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歴史文化講演会「鎌倉殿と東国武士」を開催しました

鎌倉殿と東国武士 講演会

10月9日(日)午後2時から4時まで、國學院大學栃木短期大学教授である菱沼一憲(ひしぬま かずのり)先生をお迎えして、歴史文化講演会「鎌倉殿(かまくらどの)と東国武士」を開催しました。

鎌倉殿と東国武士 講演会

菱沼先生は、日本中世史がご専門で、平安末から鎌倉時代の社会について造詣が深い先生です。源頼朝や源義経についてのご著書もあり、この講演会前にも源義経についてテレビ番組の解説で出演されるなど、ご活躍されております。

募集開始から半日で定員が埋まってしまったほどの人気で、ドラマの影響もあり、鎌倉殿と東国武士について皆さまの関心の高さがうかがえました。

鎌倉殿と東国武士 講演会

当日は、春日部ゆかりの武士である春日部氏と下河辺氏について、どのようにして当地に根付いたのか、鎌倉幕府の御家人の中での位置や立場はどうだったのか、荘園(下河辺荘)や武士の成り立ちを踏まえて解説していただきました。専門的な内容を含みながら、かみ砕いた説明をしていただいたので、内容の濃い聴きごたえのある講演会となりました。特に、春日部氏が当地を拠点とした理由について、同族の大井氏・品川氏・潮田氏・堤氏・伊坂氏などとのつながり、旧利根川(現古利根川・古隅田川)や内海(現東京湾)の水運(水上交通)との関連の可能性を指摘されていた点が、新鮮でした。

今後も、市民の皆さまの興味・関心が高いテーマ、本市や埼玉東部地域の歴史・文化で重要なテーマについて講演会を企画・開催し、皆さまと一緒に学びと研究を深めてまいりたいと考えております。 

 

【昔の #川辺小 】資料を追加でご寄贈いただきました

現在、常設展示では新宿新田にかつてあった江戸川の河岸場に関する資料を展示しています。「ほごログ」で紹介したところ、水運・舟運について調べてらっしゃる方に早速ご覧いただいたりして、一部には大変好評です。

新宿新田の河岸場は、これまで資料がなく全くといっていいほど知られていませんでしたので、諸書で言及されることがほとんどありませんでした。小さなコーナーで、手前味噌ですが、割と画期的な内容の展示だと思います。

資料展示したことを、旧蔵者の方にお知らせしたところ、先日ご来館いただきました。資料展示をしたことを大変喜んでいただき、また、当館には初めてお越しになったそうで、春日部にいろいろな歴史があったことに驚かれていました。旧蔵者の方によると、新宿新田には伊和右衛門河岸のほかに、上流にもう一つ河岸場があったとか(今の野田線の鉄橋の下流のあたりらしいです)。資料上では確認できませんが、新事実をぽろっとお話しになりました。近代の舟運は奥が深い。今後の課題です。

旧蔵者のご来館の折り、まだ家に古い書類があったと、いくつかの資料をご持参・ご寄贈いただきました。戦前の絵葉書など印刷物のなかに、大正6年(1917)の川辺尋常小学校の卒業記念(アルバム)がありました。

アルバムといっても写真数枚が掲載される簡素な冊子ですが、当時の学校の様子がわかり、非常に貴重です。ここで追加寄贈されたアルバムのうち数枚の写真をご紹介したいと思います。川辺小学校の関係者は必見!?

写真:川辺小学校校舎

現在の川辺小学校の敷地に校舎が新築移転されたのは、明治35年(1902)5月のこと。写真はこのとき建てられた木造校舎と考えられます。校舎は水害を避けるために、高台に建てられていたそうです。現在のプールがあるあたりでしょうか(地元の方にそのように聞いた記憶もありますが、知っている方がいたら教えてください)

写真:川辺小学校講堂

「講堂」です。教室ではないのかもしれません。卒業記念アルバムなので、ここで卒業式を執り行ったのでしょうか。

写真:川辺小の整列

手前は学校の先生、奥には和装の児童が整列しています。写真のキャプションは「整列」。

おそらく寄贈されたお宅の家の方に卒業生がいらっしゃったので、家に伝わったものと推測されますが、この時の卒業生はいないはずだとのこと。由来はともかく、貴重な写真です。

ご自宅に古い書類がある方はぜひご一報ください!

【体験ワークショップ】パタパタ(板返し)をつくろう!

10月23日(日)に体験ワークショップを開催します。

体験ワークショップでは蓄音機の上演や昔のおもちゃ作りをします。

今回作る昔のおもちゃは「パタパタ(板返し)」です。

パタパタ(板返し)

 

郷土資料館内にある昔のおもちゃコーナーでも人気の一品です!

