2025年7月の記事一覧
7月の考古学関係展示会、イベント情報
7月の近隣博物館・資料館の考古学情報をお届けします。
(毎月28日ごろに掲載します。随時、情報を更新します。)
(東部地区文化財担当者会リレー展示ー都鳥が見た古代)
・7月29日(火曜日)~8月24日(日曜日)蓮田市文化財展示館(資料展示)
(展示会_閉会日順)
・8月5日(火曜日)まで 坂戸市文化会館ふれあ(坂戸市)
第28回坂戸市埋蔵文化財出土品展「長岡遺跡の物語-足元に眠る1万年史-」
・8月17日(日曜日)まで そごう大宮店(さいたま市大宮区) 主催:埼玉県埋蔵文化財調査事業団
令和7年度ほるたま展 「古代のものづくり」
・8月11日(月曜日・祝日)まで 飛鳥山博物館(東京都北区)
スポット展「ようこそ!アクセサリー専門”展”KODAIへ」
・8月30日(土曜日)まで 帝京大学総合博物館(東京都八王子市)
企画展「ホネホネワンダーランド-骨の不思議を探る-」
・8月31日(日曜日)まで かみつけの里博物館(群馬県高崎市)
企画展「わくわく!はにわ体験‘25」
・8月31日(日曜日)まで 埼玉県立さきたま史跡の博物館(行田市)
令和7年度埼玉の考古おひろめ展「地中からのメッセージ」
・8月31日(日曜日)まで 桶川市歴史民俗資料館(桶川市)
令和7年度里帰り展 「地中に眠る桶川の歴史」
・8月31日(日曜日)まで 栃木県埋蔵文化財センター(栃木県下野市)
巡回展「栃木の遺跡&発掘調査速報展」
・8月31日(日曜日)まで くにたち郷土文化館(東京都国立市)
ミニ展示「甲野勇と秋田のストーンサークル」
・9月10日(水曜日)まで 富士見市立水子貝塚資料館(富士見市)
「縄文を表現する ~新川昌子氏 作『私の縄文日記』~」
・9月15日(月曜日・祝日)まで 早稲田リサーチパーク・コミュニケーションセンター
企画展「本庄市の古墳3 西五十子古墳群」
・9月28日(日曜日)まで 壬生町立歴史民俗資料館(栃木県壬生町)
文化財企画展 「みぶほる!-壬生町の発掘調査速報展2025」
・10月13日(月曜日・祝日)まで 国立科学博物館(東京都台東区)
特別展「氷河期展 〜人類が見た4万年前の世界〜」
・11月3日(月曜日・祝日)まで 府中市郷土の森博物館(東京都府中市)
「古代国司と国司館~都から来た役人とそのすまい~」
・11月16日(日曜日)まで 柏市郷土資料室(千葉県柏市)
第30回歴史企画展「輝く!柏の縄文オールスター」
(講演会)
・8月3日(日曜日)埼玉県立さきたま史跡の博物館(行田市)
「埼玉県遺跡発掘調査報告会」
・9月6日(土曜日)明治大学駿河台キャンパス(東京都千代田区) 主催:明治大学資源利用史研究クラスター
公開シンポジウム『大山柏の史前学と縄文生業論の今日的展開』
・9月7日(日曜日)明治大学駿河台キャンパス(東京都千代田区) 主催:日本考古学協会
公開シンポジウム「人類はどこから来て、どこへ向かうのか」
(現地説明会)
8月21日(木曜日)午前11時、午後2時、午後3時30分 大道遺跡(越谷市)越谷市教育委員会
実習4日目を終えて
本日の実習は午前中に資料整理を、午後には資料の取り扱いとして軸物について主に学びました。
午前の部には大和屋酒店に関する資料を実習生各々が実物を見ながら調書をとって資料を整理しました。実際に調書を取る中で、「後から見た人にも内容が伝わる」記載が大事であることを学びました。
文書資料を見ながら調書を取る実習生。難解なものも?
午後には軸物、つまり掛軸や巻物の取り扱いについて学びました。個人的には巻物について実物に触れて取り扱うことが初めての経験だったため非常に緊張しました…。
掛軸を広げる実習生。資料を取り扱うときは緊張します…。
その後大きな絵図についても取り扱いました。大きな資料はさすがに一人では広げることも一苦労です。そのため実習生で協力して広げて何が載っているのか、いつの年代の物なのかを皆で考察しました。
実習生の協力体制!
