ほごログ(文化財課ブログ)

2023年1月の記事一覧

考古学講座第5回を開催しました 

1月28日(土)、考古学講座第5回を開催しました。9月から月1回のペースで開催した本講座も、本日で最終回となりました。

本日のテーマは、春日部の奈良時代、平安時代と考古学講座のまとめでした。

奈良時代、律令国家になると、全国に現在の都道府県のような国が設定されますが、現在の春日部市の範囲は、武蔵国(むさしのくに)と下総国(しもうさのくに)に分かれます。国の境は、現在の古利根川から古隅田川へ続く流れで、内牧や豊春、花積などは武蔵国、小渕や浜川戸から東側の地区は、下総国とされました。

市内では西宝珠花や小渕、浜川戸の地区から、比較的規模が大きい奈良時代、平安時代の集落跡が発見されています。西宝珠花は下総台地上ですが、小渕、浜川戸は低地の自然堤防上に立地しており、現代と同じように低地でも人々の生活や活動が始まっていたことがわかります。また小渕や浜川戸は古利根川や古隅田川に近いので、河川を使った交通の要所であった可能性も考えられます。

奈良時代や平安時代の竪穴住居跡は、カマドが設置してあり、強力な火力での調理が可能になりました。出土する土器は土師器や須恵器です。特に須恵器は、使われている粘土に含まれている物質などから、どこの窯で作られたものかを推定することができます。また鉄製品も多く確認されます。

考古学講座のまとめでは、市内の遺跡の時代別の動向や、前回、テーマとして出た、なぜ埴輪には穴が開いているのか、弥生時代の戦争と現在の戦争は違うのかなどについてお話をしました。

考古学と戦争を考える際に参考になる文献を以下にあげておきます。いずれも市立図書館にもあるようですのでご興味がある方はご一読ください。

佐原真 2005 『戦争の考古学 (佐原真の仕事 4)』岩波書店

松木武彦 2001 『人はなぜ戦うのかー考古学からみた戦争』講談社選書メチエ

 

考古学講座は来年度も今年度と同じような連続講座として開催する予定です。みなさまのご参加をお待ちしております。

考古学講座

 

 

古文書勉強会を開催しました

1月22日(日)、郷土資料館所蔵の古文書を市民の皆さんと読む「古文書勉強会」を開催しました。

今回も引き続き、粕壁の旧家に伝えられた「酒造用留」を講読。参加者の方には釈文を用意いただき、これを読みながら、字を検討しています。

史料の分量が多いので、なかなか解釈を深める時間がとれず、惜しいのですが、今回は字の解読だけでなく、語句の意味や、人名・地名などの固有名詞について疑義が生じることとなりました。参加者のなかでも意見が分かれ、皆さんとともに悩みました。以下、この勉強会では、日々どんなことに悩み、執心しているのか、少しご紹介をしたいと思います。

資料写真1

まず、意見が分かれたのが上の文。

担当の方は、「米怔合不宜受痛ニ相成候」と読んできましたが、「受痛」とはどういう意味か、他の古文書では「更痛」と書いてあるのを見たことがある、とご意見される方がいらっしゃいました。では「更痛」の意味は???

という具合に、検討を要しました。「受」と「更」は非常によく似たくずし字になりますが、この文章の前後に、次のような文があります。

写真2

これは「又兵衛江引受させ」と読むことになります。先ほどの字とこの「受」が同じ筆遣いをしていることから、前文の語句は「受痛」と読むことに至りました。

後日、調べてみると、神奈川県の寒川町の史料にも「受痛」の語の用例があるようですから、「受痛」が妥当になりましょうか。史料の文脈を踏まえて、次回、皆さんともう一度確認したいと思います。

 

もう一つ

写真3

「阿部恵三郎知行同国比企郡土渡村 名主八十次郎 百姓代次兵衛」

と読みましたが、武蔵国比企郡には「土渡村」あるいは「土後村」という村はなく、「土塩村」が存在するようです。ただ、どう読んでも「塩」には読めないと、皆さんと検討しました。

後日、お調べになった方からメールをいただき、阿部氏の知行所に比企郡土塩村があることがわかりましたので、おそらく書き手が写し間違えたものと考えられます。

ただ、新たな問題点も。調べていただいた方によると、阿部恵三郎ではなく阿部甚三郎ではないかというご指摘が。活字の史料には「阿部恵三郎」、または「阿部甚三郎」と書き起こすものもあるようです。これも決着はついていませんので、次回、皆さんと再検証したいと考えています。

 

というように、こんなことを繰り返しながら、一字一字丁寧に解読しています。字を読むだけでなく、やはり史料を解釈しながら進めなければならないことを実感しました。予習も大事です。参加者の市民の皆さんは、とても熱心に調べて臨まれているので、私たちにとっても本当に刺激的な勉強会になっています。