子どもの心をがっちり掴むからくりおもちゃ!

持ち手の棒を捻ると、、、

パタパタ1

パタパタ2

パタパタ3

あら不思議!すべての板が裏返しになりました!

普段から希望者にはおもちゃの作り方の説明書をお渡ししているのですが、パタパタのからくりは少し複雑なので、この機会にぜひ一緒に作ってみましょう!

 

申し込み不要、おもちゃの材料も用意してます!

当日の午前10時30分と午後2時からの計2回開催しますので、お時間までに郷土資料館にお越しください!

 

【体験ワークショップ】

日時:令和4年10月23日(日)午前10時30分~・午後2時~

場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)

内容:蓄音機の上演

   紙芝居

   昔のおもちゃづくり(パタパタ)

費用:無料

申込:不要(開催時間までに郷土資料館におこしください)

※参加者多数の場合、人数制限をさせていただく場合がございます。当日はマスクを着用いただき、体調が優れない場合は参加をお控えください。

「なぞとき」さっそくやっていただきました!

本日から開催している「探して!見つけて!なぞとき郷土資料館」に、デイサービスグッドラックの皆さまにご参加いただきました!本企画初のチャレンジャーです!

なぞとき風景

事業所の職員の方がなぞときシートの問題を読み上げ、クイズ形式にして利用者の方に考えてもらったり、皆さんで館内を移動しながらキーワードを探して楽しんでいただきました!ヒントシートも利用してもらいながら、約30分くらいの所要時間だったようです。ご来館、ご参加本当にありがとうございました!

 

皆さんもぜひ「なぞとき郷土資料館」で頭を悩ませに来てください(笑)

お待ちしてます!

【なぞとき郷土資料館】拝啓、なぞときはじめました。

令和4年10月4日(火)から開催の小学校地域学習展「くらしのうつりかわり~なつかしのくらしの道具展~」の期間中、

期間限定イベント「探して!見つけて!なぞとき郷土資料館!」を開催します!

なぞときポスター

 

開催期間中は郷土資料館受付で、なぞときプリントを配布します。

なぞを解くには、知識、ひらめき、観察力、郷土愛(?)が必要です!

なぞときのキーワードは、郷土春日部にちなんだものや、館内を探して見つけてもらうものになっているので、ちょっと春日部に詳しくなれるかもしれません!

難しいと感じる方やお子様、時間があまりない方のために、ヒントシートも用意していますので安心してご参加ください!

もちろん自信のある方はヒントシート無しでもチャレンジしてみてくださいね♪

 

『すべてのなぞを解き明かし、隠された財宝を手に入れろ!』

なぞときアイテム

 

【なぞとき郷土資料館】(参加費無料)

期間:令和4年10月4日(火)~令和5年2月26日(日)

場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)

内容:なぞときプリントの配布(受付で「なぞときやります」と声をかけてください)

   クリアした方には財宝(記念品)をプレゼント

   自由参加

【本日から】くらしのうつりかわり展

本日、令和4年10月4日(火)より「くらしのうつりかわり~なつかしのくらしの道具展~」を開催しています。

地域学習展ポスター

本展示では、今から約60年前の暮らし、生活で使う道具、春日部のうつりかわりなどを紹介しています。

小学校第三学年の社会科地域学習に合わせた内容となっていますが、大人の方やご高齢の方にも懐かしんでご覧いただける内容となっていますので、ぜひ郷土資料館までお越しください!

 

展示会名:第39回小学校地域学習展「くらしのうつりかわり~なつかしのくらしの道具展~」

会期:令和4年10月4日(火)~令和5年2月26日(日) ※月曜・祝日・年末年始休館

会場:春日部市郷土資料館 企画展示室

入館料:無料

スタンプラリーたくさんやってます!

現在、郷土資料館は4つのスタンプラリーイベントのスタンプ設置ポイントになっています。

スタンプラリー各種

左から順に、「彩の国東部・北部ミュージアムスタンプラリー」「関東地区博物館協会5県連携事業スタンプラリー」「日光街道埼玉六宿スタンプラリー」「デジ玉スタンプラリー」となっています。

 

「彩の国東部・北部ミュージアムスタンプラリー」と「関東地区博物館協会5県連携事業スタンプラリー」(どちらも11月30日まで)は、各施設に設置してあるスタンプを実際に押して集めていくタイプのスタンプラリーです。スタンプを集め終わった時点で、各館で景品を配布しています。

「彩の国東部・北部ミュージアムスタンプラリー」は対象者が小学生~中学生となっているのでご注意ください。

 

「日光街道埼玉六宿スタンプラリー」(12月26日まで)と「デジ玉スタンプラリー」(令和5年2月28日まで)はスマホでQRコードを読み取ってスタンプを集め、景品に応募するタイプのスタンプラリーです。

 

郷土資料館は一気に4つのスタンプラリーを進めることができるのでお得な施設ですよ!各スタンプラリーの台紙やチラシも資料館に置いてあります!

