ほごログ
【常設展 #展示替 】江戸川の幻の河岸
常設展示を一部、しれっと展示替しました。郷土資料館は、春日部にかつてあったモノ・コトを掘り起こして、皆さんにお伝えします。今回は、新宿新田に、船着き場があったんですよ!という話題。 #かすかべプラスワン
展示替といっても、当館は狭いので、近現代の流通交通を紹介する一コーナーのみですが。テーマは「江戸川の舟運in新宿新田」。
展示資料は、今年初頭にご寄贈いただいた、江戸川沿いの新宿新田の船着き場の運営をされた回漕業を営まれた旧家の資料です。
市内において、近世には河岸問屋を伴う河岸は西宝珠花と西金野井の二か所あったようです。「あったようです」というのは西宝珠花の史料が残っていないので不明なのですが。
河岸問屋は、幕府に営業税を支払うことで、河岸場の「場」の運営を保障され、周辺農村から年貢の津出しが許されていました。意外に思う方も多いようですが、市内においては古利根川には河岸問屋がいませんでした。ですから粕壁宿の舟運は小取引のものに限られていたようです。時期にもよりますが、近世中後期には、粕壁宿の年貢は、西金野井から津出しされていたようです。
明治時代になると、舟運を取り仕切る業者は、近世以来の河岸問屋に限ることなく、様々な人々が回漕業を営めるようになったようです。とはいえ、西宝珠花と西金野井は明治初頭に寄航する蒸気船の寄港地として、舟運上の特権を持ち続けました。明治以降の江戸川の舟運は、蒸気船により「発達」し、昭和初頭に舟運業が衰退するまで、市域の経済活動を支えてきました。
今回展示した、新宿新田の河岸場は、代々増田家が取り仕切ってきたといわれ、増田家の当主の名により「伊和右衛門河岸」と呼ばれてきたそうです。「伊和右衛門河岸」の起源は不明ですが、近世的河岸問屋が解体して以降、おそらく明治以降に成立したものと考えられます。明治以降の大型の蒸気船の舟運を補完する、小型舟の物流を支えていた河岸場だったと推定されます。
展示した資料は、明治時代以降のもので、埼玉・千葉両県による渡船場の許可書や、河岸倉庫の設置申請書などがあります。これらの文書から、「伊和右衛門河岸」の位置が新宿新田の「字犬塚」地内にあったことが明らかになりました。現在は、江戸川改修により、河岸場の位置は河川敷になっているようですので、幻の河岸場といえるでしょう。
新宿新田にお住まいの方、お近くにお住まいの方、舟運にご興味のある方、はたまた江戸川が好きな方は、ぜひご覧いただければ幸いです。
「10/9歴史文化講演会ー鎌倉殿と東国武士」、「10/8~古文書講座初級編・中級編」の申し込みは終了しました
9月13日(火)より募集しておりました歴史文化講演会 菱沼一憲先生「鎌倉殿と東国武士~春日部ゆかりの人々の動向」、古文書講座(初級編・中級編、6回連続講座)は、満席になりましたので募集を終了しました。
多くの方のお申込み、ありがとうございました。
郷土資料館では、今後も各種講座を実施予定ですので、ご期待ください。
●郷土資料館10/9歴史文化講演会「鎌倉殿と東国武士~春日部ゆかりの人々の動向」
日程 令和4年10月9日(日)
講師 菱沼一憲先生
参加費 無料
●郷土資料館 古文書講座初級編
日程 令和4年10月8日、11月12日、12月3日、令和5年1月14日、2月18日、3月11日 午前10時30分~12時00分(すべて土曜日・全6回)
講師 郷土資料館職員
参加費 無料
●郷土資料館 古文書講座中級編
日程 令和4年10月8日、11月12日、12月3日、令和5年1月14日、2月18日、3月11日 午後2時~3時30分(すべて土曜日・全6回)
講師 郷土資料館職員
参加費 無料
【共催展】撤収・搬出
9月4日までの宮内庁・春日部市共催展示「明治天皇と春日部」展の撤収・搬出が終わりました。共催展について、色々発信してきましたが、これが本当に最後の記事になるでしょう。 #かすかべプラスワン
8日(木)には宮内庁宮内公文書館の皆さんが来館され、展示資料の撤収作業を行いました。
一つ一つ、史料の状態を確認しながら、一つ一つ、梱包をしました。狭い展示室にもかかわらず、展示作業は「あーでもない、こーでもない」と時間がかかるのに、片づけは早いのです。
記録で撮影していると、「「ほごログ」にまた出ちゃうの!?」とおっしゃっていたので、ご希望通り、全世界にご披露します。
宮内庁宮内公文書館の担当者の御三方が春日部の地で揃うのも、この日が最後。片づけられ、がらんとした展示ケースもあって、少し物悲しく感じた一日でした。
9日(金)は資料搬出日でした。
埼玉鴨場から借用した大型資料の梱包、資料の最終確認をして、宮内庁からお借りした資料は、越谷市の埼玉鴨場、そして、お城のなかの宮内庁宮内公文書館へと帰っていきました。展示していたのは、わずか2か月足らずの期間でしたが、トラックを見送るとき、ほっとしつつも少し寂しく思いました。「サヨナラ、宮内庁!」
当館で実施された、宮内庁宮内公文書館の出張・共催展示は、今後も継続して開催するとのこと。春日部会場が片付いて、宮内庁の皆さんは来年度の準備に切り替えていくそうです。
