ほごログ
古文書勉強会を開催しました
1月22日(日)、郷土資料館所蔵の古文書を市民の皆さんと読む「古文書勉強会」を開催しました。
今回も引き続き、粕壁の旧家に伝えられた「酒造用留」を講読。参加者の方には釈文を用意いただき、これを読みながら、字を検討しています。
史料の分量が多いので、なかなか解釈を深める時間がとれず、惜しいのですが、今回は字の解読だけでなく、語句の意味や、人名・地名などの固有名詞について疑義が生じることとなりました。参加者のなかでも意見が分かれ、皆さんとともに悩みました。以下、この勉強会では、日々どんなことに悩み、執心しているのか、少しご紹介をしたいと思います。
まず、意見が分かれたのが上の文。
担当の方は、「米怔合不宜受痛ニ相成候」と読んできましたが、「受痛」とはどういう意味か、他の古文書では「更痛」と書いてあるのを見たことがある、とご意見される方がいらっしゃいました。では「更痛」の意味は???
という具合に、検討を要しました。「受」と「更」は非常によく似たくずし字になりますが、この文章の前後に、次のような文があります。
これは「又兵衛江引受させ」と読むことになります。先ほどの字とこの「受」が同じ筆遣いをしていることから、前文の語句は「受痛」と読むことに至りました。
後日、調べてみると、神奈川県の寒川町の史料にも「受痛」の語の用例があるようですから、「受痛」が妥当になりましょうか。史料の文脈を踏まえて、次回、皆さんともう一度確認したいと思います。
もう一つ
「阿部恵三郎知行同国比企郡土渡村 名主八十次郎 百姓代次兵衛」
と読みましたが、武蔵国比企郡には「土渡村」あるいは「土後村」という村はなく、「土塩村」が存在するようです。ただ、どう読んでも「塩」には読めないと、皆さんと検討しました。
後日、お調べになった方からメールをいただき、阿部氏の知行所に比企郡土塩村があることがわかりましたので、おそらく書き手が写し間違えたものと考えられます。
ただ、新たな問題点も。調べていただいた方によると、阿部恵三郎ではなく阿部甚三郎ではないかというご指摘が。活字の史料には「阿部恵三郎」、または「阿部甚三郎」と書き起こすものもあるようです。これも決着はついていませんので、次回、皆さんと再検証したいと考えています。
というように、こんなことを繰り返しながら、一字一字丁寧に解読しています。字を読むだけでなく、やはり史料を解釈しながら進めなければならないことを実感しました。予習も大事です。参加者の市民の皆さんは、とても熱心に調べて臨まれているので、私たちにとっても本当に刺激的な勉強会になっています。
古文書勉強会、次回は2月12日(日)14時~を予定しています。
文化財防火デー防災訓練を行いました~赤沼 常楽寺~
1月22日(日)には赤沼の常楽寺で「文化財防火デー防災訓練」を開催しました。
74年前の昭和24年1月26日に奈良法隆寺の金堂が火災に遭い、当時世界最古の木造建造物と共に貴重な壁画が損傷したという痛ましい事故が起こりました。これを契機に例年1・2月が最も火災が発生しやすい時期でもあることから昭和30年に1月26日を『文化財防火デー』と定められたことから、春日部市でも文化財を対象とした防火訓練を毎年行っています。
今年は市内でも中世、室町時代に作られた銅造仏では唯一となります「常楽寺の銅造阿弥陀如来坐像」を所蔵する常楽寺の本堂の本堂から火災が発生したという想定のもと、常楽寺の関係者や地域の皆さま、そして消防団の協力により様々な訓練に取り組んでいただきました。
▲常楽寺の関係者や地域の皆さまによる模擬文化財の搬出、初期消火としてバケツリレーに取り組んでいただきました
▼消防団による放水も機敏に行っていただきました
▲訓練の第2部では消防本部予防課が中心となって通報訓練、消火器訓練、煙体験を行いました
参加いただいた皆さまからも「備えあれば患いなし」といった感想のほか、地域の貴重な文化財を地域の想いとして協力して守らねばといった感想もお聞きすることができました。
時が流れても、伝承する文化財の価値は不変です。そして火災は一瞬のできごと、日常時からの備えによって貴重な文化財の保存を、皆さまからのご協力をくれぐれもお願いします。
郷土資料館体験ワークショップを開催しました
令和5年1月22日(日)の午前と午後各1回ずつ、郷土資料館体験ワークショップ「ペーパーローリングを作ろう」を開催しました。
まずは蓄音機の上演からです。
蓄音機は電気を使わないで音楽を聴くことができます。レコードを替え、静かに針を落とし、長くはない曲に耳を傾けるという“手間をかける”ことが、近年丁寧に音楽を楽しむ人たちに人気となっているそうですよ♪
次は春日部に伝わる伝説の紙芝居を1つ。今日は「蛇女房」というお話です。
鶴の恩返しにも近いお話で、小さい子でも馴染みやすい内容だったかと思います。
そしておもちゃ作りは「ペーパーローリング」です!
