ほごログ
大凧あげの背景 #ハルカイト 展示室より
いまや春日部の代名詞でもある大凧あげ。5月に大凧あげを開催する地元=西宝珠花は大凧の里として知られています。そうした大凧の里に、今月にオープンしたのが、大凧文化交流センター(愛称:ハルカイト)です。
ハルカイトの展示室では、大凧文化や、郷土の歴史・文化の発信をしています。春日部の「ハル」、凧の「カイト」の愛称の通り、大凧あげに関する展示が一つの主題・見どころになっています。2階の大凧文化展示室では、パネルや模型を展示し、大凧の歴史文化についてコンパクトにまとまっています。大凧揚げのトリックアート、記念撮影もでき、楽しみながら大凧あげの理解が深まります。
ところで、大凧あげは何故、西宝珠花の地ではじまったのでしょうか。
地元に伝わる話によれば、天保12年(1841)に浄信(じょうしん)という巡礼の僧がこの地にやってきたとき、凧を揚げて養蚕の豊凶を占うことを勧めたのがきっかけで、凧が「舞い上がる」と「繭が上がる」に通じることによったものとされています。以後、西宝珠花の上町(かみまち)と下町(しもまち)の二組が競って凧を揚げ、次第に凧の大きさが大きくなり、現在の大凧揚げに至ったといわれています。
大凧揚げの起源には、養蚕が関係している。そして、西宝珠花の町の人たちが凧を大きくしていった。この2つのポイントがミソです。
大凧揚げの歴史のポイントを紹介しているのが、2階の歴史民俗の展示室(展示は郷土資料館担当)です。
大凧揚げの起源としての養蚕、そして西宝珠花の町の歴史・特徴を展示室3で紹介しています。しかし、実は、宝珠花地区における養蚕の資料(民具や文書・記録)は伝わっておらず、庄和地域の農家に伝わる養蚕の道具を展示しています。大凧揚げの起源であるのに、養蚕が起源というのが本当なのかと疑ってしまうほど資料が少ないという、何とも学芸員泣かせです。
先日、展示をご覧いただいた元教員の方に、養蚕の展示が貧弱だとご叱正いただき、少しでも養蚕のリアリティーの足しになればと、繭を大量に寄贈いただきました。繭は学校の教材用に大量に譲り受けたものだそうで、今日は、蚕が繭をつくる上蔟網に繭をひっかけてきました。
もう少しマシマシでひっかければよかったかな。。。
郷土資料館で担当した歴史民俗展示室は、大凧文化展示室に比べれば、一見地味で、見栄えはしないかもしれませんが、知る人ぞ知る、大凧文化の発信にも寄与しているはずの展示なのです。大凧揚げのもう一つのポイント、西宝珠花の歴史については後日にしましょう。
平日の展示室には施設を利用する地元の方がチラホラ。
1階の展示室(宝珠花サロン)のタッチパネルシステムでは、動画や古写真もご覧いただきます。
オープンから1か月経ち、郷土資料館のお客さんからも「ハルカイト見に行ってきたよ」なんて、ご感想をいただいています。ぜひお立ち寄りください。
8月の近隣博物館・資料館の考古学情報
8月の近隣博物館・資料館の考古学情報をお届けします。(毎月28日ごろに掲載します。)
見学の際は、休館日等、よくご確認の上お出かけください。
(展示会_閉会日順)
・8月31日(土)まで 杉戸町文化財展示室(杉戸町大字木津内524エコ・スポいずみ内)「幸手と杉戸の古墳時代~下総台地の集落と墓~」
・9月1日(日)まで 粕川歴史民俗資料館(群馬県前橋市)「発掘された銅銭ー前橋市内の一括出土銭ー」
・9月1日(日)まで 埼玉県立さきたま史跡の博物館「埼玉の考古おひろめ展―地中からのメッセージ」
・9月1日(日)まで 栃木県埋蔵文化財センター(栃木県下野市)「出土したカオ・かお・顔」
・9月16日(月・祝)まで 千葉市立加曽利貝塚博物館(千葉県千葉市)「市原歴史博物館×加曽利貝塚博物館2024―縄文時代の土偶の顔―」
・9月3日(火)から16日(月・祝)まで さいたま市立博物館(さいたま市大宮区)「さいたま市最新出土品展2024」
・10月31日(木)まで 神川町多目的交流施設(神川町)「鏃のうつりかわりinかみかわ」
