ほごログ
歴史文化講演会「古利根川の変遷ー最終氷期最盛期から利根川東遷前まで」を開催しました
11月22日(土)歴史文化講演会「古利根川の変遷ー最終氷期最盛期から利根川変遷前まで」を開催しました。講師は、『春日部市史自然誌編』を監修・執筆された平社定夫先生、当日は71名の方にご参加いただきました。ご講演いただいた平社先生、ご参加のみなさま、誠にありがとうございました。
利根川は、約2万年前の最終氷期には、現在の荒川が流れる荒川低地を流下していました。この利根川が中川低地に流れ込んで来た時期は、研究者によって意見が異なりますが、早くて縄文時代後期、遅くても古墳時代には、移り変わっていたようです。
また国土地理院が提供している標高分布から、自然堤防の峰を図上で特定し、その内側にある古利根川や古隅田川の旧河道が、現在よりも広い流路をもっていたことがわかっています。
『春日部市史ー自然誌編』にも掲載されている平社先生のご研究では、中川低地に移り変わった利根川は、複数の河道を流れ、分岐と合流を繰り返しながら東京湾へ流下したとされています。これは「分岐河川(anastomosed river)」と呼ばれ、「分岐河川は、はんらん凹地("flood basin"の平社先生による仮訳)を囲む2本以上の相互に連結した流路によって構成される。」と定義されています(Makaske 2001)。
当日は、こういったことに基づき演者の到達点として、旧河道の流量推定や各時代の流路が先生から示されました。この内容は、まだ未発表の内容とのことですので、ここでは詳細は避けますが、非常に刺激的な内容であったと思います。
ご参加いただいた方からは、地図を手元に置きながら調べてみたい、専門用語について詳しく知りたい、という声もいただきました。
今回のご講演の元になる内容は、平社先生が監修・執筆された『春日部市史ー自然誌編』に掲載されています。図書館で借りられるほか、1冊3,000円で販売もしております。用語解説やスライドに使用された図なども多く掲載されていますので、ぜひお手にとってご確認ください。
アンケートではこのほか、平社先生の最新の研究成果をお話していただく講演会を継続してほしい、(質問があった)地球温暖化による海水面の上昇についての講座を開催してほしいなど、理系的な講座の開催のご希望もいただきました。昨年度、フィールドワークとして行った地学さんぽに参加されている方もいらっしゃったようです。
今後もご期待いただくとともに、本日のご講演をきっかけに、古利根川を再認識していただければ幸いです。平社先生、ありがとうございました。
引用文献:Makaske, B. (2001) Anastomosing rivers: a review of their classification, origin and sedimentary products. Earth-Science Reviews, 53: 149-196.
楽応寺で恵比寿講(えびすこう)が行われました
11月20日(木)、内牧地区の楽応寺で恵比寿講(えびすこう)が行われました。恵比寿講は、商家では商売繁盛を、農家では五穀豊穣を祝福して、七福神の一人である恵比寿をまつる行事です。
楽応寺では、毎年11月20日に行われています。
先日の石造物部会の巡見の際に恵比寿講のお話を聞き、今回うかがったところ、地域のみなさまがあたたかく迎えてくださり、昔のお話などを聞かせていただきました。
楽応寺では、地区の方が3班に分かれ、1年交替でお寺の役を担当し、恵比寿講の準備をします。
薬師如来の前にお供えの段をつくり、地域の方がおもちやお米、みかんなどを供えていました。薬師如来にはお味噌汁とまぜご飯がお供えされています。
恵比寿講が終わったら、2段のおもちの上の段は奉納した人にそのまま返し、下の段はお寺で預かり、切って奉納者のみなさんに配ります。