本日も多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました!
(令和7年度博物館実習生)
実習3日目です!
博物館実習3日目、無事終了しました。
午前中は、教育センター内の一室で、考古学資料である土器を使用した梱包作業の実習作業と、「ふとん」と呼ばれる梱包作業に必須の道具の作成作業を行いました。
考古資料の梱包については、初めて行う作業だったのでうまくできるかの心配は少しありましたが、他の実習生の手順をしっかりと見学したうえで行ったため、すんなりと行うことができました。個人的には、資料をしまっていた箱をビニール紐で縛る作業より、考古学資料を包んでいるふとんを縛る作業の方が、資料を気にしながらの行動になるため、緊張しました。
「ふとん」の作成作業は、2人1組で行いました。実際に実習の事前指導や今まで大学の授業で学んでいた物を実際に見るだけでなく、作成する作業を通して何故、梱包の際に必要になってくるかを学びました。作業をしていくうちに、要領は掴むことができましたが、屈んで作業を行ったため、後半は体勢の維持が大変でした。また、途中でちょっとしたハプニングもありましたが、作業は終了することができました。
午後は、館外見学に行ってきました。郷土資料館で紹介している神明貝塚と、花積貝塚を見て来ました。神明貝塚は、令和2年に国指定の遺跡に登録され、今は公有地化を進めています。神明貝塚では地上にたくさんの貝殻があるのが、特徴的でした。
花積貝塚は、春日部市の指定遺跡です。貝殻は地中に埋まっているのか、地上にはほとんどありませんでした。貝塚は、個人的にこんもりとした山のような形を想像していましたが、そのようなものは一切なく、地面に散らばっている貝殻が、貝塚があったことを主張していて、とても興味深かったです。
(令和7年度博物館実習生)
「実習二日目を終えて」
実習二日目が無事終わりました。
今日は、午前にミュージアムトークに参加、午後は講演会のポスターの製作・発表に加えて資料のデータ入力をしました。
ミュージアムトークでは、学芸員の方に企画展示「麦わらのかすかべ」についての解説をして頂きました。麦わら帽子の歴史や製造方法、春日部とどのような関りがあったのかなど、様々なことについて知る事が出来ました。また、私自身春日部に麦わら帽子の生産が盛んだったというイメージが無かったので、過去には帽都の春日部と呼ばれていたことを知り驚きました。また、麦わら帽子の元となるひもを編んだり、材料の麦に触れてみたりと貴重な体験をすることが出来ました。
午後には、皆それぞれが製作したポスターの発表を行いました。皆、様々な工夫をポスターに凝らしていて、見ていてとても楽しかったし勉強にもなりました。ただ、写真の資料を使う際には写真の出典を書くようにする等、注意しないといけない点も学ぶ事が出来ました。発表が終わった後には、資料のデータ入力も行いましたが、画面と資料の二つに視点を行き来させているせいか、目がどんどん疲れてしまい中々ハードでした。
今日は作業を色々とした為、学芸員の仕事について少しずつ分かってきた1日になりました。
(令和7年度博物館実習生)
こども土器作り教室を開催しました
7月23日(水)に毎年恒例の土器作り教室を開催しました。
今年は諸事情により、初めての平日開催、そして小学生限定の「こども土器作り教室」となりました。
毎年、多くのお申し込みをいただき、今年もやむなく抽選となりましたが、20名のご参加をいただきました。
土器は縄文人と同じ「輪積み」という技術で作っていきます。土器の「底」となる円盤を作ったら、粘土をヒモ状にして円盤の上に積んでいき、これを繰り返して形を作ります。粘土のヒモをどんどん積んでいきますが、粘土のつなぎ目をしっかり消すことが上手に作るポイントです。
粘土が十分に積めたら、今度は思い思いの土器の形へ整形していきます。最後に縄を転がして、「縄文」をつけたり、竹串や貝殻で模様をつけたり、飾り付けをして土器の完成となります。