 

暑さも落ち着きを見せてきた昨今、各地に行楽がてら、皆さんも参加してみてはいかがでしょうか♪スタートはぜひ郷土資料館からどうぞ!

「考古学講座ー基礎を学ぶ」の第1回を開催しました

本日は「考古学講座ー基礎を学ぶ」の第1回目を開催しました。当日は、台風接近で天気があまりよくありませんでしたが、多くの方にご参加いただきました。

考古学講座はこれまで、毎回一つの遺跡をとりあげて「●●遺跡を学ぶ」といった単回の講座を行っていましたが、今年度は少し方法を変え、5回連続講座とし、春日部市の旧石器時代からなら平安時代までの遺跡の概要と、一般的な考古学の基礎についてのお話をすることとしました。

5回のテーマは下記の通りです。

1.考古学とは?/春日部のどこに遺跡があるか?・春日部の旧石器時代

2.発掘調査の方法・層位学/春日部の縄文時代

3.分類と型式学/春日部の弥生時代

4.年代の決定/春日部の古墳時代

5.春日部の奈良時代・平安時代/考古学講座のまとめ

 

今年度はすでに定員となっており、新たなお申込みはできませんが、講座終了後、資料はお渡しできますので、ご希望の方は資料館までお申し出ください。また来年度も同じような内容で講座を開催する予定です。

 

さて本日は、「考古学とは?」と「春日部のどこに遺跡があるか?」、「春日部の旧石器時代」についてお話いたしました。

「考古学とは何か?」では、「考古学とは痕跡・モノからその成り立ちを研究する」という定義をもとに、世界の考古学の歴史から日本の考古学の歴史について簡単にまとめました。

「春日部のどこに遺跡があるか?」では、市内外の地形図を見ていただき、市域には台地が4か所あって、台地上から主に遺跡が発見されているが、弥生時代以降は、低地の自然堤防からも遺跡が発見されていて、まだ未知の遺跡が眠っている可能性もあるといったことをお話ししました。

「春日部の旧石器時代」では、市内でも約3万年前の石器が台地の関東ローム層の中から発見されていること、ナイフ形石器や細石器が出土している遺跡もあること、石鏃は縄文時代の石器であることなどをお話ししました。

 

今回の講座では「ゆっくり、たのしく」をモットーに掲げています。

少しずつ、楽しみながら考古学の世界に触れていただければと思います。

 

考古学講座

【常設展 #展示替 】江戸川の幻の河岸

常設展示を一部、しれっと展示替しました。郷土資料館は、春日部にかつてあったモノ・コトを掘り起こして、皆さんにお伝えします。今回は、新宿新田に、船着き場があったんですよ!という話題。 #かすかべプラスワン

展示替といっても、当館は狭いので、近現代の流通交通を紹介する一コーナーのみですが。テーマは「江戸川の舟運in新宿新田」。

展示資料は、今年初頭にご寄贈いただいた、江戸川沿いの新宿新田の船着き場の運営をされた回漕業を営まれた旧家の資料です。

市内において、近世には河岸問屋を伴う河岸は西宝珠花と西金野井の二か所あったようです。「あったようです」というのは西宝珠花の史料が残っていないので不明なのですが。

河岸問屋は、幕府に営業税を支払うことで、河岸場の「場」の運営を保障され、周辺農村から年貢の津出しが許されていました。意外に思う方も多いようですが、市内においては古利根川には河岸問屋がいませんでした。ですから粕壁宿の舟運は小取引のものに限られていたようです。時期にもよりますが、近世中後期には、粕壁宿の年貢は、西金野井から津出しされていたようです。

明治時代になると、舟運を取り仕切る業者は、近世以来の河岸問屋に限ることなく、様々な人々が回漕業を営めるようになったようです。とはいえ、西宝珠花と西金野井は明治初頭に寄航する蒸気船の寄港地として、舟運上の特権を持ち続けました。明治以降の江戸川の舟運は、蒸気船により「発達」し、昭和初頭に舟運業が衰退するまで、市域の経済活動を支えてきました。

今回展示した、新宿新田の河岸場は、代々増田家が取り仕切ってきたといわれ、増田家の当主の名により「伊和右衛門河岸」と呼ばれてきたそうです。「伊和右衛門河岸」の起源は不明ですが、近世的河岸問屋が解体して以降、おそらく明治以降に成立したものと考えられます。明治以降の大型の蒸気船の舟運を補完する、小型舟の物流を支えていた河岸場だったと推定されます。