古文書勉強会、次回は2月12日(日)14時~を予定しています。

文化財防火デー防災訓練を行いました~赤沼 常楽寺~

1月22日(日)には赤沼の常楽寺で「文化財防火デー防災訓練」を開催しました。

74年前の昭和24年1月26日に奈良法隆寺の金堂が火災に遭い、当時世界最古の木造建造物と共に貴重な壁画が損傷したという痛ましい事故が起こりました。これを契機に例年1・2月が最も火災が発生しやすい時期でもあることから昭和30年に1月26日を『文化財防火デー』と定められたことから、春日部市でも文化財を対象とした防火訓練を毎年行っています。

 

 今年は市内でも中世、室町時代に作られた銅造仏では唯一となります「常楽寺の銅造阿弥陀如来坐像」を所蔵する常楽寺の本堂の本堂から火災が発生したという想定のもと、常楽寺の関係者や地域の皆さま、そして消防団の協力により様々な訓練に取り組んでいただきました。

 

バケツリレー

▲常楽寺の関係者や地域の皆さまによる模擬文化財の搬出、初期消火としてバケツリレーに取り組んでいただきました

▼消防団による放水も機敏に行っていただきました

 

 

 

 

 

 

 

 


▲訓練の第2部では消防本部予防課が中心となって通報訓練、消火器訓練、煙体験を行いました

参加いただいた皆さまからも「備えあれば患いなし」といった感想のほか、地域の貴重な文化財を地域の想いとして協力して守らねばといった感想もお聞きすることができました。

 時が流れても、伝承する文化財の価値は不変です。そして火災は一瞬のできごと、日常時からの備えによって貴重な文化財の保存を、皆さまからのご協力をくれぐれもお願いします。

 

 

 

 

郷土資料館体験ワークショップを開催しました

令和5年1月22日(日)の午前と午後各1回ずつ、郷土資料館体験ワークショップ「ペーパーローリングを作ろう」を開催しました。

 

蓄音機上演風景

まずは蓄音機の上演からです。

蓄音機は電気を使わないで音楽を聴くことができます。レコードを替え、静かに針を落とし、長くはない曲に耳を傾けるという“手間をかける”ことが、近年丁寧に音楽を楽しむ人たちに人気となっているそうですよ♪

 

紙芝居朗読風景

次は春日部に伝わる伝説の紙芝居を1つ。今日は「蛇女房」というお話です。

鶴の恩返しにも近いお話で、小さい子でも馴染みやすい内容だったかと思います。

 

ペーパーローリング見本

そしておもちゃ作りは「ペーパーローリング」です!

実はこのペーパーローリング、郷土資料館のおもちゃコーナーには置いていません。振ることで剣のように伸びるというおもちゃの性質上、資料館内で振り回すのは若干の危険が伴うため、設置には検討を要します。

なので、ペーパーローリングで遊べるのは今のところ体験ワークショップだけ、という珍しい一品です!

おもちゃ作り風景

シュルンッ!と戻ってくるのがクセになります。

みんなとても気に入ってくれた様子でした♪

 

缶バッジ写真

最後は恒例の缶バッジ作りをしました!

自分で作ってみるという体験が楽しいですよね♪

 

これにて今年度の体験ワークショップは終了です。

来年度も開催を予定しています。開催日が決まったら告知をいたしますので、郷土資料館ブログや広報誌等、ぜひチェックしてみてください!

ご参加いただきありがとうございました♪また起こしください!

 

2月25日(土)川口則弘先生「直木賞の歴史と作家三上於菟吉」を開催します

1月19日(木)、第168回直木賞・芥川賞が発表されました。直木賞は、小川哲氏『地図と拳』と千早茜氏『しろがねの葉』、芥川賞は佐藤厚志氏の『荒地の家族』と井戸川射子氏の『この世の喜びよ』に決定し、いずれも2作が受賞しました。おめでとうございます。

 直木賞(直木三十五賞)は、昭和9年(1934)に亡くなった作家、直木三十五(なおきさんじゅうご)を顕彰するため、昭和10年に設けられました。直木三十五は早稲田大学で、春日部出身の作家、三上於菟吉の1年後輩にあたります。二人は親交が深く、直木が亡くなった際には、追悼と顕彰に尽力し、昭和18年(1943)まで直木賞の選考委員をつとめました。

 

さて、春日部市郷土資料館では、直木賞研究家の川口則弘先生をお招きし、直木賞の歴史と初代選考委員であった作家、三上於菟吉に関する講演会を開催します。皆様のご参加をお待ちしております。

●郷土資料館歴史文化講演会 「直木賞の歴史と作家三上於菟吉」

日時:令和5年2月25日(土曜日)午後2時~4時
会場:春日部市教育センター(春日部市粕壁東3-2-15)
講師:川口 則弘(かわぐち のりひろ)先生(直木賞研究家)
募集人数:80人(申し込み順)
申し込み
郷土資料館に直接、電話(電話:048-763-2455)または、春日部市電子申請で申し込み

川口則弘先生「直木賞の歴史と作家三上於菟吉」電子申請入口

三上於菟吉