皆さん集中して取り組んでいただき、あっという間の3時間となりました。
今年も参加者皆さんの個性にあふれた、数々の土器ができあがりました。
土器はこれから1ヶ月かけて乾燥させ、色はやや白っぽく、大きさは一回り小さくなります。
これからどのような土器に焼き上がるのでしょうか?1ヶ月後を楽しみにお待ちください。
「麦わらのかすかべ」展が開幕!帽子の歴史を探る旅へ
本日、7月23日(水)から企画展「麦わらのかすかべ~帽都いま・むかし~」展がはじまりました。
無事に展示の設営を終え、一安心。ですが、これから、チラシなどの送付やら、SNSでの告知やら、関連イベントやら、滞っていたもろもろのことがまっています。
初日の今日はありがたいことに、朝から取材ラッシュ。近いうちにテレビや新聞で露出されることでしょう。
しかし、これも企画展示を多くの方に知っていただき、多くの方に足を運んでいただくため。まだ終わらんのです。
手前みそですが、今回の展示で工夫した点は、空間を活かすこと。展示室内にUFOのように帽子をつるしたり、古写真を掲示したり、帽子自体や写真類を手に取ってご覧いただけるようにしたところです。
また、最近、外国人の観光客が多く来館されているので、掲示物を一部英語表記しました。帽子や真田編みの体験など外国の方も手にとっていただき、某アニメキャラだけでない春日部の魅力を知っていただけると、うれしいです。(個人的には春日部の町の歴史が背景にあり、春日部が某アニメキャラの舞台になっていると思っています)。
「えっ!歴史の学芸員の方、英語がご堪能なのですね」と思った方。お察しがいいですね。
実は、今回の新しい試みとして、市役所に導入されたAIを活用し、英訳をお願いしました。たぶん通じると思われます。
それから、このブログの記事のタイトルもAIに考えてもらえました。「帽子の歴史を探る旅へ」だそうです!ほかには「歴史とファッションの融合」。これも捨てがたいなぁ、しかし展示を見ていないのに、よく思いつくなぁ(ホントかなぁ)と感心しました。
AIの肩をもつわけではないですが、「帽子の歴史を探る旅へ」「歴史とファッションの融合」の企画展示だと思います。ぜひ、ご覧ください。
「倉常の神楽囃子」「榎の囃子神楽」「西金野井の獅子舞」が公開されました
7月20日(日)、倉常、榎、西金野井の3地区で指定無形民俗文化財が公開されました。
倉常地区では、地区内の大字境の辻4カ所で辻切りをした後、倉常神社に戻ってから神楽囃子が奉納されました。
倉常の神楽囃子は神田囃子深川流の流れをくむお囃子です。太鼓や笛によって小気味良いお囃子が披露された後、「大黒の舞」、獅子舞が舞われました。
夏の日差しのもと、神社には多くの人が集まり、神楽囃子の奉納の後は、納涼会を楽しみました。
▼大黒の舞
▼獅子舞
榎地区では、榎の囃子神楽が公開されました。午前中は辻切りが行われ、集会所に戻ると神楽が奉納されました。
榎の囃子神楽は倉常と伝ってきた由来が同じため、大黒の舞や獅子舞など、共通している舞もあります。
太鼓と舞にはそれぞれ小学生と高校生が加わりました。榎地区では、保存会の皆さまが江戸川小中学校で神楽の指導をされています。児童・生徒さんたちを含め全員で、この日のために練習を重ね、本番では素晴らしい音色と舞を披露してくださいました。
▼テンタン(オカメの舞)
▼テンコサンバ
▼ひょっとこの舞
▼大黒の舞
▼獅子舞
西金野井香取神社とその周辺では、埼玉県指定無形民俗文化財の「西金野井の獅子舞」が公開されました。
保存会三匹獅子による「芝廻り」や、南桜井小学校の伝統芸能クラブの児童による子供獅子の「芝廻り」、保存会三匹獅子による「雨乞い」などの演目が披露されました。また、神社正面の大鳥居や、江戸川堤の改修の歴史を伝えるかつての参道に配された鳥居(裏参道鳥居)の2か所で「辻切り」により地域の家内安全が祈願されました。祭礼の最後には、拝殿の中で、悪疫を追い払っていただいた感謝と神送りの意味を持つ「注連切りの舞」が舞われました。
子供たちや保存会の皆さんによる素晴らしい舞に、集まった方々からも盛大な拍手が送られました。
