ほごログ
ミュージアムトークやりました その2
8月3日、「明治天皇と春日部」展を展示室で解説するミュージアムトークを開催しました。関東地方、春日部は記録的な猛暑となりましたが、酷暑の中でも解説を目当てにした皆さまにお集まりいただきました。
展示解説では、担当者が「まとめ」すごろくを用いながら、資料の見どころを解説しました。一通りの解説が終わると、いくつか、ご質問もいただき、説明が足りなかった部分を補足してお話しをしました。
参加された方からご質問をいただき、担当者も今更ながら気づかされましたが、「近代の皇室にとって、春日部は特別な地域だ」と誤解をされている方が多いようです。展示の主題は、巡幸・御猟場・梅田ごぼうの三本立てで、それぞれは独立しているといっても過言ではないのですが、ご観覧いただいた方は、「明治天皇が御昼食で休まれた、だから御猟場が設置され、そして災害時の恩賜や、地元からの献上がされるのだ」と三本柱に歴史的な連関があるようにご理解いただく方が多いようです。そのため、「春日部は近代の皇室にとって特別だ!」と認識されてしまうのかなと思いました。この点は展示の見せ方に問題があると反省する次第です。
今回の展示では「春日部が特別だ」ということを強調しているつもりはなく、むしろ、埼玉県東部にも共通する巡幸、御猟場をめぐる歴史の一コマを紹介しているのですが、「宮内庁共催」のかんむりがつくと、どうしても特別感が醸し出されてしまうようです。
もちろん、宮内庁が所管する普段はなかなか展示できない、貴重な資料が並んでいるのは間違いないので、そのあたりはぜひじっくりと堪能いただきたいと思います。担当者としては、「皇室ゆかりの資料から、春日部の知られざる歴史の一コマが見えてくる」という点を、皆さまに受け止めていただきたいなと思います。
次回のミュージアムトークは、9月4日(日)、展示の最終日となります。展示についてご質問、ご疑問がある方は、担当者にぶつけにいらしてください。
そして、これから展示解説講座が毎週のように開講されます。定員にはまだ至っておりませんので、ご興味のある方は事前にお申込みください。
展示解説講座
場所:春日部市教育センター2F 視聴覚ホール
定員:50名(申込順)
講座①「江戸川筋御猟場と春日部」 令和4年8月6日(土)14時~16時
講師:篠﨑 佑太(宮内庁宮内公文書館)
講座②「梅田ごぼうの献上」 令和4年8月20日(土)14時~16時
講師:二ノ宮幹太(宮内庁宮内公文書館)
講座③「明治天皇と粕壁宿」 令和4年8月21日(日)10時~12時
講師:榎本 博(春日部市郷土資料館)
講座④「埼玉鴨場の設置について」 令和4年8月28日(日)14時~16時
講師:辻岡 健志(宮内庁宮内公文書館)
申込:各回7月 12 日(火)より春日部市郷土資料館の窓口・電話・春日部市電子申請にて受付
【受講者募集中】「明治天皇と春日部」展示解説講座
宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」展では、イベントも盛りだくさんです。 #かすかべプラスワン
今回は、宮内庁宮内公文書館と春日部市郷土資料館の展示担当者計4名が、それぞれの展示担当テーマについて座学で資料を解説します。計4回の講座を1日でやってしまったもいいのですが、ちょっと頑張って、4日にわけて開催します。聞く方も大変ですよね。
初回は、8月6日(土)14時から。宮内公文書館の篠﨑佑太さんが「江戸川筋御猟場と春日部」をテーマに解説します。江戸川筋御猟場は、最大で北は幸手から南は八潮・草加(もちろん春日部市域も含まれています)そして東京まで広がる広大の皇室の御猟場でした。江戸川筋御猟場については、これまで御猟場の住民に対する補償金(手当金)をめぐる問題(御猟場問題)をめぐる研究がありますが、実は基本的なあり方や歴史的な変遷などよくわかっていません。実は『春日部市史』には御猟場の記述がほとんどありません。
篠﨑さんのお話は、宮内公文書館の文書や春日部市域に伝わる関係史料をもとに、春日部における江戸川筋御猟場について解説されるものと聞いています。春日部の郷土史とって、重要な成果であることは間違いなし。もちろん、展示もその成果の一部ですので、展示もご覧ください。
まだ若干席が空いておりますので、ご興味のあるかたは、郷土資料館まで、ぜひお申込みください(電話048-763-2455)。お申込みは、春日部市の電子申請からも可能です。
展示解説講座
場所:春日部市教育センター2F 視聴覚ホール
定員:50名(申込順)
講座①「江戸川筋御猟場と春日部」 令和4年8月6日(土)14時~16時
講師:篠﨑 佑太(宮内庁宮内公文書館)
講座②「梅田ごぼうの献上」 令和4年8月20日(土)14時~16時
講師:二ノ宮幹太(宮内庁宮内公文書館)
講座③「明治天皇と粕壁宿」 令和4年8月21日(日)10時~12時
講師:榎本 博(春日部市郷土資料館)
講座④「埼玉鴨場の設置について」 令和4年8月28日(日)14時~16時
講師:辻岡 健志(宮内庁宮内公文書館)
申込:各回7月 12 日(火)より春日部市郷土資料館の窓口・電話・春日部市電子申請にて受付
博物館実習6日目
実習6日目の本日は午前中に資料整理と神明貝塚の見学、午後は実習を振り返ってのディスカッションを行いました。