展示した資料は、明治時代以降のもので、埼玉・千葉両県による渡船場の許可書や、河岸倉庫の設置申請書などがあります。これらの文書から、「伊和右衛門河岸」の位置が新宿新田の「字犬塚」地内にあったことが明らかになりました。現在は、江戸川改修により、河岸場の位置は河川敷になっているようですので、幻の河岸場といえるでしょう。

写真:展示ケース

新宿新田にお住まいの方、お近くにお住まいの方、舟運にご興味のある方、はたまた江戸川が好きな方は、ぜひご覧いただければ幸いです。

「10/9歴史文化講演会ー鎌倉殿と東国武士」、「10/8~古文書講座初級編・中級編」の申し込みは終了しました

9月13日(火)より募集しておりました歴史文化講演会 菱沼一憲先生「鎌倉殿と東国武士~春日部ゆかりの人々の動向」、古文書講座(初級編・中級編、6回連続講座)は、満席になりましたので募集を終了しました。

多くの方のお申込み、ありがとうございました。

郷土資料館では、今後も各種講座を実施予定ですので、ご期待ください。

 

●郷土資料館10/9歴史文化講演会「鎌倉殿と東国武士~春日部ゆかりの人々の動向」

日程 令和4年10月9日(日)

講師  菱沼一憲先生

参加費 無料

 

●郷土資料館 古文書講座初級編

日程 令和4年10月8日、11月12日、12月3日、令和5年1月14日、2月18日、3月11日 午前10時30分~12時00分(すべて土曜日・全6回)

講師 郷土資料館職員

参加費 無料

 

●郷土資料館 古文書講座中級編

日程 令和4年10月8日、11月12日、12月3日、令和5年1月14日、2月18日、3月11日 午後2時~3時30分(すべて土曜日・全6回)

講師 郷土資料館職員

参加費 無料

【共催展】撤収・搬出

9月4日までの宮内庁・春日部市共催展示「明治天皇と春日部」展の撤収・搬出が終わりました。共催展について、色々発信してきましたが、これが本当に最後の記事になるでしょう。 #かすかべプラスワン

 

8日(木)には宮内庁宮内公文書館の皆さんが来館され、展示資料の撤収作業を行いました。

写真:資料の撤収1

一つ一つ、史料の状態を確認しながら、一つ一つ、梱包をしました。狭い展示室にもかかわらず、展示作業は「あーでもない、こーでもない」と時間がかかるのに、片づけは早いのです。

記録で撮影していると、「「ほごログ」にまた出ちゃうの!?」とおっしゃっていたので、ご希望通り、全世界にご披露します。

写真:撤収の模様

宮内庁宮内公文書館の担当者の御三方が春日部の地で揃うのも、この日が最後。片づけられ、がらんとした展示ケースもあって、少し物悲しく感じた一日でした。

9日(金)は資料搬出日でした。

写真:資料の梱包

埼玉鴨場から借用した大型資料の梱包、資料の最終確認をして、宮内庁からお借りした資料は、越谷市の埼玉鴨場、そして、お城のなかの宮内庁宮内公文書館へと帰っていきました。展示していたのは、わずか2か月足らずの期間でしたが、トラックを見送るとき、ほっとしつつも少し寂しく思いました。「サヨナラ、宮内庁!」

当館で実施された、宮内庁宮内公文書館の出張・共催展示は、今後も継続して開催するとのこと。春日部会場が片付いて、宮内庁の皆さんは来年度の準備に切り替えていくそうです。

当館も別の機関への借用資料もありますが、これでひと段落。次の展示や事業に向けて、こちらも切り替えです。

宮内庁の皆さんには本当にお世話になりました。改めてお礼申し上げます。皆さまには、宮内庁宮内公文書館・春日部市郷土資料館それぞれ、今後ともご支援いただければ幸いです。

 

 

 

「考古学講座ー基礎を学ぶ」の募集は終了しました

9月7日(水)より募集しておりました「考古学講座ー基礎を学ぶ」(5回連続講座)は、満席になりましたので募集を終了しました。

多くの方のお申込み、ありがとうございました。

郷土資料館では、今後も考古学関連の講座を実施予定ですので、ご期待ください。

 

●郷土資料館 考古学講座ー基礎を学ぶ

日程 令和4年9月24日、10月29日、11月26日、12月24日、令和5年1月28日 午前10時~11時30分(すべて土曜日・全5回)

講師 郷土資料館職員

参加費 無料

【共催展示閉幕】記念シンポジウム・ミュージアムトーク

9月4日(日)宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」が閉幕しました。最後の週末に展示に花を添えたのは、記念シンポジウムとミュージアムトーク。それぞれ多くの方にお集まりいただきました。