実はこのペーパーローリング、郷土資料館のおもちゃコーナーには置いていません。振ることで剣のように伸びるというおもちゃの性質上、資料館内で振り回すのは若干の危険が伴うため、設置には検討を要します。
なので、ペーパーローリングで遊べるのは今のところ体験ワークショップだけ、という珍しい一品です!
シュルンッ!と戻ってくるのがクセになります。
みんなとても気に入ってくれた様子でした♪
最後は恒例の缶バッジ作りをしました!
自分で作ってみるという体験が楽しいですよね♪
これにて今年度の体験ワークショップは終了です。
来年度も開催を予定しています。開催日が決まったら告知をいたしますので、郷土資料館ブログや広報誌等、ぜひチェックしてみてください!
ご参加いただきありがとうございました♪また起こしください!
2月25日(土)川口則弘先生「直木賞の歴史と作家三上於菟吉」を開催します
1月19日(木)、第168回直木賞・芥川賞が発表されました。直木賞は、小川哲氏『地図と拳』と千早茜氏『しろがねの葉』、芥川賞は佐藤厚志氏の『荒地の家族』と井戸川射子氏の『この世の喜びよ』に決定し、いずれも2作が受賞しました。おめでとうございます。
直木賞(直木三十五賞)は、昭和9年(1934)に亡くなった作家、直木三十五(なおきさんじゅうご)を顕彰するため、昭和10年に設けられました。直木三十五は早稲田大学で、春日部出身の作家、三上於菟吉の1年後輩にあたります。二人は親交が深く、直木が亡くなった際には、追悼と顕彰に尽力し、昭和18年(1943)まで直木賞の選考委員をつとめました。
さて、春日部市郷土資料館では、直木賞研究家の川口則弘先生をお招きし、直木賞の歴史と初代選考委員であった作家、三上於菟吉に関する講演会を開催します。皆様のご参加をお待ちしております。
●郷土資料館歴史文化講演会 「直木賞の歴史と作家三上於菟吉」
日時:令和5年2月25日(土曜日)午後2時~4時
会場:春日部市教育センター(春日部市粕壁東3-2-15)
講師:川口 則弘(かわぐち のりひろ)先生(直木賞研究家)
募集人数:80人(申し込み順)
申し込み
郷土資料館に直接、電話(電話:048-763-2455)または、春日部市電子申請で申し込み
新春の獅子舞公開-銚子口の獅子舞-
1月15日(日)には銚子口香取神社にて市指定無形民俗文化財「銚子口の獅子舞」の新春の舞が公開されました。当日は薄曇りで気温が低い中でも銚子口地区をはじめ、県内外から多数の皆さまが伝統の舞に駆けつけていただきました。
▲天狗を先頭に小学生による箱獅子、太夫獅子、中獅子、小獅子が後を続く
天狗を先頭に神社境内を練り歩く「宮参りの儀」、奉納する場を清める「天狗の舞」といった慣例の儀式後は、近年に復活することができた演目、「宇津女の舞」(鈿女-うずめ-とも書く)、「幣かがりの舞」が披露されました。宇津女の舞は「花だまし」とも呼ばれ、花の妖艶な香りで中獅子をだまし孤立させ、太夫獅子と小獅子が仲良く演舞するといったストーリーです。
今回は中獅子、小獅子には二十歳を迎えたお二人の女性が初めて担うといった、元禄10年(1697)に伝承以来、初めての試みとなりました。お二人は中学生の頃からお囃子にも参加され、練習を重ねた成果を十分に発揮され、太夫獅子を取り囲み、軽快かつ華麗な舞を披露いただきました。ご観覧いただいた地域の皆さまをはじめ、保存会、当番さんからも拍手喝采をいただきました。
▲太夫獅子により幣束で「家内安全」「五穀豊穣」「無病息災」を祈願。良い一年になりますように祈願されました
今後は女性三名で三匹獅子が担えるよう、中学生らの後継者養成に力点が置かれ、一人でも多くの後継者を育て演舞できるように取り組まれるとのこと、大いに期待されます。次回の公開は7月、夏祈祷となります。
【体験ワークショップ】ペーパーローリングを作ろう!
