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【令和5年夏季展示予告その1】底にあながあけられた壺
令和5年7月22日(土)から9月3日(日)まで開催する第68回夏季展示では、権現山遺跡(古墳時代前期)や須釜遺跡(弥生時代中期)の底にあながあけられた壺を紹介する予定です。
詳細が決まりましたら、ほごログでもお知らせします。
今回は、展示予定の権現山遺跡から出土した、底にあながあけられた土器を紹介します。
権現山遺跡については、過去の記事もご参照ください。
権現山遺跡の底部穿孔壺形土器『新編図録春日部の歴史』からーその8
権現山遺跡は、春日部市の南東、東中野地区の下総台地上にあります。昭和38年の発掘調査で、「方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)」と呼ばれる古墳時代のお墓から、底にあながあけられた土器が13点出土しました。これらの土器は、昭和62年に埼玉県指定文化財に指定され、普段はさいたま市にある埼玉県立歴史と民俗の博物館(令和5年秋まで休館)で展示されています。
「底部穿孔(ていぶせんこう)土器」と呼ばれています。
「孔」は”あな”とも読み、一般的な「穴」の字とほぼ同じ意味です。また「穿孔」とは「孔を穿つ(うがつ)」、すなわち「穴をあける」ということです。
<底部穿孔土器(実測図番号1)>
<底部穿孔土器(実測図番号1)の底>
底部穿孔土器13点のうち、12点は壺形の土器です。ほぼ同じ大きさ、形も似かよった12点が発見されています。
これらは骨などを収めた蔵骨器ではなく、葬儀を行ったり死者を埋葬する方形周溝墓を飾りたてるために設置されたと考えられています。
底の部分は穴があけられ、何かを入れても底から抜けてしまいます。死者に供える土器として、通常の使用ができないようにされたものと推測されています。
<12点の壺形土器の実測図>
12点のうち11点の土器は、焼く前に底に穴があけられています。これを「焼成前穿孔(しょうせいぜん(まえ)せんこう)」と呼んでいます。
焼成前にあけられた穴は、まだ粘土のうちに、粘土を切り取るように穴をあけるので、縁が整えられています。
また、焼く前に底に穴をあけてしまうということは、お墓に使うためだけの土器をわざわざ作っているということです。古墳時代ごろには、こういった文化も芽生えたようです。
<底部穿孔土器(実測図番号12)>
< 底部穿孔土器(実測図番号12)の底>
12点のうち、1点だけ、土器が焼かれたあとに穴をあけている「焼成後穿孔(しょうせいごせんこう)」の壺があります。大きさは他のものとほぼ同じなものの、この壺のみ全体が赤く塗られています。
底の穴の部分をよく見てみると、外側から硬いものでたたくように穴をあけている痕跡があります。
<底部穿孔土器(実測図番号12)の底の穴>
なぜ、1点だけ焼成後の穿孔なのか?、土器を焼いてすぐに穴をあけたのか、それとも亡くなった方のそばで、生前使われていた土器に穴をあけたのか?、疑問は尽きません。
権現山遺跡の底部穿孔土器は、近隣では類例が少なく、とても珍しいものであるとともに、とても丁寧に作られたきれいな土器です。
令和5年7月22日(土)から開催する第68回夏季展示で、ぜひ実物をご覧ください。