9月3日には、記念シンポジウム「江戸川筋御猟場―埼玉県東部・宮内省・民衆―」を開催しました。このシンポジウム申し込みから数日で定員に達してしまったほど、関心の高い事業でした。

シンポジウムには、明治学院大学の吉岡拓先生、中央大学の宮間純一先生、宮内庁宮内公文書館の篠﨑佑太先生をお招きし、郷土資料館の学芸員も登壇しました。

写真:記念シンポジウムの会場

個別報告では、江戸川筋御猟場について、地域の狩猟(榎本)、宮内省(篠﨑)、行政と政治・天皇の受容の問題(吉岡)を視点にして、史料に基づき濃密なお話をいただきました。じっくり時間をとってお話しいただいてもよい濃密な話でした。ディスカッションでは、会場からいただいた質問用紙に応えながら進行しました。短時間では、さばききれないほどの質問があり、嬉しい悲鳴。受講者の皆さんの関心が高く、学習に熱心であることに非常に驚かされました。登壇された先生方も「春日部の方たちは非常に熱心だ」とご感想をいただきました。

写真:シンポジウムの討論

ディスカッションの最後に、吉岡先生が「春日部市域の御猟場については、史料が少なくまだわかっていないことが多い。春日部市域には個人のお宅に御猟場の資料が眠っている可能性がある。ご存知の方がいれば、ぜひ春日部市の郷土資料館へご一報願いたい」とご発言いただきました。郷土資料館の活動をご紹介いただき、またそれが郷土の歴史の解明にとって、重要であることを位置付けていただく趣旨のご発言でした。

江戸川筋御猟場は、埼玉鴨場の残るの越谷市ではそれなりに関心のあるテーマのようですが、今回をきっかけに、春日部市域でも史料の調査が進み、調査研究を深化させられる、そうした可能性を指し示すシンポジウムになったように思えました。ご登壇いただいた先生方、ご参集いただいた会場の皆さま、どうもありがとうございました。

 

最終日の9月4日には、学芸員による展示解説(ミュージアムトーク)を開催しました。

シンポジウムの申し込みが間に合わなかった方、最終日に駆け込みで見に来てくださった方が集まり、午前、午後とも大変盛況でした。

写真:ミュージアムトーク

今回の展示では、宮内庁宮内公文書館の皆さんのご協力があり、例年よりも多くのイベントを組むことができました。特に重要だったのが、展示解説講座と前述のシンポジウムです。私自身、宮内庁の皆さんの展示解説講座を拝聴し、また自分で準備するなかで、展示資料の史料研究が進められ、資料に対して理解を深めることができました。

今回の展示では、宮内庁宮内公文書館の皆さんと展示設営を分担したこともあり、最初のミュージアムトークの時には、正直「なぜこれを展示したのだろうか」と疑念を抱くものも少なくありませんでした。しかし、前の通り展示解説講座やシンポジウムで資料の理解が進みましたので、最終日のミュージアムトークは、私自身これまでで一番うまくしゃべれた気がします(笑)

参加された皆さんからは、「話を聞いてよくわかりました」とか「まとめすごろくがよかった」とか「ごぼうのスタンプ押して帰ります」など、ご感想をいただきました。お集まりいただきありがとうございました。

 

展示は終了してしまいましたが、図録は今後も在庫が底をつく限り配布します。また、展示の成果として、引き続き、宿場町の模型には明治天皇の御昼食所と明治14年の巡幸の供奉者の昼食所を表示します。

シンポジウムでもご指摘いただきましたが、この展示をきっかけに、これまで分からなかった、意識されなかった巡幸、御猟場、梅田ごぼうについて、関心が高まり、新たに関係資料が発掘・発見されることが期待されます。そういう意味で、展示は終わりではなく始まりなのかもしれません。そして、春日部市郷土資料館は、目立たないのですが、日々成長しています。ぜひ、何かご存じの方は、春日部市郷土資料館へご一報ください。 

【臨時休館のお知らせ】

9月17日(土)から9月20日(火)は、燻蒸作業を行うため郷土資料館は休館いたします。ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いします。

*17日(土)~19日(月)は、教育センター全館立ち入り禁止になりますのでご注意ください。

*20日(火)は、郷土資料館は休館となりますが、教育委員会事務局は業務を行っております。

【週末に閉幕】「明治天皇と春日部」お見逃しなく

宮内庁宮内公文書館との共催企画展「明治天皇と春日部」は、9月4日(日)まで。最後の最後に、テレビでも紹介いただきました。 #かすかべプラスワン

昨日、テレビニュースでの紹介され、ネットニュースにも動画が公開されたお蔭もあって、今日はあいにくの天気で、平日にも関わらずにぎわっています。

明治天皇の巡幸、江戸川筋御猟場、梅田ごぼうを主要テーマとし、宮内庁宮内公文書館所蔵の資料をはじめ、春日部の郷土資料を陳列し、近代の皇室と春日部の歴史を展示紹介しています。

