ほごログ(文化財課ブログ)

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【近隣館の紹介】「小谷三志」展とベーゴマ【川口市立文化財センター分館郷土資料館】

先日、川口市の郷土資料館にお邪魔しました。目的は、春日部にもかかわる、富士信仰(不二道)の先覚者・小谷三志の企画展示を開催しているからです。チラシは以下の通り。

小谷三志展チラシ

週刊誌風のデザインで、洒落ています。なかなか、きわどい表現もあり、興味をそそられます。

展示は、小谷三志の生涯とその事績について、わかりやすく紹介するもので、三志や富士講ゆかりの資料が所せましと陳列され、圧巻されます。

春日部市内では、西宝珠花の宝珠花神社の扁額の題字を小谷三志が書いており、三志の主導する不二道が、市内にも広まっていたことがわかっています。三志の書跡は、「天地振り替りの筆法」と呼ばれる独特な書体で、宝珠花神社の扁額(市指定有形文化財)も独特な字体で書かれています(展示でも紹介されていました)。展示では三志の独特の書体の資料がたくさん並んでおり、お腹いっぱいになるまで楽しめます。

また、展示では三志没後の富士信仰や、近代の三志の顕彰についても紹介していました。個人的によかったと思うのは、郷土史家の故・岡田博さんについての展示です。岡田さんは鳩ケ谷の方で、三志に魅せられ、町工場を営む傍ら小谷三志や富士信仰の研究に取り組まれた方です。その分野では大変高名な方です。岡田さんの研究業績に依拠して構成された展示は一見の価値あり。必見です。展示は、3月21日まで。

 

ところで、同館では、昨年、川口市内にあったベーゴマ資料館から譲り受けた資料も展示しています。なんでも、川口市にはベーゴマを専門に製造する唯一の工場があり、譲り受けたものであるとか。

展示室の一区画は、ベーゴマのコーナーになっており、珍しいベーゴマのみならず、実際にベーゴマで遊べるようになっています。騒がしい私の子どもたちに、職員の方がベーゴマの回し方をレクチャーしてくださいました。子どもたちは初めてのベーゴマに大興奮。ベーゴマの回し方については、動画をユーチューブに公開しているそう。閉館間際まで遊んだ子どもたちは、また練習して来たいと話していました。自宅でベーゴマのユーチューブをずっと見ていました。

ベーゴマで遊ぶ少年たち

川口市の郷土資料館は、旧鳩ケ谷市の郷土資料館で市立文化財センターの分館扱いではありますが、小規模ながらも、展示を工夫され、所せましと川口の歴史文化をPRしています。とっつきにくい郷土の歴史の展示もポップに平易に見せ、糸車を回す体験、小豆を量る体験、足踏みミシンの体験など、誰でも楽しめる展示をしています。ぜひ、「小谷三志」展と合わせて、遊びにいかれてはいかがでしょうか。

詳しくは、同館ホームページをご覧下さい。

【近隣館の紹介】 #白岡市 生涯学習センター #歴史資料展示室

先日、他市町との打ち合わせのため、白岡市生涯学習センター歴史資料展示室にお邪魔しました。繰り返しいいますが、当館のような小さな館は、近隣の博物館さんと助け合い、支え合いながら日々運営しています。今回は近隣館の白岡市生涯学習センター歴史資料展示室さんを紹介してみたいと思います。

白岡市生涯学習センター歴史資料展示室は、生涯学習や地域コミュニティ・文化創造の拠点として、図書館機能、生涯学習機能、そして資料館機能を備える複合施設・白岡市生涯学習センター(愛称「こもれびの森」)内に平成30年10月に開館した施設です。

 写真:こもれびの森外観

歴史資料展示室では、地域文化財の調査・研究に基づく収集・保存・管理・活用を包括的に行い、さらに白岡市の歴史や伝統文化を発信、次代へ継承するため、旧石器時代から現代までの白岡のあゆみを常時展示しています。

 写真:展示室遠景

展示室は小さいながらも、各時代を象徴する重要な資料が展示されています。資料保存の観点から、複製品も多いのですが、複製と言われなければ気づかないほど精巧なレプリカが多く、見劣りはしません。むしろ、見栄えのする立体物が多いので見応えがあります。

近世史を専門とする紹介者が気になるのは、新井白石ゆかりの資料。新井白石といえば、江戸時代6代将軍家宣のもとで侍講として辣腕をふるった歴史上著名な学者です。

彼は、はじめ甲府藩主徳川綱豊(のちの6代将軍家宣)の侍講でしたが、綱豊が将軍綱吉の養子となるや、幕府の直臣に取り立てられ、宝永6年(1709)7月に武蔵国埼玉郡野牛村(現白岡市野牛地区)などを知行所として与えられました。その後、加増をうけ、新たな知行地を与えられる一方、当初の領地であった武蔵国比企郡の地を返上し、その代わりに相給支配(他の領主と分割支配)されていた野牛村の全てを領することになりました。著書「折りたく柴の記」には「ここにおいて、野牛一村の地ことごとく我領となりたり」と綴っていることから、白石の野牛村への強い思いがうかがえます。新井家は以後、野牛村を知行としたため、地域とゆかりが深く、白石の肖像画をはじめ、ゆかりの品が地元に伝わっています。また、新田開発のために掘削した堀を地元では「殿様堀」とか「白石(様)堀」と呼び、領地である野牛村の発展に力を注いだ白石の事蹟を伝えています。近代には白石公顕彰会が組織され、白石の命日にあたる5月19日には毎年、白石の肖像画を掲げ、報恩供養が営まれたそうです。