1月22日(日)に体験ワークショップを開催します。
体験ワークショップでは、蓄音機の上演、紙芝居、昔のおもちゃづくりをします。
今回作る昔のおもちゃは「ペーパーローリング」です。
「ペーパーローリングって何?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、写真を見ていただければお分かりいただけると思います!
これです!
他にも、ペーパーヨーヨー、シュート棒などの呼び方があるそうです。
遊び方は簡単♪
持ち手を掴んで、シュッ!っと振ると・・・
こんな風にビヨ~ンと伸び、手元にシュルシュルッと戻ってきます!
昨年からワークショップで作り始めたペーパーローリングですが、使用する材料などに変更を加えて、より遊びやすく改良しました!
遊びだすとついついクセになるペーパーローリング!一緒に作ってみましょう!
申し込み不要、おもちゃの材料は資料館で用意しています。
当日の午前10時30分と午後2時からの計2回開催しますので、お時間までに郷土資料館にお越しください!
【体験ワークショップ】
日時:令和5年1月22日(日)午前10時30分~・午後2時~
場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)
内容:蓄音機と紙芝居の上演
昔のおもちゃづくり(ペーパーローリング)
費用:無料
申込:不要(開催時間までに郷土資料館にお越しください)
※参加者多数の場合、人数制限をさせていただく場合がございます。当日はマスクを着用いただき、体調が優れない場合は参加をお控えください。
#博物館の年賀状 謹賀新年
本年も春日部市郷土資料館、そして「ほごログ」をよろしくお願いいたします。 #かすかべプラスワン #卯年
新年一発目は、今年の干支にちなんで、収蔵庫から #ウサギ に関するおめでたい資料を紹介します。
波の上を兎が走るこの文様は、「波兎(なみうさぎ)」と呼ばれる、日本の伝統的な意匠の一つです。波兎は、謡曲「竹生島(ちくぶじま)」に由来する文様で、別名「波乗り兎」とか「竹生島文様」とも呼ばれるそうです。「竹生島」は室町時代に成立した謡曲で、醍醐天皇の廷臣が琵琶湖の竹生島に舟で参詣するシーンで、舟から眺める風景の美しさを「魚木に上る気色あり、月海上に浮かんでは兎も波を走るか面白の島のけしきや」(魚が木に登るようだ。月が海上に浮かぶときは兎も波を走るようだ。この島の景色は実に面白い)と謡われる一節があります。この一節から、「波兎」は創作され、桃山時代末期から、江戸時代前期にかけて大変流行ったといわれています。ウサギは多産であることやその所作から繁栄や飛躍の象徴として扱われ、工芸品や建造物のほか、現代でも湯呑や手ぬぐいなどにもしばしばあしらわれています。
この資料は、西親野井の在村の絵師の旧家に伝来したものです。344×246mmの和紙に彩色の波兎模様が描かれています。四辺が骨を入れるためか少しおられており、和凧の図案として描かれたものだと考えられます。西親野井の絵師は、史料からみる限りでは明治時代に活動した人物のようで、さまざまな伝統的な図柄や挿絵、看板などのデザインの下絵を残しています。
当時(明治22年以降)は西親野井は宝珠花村の一部でした。宝珠花といえば、江戸川の河岸として栄えた集落で、現在も大凧あげ習俗を伝える特徴的な地区の一つです。想像を膨らませば、凧揚げが盛んな宝珠花の人たちのニーズに応えて、縁起の良い「波兎」を和凧に描いたのかもしれません。
今年は卯年。皆さまにとりましても「波兎」のように、繁栄・飛躍の一年になりますようご祈念申し上げます。そして、本年も郷土資料館と「ほごログ」をよろしくお願いいたします。令和5年卯年 元旦
郷土資料館体験講座「しめ縄を作って新年を迎えよう」を開催しました
令和4年12月17日(土)、18日(日)に体験講座「しめ縄を作って新年を迎えよう」を、25日(日)に中央公民館で子ども体験教室「しめ縄づくり」を開催しました。
今年もやってまいりました“しめ縄作り”!参加者の皆さんに楽しんでいただくため、職員一同準備をさせていただきました。
稲わらを調達し、わらの“ハカマ”を取り、当日はわら打ちをするなど、講座開催までには実に様々な工程を踏んでいます。
講座準備中
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そして講座当日です。12月の寒い中お越しいただきありがとうございます!
