2025年9月の記事一覧
9/9 春日部高校「令和7年度SSH」探究総合授業に伺いました
9月9日(水曜日)、県立春日部高校の課外授業、”SS”(スーパーサイエンス)探究総合授業にお招きいただき、午後4時から1、2年生24名、先生3名と共に授業を実施してまいりました。本授業では春高生の探究心を養うことを目的に例年、様々な分野、領域をテーマに据え、既に15年目を迎えるとのこと。今回は、郷土資料館の学芸員から何かお話をいただけないかという、地学教諭の富樫先生から依頼を受け、多様なサイエンス領域の分析をとおして史跡神明貝塚の実態を紐解いている昨今の成果を踏まえ、「考古学と科学分析」と題した授業としました。
歴史の授業でも親しみのない『考古学』について、高校生がスムーズに理解が進むように「考古学とはなんぞや」、「歴史学(文献史学)とのちがい」から解説、サイエンスなどの実例として、神明貝塚の貝層の主体をなす「ヤマトシジミ」を資料とした『貝殻成長分析』、『住居跡の炉跡に堆積した灰層から得られた製塩づくり』、『縄文人骨のミトコンドリア分析(DNA分析)』や縄文人の食生活に迫る『炭素窒素安定同位体分析』、『縄文土器に付着したおこげ分析』などの分析方法や成果を紹介。そして本日の本題として、小学校の出張授業や市民の皆さまの講座でも好評いただいている「黒耀石」の切れ味体験を春高生にも体験してもらい、その後、「黒耀石の産地同定分析」の結果を踏まえ、春日部にもたらされた黒耀石のルートがあったのか、グループ毎に話し合いをしてもらいました。
▲初めて触れる「黒曜石」黒光りしたガラス質の石材にはみなさん興味津々
市内遺跡の最も初期にあたる3万年前、春日部市から至近距離、約80㎞北方にある栃木県矢板市の高原山産を専ら使用していましたが、旧石器時代の後半、1.8万年前頃になると200㎞以上も離れた信州の諏訪湖周辺や霧ヶ峰産へ主要産地が変化、さらに縄文時代になると東京都神津島産が旧庄和町に広がる下総台地の遺跡で出現、そして3800年前の神明貝塚では過半数が神津島産が占める結果となっている。遺跡が立地する台地面の東側、西側でも主要産地が変化、また、隣接する松伏町や蓮田市と同時期の遺跡でも異なる産地がみられたり、主要産地も異なるなど様々な様相にある。こうした分析の結果から、産地から消費地へのルート(回廊)の存否をディスカッション、発表いただきました。「確固たる回廊が存在していれば安定供給され、同一産地になるはず。時代によって異なるという結果からは回廊はないであろう」、「遠く離れた産地から物資をムラ間をとおしたバケツリレー的な方法が想定され、これは回廊があればこそ可能であろう」、当時の狩猟採集経済によるムラ社会を背景に据えた推論をいただき、探究心を深めていただけたのではと、充実した二時間を過ごさせていただきました。こうしたディスカッションをとおし、ひとりでも「考古学」、そして「学芸員」を目指す生徒の誕生につながると、郷土春日部の歴史・文化の継承にも一役を担う人財発掘にもなりましょう。春高生のみなさま、ご静聴と新鮮なディスカッション、ありがとうございました。
《春日部高校ホームページでも紹介されています》
https://kasukabe1899.spec.ed.jp/blogs/blog_entries/view/1739/b05c96b4cde621817ec6c97cb5685e10?frame_id=2748