・11月24日(日)まで 埼玉県立嵐山史跡の博物館(嵐山町)ほか 比企歴史の丘巡回文化財展「比企の縄文時代ー縄文時代の道具」*東松山市ホームページ
(講演会・講座)
・9月7日(土) さいたま市生涯学習総合センター(さいたま市大宮区) さいたま市内遺跡発掘調査成果発表会(先着順)
・9月8日(日)明治大学駿河台キャンパス(東京都千代田区)日本考古学協会公開シンポジウム「考古学が解明する邪馬台国の時代」(要申込、オンライン配信あり)
(現地見学会)
・9月7日(土)塚原南遺跡(東松山市) 埼玉県埋蔵文化財調査事業団(事前申込制)
・11月16日(土)真福寺貝塚(さいたま市岩槻区)さいたま市教育委員会
*春日部市郷土資料館では9月1日(日)まで「都鳥が見た古代ー埼玉県東部地区の奈良時代・平安時代」を開催中です。
土器の完成!~土器焼きinハルカイト~
7月21日に制作した思い思いの土器をひと月間の乾燥を経て、8月25日には大凧文化交流センター ~ハルカイト~で焼き上げました。台風の影響で一週間延期したこの日は前日土曜日の雷雨で開催も悩ましい状態でしたが、ローム台地にあるハルカイトは水はけが良く、午前9時から文化財課職員総出でカマの空焚きと土器の最後の乾燥を行いました。
▲前日の雷雨で土中に水分を含むため空焚きによる乾燥と土器を遠火で温め、最後の乾燥を行いました
参加者の皆さんは午後からの集合。相変わらずの猛暑のため、史跡神明貝塚現地への散策は中止しましたが、空調の効いた施設内で縄文時代の体験メニューに取り組んでいただきました。小学校出張授業でも人気の貝塚から発掘された当時の食料資源の実物、貝殻や獣類の骨を見て触ったり、鋭利な刃をもつ黒耀石では段ボールへの切れ味体験など、土器作り共々、親子で春日部に暮らしたの縄文人の道具や暮らしを実体験。また、今回、新たにタブレットやスマホによる土器の3Dの映写を加え、保護者の皆さんも興味津々。「観察力が高まる」、「細部までみえる」という感想をいただきました。
▲普段は展示ケースに入っている土器や石器、当時の食べ物などが目の前で「みて・触れて」を体験しました
土器は本炊きから約2時間ほど、600°から700°にもなる炎で焼き上がり、しっかりと冷まさないと大やけどしてしまうほど、高温となっています。
「土器作りから野焼き、そしてハルカイトでの縄文時代の展示をとおして子どもと学ぶことができました」、「野焼きにも参加できたらなぁ~」、「もっと大きい土器が作りたい」「時間をかけて作りたい」など、感想をいただきました。参加いただきました49名のみなさん、大変おつかれさまでした。平成5年からの継続事業、また来年も縄文人の暮らしのメニューを用意しますので、7月号広報での募集とご応募をお待ちしております。
【都鳥がみた古代】八木崎遺跡の春日部高校調査地点
八木崎遺跡は、東武アーバンパークライン(野田線)八木崎駅北側に広がる遺跡で、北東側の浜川戸遺跡とともに、古隅田川によって形成された広大な自然堤防上に立地します。
八木崎遺跡では、これまで、6回の発掘調査が行われ、奈良時代・平安時代の竪穴建物跡が約60軒、確認されています。このうち最も広い面積を調査し、53軒の竪穴建物跡が確認されたのが、平成9年(1997)に行われた第1次調査、埼玉県立春日部高等学校の改修工事に伴う調査です。
八木崎遺跡春日部高校地点の発掘調査空撮写真(『八木崎遺跡』埼玉県埋蔵文化財調査事業団報告書第281集)
校舎改修に伴う春日部高校の発掘調査(八木崎遺跡第1次発掘調査)は、平成9年8月1日から12月31日まで行われました。調査対象面積は9,000平方メートルです。グラウンドとして使われていた新校舎建設予定の学校敷地東側の部分で行われました。
調査では奈良時代・平安時代の竪穴建物跡53軒のほか、土壙(どこう)105基、井戸跡55基、溝13条(土壙、井戸跡、溝は中近世のものを含む)などが確認され、時期が判明している竪穴建物は、8世紀代のものが14軒、9世紀代のものが33軒でした。遺物は土師器や須恵器、鉄製品などが発見されました。出土遺物の中には、今回の展示のポスターを飾っている「奉念随□道足」と刻書された石製紡錘車(せきせいぼうすいしゃ)もあります。