来館された方には、もれなく図録も差し上げています。あと2日、この週末で終わってしまいますので、ぜひ、お見逃しなく。

画像:チラシ

最終日の9月4日(日)には、学芸員による展示解説(ミュージアムトーク)も開催します。ふるってご参加ください。

ミュージアムトーク

日時:令和4年9月4日(日)10時30分~、15時~各回30分程度
場所:春日部市郷土資料館企画展示室(入館人数を制限する場合があります)
申込:不要。直接展示室にお集まりください。

【復活!出張授業】「でばりぃ資料館」in備後小学校

令和4年8月31日(水)に備後小学校出向き、第3学年の児童に向けた、『でばりぃ資料館』を開催しました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、学校への訪問も難しく、令和4年度当初から中止を余儀なくされていたでばりぃ資料館ですが、このたび再開と相成りました!

 

本日は総合的な学習の時間の一環として出張ってきました。

1学期に市民の方に、戦争についての話を聞いたとのことで、昔の備後小周辺の空中写真や、家庭で使われていた道具、また郷土資料館で展示している太平洋戦争期の道具などを用意していきました。

備後小には郷土資料室があるため、教室と郷土資料館の二手に分かれて入れ替え形式で学習しました。

 

教室での講義風景

教室では、1974年(昭和49年)・2019年(令和元年)の備後小周辺周辺の空中写真をみながら、今と昔の変化などを比較してもらいました。

タブレットPC使用中

空中写真の観察では、これまでラミネート加工した大判の空中写真を床に敷いて見てもらうのが定番でしたが、ICT教育の一環として一人一台用意されたタブレットPCを使用して見てもらいました!

 

郷土資料室での講義風景

郷土資料室では、昔の生活道具や戦争期の道具について学芸員が解説し、自由時間に触ったり観察したりしてもらいました。

電気が普及していなかった時代の生活の一端と、平和の尊さを感じてもらえたでしょうか。

 

本年度も10月~2月に小学校第3学年の社会科地域学習に対応した展示「くらしのうつりかわり」展を開催します。団体見学で郷土資料館に来ることが難しい学校さんはぜひ「でばりぃ資料館」をご活用ください!

また、今回のように社会科に限らず内容や日程の調整をさせていただければ随時出張いたしますのでご相談ください。

展示解説講座その4「埼玉鴨場の設置について」

8月28日(日)講師に辻岡健志先生(宮内庁宮内公文書館)をお迎えして、「明治天皇と春日部」展の展示解説講座を開催しました。

テーマは「埼玉鴨場の設置について」。辻岡先生は、現在開催中の「明治天皇と春日部」展において、「埼玉鴨場の設置」の展示設営を担当いただいた方です。埼玉鴨場は、春日部市のお隣の越谷市内に現在も宮内庁が所管する施設です。明治41年(1908)に当時南埼玉郡大袋村に鴨猟をおこなう施設として設けられました。春日部とは関係がないようですが、前の講座のテーマにもなった江戸川筋御猟場に深く関係があります。

前回の講座に引き続き、今回の展示解説講座でも、現在「明治天皇と春日部」展で展示されている資料を丁寧に読み解きながら、鴨場の由来、宮内省が所管する他の鴨場の紹介、埼玉鴨場の成り立ちや利用の実態について、展示資料以外の資料も多用してお話しいただきました。

写真:講座の様子

講座のなかでは、鴨場となる敷地の買収の交渉過程について、詳しく説明がありました。埼玉鴨場の敷地はもともと桃や梅などの立ち木がうわっている土地や、田地などであり、鴨猟のために池が造成されたことが明らかにされました。また、明治天皇が埼玉鴨場に行幸になることはなかったそうですが、明治・大正・昭和前期の外交官の鴨猟一覧では、皇族の方々や外賓の方々が埼玉鴨場を利用されていることが示され、皇太子や皇太后が鴨場に行幸啓される過程についても資料から詳しくお話しされました。

写真:質問に答える辻岡先生

質疑応答では、鴨場の利用が皇室の「大喪」や「御不例」のため中止になっていることについて、鴨猟の起源についてなど、受講者から質問がありました。

講座終了後も質問される方の長蛇の列ができました。辻岡先生には、ご多忙のところ、貴重なご講演、丁寧なご対応、大変ありがとうございました。

展示解説講座は、当館学芸員による「明治天皇と粕壁宿」も含め、全四回、すべて無事に終了することになりました。

展示はあと一週間。ご覧になっていない方はお見逃しなく。

 