講座ではまず当館の館長より挨拶をさせていただき、春日部に伝わる伝説の紙芝居を上演しました。今回は粕壁地区に伝わる「火事よけ天狗」という伝説の紙芝居です。冬の乾燥した時期ですので、皆さまも火事など火元にはお気をください。
しめ縄作りは、半紙で紙垂(しで)を作る作業、わらを撚(よ)って縄を編む“縄ない”の作業、しめ縄本体の作成、と大きく3つの作業があります。
中でも特に難しいのが“縄ない”です!合計で3本作っていただくのですが、どうしても最初の1本は形が少し崩れてしまう方も多いようです。しかし、3本作っていくと次第に慣れていき、最初の1本目をやり直してクオリティアップを図る方もたくさんいらっしゃいました!
しめ縄本体を作る作業は、根元からしっかりとわらをねじるのがポイント!縄ないとは打って変わって力のいる作業です。
「疲れた!」「こりゃ大変だ!」という声があがるのですが、「楽しかった!」という感想をたくさんいただきます!大変だからこその達成感を味わっていただけるようです♪
出来上がりはご覧のとおり!立派に仕上がっています!
皆さま今年も郷土資料館の講座にご参加いただきありがとうございました!来年も様々な講座や企画展を開催していきますのでお見逃しなく!
それでは、よい新年をお迎えください!
考古学講座第4回を開催しました
12月24日、春日部市郷土資料館では午前中から考古学講座を開催しました。
本日は、年代の決定と春日部の古墳時代をテーマとしました。
年代の決定では、絶対年代を求める方法として、放射線炭素年代法と年輪年代法をとりあげました。放射性炭素年代測定法は、1970年代に開発された加速器質量分析法によって、考古学で得られる少量の試料でも年代を測定できるようになり、また暦年較正曲線が頻繁に見直されており、より精緻な分析が進められています。
株式会社パレオ・ラボ様より頂いた加速器分析装置の資料を使いながら、炭素12、炭素13、炭素14が分析電磁石の中で曲がる際に、重量の違いによって曲がる方向が分かれ、3つの炭素が分けられることなどを学びました。
春日部の古墳時代では、東中野の権現山遺跡と内牧の塚内古墳群をとりあげました。権現山遺跡では、古墳時代前期の方形周溝墓が発見され、底部穿孔壺形土器が発見されていること、塚内古墳群では、4号墳のみで墳丘の調査が行われていて、下総系と武蔵系の円筒埴輪が出土していることをお話ししました。
本日は、塚内4号墳から出土した埴輪を会場に展示し、武蔵系、下総系の埴輪の違い、特に使われている土の違いを見ていただきました。
講座中で、埴輪に使われている粘土の話ばかりしてしまい、説明が足りませんでしたが、内牧地区に武蔵と下総の粘土を持ってきて埴輪を作ったのではなく、武蔵地方と下総地方で作られた埴輪がそれぞれ内牧地区に運び込まれているということですので、補足します。
講座終了後のお話のなかで、埴輪にあけられた穴のことや弥生時代の戦争のことについて質問がありました。次回、最終回の考古学講座で、考えてみたいと思います。
年末の風物詩・粕壁の酉の市
12月14日、粕壁の神明社で酉の市が開かれました。 #かすかべプラスワン #学芸員の胸熱
帰り道に遠くのほうから聞こえるお囃子の音色が。
仲町の皆さんがお囃子を演奏されていました。音色につられて集まる人も多くいたのではないでしょうか。