奈良時代に制定された律令の国郡里制(こくぐんりせい)では、武蔵国と下総国の国境は、現在の古隅田川であったと考えられています。古隅田川は、現在は国道16号の北側に直線状に流路を改修されていますが、改修前は春日部高校の西側を流れていました。
夏季展示「都鳥がみた古代ー埼玉県東部地区の奈良時代・平安時代」では、八木崎遺跡の春日部高校調査地点で発見された多くの資料を、埼玉県立さきたま史跡の博物館からお借りし、展示しています。国境に立地する八木崎遺跡の地に住んだ当時の人々が、国境をどのようにとらえていたか、展示資料から思いをはせていただければ幸いです。
参考文献:『八木崎遺跡』埼玉県埋蔵文化財調査事業団報告書第281集 2002年
9月1日開催のリレー講演会は残席がわずかとなっています。お早めにお申し込みください。
●春日部市郷土資料館 第70回企画展示
東部地区文化財担当者会40周年記念リレー展示「都鳥が見た古代ー埼玉県東部地区の奈良時代・平安時代」
会期:令和6年7月20日(土)から9月1日(日)
開館時間:午前9時から午後4時45分
休館日:毎週月曜日・祝日
会場:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15・048-763-2455)
共催:東部地区文化財担当者会
(関連イベント)
(残席わずかですーお早めにお申し込みください)
●東部地区文化財担当者会40周年記念リレー講演会「考古学から埼玉県東部地区の奈良時代・平安時代を考える」
埼玉県東部地区の奈良時代・平安時代の遺跡や資料について、東部地区文化財担当者会考古部会のメンバーが報告します。
講師:鬼塚知典(春日部市)、守谷健吾(杉戸町)、篠田泰輔(行田市)、杉山和徳(白岡市)、関絵美(八潮市)、油布憲昭(幸手市)
日時:9月1日(日)13:30から17:00
場所:教育センター視聴覚ホール
定員:100人(申込順)
費用:無料
申し込み:7月10日(水)から電話(048-763-2455)、直接、電子申請
●ミュージアムトーク
企画展示会場で郷土資料館学芸員が展示解説を行います。
日時:8月25日(日)各日10:30~、15:00~(30分程度)
場所:郷土資料館企画展示室
費用:無料
申し込み:不要
郷土資料館【手作りおもちゃクラブ】を開催しました
令和6年8月18日(日) の午前と午後各1回ずつ、郷土資料館手作りおもちゃクラブ「紙でっぽう・筒型飛行機を作ろう!」を開催しました。
先月、今月と暑い日が続きますが、今回もたくさんのこどもたちが参加してくれました♪
まずは、約100年前に使われていた蓄音機でレコードを聴いたり、春日部の伝説にまつわる紙芝居の読み聞かせを行いました。
資料館で使用している蓄音機はSP盤の約4~5分程度のものですが、針(鉄製)が丸く削れてしまうため、1回ごとに取り替えます。実はそれだけ針には力がかかっています。
そして、おもちゃ作りでは「紙でっぽう」と「筒型飛行機」を作りました!
紙でっぽう作りでは、みんなしっかりと話をきいて、丁寧に折り進めていく姿が印象的でした。
「パァンッ」と快音を響かせていましたね!
筒型飛行機は郷土資料館の手作りおもちゃクラブで作るのは初めての品になります。
一般的な三角に尖った紙飛行機とは、雰囲気の違う飛び方で、ふんわり、ひらひらと滑空するように飛びます。
ちょっと高い所から飛ばすと滞空時間が長くなるので、特別に階段の踊り場からも飛ばしてみました。
飛ばし方や、空気の抵抗などもあり、なかなか真っ直ぐ飛ばすのは難しいのですが、それでも生き物のように飛んでいく姿にこどもたちは喜んでくれたようです♪
お土産の缶バッジ作りは、今日の作ったおもちゃ“筒型飛行機”のイラスト!
今回は特にご新規の方が多く、初めての缶バッジ作りを楽しんでくれたようです!
常連さんは、新しいイラストの缶バッジを手に入れてご満悦でした♪
次回の手作りおもちゃクラブは10月に開催を予定しています。
詳しくは広報紙等に掲載いたしますので、ぜひご参加ください!