2013年11月の記事一覧
ある生徒との話
ある生徒との話
校長 杉橋 朋子
日暮れが早くなり、5時前には、部活動が終了し、生徒たちは帰り支度だ。ちょうどそん
な時間帯だったと思うが、校舎の上の階でガラスの割れる音がした。私は、校長室で
お客様と話し合いをしている最中だったが、学年主任と教務主任が、火急のようだという
様子で校長室に走ってきた。ガラスの割れた状況とけがをした生徒がいたことの報告だ
った。来客は、校内で起こったことを察した様子で、あわてて帰っていった。
私は、すぐ保健室に出向いたが、職員室にいた職員がすでに階上に走り、ガラスの
後始末が行われていたし、担任が保健室に駆けつけていて、当人同士への聞きとりや
指導が行われていた。養護教諭の応急手当がすみ、病院への連絡もすんでいた。
幸いにも大事に至らずに済んだが、私が驚いたことは、夜7時近くになって、生徒が
一人で学校に来たことだ。私にお詫びを言いにきたことだ。
「親は仕事でまだ、帰宅していないが、友達や多くの人に迷惑をかけたこと、学校の
ガラスを破損したことに対して本当にすみませんでした」と、涙を流しながら、心底から自
分の行動を後悔している思いを話してきた。
近頃、このように自分の行為の足りなさを自分から悔いて、校長に報告に来る生徒は
いなくなった。 数分のやり取りだったが、”他人の非をあげつらうのではなく、自分の足
りなさを内省できる生徒”に出会った私のほうが、何か温かな気持ちになった。
”成長する”とはこのように自分を客観視して”内省できること”だと私はつくづく思った。