神明通りには、屋台が並び、すれ違うのが大変なほど、中高生や親子連れでにぎわっていました。
夏祭りでは屋台が出ませんでしたから、若者たちは屋台が楽しみなのでしょう。
屋台がどんな流行を取り入れているか、興味もあるところですが、学芸員はたこ焼きを横目に境内に向かいました。
境内には、酉の市恒例の、縁起物の熊手の屋台が並んでいました。熊手の屋台は、その高さに圧倒されます。
お社には、獅子頭がお祀りされていました。
獅子頭は、角がある獅子(左)と頭に宝珠を載せる獅子(右)の二頭です。現在まで続く東部地区の獅子舞は、三頭の獅子で舞われるもの主流ですので、この獅子頭は獅子舞に使ったものなのかどうか不明です。
本殿は、扉が開かれて、ご内陣を開帳していました。中にはご神像が。普段の神明社の風景とは異なり、まさに「ハレ」の空間でした。学芸員的には、このあたりが胸熱です。
参詣された皆さんは、「今年もありがとうございました」とつぶやきながら参拝されていました。もう、年の瀬ですね。
さて、粕壁の神明社、そして酉の市は古くから続く神社・祭礼です。そこで、粕壁の神明社について、ヤホーではなく、諸資料で調べてみました。
神明社の起源については、記録等がなく詳しくは不明です。ただ、伝承によれば、天明年間(1781-89)に九法四郎兵衛という人がこの地を開墾したところ、地中からご神体と鏡が出てきたので祠を祀ったといわれています(『春日部市の神社』)。神明社については、長らく、この伝承が語られるのみでしたが、最近、収蔵庫から神明社に関する史料を見出しました。
表紙には、「神明宮御本社建立 勧化幉 粕壁宿世話人」とあります。神明社の本殿を建てたときに寄付を募った帳簿です。「寅九月」とあるのは文政13年(1830)9月のこと。
本文には、次のようにつづられています。古くより鎮座している神明宮は、いまだ仮宮殿であり、今回壊れてしまったので、新規に本社を建てることになった。ただし、自力では難しいので、近郷隣村の助成を請いたい、と。
勧進の世話人(発起人)は次のように記されています。
「綿屋市兵衛」(鹿間市兵衛か)、「笊屋半蔵」、「伊勢や市左衛門」(練木市左衛門)、「油屋勘六」(永田勘六)、「八百屋藤七」(小林藤七)、「同重右衛門」、「肴屋権八」、「青木屋清次郎」。
名前がわかる商人は、いずれも粕壁の上町(かみまち)の人たちですので、神明社が上町の人々に信仰されていたものと考えられます。実際にどんな人たちから寄付金が集められたのかは不明です。
また、天保3年(1832)には、神明宮の道が潰地になっており、不便なので、屋敷地を道の敷地にするという取り決めもされています(春日部市史近世史料編Ⅲの2、986ページ)。
これらの史料には、名だたる粕壁の商人の名が!ここも学芸員の胸熱です。
肝心の酉の市がいつから始まったのかは残念ながらわからないのですが、地元の方によれば、神明様の酉の市は、八坂神社の祭礼(春日部夏祭り)よりも賑やかだったそうです。
粕壁の宿場町とともに、神明社、そして酉の市も歩んできたのですね。屋台で楽しむ若者たちも、そんなことを思いながら、大判焼きを食べてくれるといいのになぁと思いました。
【 #常設展 】 #プチ展示替 しました
春日部市郷土資料館の常設展は、常設ですが、常に少しずつ変わっています。今回は二か所「プチ展示替」をしました。 #かすかべプラスワン
