2020年6月の記事一覧
【常設展】常設展示に米島貝塚出土黒浜式土器を2個体展示しています
常設展示で、これまで1個体を展示していた米島貝塚(こめじまかいづか)出土の黒浜(くろはま)式土器を2個体に増やしました。昨年の春の展示「指定文化財でめぐる春日部」で企画展示室に展示したもう1点の指定文化財の土器です。
米島貝塚出土黒浜式土器は、昭和36年(1961)に、住宅地造成に先立って行われた発掘調査で発見されたもので、平成20年に、優品2点が春日部市有形文化財に指定されました。
「黒浜式」は、蓮田市の黒浜貝塚群の出土土器をもとに設定された縄文時代前期の土器型式で、比較的粗い縄文が施されることが特徴です。また粘土に植物繊維を混入している痕跡が見られることから「繊維土器(せんいどき)」とも呼ばれます。「繊維土器」の手法は、黒浜式以前から確認されますが、黒浜式の次の「諸磯(もろいそ)a式」には見られなくなります。
米島貝塚では、黒浜式の中でも古段階の土器が出土する10号住居跡と黒浜式の繊維土器でありながら「諸磯a式」に近い文様をもつ土器が出土する2号住居跡が発見され、黒浜式土器の変遷を検討するきっかけになりました。
常設展示で、向かって左側に展示しているものが10号住居跡出土のもの、右側が2号住居跡出土のものです。10号住居跡出土土器は、米島貝塚の報告書では「g類」とされ、「器面全体が縄文(じょうもん)のみで覆われ」ています。一方、2号住居跡出土土器は「f類」とされ、「口縁部(こうえんぶ)に半截竹管具(はんさいちっかんぐ・半割りの竹)を用いて(中略)極めて幅の狭い文様帯(もんようたい)をもつもの」で、展示の土器にも、竹管具によるコンパス文と呼ばれる文様が描かれています。
現在の黒浜式土器の研究では、およそ古、中、新の3段階の変遷をたどるとされており、10号住居跡は古段階、2号住居跡出土土器は中段階に属すと考えられています。
しろのTシャツの少年、#クレヨンしんちゃん の記念スタンプをおす
6月5日夕方、「しろのTシャツを着た小学生が来ています」と、受付から連絡がありました。「しろのTシャツ」とは、白いTシャツではなく、クレヨンしんちゃんの愛犬「シロ」の図柄のTシャツのこと。色は青でしたから、シロの青いTシャツです。
先だっての再開後、 #春日部市郷土資料館 では、クレヨンしんちゃんの常設展示コーナーを開設していましたから、「これは再開後の一大ニュースだ!」ということで、しんちゃんの常設展示コーナーで記念に写真を撮らせてもらいました。話を聞くと、男の子は、市内在住のしんちゃんが大好きな小学3年生。好きなキャラクターは、しんちゃん、だそうです。
特製のスタンプも、何度もおしてくれました。当館では、スタンプは2種類用意していますが、しんちゃんとシロの絵柄のスタンプがお気に入りとのことで、とても喜んでくれました。
しんちゃんは、漫画やアニメだけでなく、春日部の郷土資料館でも子どもたちを笑顔にしてくれています。
ポツンと子どもの人形 新型コロナウイルスの終息と疫病除けを願って
郷土資料館展示室の片隅に、ポツンとおかれた子供の人形。
座敷童子(ざしきわらし)ではありません。
皆さま、当館に来館されたら、どこにいるか、探してみてください。
この子が羽織(はお)っているのは、80年くらい前に、市内の小学校に通っていた児童が、実際に着ていたものです。マスクをしているのは、もちろん今の新型コロナウイルスに感染しないよう、皆さまに注意を促すためです。
さて、この子は、何やら呪文のようなものが書かれた紙を、手に持っています。
よく見ると、この紙には「疱瘡神五人誤り證文事」と、タイトルが書いてあります。「ほうそうしん(がみ)ごにんあやまりしょうもんのこと」と読みます。
疱瘡(ほうそう)とは天然痘(てんねんとう)のこと。すでに40年前、地球上から根絶されたウイルスですが、強い感染力を持ち、致死率が高く、かつては恐ろしい流行病でした。科学的な知識が普及する前は、病は疫病神(やくびょうがみ)によってもたらされると人々に考えられていました。
江戸時代には、疱瘡神は、症状ごとに5柱に分かれており、この紙が貼ってある家には入りません、疱瘡神は取りつきませんと、疱瘡神たちが約束したものです。「疱瘡神の詫び証文(ほうそうしん(がみ)のわびしょうもん)」として、歴史学や民俗学の専門家の間では、よく知られている古文書です。
疱瘡神に対してこのような誓約書を書かせたとすることで、疱瘡を予防しよう、発病しても軽症にとどめてもらおうと、江戸時代の人々は考えたのです。この誓約書は、市内に伝わったもので、実際に使われたものなのでしょう。このような疱瘡神の詫び証文は各地に伝わっており、特に、子供のいる部屋の中に貼り付け、使われていた例が、これまでにわかっています。