【八潮市立資料館】連携展示「八潮の御鷹場・御猟場」

久喜幸手杉戸越谷草加に引き続き、宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」の連携展示の紹介。最後となる6回目は八潮市立資料館です。 #かすかべプラスワン

「春日部の話じゃないじゃないか!」とお叱りを受けそうですが、春日部市内の歴史だけを切り取っても理解は深まりません。視野を広くもって春日部の歴史も考える必要があります。歴史は地域をつなぐ。そんな思いから、連携展示「埼玉県東部と近代の皇室」は企画されました。

写真:八潮市立資料館

さて、八潮市立資料館さんは、埼玉県東部でも特徴的な博物館施設です。博物館の機能のみならず、文書館、文化財センターの機能を有していて、展示事業だけでなく、幅広い活動で、八潮市域の歴史・文化財普及・研究の拠点となっている施設です。ミュージアムスタンプラリーの参加館でもあります。 

今回は、八潮市立資料館さんに、ご協力いただき、宮内庁共催展の連兼展示をお願いしました。

連携展示「八潮の御鷹場・御猟場」は、一階のロビー展示として開催されています。資料点数は多くはありませんが、パネルのみならず、原資料も陳列しており、見ごたえがあります。県立自然の博物館から借用した鳥のはく製も展示されており、お子様でも楽しめます。

展示の内容は、八潮市域が江戸時代には江戸幕府の御鷹場であり、明治時代には皇室の遊猟場である江戸川筋御猟場であり、その後、村営の猟区が設置される、鳥をめぐる歴史を紹介するものです。コンパクトな展示ながらも、身分制社会のなかでの御鷹場、皇室など限られた人々のための御猟場、そして、民間にも開放された猟区という図式で歴史の大きな流れにも沿い、核となる資料を並べ、春日部市域を含む東部地域にも共通する内容になっています。淑徳大学の博物館学芸員課程を履修する学生さんたちと設営した展示だそうで、とてもよい展示だと拝見しました。

現在、同館では、9月19日まで、企画展「八潮建物解体新書」も開催しています。こちらもあわせてお楽しみくだされば幸いです。

 ◆八潮市立資料館「八潮の御鷹場・御猟場」

  会期:7月20日(水)~9月4日(日)

  開館時間:9時~17時00分(民家は15:45まで)

  休館日:月曜日

  住所:八潮市南後谷763-50

  電話:048-997-6666

  https://www.city.yashio.lg.jp/kurashi/shisetsuguide/shiryokan/index.html

たんけん郷土資料館 めざせ!キッズ学芸員を開催しました

8月27日(土)、小学生向けの講座「めざせ!キッズ学芸員」を開催しました。この講座は、現在開催中の「明治天皇と春日部」展の内容を普及講座で、春日部の歴史をよく知って、キッズ学芸員をめざすイベントです。 #かすかべプラスワン

講座では、まず博物館や学芸員はどんな仕事をしているのか、を説明した後、展示室でナゾトキゲームをしてもらいました。展示資料にゆかりのある問題をスタンプを押しながら考えてもらいました。

写真:会場の様子

参加者は小学校1年生から6年生までいましたが、高学年の子どもたちは「簡単!」といいながら、スタンプを探すのに手間取っていました。1年生の子は兄弟やおうちのひとに手伝ってもらいながらナゾトキをしていました。

すべてできたら特製の「キッズ学芸員専用資料館たんけんバッチ」をつくり、身に着けて、資料館の裏側探検へ。

春日部の郷土資料館は展示室が大変狭いですが、実は展示室よりも広い大きな収蔵庫があります。

キッズ学芸員たちは、恐る恐る収蔵庫へ。「変なにおいがする」とか「物がたくさんある」と言いながらも、収蔵庫の資料数を聞くと、驚いた様子。保存箱のふたを開けて、250年前の古文書を見て、触れて、目を輝かせていました。収蔵庫では最後に脚立をのぼって、収蔵棚の最上層を覗いてもらいました。クイズなどを交えながら、楽しく郷土資料館の裏側を探検してもらえたようです。

 

休憩をはさんで、後半はビンゴゲームで遊びました。ただのビンゴじゃない。郷土資料館オリジナルの鳥ビンゴです。

「明治天皇と春日部」展のテーマのひとつ「御猟場」に関わらせて、春日部にいる(または、昔いた)鳥をビンゴのマスにしてみました。春日部の鳥にかかわる歴史について、クイズやお話しをして、ゲームのヒントとし、25のマスに好きな鳥のシールをはって、ビンゴカードを作ってもらいました。