昔はお供えに来た人に対し、前年に供えられた米を炊き、揚げ物や煮物などの精進料理を用意して、もてなしていました。また、杉戸や岩槻からもお参りする人がおり、屋台なども並んで、とてもにぎわっていたようです。
戦時中の1円は今のいくらですか? よくあるレファレンス
現在開催中の「くらしのうつりかわり」展では、今年が戦後80年の節目であることから、戦時期の資料を展示紹介しています。さまざまな資料を紹介していますが、なかでも地味に反響があったのが、靖国神社の鳥居や桜、皇居の楠木正成像の図柄の紙幣や、粗悪なアルミの貨幣、軍事国債の債券など、戦時期のお金(紙幣・貨幣)です。
それほど珍しいものではありませんが、歴史上のお金を並べると、必ずいただくご質問に、「これって今のいくらですか?」という質問。
昔の1円はどれくらいの価値があるのだろうか、現代人の率直な感想として至極まともですが、実は、正確に答えるのはなかなか困難です。図書館のレファレンスデータベースや、貨幣博物館のサイトをみると、「財やサービスの種類によって、価格の上昇率がまちまちであるため、お金の価値を単純に比較することはなかなか困難」であり、企業物価指数(製造者などが材料を仕入れる時の値段)や消費者物価指数(一般の人が商品を買うときの値段)などを比較することで、だいたいの目安が試算できるに過ぎないようです。
ちなみに、企業物価指数で試算すると、昭和15年(1940)の1円は、現在(令和6年)の約551円と同じ価値になるということになります。ですから、10銭は約55円、1銭は5円ということでしょうか。
同様の質問として、「江戸時代の1両はいくらですか?」。これもよくある質問で、同様に答えを出すのは困難。やはり、基準を何に据えるかがポイントのようで、久しぶりに貨幣博物館のサイトをのぞいてみたら、値段の比較専用フォームができていました。
しかし、「難しい問題だ」と、いくらご説明をしても、レファレンスは絶えることはありません。先の図書館レファレンスデータベースでも「単純な答えがほしい」との質問されており、難しくても、なお率直に知りたいと思う方が後を絶たない、レファレンスの王道の質問といえるでしょうか。
戦後80年ですし、戦時下に対する関心が高まっているからこそ、こうしたレファレンスを真摯に受け止める必要があるのかもしれません。
というわけで、ずいぶん前置きが長くなりましたが、重い腰をあげ、戦時下の1円はだいたいいくらなのか、目安となる解説を展示に追加してみました。週刊朝日編『値段史年表』(1988年)を参考に、昭和15年(1940)に1円で何がどれほど買えるのかを、次のように表記してみました。
・かけそば 6杯(1杯15銭)
・天丼(並)2杯(1杯50銭)
・サイダー 5本(1本20銭)
・キャラメル 10箱(1箱10銭)
・後楽園球場 内野席1枚(1枚80銭)
展示の表示は上述程度ですが、どうでしょうか。先に試算した企業物価指数では、1円は約551円。果たして現在、500円で後楽園球場(後の東京ドーム)の内野席に入れるでしょうか。ほかにも昭和15年の価格をあげるならば、
・豆腐 6銭 *100匁
・納豆 10銭
・日本酒(特級酒) 2円70銭 (一級酒)2円40銭 (二級酒)1円90銭 *いずれも1升の値段
・バター 97銭
など。バターよりも後楽園球場内野席が安い。「財やサービスの種類によって、価格の上昇率がまちまちであるため、お金の価値を単純に比較することはなかなか困難」なのです。
『値段史年表』は、多くは東京など都市部の具体的な価格です。
では、春日部ではどうだったのでしょうか。粕壁の米問屋永嶋庄兵衛商店旧蔵の昭和15年7月「金銭出入帳」よりみてみましょう。この文書は同家の生活や町での付き合いなどの金銭の支出簿で、当時の暮らしや物価がわかります。費目と金額を抜き出してみると次の通り。
・按摩 40銭~1円
・煙草 4円42銭~6円50銭
・洋傘 4円42銭
・ネクタイ 2円90銭
・靴下 2円
・豆腐 12銭~18銭
・竹1本 1円
・海苔 4円20銭~5円
