接ぐのが難しいのが難点。飛び出たところはご愛敬!?本来は切って整えるようです。「やっぱり紙テープかなぁ、それとも…」と素材をかえながら、試行錯誤しているところです。
ちなみに、麦稈真田をつくる動作を「編む」ともいいますが、「打つ」ともいうようです(どちらも使うようです)。
企画展の体験コーナーでは、「みんなでつなぐ紙テープ真田」(仮称)と題して、観覧者の皆さんに紙テープ真田に「編み」「打ち」に挑戦していただき、それをつないで長い真田をつくってみたいと思っています。たぶん、三平です。お楽しみに。
【展示情報】
展示会名:春日部市郷土資料館夏季展示(第72回)「麦わらのかすかべ~帽都いま・むかし~」
会 期:令和7年7月23日(水)~9月7日(日) 月曜・祝日休館
会 場:春日部市郷土資料館 企画展示室(春日部市粕壁東3-2-15 教育センター内)
入 館 料:無料