一つ目は、常設展にケースを増設し、粕壁宿の商家ゆかりの資料を展示しています。
かすかべ郷土かるたには「蔵造り 面影残す 宿場町」という札がありますが、粕壁は日光道中の宿場町であり、かつては蔵造りの建物が軒を連ねていました。現在でも、所々に老舗の商家さんなどに蔵造りの建物が残っています。今回は、上町の老舗の米問屋永嶋庄兵衛商店さんからご寄贈いただいた、蔵造りの建物の部材を展示しました。かつての粕壁の街並みの写真も合わせて展示しています。蔵造りの建物の見学は、どうしても遠目でみることになるので、部材を間近でご覧いただくと、思っていたよりも大きく感じるかもしれません。川越に行かずとも、蔵造りをお楽しみいただけるはずです。
二つ目は、展示室の最奥の古文書の展示です。長らく、詫び証文を展示していましたが、今回は江戸川の開削、そして流域の庄内領の新田開発の史料を解説しています。収蔵庫のなかで長く眠っていた古文書を点検するなかで、見出したもので、一応新出史料です。江戸川の開削や流域の開発については、同時代の史料が限られており、具体的なことがわかっていません。今回展示した史料も、近世後期の記録であり、同時代の史料とはいえませんが、江戸川の開削年代や「親野台」(親野井周辺か)で工事が難航して3か年を要したことなど、既出の関連史料と比較することで、考察が深められる史料だと思います。庄内領開発に携わった小島庄右衛門の名もみえます。江戸川の通水は6月2日だそうです!
春日部の歴史、埼玉県の歴史にとって河川の変遷は重要で、皆さんの関心も高いところですので、少しマニアックな展示ですが、ご覧いただければと思います。
少しずつ変わる郷土資料館。たまーに訪れると新たな発見があるかもしれませんよ。
郷土資料館体験ワークショップを開催しました
令和4年12月11日(日)の午前と午後各1回ずつ、郷土資料館体験ワークショップ「からくり屏風を作ろう」を開催しました。
今回はリピーターの子が多く、「この前もきた!」「これで4回目!」といった声が聞こえました。気に入ってもらえているようで何よりです♪
まずは蓄音機でレコード鑑賞から。
およそ130年くらい前の蓄音機で、資料館で動くものは現在この1台しかありません。ワークショップの日だけ特別にお披露目しています。蓄音機の上演は大人の方の参加も大歓迎ですので、ぜひ懐かしい音楽に浸りに来てください。
次は「火伏の龍の伝説」という西宝珠花に伝わる伝説の紙芝居です。
米問屋に宿泊させてもらった旅のお坊さんが、お礼にお札を書き、そのお札が米問屋を火事から救ったというお話です。“情けは人の為ならず”という言葉が当てはまるような紙芝居です。
そして、おもちゃ作りでは“からくり屏風”を作りました。難しそうなからくりに見えるのですが、意外と複雑な工程はありません。
2枚の板から4枚の絵が現れる不思議さに目を輝かせる子もいました♪
出来上がりをみてみんな嬉しそう!
そしてお土産の缶バッジづくり。
小さなお子さんにとっては力のいる作業です。
“うりゃぁ!”と気合の掛け声!
本年も体験ワークショップにご参加いただきありがとうございました!
次回は令和5年1月22日(日)に開催予定。おもちゃは「ペーパーローリング」です。
広報誌等でも告知をいたしますのでご確認いただき、ぜひご参加ください!
