2025年7月の記事一覧
「麦わらのかすかべ」展が開幕!帽子の歴史を探る旅へ
本日、7月23日(水)から企画展「麦わらのかすかべ~帽都いま・むかし~」展がはじまりました。
無事に展示の設営を終え、一安心。ですが、これから、チラシなどの送付やら、SNSでの告知やら、関連イベントやら、滞っていたもろもろのことがまっています。
初日の今日はありがたいことに、朝から取材ラッシュ。近いうちにテレビや新聞で露出されることでしょう。
しかし、これも企画展示を多くの方に知っていただき、多くの方に足を運んでいただくため。まだ終わらんのです。
手前みそですが、今回の展示で工夫した点は、空間を活かすこと。展示室内にUFOのように帽子をつるしたり、古写真を掲示したり、帽子自体や写真類を手に取ってご覧いただけるようにしたところです。
また、最近、外国人の観光客が多く来館されているので、掲示物を一部英語表記しました。帽子や真田編みの体験など外国の方も手にとっていただき、某アニメキャラだけでない春日部の魅力を知っていただけると、うれしいです。(個人的には春日部の町の歴史が背景にあり、春日部が某アニメキャラの舞台になっていると思っています)。
「えっ!歴史の学芸員の方、英語がご堪能なのですね」と思った方。お察しがいいですね。
実は、今回の新しい試みとして、市役所に導入されたAIを活用し、英訳をお願いしました。たぶん通じると思われます。
それから、このブログの記事のタイトルもAIに考えてもらえました。「帽子の歴史を探る旅へ」だそうです!ほかには「歴史とファッションの融合」。これも捨てがたいなぁ、しかし展示を見ていないのに、よく思いつくなぁ(ホントかなぁ)と感心しました。
AIの肩をもつわけではないですが、「帽子の歴史を探る旅へ」「歴史とファッションの融合」の企画展示だと思います。ぜひ、ご覧ください。
「倉常の神楽囃子」「榎の囃子神楽」「西金野井の獅子舞」が公開されました
7月20日(日)、倉常、榎、西金野井の3地区で指定無形民俗文化財が公開されました。
倉常地区では、地区内の大字境の辻4カ所で辻切りをした後、倉常神社に戻ってから神楽囃子が奉納されました。
倉常の神楽囃子は神田囃子深川流の流れをくむお囃子です。太鼓や笛によって小気味良いお囃子が披露された後、「大黒の舞」、獅子舞が舞われました。
夏の日差しのもと、神社には多くの人が集まり、神楽囃子の奉納の後は、納涼会を楽しみました。
▼大黒の舞
▼獅子舞
榎地区では、榎の囃子神楽が公開されました。午前中は辻切りが行われ、集会所に戻ると神楽が奉納されました。
榎の囃子神楽は倉常と伝ってきた由来が同じため、大黒の舞や獅子舞など、共通している舞もあります。
太鼓と舞にはそれぞれ小学生と高校生が加わりました。榎地区では、保存会の皆さまが江戸川小中学校で神楽の指導をされています。児童・生徒さんたちを含め全員で、この日のために練習を重ね、本番では素晴らしい音色と舞を披露してくださいました。
▼テンタン(オカメの舞)
▼テンコサンバ
▼ひょっとこの舞
▼大黒の舞
▼獅子舞
西金野井香取神社とその周辺では、埼玉県指定無形民俗文化財の「西金野井の獅子舞」が公開されました。
保存会三匹獅子による「芝廻り」や、南桜井小学校の伝統芸能クラブの児童による子供獅子の「芝廻り」、保存会三匹獅子による「雨乞い」などの演目が披露されました。また、神社正面の大鳥居や、江戸川堤の改修の歴史を伝えるかつての参道に配された鳥居(裏参道鳥居)の2か所で「辻切り」により地域の家内安全が祈願されました。祭礼の最後には、拝殿の中で、悪疫を追い払っていただいた感謝と神送りの意味を持つ「注連切りの舞」が舞われました。
子供たちや保存会の皆さんによる素晴らしい舞に、集まった方々からも盛大な拍手が送られました。
▼芝廻りの舞
▼辻斬りの舞
▼雨乞いの舞
▼注連切りの舞
保存会の皆さまや地区の方々の努力、そして学校での体験などを通して興味を持った児童・生徒の皆さんの力によって伝統芸能が着実に継承されていきます。来年の夏の公開も楽しみです。
