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ヨデハタキって何? #民具 の世界

先日、市民の方から資料をご寄贈いただきました。寄贈資料のなかから民具を一つ紹介します。

この民具は何をする道具でしょうか。

画像:ヨデハタキ

道具の名前は「ヨデハタキ」です。柄の長さは83センチ。すべて木製です。

名前を聞いても、都市化された春日部で生活する我々はピンときませんね。

「ヨデハタキ」は、田んぼの「クロツケ」の時に使う道具です。

「クロ」とは、田んぼと田んぼの間の境にある畝(うね)のことで、「クロツケ」とは畝(畦あぜ)をつくる作業のことです。

ご寄贈いただいた庄和地区の方は「ヨデツケ」ともお話しされていました。春日部あたりでは、畝や畦のことを「ヨデ」とも呼んだようです。

「ヨデハタキ」は、先端の平らな部分で畦をたたいたり押したりして、平らにするための道具のようです。ご寄贈いただいた方(80代)の方によれば、子どものころ「ヨデツケ」を手伝わされたそうです。畦がわれたり、ヒビわれたりしないように、「ヨデハタキ」に水をつけて畦の土を滑らかにしていくそうです。畦を「羊羹みたいにする」とお話しされていました。「羊羹」は、みずみずしく水分が含まれていて滑らかな感じがします。土を「羊羹」のようにするという表現がとても印象的でした。

さて『庄和町史編さん資料13 民俗Ⅲ』によれば、「クロの土に厚いところと薄いところがあるといけない。クロの上部を平らにし、真っすぐにしないといけない。百姓は境(畦境)にうるさい」との聞き取りがあります。「クロツケ」「ヨデツケ」が用水や排水の関係や耕地の境界を整える重要な作業だったことがうかがえます。

しかし、現在はトラクターでできる作業なので、この道具も不要になってしまいました。一見すると、お風呂のかき混ぜ棒(これも見なくなりました)のようですが、春日部の農業の発展の一端を担ってきたものであることには間違いありません。

ただ、ご寄贈いただいた方にこの道具の名前を聞いたとき、はじめは「なんだっけ?」とお話しされていました。とっさに「ヨデハタキ」ですか?と聞いたら、「たしかそう」というご返答。以前、他の方から「ヨデハタキ」をいただき、思い出せたのですが、本当に「ヨデハタキ」と呼んでいたのか、実は不安です。

ご寄贈をいただくとき、その道具(民具)に付随する情報(名称・時代・使用経歴などの情報)をきちんと聞き取り、記録しておかなければ、無用の長物になってしまいます。道具を実際に使っていた方も、道具の名前だったり、いつ頃使っていたか、記憶があいまいになってしまいがちなのですが。。。

民具は時代や地域によって、名称・形状・使い方に差異が生まれます。事例を蓄積して、時代・地域の差異を検討していくことで、民具研究は進展していくといわれています。民具の世界は奥深いです。

これは、本当に「ヨデハタキ」でよいのか。またほかの地域では何と呼んでいるのか。「ヨデハタキ」に関してご存知の方、いらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。