資料整理では、お預かりした民具の虫干しとカビの除去をしました。全員で協力しながらコンテナから資料を出し、日光や風に当てながら文化財専用のウェットシートを使って丁寧にふき取りました。炎天下の中で大変な作業でしたが、カビや汚れが付着していた部分をかなり綺麗な状態にすることができました。地道で時間のかかる作業ですが、作業をしてみて貴重な資料をより良い状態で保存するためには欠かせないことなのだと知りました。大学で授業を聞いているだけではわからない学芸員の仕事を体験することができ、大変勉強になりました。
また、神明貝塚の見学にも行きました。神明貝塚は春日部市西親野井に所在し、国指定史跡になったことで有名な貝塚です。現地は畑が広がっており、一目で貝塚と認識するのは難しくなっています。しかし地面を見てみると、一面に貝が散らばっている様子が確認できます。この貝はヤマトシジミという貝で、神明貝塚でよく利用されていました。また、土器片もいくつか見られました。神明貝塚を訪れるのは初めてでしたが、思っていたよりも大規模な貝塚で驚きました。
実習はまだ続きますが、午後は実習の振り返っての感想や考えたことをディスカッションしました。実習前は利用者としての目線でしか博物館を見ることができませんでしたが、バックヤードや資料館の現状を見てきたことで、学芸員側の立場から資料館のあり方や改善点などを考えることができました。また、他の実習生の意見も聞くことで考えが深まったと思います。
令和4年度博物館実習生
コンテンツ作りなど
博物館実習も半分に差し掛かった本日では、基本的に資料紹介の解説作成に1日を費やしました。午後3時からは中高生向けのミュージアムトークを聞きに行きました。
本日は、実習生みんなでそれぞれの興味に合った収蔵資料を選び、それに関する情報を調べて発表するための解説を作成することに専念しました。参考書を見ながら資料の情報を得たり、その結果をパソコンに打ち込んでいたりとペースは違えど実習生のみんなはとても集中していて、こちらも頑張らないと思い刺激をもらいました。
実習生の一人が、解説を書くにあたり、資料に関して寄贈者のお話を聞きたいとのことで、呉服屋さんにインタビューに行くことになり、私もそれに同行しました。インタビューに応じてくれた方は、寄贈資料のことについてのお話の他に、ミシンと手編みの違いや今の呉服屋の現状、法被など衣類をつくる技法を当時はどのように習得したかなどのお話もしてくれました。
その中でも一番印象的だった話は、藍染めなどに使う染料を水質汚染の関係で川に流せなくなり、このことが原因で今まであった染物屋や呉服屋が店を閉めざるを得なくなったという話でした。私は今まで、水質汚染防止のための行動に悪いことはないと思っておりましたが、この話を聞いて良いことだけでないという視野が広がる感覚がありました。聞けてよかったです。
午後3時にはミュージアムトークという学芸員が来館者の方々に展示を解説するという企画を実習生全員で聞きに行きました。解説を聞いてくれた来館者は中学生2人だけでしたので、少し寂しく感じてしまいました。ですが、学芸員の榎本さんが質問を投げかけるなどの方法で中学生の気を引かせていたので自分もこのように解説できたらと感じました。
実習も残り少なくなってきたので明日からも気合を入れて頑張りたいです。
(令和四年度博物館実習生)
他館見学
本日は一日かけて岩槻の博物館、資料館の見学へ行きました。
まず、岩槻郷土資料館、岩槻藩遷喬館にて、旧岩槻市の歴史や民俗資料について学習しました。江戸時代、岩槻は城下町として発展しており、日光御成街道は多くの武士が行き来していたそうです。
特別に上げていただいた屋上からはかつての日光御成道を眺めることができ、日光御成道が通っている理由や現代の道幅の拡張についても理解を深めることができました。また、岩槻は台地が多いこと、周辺地域で出土することが珍しい弥生土器が発掘されたことを知りました。当時の環境と資料とのつながりを感じることができました。
岩槻藩遷喬館は、儒学者の児玉南柯が開校した塾で、主に藩士の子供たちが儒学を学ぶための施設です。児玉南柯の自画像と思われる掛け軸も飾られています。
また、ここは明治時代には一度住居として改装され、それを再び当時の姿へ復元したものです。手を加えられた箇所は当時の建築を再現するために解体されています。建築から暮らし、暮らしから社会性を紐解いていくのは面白いです。
次に岩槻人形博物館を見学しました。こちらでは、人形の誕生や歴史についてが解説されています。雛人形の五人囃子はそれぞれ楽器を演奏していますが、その楽器の形に合うように一体ずつ手の形を変えて作られているのです。人形職人さんの磨かれた技術が、人形に命を吹き込んでいるようでした。
そして午後は、東玉人形の博物館を見学しました。人形の誕生から、作り方、種類など、芸能としての人形の歴史深さを目の当たりにしました。「天児」と呼ばれる日本最古の雛人形が展示されていましたが、現在の雛人形とは姿形が全く違います。かなり簡略化された胴体と、こけしのような頭が印象的です。
また、節句のお供でもある人形ですが、元々は人が亡くなりやすい時期に節句という日を設け、死から人を守るという目的で誕生したそうです。今は芸能として親しみを持っている人形も、かつては儀式的なものだった、長い歴史を持つ高貴なものなのだなと、人形の奥深さを感じました。
本日の実習では、歴史はもちろん、訪れた博物館の資料展示方法という面でも多くを学ぶことができましたので、明日以降の資料コンテンツ作成に活かせると良いと思います。
実習も折り返し地点となりましたが、引き続き春日部市の歴史、風土を吸収していきたいです。
(令和四年度博物館実習生)