市内の伝統芸能は10、11月に秋祈祷の舞が公開されますので、近づきましたらお知らせいたします。
夏季展示「麦わらのかすかべ」関連イベント
7月23日より開催される、夏季展示「麦わらのかすかべ」。
展示だけでなく、麦わらに親しむ関連イベントも開催予定です。告知させてください。
- 記念講演会「関東の麦わら細工」
- 講 師 山田淳子先生(小山市立博物館)
- と き 令和7年8月31日(日)14時~16時
- ところ 春日部市教育センター
- 申込み 直接、または電話(048-763-2455)、電子申請で受け付け
- 展示解説講座「春日部の麦わら帽子と関連産業」
- と き 令和7年9月6日(土)10時~正午
- ところ 春日部市教育センター
- 講 師 展示担当学芸員
- 申込み 直接、または電話(048-763-2455)、電子申請で受け付け
- みゅーじあむとーく
- と き 令和7年7月27日(日)・8月20日(水)いずれも10時30分~、15時~
- ところ 郷土資料館企画展示室
- 申込み不要
記念講演会は、小山市立博物館で麦わら細工の製作体験などを実践されている、山田淳子先生に、関東地方における麦わら細工について、実際の経験や民俗学的な見地からお話しいただきます。
展示解説講座は、春日部市域における麦わら帽子産業(麦稈・経木・麻真田を含む)の歴史的な展開を、様々な史料から検討するものです。今回の展示のウラテーマは女性とグローバルヒストリー。そのあたりのことを少し意識しながら、史料をネチネチ読んでお話します。また、余興で真田編みも実践します(時間があれば笑)。
みゅーじあむとーくは、展示担当の学芸員が展示室で展示をレクチャーします。諸般の都合により、チラシでh8月20日(水)の開催のみと表示していましたが、追加で7月27日(日)も開催することになりました。申込みは不要、出入り自由ですので、時間が合えばお越しください。
「赤沼の獅子舞」、「銚子口の獅子舞」が公開されました
7月13日(日)、赤沼、銚子口の2地区で獅子舞(市指定無形民俗文化財)が公開されました。
赤沼、銚子口の両獅子舞は、越谷の下間久里から江戸時代に伝授された伝統ある獅子舞です。同じ獅子舞の系統ですが、長い年月をかけ、それぞれの地区独自の演目、曲の調べ、舞の所作などが形づくられ受け継がれ今日にいたっています。
赤沼地区では、赤沼の獅子舞が公開されました。今年の夏の祭礼では子ども獅子10名が参加しました 途中、獅子舞の体験コーナーを設け、見学者が自由に参加して、獅子舞の所作を体験し、最後に皆で通しで演じてみる催しが行われました。
祭礼のクライマックスには五穀豊穣を祈願する「弓くぐり」が舞われ、太夫獅子が見事に弓をくぐり抜け、会場の皆さんも今年も無事豊作になることを願いながら暑い夏の祭礼を過ごしました。
▼稲荷の舞(きつねの舞)
▼こども獅子
▼獅子舞体験
銚子口地区では、銚子口の獅子舞が公開されました。今年の夏は、午前中、5年ぶりに地区内6か所で辻切れが行われました。また辻切りでは、初めて女性舞手が太夫・中・女獅子の三匹獅子を担いました。午後からは、銚子口香取神社境内で、天狗を先頭に道中流しが行われ、天狗の舞、三匹獅子による弊がかりの舞などが行われました。三匹獅子のうち、中獅子と女獅子を女性の舞手が務めました。囃子方でも女性が太鼓を務め、近年保存会が力を入れている女性舞手の活躍を目にすることができました。演目の最後のに四方祓いの舞では、会場の四方を御幣で祓う舞がおこなわれ、夏の獅子舞奉納が無事に締めくくられました。
▼天狗の舞
▼弊がかりの舞
▼四方祓いの舞
経木真田がないなら、帽子を解体すればいいじゃない
7月23日から開催される、夏季展示「麦わらのかすかべ~帽都いま・むかし」展の準備も佳境です。目下、展示の設営にとりかかっているところです。