▼芝廻りの舞
▼辻斬りの舞
▼雨乞いの舞
▼注連切りの舞
保存会の皆さまや地区の方々の努力、そして学校での体験などを通して興味を持った児童・生徒の皆さんの力によって伝統芸能が着実に継承されていきます。来年の夏の公開も楽しみです。
市内の伝統芸能は10、11月に秋祈祷の舞が公開されますので、近づきましたらお知らせいたします。
夏季展示「麦わらのかすかべ」関連イベント
7月23日より開催される、夏季展示「麦わらのかすかべ」。
展示だけでなく、麦わらに親しむ関連イベントも開催予定です。告知させてください。
- 記念講演会「関東の麦わら細工」
- 講 師 山田淳子先生(小山市立博物館)
- と き 令和7年8月31日(日)14時~16時
- ところ 春日部市教育センター
- 申込み 直接、または電話(048-763-2455)、電子申請で受け付け
- 展示解説講座「春日部の麦わら帽子と関連産業」
- と き 令和7年9月6日(土)10時~正午
- ところ 春日部市教育センター
- 講 師 展示担当学芸員
- 申込み 直接、または電話(048-763-2455)、電子申請で受け付け
- みゅーじあむとーく
- と き 令和7年7月27日(日)・8月20日(水)いずれも10時30分~、15時~
- ところ 郷土資料館企画展示室
- 申込み不要
記念講演会は、小山市立博物館で麦わら細工の製作体験などを実践されている、山田淳子先生に、関東地方における麦わら細工について、実際の経験や民俗学的な見地からお話しいただきます。
展示解説講座は、春日部市域における麦わら帽子産業(麦稈・経木・麻真田を含む)の歴史的な展開を、様々な史料から検討するものです。今回の展示のウラテーマは女性とグローバルヒストリー。そのあたりのことを少し意識しながら、史料をネチネチ読んでお話します。また、余興で真田編みも実践します(時間があれば笑)。
みゅーじあむとーくは、展示担当の学芸員が展示室で展示をレクチャーします。諸般の都合により、チラシでh8月20日(水)の開催のみと表示していましたが、追加で7月27日(日)も開催することになりました。申込みは不要、出入り自由ですので、時間が合えばお越しください。
「赤沼の獅子舞」、「銚子口の獅子舞」が公開されました
7月13日(日)、赤沼、銚子口の2地区で獅子舞(市指定無形民俗文化財)が公開されました。
赤沼、銚子口の両獅子舞は、越谷の下間久里から江戸時代に伝授された伝統ある獅子舞です。同じ獅子舞の系統ですが、長い年月をかけ、それぞれの地区独自の演目、曲の調べ、舞の所作などが形づくられ受け継がれ今日にいたっています。
赤沼地区では、赤沼の獅子舞が公開されました。今年の夏の祭礼では子ども獅子10名が参加しました 途中、獅子舞の体験コーナーを設け、見学者が自由に参加して、獅子舞の所作を体験し、最後に皆で通しで演じてみる催しが行われました。
祭礼のクライマックスには五穀豊穣を祈願する「弓くぐり」が舞われ、太夫獅子が見事に弓をくぐり抜け、会場の皆さんも今年も無事豊作になることを願いながら暑い夏の祭礼を過ごしました。
▼稲荷の舞(きつねの舞)
▼こども獅子
▼獅子舞体験
銚子口地区では、銚子口の獅子舞が公開されました。今年の夏は、午前中、5年ぶりに地区内6か所で辻切れが行われました。また辻切りでは、初めて女性舞手が太夫・中・女獅子の三匹獅子を担いました。午後からは、銚子口香取神社境内で、天狗を先頭に道中流しが行われ、天狗の舞、三匹獅子による弊がかりの舞などが行われました。三匹獅子のうち、中獅子と女獅子を女性の舞手が務めました。囃子方でも女性が太鼓を務め、近年保存会が力を入れている女性舞手の活躍を目にすることができました。演目の最後のに四方祓いの舞では、会場の四方を御幣で祓う舞がおこなわれ、夏の獅子舞奉納が無事に締めくくられました。
▼天狗の舞
▼弊がかりの舞
▼四方祓いの舞
経木真田がないなら、帽子を解体すればいいじゃない
7月23日から開催される、夏季展示「麦わらのかすかべ~帽都いま・むかし」展の準備も佳境です。目下、展示の設営にとりかかっているところです。
