校長室から
何度でも立ち上がれ 誇り高き不死鳥のように
中学校の卒業文集に「大障害とダービーを勝ちたい。」と、将来の夢を書いた少年がいました。
私は若い頃、ある乗馬クラブでアルバイトをしていたことがあります。馬房掃除や馬体を洗ったり、トラクターに乗って馬場をならしたり、今となっては貴重な体験をさせていただきました。当時のその乗馬クラブのオーナーの甥が、冒頭の少年です。小学生の頃から、乗馬クラブで騎乗する姿をよく見ていました。中学生になると、競馬学校を受験するということだったので、少しですが、勉強も教えたことがあります。
その少年は、難関の受験を突破して、競馬学校に入学しました。3年間の厳しい寮生活を経て、中央競馬会所属の騎手、「草野太郎」としてデビューを果たしました。
デビュー後は、落馬負傷が続くなど、厳しい道のりでした。あるレースでは、障害飛越後に馬が転び、草野騎手は地面に叩きつけられるように落馬をしてしまいました。いつもなら、自分で立ち上がることができるのに、このときは、体が動かなかったそうです。病院での診断は、第一、第二頸椎(首の骨)の複雑骨折で、手術後は器具で頭を固定して寝返りも打てない状況だったそうです。当時、結婚したばかりの草野騎手の奥様は、本人の見えないところで泣いていたそうです。それを知った草野騎手は、心配しながらも応援をしてくれる家族、そして自分の夢のため、長い休養と厳しいリハビリを乗り越えて、復帰を果たしました。
そして、4月19日(土)に行われた、「中山グランドジャンプ(J・GI)」という障害競走の最高峰レースに5番人気の馬に騎乗し、見事、優勝しました。私は、映像で見ていましたが、「鳥肌が止まらない、いのちが熱く燃えている」、とはこのことです。家族でもなく、教え子でもありません。ただ少し知っているというだけの間柄ですが、本当に感動しました。「夢を叶えるために、努力することの大切さ」を改めて感じさせてくれたストーリーです。
レース後すぐに、草野騎手のお母様に連絡を入れましたが、「仕事で見に行けなかったの・・・こんなものです。」とのことでした。まあ、「こんなもの」なのでしょうね。