お知らせ

大関作新館賞について 

勝海舟によりその名が授けられたとされる「作新館」は、栃木県北部黒羽地区の江戸期城主大関氏の黒羽藩校です。その歴史は、文化10年(1813年)にまでさかのぼることができ、歴代の藩主の努力によって継続され、明治以降は私学大関作新館をへて現大田原市立黒羽小学校となっています。また元黒羽藩士の依頼・進言により「作新館」の名称と精神は宇都宮市の作新学院にも継承されることになりました。多くの藩校の中でも作新館は、例えば作新館文庫として、4,400冊におよぶ書物が残されているように、学術・教育の面で地域をリードしてきた特徴があり、近隣諸藩にも強い影響をもたらしてきました。さらに、現黒羽小学校の作新館学習室に残されている「格天井」は、近代教育の出発点の象徴ととらえることもできます。

この「作新館」を立脚点として、現在の県内における教育・文化の振興を前進させることは、特色ある地域の振興にもつながると思います。このような視点の一つの具現化として、栃木県内の学術・教育・文化の振興に顕著な貢献をなされた者を毎年顕彰する「大関作新館賞」を昨年、有志が集まり設立いたしました。

 この表彰制度は、以下の団体により、主催、共催、後援されています。

主催:大関作新館賞実行委員会

共催:黒羽文化協会、大田原市立黒羽小学校、作新学院

後援:栃木県、栃木県教育委員会、大田原市、大田原市教育委員会、下野新聞社、黒羽商工会

 

令和4年度(第4回)大関作新館賞授賞式開催

3月21日(火)に大田原市ピアートホールで令和4年度大関作新館賞授賞式(表彰状・徽章授与式)が行われました。表彰選考は、昨年12月末を締め切りとして募集、そして選考委員会が開催され令和4年度の授賞者が決まりました。

授賞者は以下の通りです。

歴史研究家 新井敦史氏   昭和42年3月19日生

授賞分野 黒羽藩主大関家の歴史研究  

 新井氏は昭和42年群馬県富岡市で誕生、1990年筑波大学第一学群人類をご卒業、そして1995年同大学院博士課程歴史・人類学研究科で単位取得後、同年より旧黒羽町芭蕉の館の学芸員となられた。以来、黒羽藩主大関家の歴史研究を進め、企画展開催、古文書講座を開催するなどの一般社会人を対象とする教育活動に熱意を注いできた。さらに、黒羽地域ゆかりの図録・編集のみならず数多くの論文等の執筆をされてきた。下野新聞に長期にわたり掲載された「下野おくのほそみち」や、その他多数の出版物を出されており、総計は250にものぼる。第4回随想舎歴文研出版奨励賞を受賞した「下野国黒羽藩主大関氏と資料保存」の出版(2007年)がその代表例であろう。このように、黒羽藩主大関家の歴史探求および「おくのほそ道」の教育普及活動へ尽力は、他に類を見ないほど特筆される新井氏の業績である。今後のご研究の発展も大いに期待されるものである。

授賞された新井 敦史様、誠におめでとうございます。 

 

第三回の表彰は、令和三年昨年12月末を締め切りとして募集、そして選考委員会が開催され令和三年度の授賞者が決まりました。3月20日に大田原市ピアートホールで授賞式(表彰状・徽章授与式)が行われました。第三回の授賞者は以下の通りです。


俳句研究家 中田 亮氏
授賞分野(授賞タイトル) 下野俳諧史研究及び俳句普及活動

栃木市岩舟町で昭和5年に誕生、昭和28年東京教育大学を卒業された。栃木県内の高等学校教諭を歴任し、平成3年より23年まで宇都宮文星短期大学の准教授・教授をお勤めになった。この間、俳文学会会員として栃木県内の俳諧活動の研究に顕著な業績を残されている。「下野俳諧史」、「現代俳句栃木県風土記」等の著書がある。また、俳人与謝蕪村の師である早野巴人(旧烏山町出身)の業績を掘り起こすという重要な研究活動もされ、「蕪村の師・早野巴人の全句を読む」や「蕪村の宇都宮歳旦帖を読む」の共著者となっている。一方、日本の俳壇に大きな影響を与えた俳人平畑静塔に師事し、「平畑静塔全句集」を刊行したほか、俳句作家として句集「小野寺」も出されている。さらに、下野新聞の「しもつけ文芸俳壇」の選者を長年に務めるなどして、俳句愛好家の指導・育成にも熱心に取り組んできた。

 

歴史研究家 大沼美雄氏
授賞分野(授賞タイトル) 日本史学、特に那須地域の郷土史研究 

栃木県旧黒羽町で誕生、旧黒羽町立黒羽小学校を卒業されている。國學院大學文学部を卒業、引き続き大東文化大学文学研究科修士課程、そして博士課程に進まれた。現在足利大学の常勤講師をお務めである。中国哲学・史学・文学領域、日本史・日本漢詩領域、そして栃木県や足利地域、那須地域の歴史と文化に関して精力的な研究活動をされ、総計80近い研究論文を発表されている。特筆すべきは、文部科学省の科研費助成を受けての研究で、「幕末・明治初期の下野国黒羽藩における蔵書目録」、「旗本那須家の幕末期蔵書目録」を作成していることである。後世まで残すべき研究業績とも言えよう。このような研究者・教育者としての活動以外に、歴史と文化の保存に関する社会活動に関する貢献も大である。国際的視野で中国と日本の文学・哲学的研究を遂行するだけでなく、地域に密着した領域研究をおこなうことにより、伝統や文化の継承と啓発に尽力されてきたと言えよう。