陳列をしていて、どうしてもほしい、物足りないものも出てきています。それは、取材・調査をしても入手困難だった資料=経木真田です。
春日部の麦わら帽子づくりは、元々は麦稈真田製造からはじまったことは、これまで知られてきたことではありますが、実は、その麦稈真田製造自体は、春日部においては息は短かったことが、今回の展示に伴う調査で明らかになりました。
国内の麦稈真田製造は、明治30年以降は関西地方がメインになり、反対に関東地方では、麦稈にかわる新たな素材として経木を真田に編む技術が開発され、経木真田が生まれ、この製造がメインになっていくのです。
春日部のいわゆる「麦わら帽子」は、中国産の麦稈真田を縫う麦わら帽子づくりと、地場で編んだ経木真田を縫う経木帽子づくりの二つの製品が主力となり、戦後には特に経木帽子がレジャー用で安価な帽子として流行し、多く製造されました。
このように、経木真田、経木真田帽子は、春日部の麦わら帽子産業を語る上で、重要な製品なのですが、現在、市内の製帽所では、ほとんど作られていません。若い職人さんは、「経木って何ですか??」というほど。
そもそも「経木」がない。どうやら、現在、木材を薄く挽いた「経木」自体を製造する方が国内にはほとんどいない模様。桐材の調査をした時にも、山や山林を管理する人や木材を扱う人材が減ってきている、と桐材屋さんが話されていました。国産材木産業ですら厳しいのですから、ましてや「経木」は・・・
というわけで、現代の春日部では経木帽子すら入手が困難であり、また経木真田を入手することも難しそうなので、学芸員が自腹で経木帽子を入手。経木真田帽子はこんな感じです。
白色の木材(ドロヤナギやイモノキなど)を薄くした経木を編んだ経木真田を、ミシンで縫製し作られています。
経木帽子のツバをみるとこんな感じ。頭の天頂から渦をまきながら縫製され、麦わら帽子と同じ技術・構造をしています。ただ、経木真田は、麦稈真田に比べ、軽くて薄く、強度がありません。
どうしても経木真田を展示したい。
担当者のなかのマリー・アントワネットがつぶやきました。
「経木真田がないなら、帽子を解体すればいいじゃない」
経木帽子を縫製された四国地方の帽子職人さんには大変申し訳なく思いますが、経木真田を取り出すために、心を鬼にして、帽子を解体することにしました。
経木帽子は、経木の質感の特性からか、必ずといっていいほど、ツバの縁には「テープ」とよばれるカバー(リボン)がミシンで縫い付けられています。
ミシンの糸をはさみで切り、「テープ」をはずしました。「テープ」をはずした部分はこんな感じです。
そして、帽子の縫い終わりの部分の糸を切り、ペリペリと真田を外していきます。
縁の「テープ」も真田も、麦わら帽子と同じミシンの環縫いミシンで縫製されています。
環縫いミシンは下糸がないミシンで、1本の糸を環縫い=チェーンステッチで縫製していきます。下の写真は環縫いの糸目です。縫い目の裏側に輪っかが出来ているのがわかるでしょうか。この輪っかに糸をくぐらせ、鎖のように縫っていくのが環縫いという縫い方、なのだそうです。
環縫いにするメリットは、伸縮性に優れていること。帽子がギチギチだとかぶりづらいですので、麦わら帽子などの紐状(真田)をつかう帽子で使用されるそうです。
さて、ペリペリを解体した紐が、念願の経木真田です。
さらに、経木真田を経木紐に解体。
下の写真では判りづらいですが、この経木真田は、三本の経木紐を編んでいるので、「三平」(さんぴら)という経木真田であることがわかりました。
解体した経木帽子も、解体前の経木帽子も、展示する予定です。
今回の解体でよくわかったのは、経木帽子も麦わら帽子と同じ技術・製造方法がとられているということです。素材が替わっても帽子縫製の技術はかわらない。今は忘れられつつある経木真田ですが、現在までつづく春日部の麦わら帽子産業の歴史においては、とても重要な素材であり、帽子だと思います。
ぜひ、麦わら帽子との違い、そして共通点をかぶって体感ください。