当館も別の機関への借用資料もありますが、これでひと段落。次の展示や事業に向けて、こちらも切り替えです。
宮内庁の皆さんには本当にお世話になりました。改めてお礼申し上げます。皆さまには、宮内庁宮内公文書館・春日部市郷土資料館それぞれ、今後ともご支援いただければ幸いです。
「考古学講座ー基礎を学ぶ」の募集は終了しました
9月7日(水)より募集しておりました「考古学講座ー基礎を学ぶ」(5回連続講座)は、満席になりましたので募集を終了しました。
多くの方のお申込み、ありがとうございました。
郷土資料館では、今後も考古学関連の講座を実施予定ですので、ご期待ください。
●郷土資料館 考古学講座ー基礎を学ぶ
日程 令和4年9月24日、10月29日、11月26日、12月24日、令和5年1月28日 午前10時~11時30分(すべて土曜日・全5回)
講師 郷土資料館職員
参加費 無料
【共催展示閉幕】記念シンポジウム・ミュージアムトーク
9月4日(日)宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」が閉幕しました。最後の週末に展示に花を添えたのは、記念シンポジウムとミュージアムトーク。それぞれ多くの方にお集まりいただきました。
9月3日には、記念シンポジウム「江戸川筋御猟場―埼玉県東部・宮内省・民衆―」を開催しました。このシンポジウム申し込みから数日で定員に達してしまったほど、関心の高い事業でした。
シンポジウムには、明治学院大学の吉岡拓先生、中央大学の宮間純一先生、宮内庁宮内公文書館の篠﨑佑太先生をお招きし、郷土資料館の学芸員も登壇しました。
個別報告では、江戸川筋御猟場について、地域の狩猟(榎本)、宮内省(篠﨑)、行政と政治・天皇の受容の問題(吉岡)を視点にして、史料に基づき濃密なお話をいただきました。じっくり時間をとってお話しいただいてもよい濃密な話でした。ディスカッションでは、会場からいただいた質問用紙に応えながら進行しました。短時間では、さばききれないほどの質問があり、嬉しい悲鳴。受講者の皆さんの関心が高く、学習に熱心であることに非常に驚かされました。登壇された先生方も「春日部の方たちは非常に熱心だ」とご感想をいただきました。
ディスカッションの最後に、吉岡先生が「春日部市域の御猟場については、史料が少なくまだわかっていないことが多い。春日部市域には個人のお宅に御猟場の資料が眠っている可能性がある。ご存知の方がいれば、ぜひ春日部市の郷土資料館へご一報願いたい」とご発言いただきました。郷土資料館の活動をご紹介いただき、またそれが郷土の歴史の解明にとって、重要であることを位置付けていただく趣旨のご発言でした。
江戸川筋御猟場は、埼玉鴨場の残るの越谷市ではそれなりに関心のあるテーマのようですが、今回をきっかけに、春日部市域でも史料の調査が進み、調査研究を深化させられる、そうした可能性を指し示すシンポジウムになったように思えました。ご登壇いただいた先生方、ご参集いただいた会場の皆さま、どうもありがとうございました。
最終日の9月4日には、学芸員による展示解説(ミュージアムトーク)を開催しました。
シンポジウムの申し込みが間に合わなかった方、最終日に駆け込みで見に来てくださった方が集まり、午前、午後とも大変盛況でした。
今回の展示では、宮内庁宮内公文書館の皆さんのご協力があり、例年よりも多くのイベントを組むことができました。特に重要だったのが、展示解説講座と前述のシンポジウムです。私自身、宮内庁の皆さんの展示解説講座を拝聴し、また自分で準備するなかで、展示資料の史料研究が進められ、資料に対して理解を深めることができました。
今回の展示では、宮内庁宮内公文書館の皆さんと展示設営を分担したこともあり、最初のミュージアムトークの時には、正直「なぜこれを展示したのだろうか」と疑念を抱くものも少なくありませんでした。しかし、前の通り展示解説講座やシンポジウムで資料の理解が進みましたので、最終日のミュージアムトークは、私自身これまでで一番うまくしゃべれた気がします(笑)
参加された皆さんからは、「話を聞いてよくわかりました」とか「まとめすごろくがよかった」とか「ごぼうのスタンプ押して帰ります」など、ご感想をいただきました。お集まりいただきありがとうございました。
展示は終了してしまいましたが、図録は今後も在庫が底をつく限り配布します。また、展示の成果として、引き続き、宿場町の模型には明治天皇の御昼食所と明治14年の巡幸の供奉者の昼食所を表示します。
シンポジウムでもご指摘いただきましたが、この展示をきっかけに、これまで分からなかった、意識されなかった巡幸、御猟場、梅田ごぼうについて、関心が高まり、新たに関係資料が発掘・発見されることが期待されます。そういう意味で、展示は終わりではなく始まりなのかもしれません。そして、春日部市郷土資料館は、目立たないのですが、日々成長しています。ぜひ、何かご存じの方は、春日部市郷土資料館へご一報ください。