写真:ビンゴカード

ビンゴには「景品があります」と伝えると、みんな真剣に鳥の配列を考えました。子どもたちよりも、同伴された保護者の方が真剣にもみえました。

いざ始まると、皆、真剣です。スズメやカラスなどよく見かける鳥だけでなく、現在でもオオタカやサカツラガンなど珍しい鳥もみられます。また、歴史的にはツルも来ていたとか。「春日部にこんな鳥がいるんだぁ」と少しでも思ってもらいながら、楽しんでくれたなら幸いです。

景品は、特製のマグネット。優勝は金のマグネット、準優勝は銀のマグネット、三位は銅のマグネット。参加賞もあります。

写真:景品のマグネット

優勝した女の子は1年生でした。初めて開催したゲームなので、記念すべき鳥ビンゴ初代王者です。

学芸員や資料館のお仕事や普段みられない資料館の裏側を見学したり、オリジナルのゲームで遊んだり、盛りだくさんでしたが、郷土資料館や学芸員のことが少しはわかったでしょうか。「普段は入れない裏側に入れてうれしかった」とか「鳥ビンゴ楽しかった」など感想をいただきました。

ここから未来の学芸員が出てきてくれたら、なんて考えると、感慨もひとしおです。

今回の「たんけん郷土資料館めざせ!キッズ学芸員」は、初めての催しでした。改善すべき点も少なくありませんでしたが、受講者の皆さんにはおおむねご好評のようでした。終了後には「またやってほしい」とか「次はいつですか」などうれしい反響もいただきました。次回は、たぶん来年の夏かもしれません。またの機会をお楽しみに。

【 #8月27日 】 #今日は何の日? in春日部

 明治32年(1899)8月27日、北千住駅ー久喜駅間に東武鉄道が開通しました。

貨車1両と客車3両を連結した混合列車が、毎日、上り、下り7本の運行を開始しました。開通時の駅は、北千住、西新井、草加、越ヶ谷(現・北越谷)、粕壁(現・春日部)、杉戸(現・東武動物公園)、久喜でした。1等から3等までの客車種別が設けられ、北千住駅ー久喜駅間の運賃は3等客車で33銭でした。粕壁駅の明治33年(1900)の年間乗降客数は20万人程度(『埼玉県統計書』1900年)、単純計算で1日に約300人が粕壁駅を利用していたと考えられます。

明治32年12月には、新田駅、蒲生駅、武里駅、和戸駅、明治33年には竹ノ塚駅が開設されました。明治35年(1902)には、吾妻橋駅(現・とうきょうスカイツリー駅)から北千住駅、明治43年(1910)には新伊勢崎駅から伊勢崎駅間が開通し、吾妻橋駅から伊勢崎駅間全線開通となりました。この間、明治38年(1905)には、根津嘉一郎氏が初代社長に就任し、一時営業不振に陥った東武鉄道の立て直しを図ります。

 

東武鉄道線路平面図

明治29年(1896)東武鉄道線路平面図(国立公文書館所蔵:クリックで画像ファイルがダウンロードされます)

 

さて、明治29年(1896)に作成された東武鉄道線路平面図が残されています。

この図には、千住から足利間に予定線路が書かれています。この図面が書かれた当初、すでに開業していた両毛鉄道足利停車場(現・両毛線足利駅)に乗り入れ、終点とする予定でした。しかしながら渡良瀬川架橋について地元の同意が得られず、明治39年(1906)に足利は渡良瀬川南岸に足利町停車場(現・足利市駅)をもうけ、日本鉄道伊勢崎停車場(現・伊勢崎駅)に終点が変更されました。

また、この図には、当時の市街地が 細かく書かれています。当然のことながら、宿場町として栄えた粕壁も大きい市街地として書かれています。そしてよく見ると、駅(停車場予定地)が、宿場町の東側に書かれています。

どのような意図であったかはわかりませんが、予定線路通りのルートをたどると、粕壁駅の手前と杉戸駅の先で大落古利根川を渡ることとなり、橋が余計に必要になることなどが理由として考えられます。

 

東武鉄道線路平面図拡大

東武鉄道線路平面図(拡大。草加、越ヶ谷、粕壁、杉戸の停車場予定地をいずれも宿場町の東側に書いている)

 

東武鉄道はこの後、大正11年(1922)に浅草駅(現とうきょうスカイツリー駅)から久喜駅間の複線化、大正15年(1926)までに同区間の電化が完成し、電車の運行で乗車時間が大幅に短縮されました。

 

参考文献

東武鉄道株式会社『東武鉄道百年史』1998年

春日部市教育委員会『新編図録 春日部の歴史』2016年

 

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