 

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 大関作新鑑賞実行委員会
屋代 隆

 

 

 

第二回の表彰選考は、昨年12月末を締め切りとして募集、そして選考委員会が開催され令和二年度の授賞者が決まりました。3月20日に大田原市ピアートホールで授賞式(表彰状・徽章授与式)が行われました。授賞者は以下の通りです。

 

考古学者 塙 静夫氏

授賞分野(授賞タイトル) 栃木の考古学研究

 

 栃木県芳賀郡のお生まれである。宇都宮大学在学中から、考古学・古代史研究を始められた。卒業後は作新学院に奉職、私学教育の振興に尽力する傍ら、考古学・古代史研究に奔走された。以来、栃木県内の埋蔵文化財発掘調査に従事し、栃木県の考古学研究の基盤を構築された。それまで未確立であった本県の考古学研究のあり方と方向づけを明示され、自らその研究遂行にあたったことは、氏の最大の功績である。この間、多くの書物の出版にも関わり、さらに、栃木県考古学会会長として長らく後進の指導にもあたられてきた。その他の多くの要職にもつかれ、県内における文化財の調査と保護ご尽力されている。これらのご功績により、平成12年に栃木県文化功労賞、平成17年に旭日双光章表彰を受けられたが、その他多くの表彰も受けられている。また、黒羽地内においても遺跡発掘等に指導的役割を果たされてきていることも忘れてはならない。

 

箏曲演奏家 和久文子氏

 授賞分野(授賞タイトル) 伝統芸能教育「一音の箏の生命力」 

 

 栃木県日光市でご誕生。10歳にて生田流箏曲に入門、以来箏曲演奏の修練に励み、さらに日本屈指の箏曲演奏家沢井忠夫・一惠両氏の内弟子となり箏曲演奏の心技の錬磨に精進。また、プロの演奏家を目指しNHK邦楽技能者育成会において切磋琢磨、同会卒業後の1979年、28歳にてプロとしての活動を開始、以後、国内外において演奏活動を行うと共に、交響楽団やジャズ・舞踊等々、ジャンルの異なるアーティストと共演し、箏曲の可能性の追求と日本の伝統音楽の普及振興に尽力された。同時に、卓越した識見と優れた指導力をもって、次代を担う若手邦楽家の育成をはじめ県内外の小中学校、高等学校、大学、更には生涯学習機関と連携して、演奏会、講座・教室等を開催し箏曲の指導を通して和楽器の魅力を体感させ、伝統音楽の普及啓発に力を尽くされた。これらの活動実績が認められ、2017年の栃木県文化功労賞をはじめ幾多の表彰を受賞している。

 

 

  第一回の表彰は、令和元年昨年12月末を締め切りとして募集、そして選考委員会が開催され令和元年度の授賞者が決まりました。そして、先日3月20日に大田原市ピアートホールで授賞式(表彰状・徽章授与式)が行われました。第一回の授賞者は以下の通りです。

 

黒田 杏子 氏

授賞分野(授賞タイトル)「俳句の創作活動を通した地域文化の向上」

黒田氏は昭和13年東京で誕生され、昭和19年に旧黒羽町に戦時疎開。その後、宇都宮女子高等学校、東京女子大へ進学。そしてその後積極的に俳句の創作活動を始められた。俳人、エッセイストとして全国的にその名が知られている。多数の句集を出版され、また雑誌への執筆も大変多い。さらに「黒羽芭蕉の里全国俳句大会」やその他の大会で選者を務められるなど、活動範囲は日本全国におよんでいる。またこれまで、国内で多くの賞を受賞されてきている。俳句活動を通した大田原市黒羽地区などの地域文化の向上に対する貢献は大であり、今年度大田原名誉市民にも推挙されている。

 

福田 智久山 氏

授賞分野(授賞タイトル)「邦楽器を通して知る日本の伝統文化」

福田氏は昭和57年、日光市のお生まれである。中学生時代から人間国宝の山本邦山氏に師事、宇都宮短期大学付属高等学校、そして東京芸術大学(音楽別科尺八専攻)に進まれた。卒業後、国内外で和楽器の演奏活動をされ、各種団体に所属、さらに栃木未来大使に指名されるなど、精力的な活動を継続されている。特に、県内外の学校で邦楽スクール活動をし、年間4,000人もの児童・生徒に音楽教育を行っている。2013年にはノーヴィー国際音楽コンクールで文化奨励賞を受賞されるなど、受賞歴も多い。音楽活動はもとより、それを通した日本伝統文化に関する教育活動が高く評価される。