陳列をしていて、どうしてもほしい、物足りないものも出てきています。それは、取材・調査をしても入手困難だった資料=経木真田です。
春日部の麦わら帽子づくりは、元々は麦稈真田製造からはじまったことは、これまで知られてきたことではありますが、実は、その麦稈真田製造自体は、春日部においては息は短かったことが、今回の展示に伴う調査で明らかになりました。
国内の麦稈真田製造は、明治30年以降は関西地方がメインになり、反対に関東地方では、麦稈にかわる新たな素材として経木を真田に編む技術が開発され、経木真田が生まれ、この製造がメインになっていくのです。
春日部のいわゆる「麦わら帽子」は、中国産の麦稈真田を縫う麦わら帽子づくりと、地場で編んだ経木真田を縫う経木帽子づくりの二つの製品が主力となり、戦後には特に経木帽子がレジャー用で安価な帽子として流行し、多く製造されました。
このように、経木真田、経木真田帽子は、春日部の麦わら帽子産業を語る上で、重要な製品なのですが、現在、市内の製帽所では、ほとんど作られていません。若い職人さんは、「経木って何ですか??」というほど。
そもそも「経木」がない。どうやら、現在、木材を薄く挽いた「経木」自体を製造する方が国内にはほとんどいない模様。桐材の調査をした時にも、山や山林を管理する人や木材を扱う人材が減ってきている、と桐材屋さんが話されていました。国産材木産業ですら厳しいのですから、ましてや「経木」は・・・
というわけで、現代の春日部では経木帽子すら入手が困難であり、また経木真田を入手することも難しそうなので、学芸員が自腹で経木帽子を入手。経木真田帽子はこんな感じです。
白色の木材(ドロヤナギやイモノキなど)を薄くした経木を編んだ経木真田を、ミシンで縫製し作られています。
経木帽子のツバをみるとこんな感じ。頭の天頂から渦をまきながら縫製され、麦わら帽子と同じ技術・構造をしています。ただ、経木真田は、麦稈真田に比べ、軽くて薄く、強度がありません。
どうしても経木真田を展示したい。
担当者のなかのマリー・アントワネットがつぶやきました。
「経木真田がないなら、帽子を解体すればいいじゃない」
経木帽子を縫製された四国地方の帽子職人さんには大変申し訳なく思いますが、経木真田を取り出すために、心を鬼にして、帽子を解体することにしました。
経木帽子は、経木の質感の特性からか、必ずといっていいほど、ツバの縁には「テープ」とよばれるカバー(リボン)がミシンで縫い付けられています。
ミシンの糸をはさみで切り、「テープ」をはずしました。「テープ」をはずした部分はこんな感じです。
そして、帽子の縫い終わりの部分の糸を切り、ペリペリと真田を外していきます。
縁の「テープ」も真田も、麦わら帽子と同じミシンの環縫いミシンで縫製されています。
環縫いミシンは下糸がないミシンで、1本の糸を環縫い=チェーンステッチで縫製していきます。下の写真は環縫いの糸目です。縫い目の裏側に輪っかが出来ているのがわかるでしょうか。この輪っかに糸をくぐらせ、鎖のように縫っていくのが環縫いという縫い方、なのだそうです。
環縫いにするメリットは、伸縮性に優れていること。帽子がギチギチだとかぶりづらいですので、麦わら帽子などの紐状(真田)をつかう帽子で使用されるそうです。
さて、ペリペリを解体した紐が、念願の経木真田です。
さらに、経木真田を経木紐に解体。
下の写真では判りづらいですが、この経木真田は、三本の経木紐を編んでいるので、「三平」(さんぴら)という経木真田であることがわかりました。
解体した経木帽子も、解体前の経木帽子も、展示する予定です。
今回の解体でよくわかったのは、経木帽子も麦わら帽子と同じ技術・製造方法がとられているということです。素材が替わっても帽子縫製の技術はかわらない。今は忘れられつつある経木真田ですが、現在までつづく春日部の麦わら帽子産業の歴史においては、とても重要な素材であり、帽子だと思います。
ぜひ、麦わら帽子との違い、そして共通点をかぶって体感ください。