・練炭 1円80銭
・玉子2貫目 9円
・シッカロール 20銭
・マッチ 7銭~20銭
・砂糖 1円18銭
・筆 25銭
・前掛け 65銭
・味醂2升 6円
・歯ブラシ 25銭
・鰹節1箱 66円
・酒5合 1円10銭~20銭
比較できそうなのは豆腐や酒。残念ながら、モノ・サービスの量や質が不明なものが多く、比較がしづらいのですが、東京と春日部市域の物価の差はほとんどなさそうですね。
ただ、しつこいようですが、これは、あくまで目安に過ぎません。戦時下には価格統制・配給制などもあり、モノやサービスの価値は単純に比較できないことはいうまでもありません。展示中の貨幣・紙幣が、そうした混沌たる時代のなかにあったことも考えてもらえればと思います。
郷土資料館【手作りおもちゃクラブ】を開催しました
令和7年11月14日(金)県民の日、16(日) の午前と午後各1回ずつ、郷土資料館手作りおもちゃクラブを開催しました。
14日(金)の県民の日は「吹き上げパイプ」と「ぶんぶんゴマ」を、16日(日)は「ジャイロバズーカ」を作りました。
手作りおもちゃクラブでは、蓄音機の上演、紙芝居の読み聞かせ、おもちゃ作りの3つを行っています。
蓄音機は今から約100年ほど前に使われていたもの。歴史あるものを収集する資料館だからこその催しと言えるでしょう。
当館でも、問題なく動作する蓄音機はこの1台しかなく、普段は収蔵スペースに大切にしまってあります。
紙芝居は14日と16日で異なるものを読みました。
前列まで駆け寄って、食い入るように聞いてくれました♪
14日(金)は「吹き上げパイプ」と「ぶんぶんゴマ」を作りました。
どちらも簡単に作ることができ、どこかで見たことのあるような馴染みのあるおもちゃです。
しかし侮るなかれ、遊ぶには意外とコツのいるおもちゃなんです!
吹き上げパイプは、吹く息の強さ調節が必要で、こどもたちはまだ未経験に近い動作です。ぶんぶんゴマも、捻じった糸を引っぱることはできるものの、緩めるタイミングを掴むまでが難しかったりします。
それでもこどもたちは講座中にどんどんコツを掴んでいき、10分や20分でも成長する姿を見せてくれました!
16日(日)は今回初披露となる「ジャイロバズーカ」を作りました。
輪ゴムを引っぱって輪っかを飛ばすのですが、ただ真っ直ぐ引っ張っただけだと飛距離も伸びず、飛ぶ方向もばらばらです。
しかし、輪ゴムを捻じってから輪っかを飛ばすと、輪っかが回転してジャイロ効果により安定した飛び方になります!
こどもたちにもその飛び方の違いを、実際に体験してもらいました♪
飛び方が全然違います!
こどもたちも「すごい飛んだ!!」と大賑わい♪
そして最後はお馴染みの缶バッジ作りです!
バッジのイラストは、当日作ったおもちゃをモチーフにした郷土資料館オリジナルのもの!これを集めるのを楽しみにしている子もいるみたいです♪
今月もたくさんの方にご参加いただき、ありがとうございました!
次回の手作りおもちゃクラブは12月7日(日)に開催予定です。年内最後の実施となります。
詳しくは広報紙等に掲載いたしますので、ぜひご確認ください。
石造物部会の巡見(内牧地区)を行いました
11月13日(木)に春日部市市史石造物部会で内牧地区の巡見を行いました。
今回は、原新田浅間神社、内牧公園近くの足洗い場石碑、楽応寺、香林寺、内牧公民館、鷲香取神社、梅田神明社、梅田寺などを回りました。
いよいよ12月から本格的な調査が始まるため、作業の進め方や調査カードの作成方法などを確認しながら見ていきました。巡見にあたっては、所有者や地区の方がご協力くださり、どの場所も丁寧に見ることができました。
内牧地区に限らず、市内にはひっそりと路傍にたたずむ石造物も多く、調査対象は広範に及びそうです。事務局では調査で使う道具やカードの準備を進めています。調査が始まりましたら、またブログでお知らせします。
※もし個人的に市内の石造物をご覧になる場合は、所有者や周りの方へのご配慮をお願いいたします。