白石は、犬公方こと5代将軍綱吉時代の悪政を粛正した優れた政治家と評価されます。将軍の側用人間部詮房のもと、白石が政治のブレーンとなって提言した一連の政策は「正徳の治」と称され、白石の思想性に特色づけられています。武家諸法度を全文改定したり、朝鮮からの国書に将軍を「日本国王」と記すようにさせてたり、個人的には一癖ある人のイメージです。

少し春日部の話題に引き付けて言えば、正徳6年(1716)4月15日、日光海道・甲州海道を「海」がないから、日光道中・甲州道中と表記すべきというが法令が令達されました。理にはかなっているのですが、いちゃもんです。以後、公式には「日光道中」の表記が使用されますが、実際は地域に伝わる古文書では「日光海道」と表記する文書も散見されます。この「海道」表記に関する法令については、詳しい政策決定過程は明らかにされておりませんが、文書の表記などにこだわった、当時の政治のブレーン白石が関わっていた可能性が想像されます。知識や能力もあり、体系的で理にかなってはいるのですが、ちょっとうるさい感じ。でも、野牛の地を豊かにするために熱意をもって領民を統治したことが、後世に伝えられ、今も白岡ゆかりの偉人とされていますので、この考え改めなければなりませんかね。彼の著書「折りたく柴の記」を読み直してみようと思わせる展示です。

展示室には、「新井白石の肖像画」をモチーフにした来館記念スタンプが用意されています。ありがたい「白石様」をお持ち帰りいただけます。人物の肖像画があるってうらやましいです!

 画像:白石のスタンプ

毎月第3土曜日には、「ハンズオン・デー」として学芸員による解説をまじえながら、実際に資料に触れるイベントが開催されているそうです。展示室目当てでなくとも、図書館などの利用者も訪れ、大変にぎわうとか。

展示や普及事業のみならず、見習いたい点がもう一つあります。それは、研究紀要を年次刊行していること。学芸員や有識者の方が、白岡の資料に向き合って調査研究した成果が満載です。調査研究があって、はじめて展示・活用ができるお手本のような取り組みです。当館を含め、『紀要』を発行していない県内の地域博物館も見習わなければなりません。

そうした重厚な調査研究に裏打ちされた歴史資料展示室、ぜひ刮目ください。 

【近隣館の紹介】蓮田市文化財展示館

先日、他市町との打ち合わせのため、蓮田市文化財展示館にお邪魔しました。当館のような小さな館は、近隣の博物館さんと助け合い、支え合いながら日々運営しています。今回は近隣館の蓮田市文化財展示館さんを紹介してみたいと思います。

蓮田市文化財展示館は、平成22年4月に開館した施設です。蓮田市役所、また市役所周辺に広がる国指定史跡黒浜貝塚に隣接しています。

写真:蓮田市文化財展示館

市役所の敷地には、縄文時代の竪穴住居(復元)もあります。

 写真:竪穴住居

同館では、国史跡黒浜貝塚をはじめとして、蓮田市の様々な文化財を紹介しています。

見どころは、県指定有形文化財の黒浜式土器。学術的な詳しい説明はこちらに譲りますが、考古学素人の私がみてもきれいな形・模様の見事な土器です。展示館は、考古遺物を中心とした資料が展示されており、発掘された一つ一つの資料を丁寧に解説しながら、蓮田の歴史文化の歩みが紹介されています。

写真:黒浜式土器

さまざまな資料から楽しませていただけますが、最近導入されたのが、黒浜貝塚のガイダンスコーナーです。大型のタッチパネルモニターでは、黒浜貝塚の解説映像がみれたり、クイズや竪穴住居の建築ゲームが楽しめます。

写真:大型モニター

それから、VR技術をつかって黒浜貝塚を仮想見学できる機材も用意されていました。物珍しいため、同行した某市の職員が体験してました。要予約だそうです。

写真:VRをする職員

蓮田市さんは、ボランティア学芸員として市民参加を進めており、市民による企画展「縄文人と植物」の展示スペースもありました。文化財や所蔵資料の電子化も進んでおり、蓮田市文化財情報サイトでは、蓮田市の文化財や歴史に触れることができます。 

黒浜貝塚を散策しつつ、最新の技術で蓮田の歴史に触れてみてはいががでしょうか。

詳しくは、蓮田市文化財展示館ホームページ

【近隣館の紹介】幸手市郷土資料館

幸手市郷土資料館では企画展「彰義隊士横山光造の陣笠」展を開催しています。

当館のような小さな館は、近隣の博物館さんと助け合い、支え合いながら日々運営できています。その日ごろの感謝を込めて、少し新しい試みですが、今回は近隣館を紹介してみたいと思います。

幸手市郷土資料館さんは、平成30年10月に設置された比較的新しい施設です。

写真:幸手市郷土資料館

当館は、埼玉県博物館連絡協議会などで、日ごろからお世話になっており、先日打ち合わせと資料調査でお邪魔し、その折に企画展を拝見しました。

写真:展示風景

戊辰戦争で歴史の表舞台に登場する、幸手ゆかりの彰義隊隊士横山光造に焦点をあて、遺されたわずかな資料からその実像を紹介しています。

常設展示は、充実した『幸手市史』の成果により、体系的に幸手の通史が学べます。民具の展示を質量ともに圧巻されます。おすすめは常設展の「武蔵国絵図写」。「かすかべ」の記述もあり、いずれ借用・展示させていただきたいなぁと、目をつけています。まだ見学されたことのない方はぜひともお出かけください。

 

展示期間:令和3年5月25日(火曜日)から7月18日(日曜日)まで

開催場所:幸手市郷土資料館 歴史展示室内 企画展示エリア

詳しくは幸手市郷土資料館ホームページ