校長室より
「人を育てる・プロ野球選手と職人」
今年のプロ野球シーズンも終了し、ストーブリーグに入り小学生の多くが「将来の夢」であるプロ野球の選手になれるドラフト会議も10月に行われました。毎年約100人近くの新人選手が晴れてプロ野球の道に入ります。小学生の頃から全国各地のリトルリーグ等で人一倍練習をして試合でも大活躍をしてやっと掴んだ夢だと思います。
ある新聞の特集テーマで「運命のドラフト会議」を読みました。スカウトは有望な高校生や大学生、社会人野球の金の卵を何年間も追い続けています。特定の選手への思い入れは人一倍だと思います。大会や練習を何度も視察して「本当にプロで活躍できるか」を見定めるそうです。投球フォームや打撃センスなど様々な技術的な面から考察していきます。
しかし、何よりも一番重視するのは、「努力できる才能」を持っているかを見極めることだそうです。例えば、早めにグラウンドに来て練習の準備をしているか、個人練習に取り組んでいるか、帰宅後にランニングをしているかを観察しているそうです。一人で練習できない選手はプロ野球では埋もれてしまう場合が多いからです。後の大スター選手でも学生野球の頃は、陰で人知れず2時間素振りをしているのをスカウトが見て、惚れ直したこともあるそうです。
この秋、ある研修会で感動する講演を聴く機会がありました。
「一流の職人を育てるには、人間性を高めることです。」
それは、入社3~4年目の若い社員が技術オリンピックの大会で金・銀・銅メダルを独占している秋山木工グループ社長の秋山利輝氏の話でした。
秋山木工の特注家具は、国会議事堂や迎賓館、宮内庁、有名ホテル等で使用されている知る人ぞ知る手作り高級家具です。又、秋山社長は若手職人を育てる独自の研修制度でも注目を集めておりテレビで取り上げられ映画も作成されています。
現在でも丁稚(でっち)制度を取り入れ、全員住み込みで携帯電話・恋愛は一切禁止、男子は勿論のこと20歳前後の女子でも丸坊主になります。丁稚の期間中は仕事のみに没頭できる環境を徹底するとのことです。社長自身が入社希望者の実家を訪れ、両親や祖父母等とじっくり話をしながら家族と本人の覚悟を確かめて、入社を決めるそうです。愛情溢れる家庭環境でないと4年間もの辛い修行に我慢できず、辞めてしまうことが多い。大事なお子様を住み込みで預かるのは、相撲部屋にも似ているなと感じました。
秋山社長が考えた「職人心得30箇条」を丁稚奉公人全員が暗記するそうです。
「挨拶のできた人から現場に行かせてもらえます。」
「明るい人から現場に行かせてもらえます。」
「返事をきっちりできる人から現場に行かせてもらえます。」
「時間を気にできる人から現場に行かせてもらえます。」
「感謝できる人から現場に行かせてもらえます。」
これらのことは技術よりも人として大事なことが中心です。
人は心が一流になれば、後から技術も必ず一流になれると言われました。このことは、どの道どの職業でも同じことが言えるのかもしれないと思いました。