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2025年12月の記事一覧
栃管協結成60周年記念教育講演会
去る11月29日(度)栃管協・栃教協共催の教育講演会を開催しました。栃管協からは、会員、市町管協会長、役員合わせて約170人が参加していただきました。
今年は、栃管協が結成60周年を迎えたため記念講演会とさせていただきました。開会行事では、両団体を代表して鍋谷会長が、
「栃管協・栃教協は、給与勤務条件の改善・教育環境の整備などを活動の柱に掲げていますが、本日の講演会はその柱の一つ、教育専門職としての研修の充実に当たるものです。国では次期学習指導要領の論点整理が出され、各ワーキンググループで審議がされております。文部科学省では学校現場における生成AIの利用についてというサイトを立ち上げ、生成AIの利活用に関するガイドラインが示されています。今後、教育現場では、さらにギガスクール構想の推進とともに 働き方改革と教育の情報化へ。 具体的にはAIの公務利用から教育利用へ。この活用が加速していくと予想されます。 本日は講師として池谷裕二氏をお招きして、ご講演をいただきます、とても興味深いテーマであり、私もとても楽しみにしているところです。この講演会がこれからの栃木の教育を担う 教育専門職としての皆様にとって、 ご自身を更にバージョンアップされる機会としていただけますよう祈念いたします。」と挨拶しました。
講演会では、東京大学薬学部教授 薬学博士・脳研究者 池谷裕二 氏に、
「AIがもたらす未来~人工知能の現在とこれからの社会~」
と題して、ご講演をいただきました。
講演内容のごく一部ですが、要約してご紹介します。
人間らしさとして、直感・創造・発想・芸術を挙げる人は、人間らしさをきちんと理解していない。AIは、人よりも高いレベルで直感・創造・発想・芸術を発揮できる。
ChatGPTよりも創造性の高い人は9.4%しかいないというデータがある。世界のトップ9.4%の人類に入る自信がない人はChatGPTを使わない理由がもはやない。
「気が利く」という単語があるのは、人は気が利かないから。みんながみんなすごく気が利くなら、「気が利く」という言葉は必要ない。人間は基本的に気が利かないし、気遣い下手。気が利くとか気遣いって、恐ろしく機械的な作業である。人間は機械的な作業が苦手である。
アメリカなどでは、カウンセリングで7割の患者が生身の医者よりAIを選ぶ。なぜか。AIは、我慢強い。長い時間拘束しても、絶対に貧乏揺すりしない。時計チラチラ見ない。顔に出ない。うっかり発言をしない。所詮ロボットなので、人には言えないプライベートで恥ずかしいことでも全部さらけ出せる。どうして患者たちが生成AIを欲するのかを見ることによって、人間の医者に何が足りていなかったのか分かってくる。「AIの振り見て、我が振り直せ」である。これは別に精神科医だけの話ではなく、全ての仕事もそうだ。
人間らしさとは、人間がまるで息をするかのように自然に実現できること。それは、自然にできているから思い当たらない。例えば、人間は身体を持っている。しなやかな運動と豊かな感覚は、AIにはない。楽しんで 生きるというのも人間の特徴。人間とAIはかなり違っていて、得意とする分野も違う。両者が協働して、お互いに苦手なものを補いながら、さらに高めていくことが大切。
今年「東大理3合格者」の8割以上がChatGTPを使って勉強していた。これは、生成AIを使わないで、もし勉強する生徒がいたら、明らかに時代遅れということを意味している。宿題を「AIなんか使ってやっちゃダメだよ。」と言っている先生は、もう先生じゃない。むしろ先生はどうやって使うかを教えてあげなければいけない。悪い使い方は「答えを出してもらう」「代わりに宿題やってもらう」これだけ。楽するために使っちゃダメ。理解を深める支援者として使う。自分の考えを深めたり、新しい概念を習得したりするのに使うこと。
※これからの時代は、AIを使って学習するのが当たり前の時代になると池谷先生はおっしゃっていました。教員は、AIを児童生徒が正しく使えるように指導する必要があります。それだけではなく、「子供たちがAIを使って思考力を高める(AIを正しく使う=答えを丸写ししない)」そんな授業をデザインする能力が求められるいます。
※AIを使うに当たっての注意点等については、12月10日発行の会報179号にてご紹介させていただきます。是非ご覧になってください。