新型コロナウイルスは、天然痘ではありませんが、同じ疫病であることから、疫病退散の意味を込めて、この子に持ってもらいました。
なお余談ですが、この誓約書の本文の最後に、「依而如件」と書かれています。「よってくだんのごとし」と読み、以上のとおりです、という意味の決まり文句ですが、この「件」という文字に由来する、半人半牛の姿の「件(くだん)」という妖怪がいました。「件」は疫病の流行や豊作などの人々にとっての吉凶を予言し、「件」の絵は疫除けとなると考えられていたそうです。
*疱瘡神の詫び証文については、時枝務氏の研究成果「呪符・守札と偽文書」(『偽文書学入門』2004年 柏書房)などに、妖怪「件」については、関口博巨氏「近世人の表現をめぐる試論―妖怪・昔話・芝居・偽文書など―」(『偽文書・由緒書の世界』2013年 岩田書院)によりました。
#アフターコロナ 郷土資料館再開 #クレヨンしんちゃん 登場など展示替
本日、令和2年6月2日(火)より #春日部市郷土資料館 が再開しました。十分な感染症対策を行った上での開館となり、ご利用の皆様に諸々のお願いをしております。今日は、再開後の資料館の様子をお伝えします。
館内に入ると、まず受付にビニールカーテンがつるされています。少し前でしたら異様でしたが、巷ではもうおなじみのビニールカーテン。飛沫感染を予防するためです。
入館される方には、皆様の安全を確保するため、お名前とご連絡先の記名やマスクの着用をお願いしています。
当館ではおなじみの、昔のおもちゃなどで遊べる体験展示コーナーですが、こちらも感染症予防のため大幅に展示物を撤去し、体験をご遠慮いただいております。
縮小につぐ縮小でご不便をおかけしておりますが、再開後の良いニュースもあります。
本来ならば、4月7日にお披露目する予定だった展示替「クレヨンしんちゃんと春日部」の展示が、ようやくお披露目することができました。ほんとに小さなスペースですが、春日部市で制作したクレヨンしんちゃんの関係資料や、春日部ゆかりののある作品などを展示しています。なかでもイチオシなのが、「郷土資料館オリジナルのしんちゃんスタンプ」です。世界で唯一のスタンプを、ぜひご利用ください。スタンプはこまめに消毒しておりますので、ご安心を。
また、地味ですが、①常設展示「江戸時代の村々」コーナーの古文書、②「水とのたたかい」コーナーの明治43年(1910)の水害記録「幸松村水害誌」を展示替えしました。①は、ちょうど300年前の水角村の古文書(年貢割付状)をくずし字が読めなくてもわかるように展示しました。②は、水害後の幸松村の産業についての報告記事を紹介しています。あわせてご覧ください。
今後、コロナウイルスの感染の収束状況により、展示替や各種イベントを再企画していく予定です。
庄和総合支所で展示替えを行いました
庄和総合支所1階ロビーで開催している「春日部市発掘調査速報展示」の展示替えを行いました。
今回の展示は、平成29年度の権現山(ごんげんやま)遺跡3次地点、令和元年度の鷲前(わしまえ)遺跡1次地点の発掘調査成果のお披露目となります。どちらも庄和地区の東中野(ひがしなかの)に所在する遺跡で、昨年度、整理作業が終了し全ての発掘調査を終えました。
権現山遺跡の調査では古墳時代が始まる頃の住居跡がみつかり、そこで発掘された土師器(はじき)という土器を展示しています。土師器は弥生土器と同じように素焼きで作られた土器で、古墳時代からみられるようになります。その一つには穴が開けられた土器もあり、展示ケース越しに確認してみてください。
鷲前遺跡の調査では約6000年前の縄文時代の住居跡がみつかり、そこで発掘された縄文土器と貝がらを展示しています。特に注目してほしいのはハマグリやアサリ、マテガイといった、海に生息するたくさんの種類の貝がらです。
この貝塚を伴う住居跡からは、現在は海なし県の埼玉県ですが、縄文時代は気温が高く、海水面が上昇していたことから、春日部市内にも海が広がっていたことがわかります。つまり、鷲前遺跡でみつかった貝がらは、遺跡の周辺で採れたものです。不思議な感覚ですが、「春日部産」のハマグリやアサリと言っても過言ではないでしょう。また展示した3個体の土器には細かな縄目(なわめ)がつけられ、まさに縄の芸術をみることができます。
新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言は解除されましたが、「密」にならず、お譲り合ってご覧いただければと思います。