ほごログ(文化財課ブログ)

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展示解説講座その4「埼玉鴨場の設置について」

8月28日(日)講師に辻岡健志先生(宮内庁宮内公文書館)をお迎えして、「明治天皇と春日部」展の展示解説講座を開催しました。

テーマは「埼玉鴨場の設置について」。辻岡先生は、現在開催中の「明治天皇と春日部」展において、「埼玉鴨場の設置」の展示設営を担当いただいた方です。埼玉鴨場は、春日部市のお隣の越谷市内に現在も宮内庁が所管する施設です。明治41年(1908)に当時南埼玉郡大袋村に鴨猟をおこなう施設として設けられました。春日部とは関係がないようですが、前の講座のテーマにもなった江戸川筋御猟場に深く関係があります。

前回の講座に引き続き、今回の展示解説講座でも、現在「明治天皇と春日部」展で展示されている資料を丁寧に読み解きながら、鴨場の由来、宮内省が所管する他の鴨場の紹介、埼玉鴨場の成り立ちや利用の実態について、展示資料以外の資料も多用してお話しいただきました。

写真:講座の様子

講座のなかでは、鴨場となる敷地の買収の交渉過程について、詳しく説明がありました。埼玉鴨場の敷地はもともと桃や梅などの立ち木がうわっている土地や、田地などであり、鴨猟のために池が造成されたことが明らかにされました。また、明治天皇が埼玉鴨場に行幸になることはなかったそうですが、明治・大正・昭和前期の外交官の鴨猟一覧では、皇族の方々や外賓の方々が埼玉鴨場を利用されていることが示され、皇太子や皇太后が鴨場に行幸啓される過程についても資料から詳しくお話しされました。

写真:質問に答える辻岡先生

質疑応答では、鴨場の利用が皇室の「大喪」や「御不例」のため中止になっていることについて、鴨猟の起源についてなど、受講者から質問がありました。

講座終了後も質問される方の長蛇の列ができました。辻岡先生には、ご多忙のところ、貴重なご講演、丁寧なご対応、大変ありがとうございました。

展示解説講座は、当館学芸員による「明治天皇と粕壁宿」も含め、全四回、すべて無事に終了することになりました。

展示はあと一週間。ご覧になっていない方はお見逃しなく。

 

【越谷市大間野町旧中村家住宅】連携展示「越谷への行幸・行啓と埼玉鴨場」

久喜幸手杉戸に引き続き、宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」の連携展示の紹介。4回目は越谷市大間野町旧中村家住宅です。 #かすかべプラスワン

「春日部の話じゃないじゃないか!」とお叱りを受けそうですが、春日部市内の歴史だけを切り取っても理解は深まりません。視野を広くもって春日部の歴史も考える必要があります。歴史は地域をつなぐ。そんな思いから、連携展示「埼玉県東部と近代の皇室」は企画されました。

さて、越谷市教育委員会さんにご協力いただき、今回、越谷市でも連携展示を開催しています。会場は越谷市大間野町旧中村家住宅。大間野町旧中村家住宅は国登録有形文化財、江戸時代に旧大間野村(現越谷市大間野町周辺)の名主を勤めた中村氏の旧宅で、建築当初の姿に復元されたものです。展示は、屋敷内にパネルにて展示しています。

パネルでは、他の市町の展示と同様に、明治天皇の巡幸に関わる宮内庁宮内公文書館所蔵の文書や図面に加え、越谷市に所在する埼玉鴨場についても展示しています。

埼玉鴨場は明治41年(1908)6月、埼玉県南埼玉郡大袋村(現越谷市)に設置された、現在も宮内庁が管理する鴨猟の施設です。展示では、宮内省が敷地を買い上げたときの図面や、鴨場の敷地図面、建物の図面、鴨場内の写真、関係文書などを紹介しています。鴨場には、普段、一般の方は出入りできませんので、知られざる鴨場の姿がよくわかる展示になっています。

ぜひご覧ください。

 ◆越谷市大間野町旧中村家住宅「越谷への行幸・行啓と埼玉鴨場」

  会期:7月20日(水)~9月4日(日)

  開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)

  休館日:月曜日、祝日の翌日

  入館料:一般100円、小中学生50円、未就学児無料

  住所:越谷市大間野町1-100-4

  電話:048-985-9750

  https://www.city.koshigaya.saitama.jp/smph/toiawase/shisetsu/dentobunka/oomanocyounakamurake.html