ほごログ(文化財課ブログ)

2025年2月の記事一覧

出張授業「江戸時代の旅籠について」in県立春日部女子高

2月10日(月)、県立春日部女子高等学校にて、出張授業を実施しました。

画像:授業の様子

今回は「かすかべし出前講座」の枠組みで、日本史探求の授業で春日部の近世について学芸員に話してもらいたいと、ご依頼をいただいたものです。

春日部の近世といえば、日光道中。そして、かつての宿場町が女子高から間近にあるということで、今回は、粕壁宿の旅籠についてお話しました。通学路と並走する道が日光道中、すぐ近くが旧宿場町だったこと、知らない方が多かったようです。

写真:講義の様子

授業では、旅籠が発行した領収書や、宿場町に残された古文書・古記録を紹介しながら、旅籠利用の実態や、飯盛旅籠、そして飯盛旅籠で働かせられた飯盛女(飯売女)について、詳しくお話ししました。また、旅籠高砂屋の屋敷絵図面を傍らに、高砂屋に宿泊したイザベラバートの日記や浄瑠璃太夫竹本染太夫の日記などを一緒に読みました。

上の話題(ネタ)は、以前の企画展「旅の途中でひとやすみ」展の成果をもとに仕込んだもの。市民一般の方向けにも何度かお話ししたことのあるもので、普段は90分間でお話しています。今回はそれをギュッと凝縮させましたが、上記の通り、盛沢山の内容だったので、高校の授業55分間、ノンストップでしゃべりっぱなし。話す方も聞いている方も疲れる授業となってしまいました。

けれども、辛抱強く話を聞いてくれた方や、メモを取りながら、時折頷いてくれた方もいました。竹本染太夫の日記に登場する鶴沢万吉と高砂屋おそよとのエピソードに、ほほ笑んでくれた方もいました。

 

今回は、「粕壁宿の旅籠は、史料でみるとこういうことがわかるんだ!」という、地域史(地方史)としては至極まっとうな内容でしたが、一方的にお話しする形に終始しました。この点は、担当者の人間性(?)や力量に関わるところが大きいと思いますが、反省すれば、私たち学芸員の普段の取り組む地域史(地方史)に関係しているように思います。

地域史(地方史)とは、地元に残される資料に基づきながら、事実を確定させていき、当時の地域(地方)の社会像を明らかにする取り組みです。今回でいえば、粕壁宿オリジナルの資料だけを使って、話を組み立てています。地元に資料が遺されていなければ、明らかにすることができない、わからない、のです。だから、他地域の資料や事例を踏まえるのは「必要ない」。結果、地域の歴史として微細な事実は深まり、地元の方は満足しますが、一般論には昇華しづらいのです。

授業を終えて痛感したのは、学校の授業においては、他の事例を踏まえながら、地域史の断片的な情報を補い、歴史の全体像、時代の特徴などより普遍的な問題へと帰結する必要があることです。それは、上記の地域史(地方史)とは別の次元にある。私たち学芸員は、地域の個別事例にどうしても執着してしまうのですが、地域史(地方史)に胡坐をかかず、他地域の類例や事例を広く理解し、地域個別の事例を一般論のなかに位置付けていく必要があるように感じました。そうした視点があれば、生徒の皆さんの意見・感想を聞き、対話して双方向的な授業ができたように思えます。

いずれにしても、高校生の授業として皆さんに話すに相応しい内容だったのか、話し方、伝え方も見直す必要性を感じました。

博学連携に熱心な先生方のご協力もあり、話した側の学芸員は様々な気づきを得る事になりました。当方どもといたしましても、今後とも、太く長く連携できますことを願っております。先生方、生徒の皆さん、どうもありがとうございました。