「子ども大学かすかべ」2日目で縄文時代へタイムスリップ!!体験授業を行いました
12月3日(土)は、共栄大学を会場に、子どもの知的好奇心を刺激する学びの場を提供する「子ども大学かすかべ 第11期」で“かすかべにも海があった!?”を題材に市内小学生と『ふるさと学・はてな学』に取組みました。受講生は市内小学生の4年生から6年生18名。一学期には6年生を対象とした社会科出張授業に伺っていますので、今回は異なる引き出しで縄文体験を行いました。
▲黒曜石体験はいつでも驚きの連続。切れ味に加え、遠方からの資源であること、消費地春日部にたどりつくまでには多くのムラとの交流と交易がないと手に入れられないことも確認。
冒頭は座学で、春日部に暮らした最初の住人として、約3万年前の旧石器時代の暮らしと遺跡を紹介。主な道具である黒耀石で作られたナイフを用いて切れ味を体験。ダンボールが簡単に切れてしまうほどの刃先の鋭さに驚きの声があがりました。
▲土器の名の由来である「縄目」のほか、貝塚の存在を示す貝殻や竹を使って粘土で観察。実際の縄文土器にはどんな道具で、どのような模様がつけられているのか、拓本で観察しました。
続いて縄文時代に海が押し寄せた市内の様子をスライドや史跡神明貝塚の動画で学びを深めました。貝塚から発見された貝殻も土器の模様を付ける道具になっていることを粘土で体験。縄や竹で作られた工具でも様々な模様を付けることができること、実際の土器のかけらを使った拓本では鮮明な模様を観察することができました。
参加された小学生をはじめ、各テーブルでお手伝い役を担った教育学部の学生さんたちからも驚きの声と体験をとおして、縄文人のくらしと縄文時代の海の時代の存在が伝えられた機会になりました。
【体験ワークショップ】からくり屏風をつくろう!
12月11日(日)に体験ワークショップを開催します。
体験ワークショップでは蓄音機の上演や昔のおもちゃ作りをします。
作る昔のおもちゃは「からくり屏風」です。今回が今年最後のワークショップになります。
からくり屏風は2枚の板と、4枚の横長の紙を組み合わせて作る不思議なおもちゃです。
こちらのパンダの絵を・・・・
くるりん・・・
くるりんくるりん・・・
パッ!!
ネコの絵に大変身!
さらにくるりんし続けると、ペンギンやヒツジの絵にもなります!
そんな不思議なからくり屏風!いっしょに作ってみませんか♪
体験ワークショップは申し込み不要です。おもちゃの材料も用意してあります!
当日の午前10時30分と午後2時からの計2回開催しますので、お時間までに郷土資料館にお越しください!
【体験ワークショップ】
日時:令和4年12月11日(日)午前10時30分~・午後2時~
場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)
内容:蓄音機の上演
紙芝居(春日部の昔話)
昔のおもちゃづくり(からくり屏風)
対象:幼児~小学生(保護者同伴可)、蓄音機の上演は大人のみの参加可
費用:無料
申込:不要(開催時間までに郷土資料館におこしください)
※参加者多数の場合、人数制限をさせていただく場合がございます。当日はマスクを着用いただき、体調が優れない場合は参加をお控えください。
【臨時休館のお知らせ】
令和4年12月10日(土)は教育センターの施設点検のため、郷土資料館は休館となります。
ご迷惑をおかけしますが、ご来館の際はご注意ください。
12月11日(日)は通常通り開館します。
考古学講座第3回を開催しました
11月26日(土)、考古学講座第3回を開催しました。
本日は、1.分類と型式学、2.春日部市の弥生時代の遺跡についてお話をしました。分類と型式については、遺跡から出土した遺物はまず分類されて評価されること、型式には装飾的要素と機能的要素が型式設定の基準となっており、機能的要素には技術革新により変化するものと、機能の実用性が喪失して生物の痕跡器官のように装飾などとして残る場合があるなどのお話をしました。
春日部市の弥生時代については、弥生時代という時代設定について簡単に触れたうえで、弥生時代の再葬墓(さいそうぼ)が営まれた倉常地区の須釜(すがま)遺跡についてお話ししました。
さて、今回もアンケートに多くの質問をいただきました。そのなかのいくつかをとりあげます。
●神明貝塚出土の人骨から検出されているDNA型、パブログループN9b2は、大陸のどこにみられるのか。
N9b2型は大陸にみられるということではなく、これまで発見されているDNA型のなかで珍しいものとのことです。安達登氏のご研究によると、近年、東北地方で発見された縄文時代の人骨から確認されているそうです。
(全国遺跡報告総覧『埼玉県春日部市 神明貝塚総括報告書』 P.214~216)
●型式名は誰が提唱して誰かが認定するのか?
型式名は、研究者が他の型式と分類できる一群の遺物を見出した時に提唱されます。提唱されても、さらに研究が深められ、細分されたりすることもあり、多くの研究者が使い始めるのには時間がかかります。生物学の学名のように型式名を「認定」するという公式な手続きはなく、通常は、研究者の支持の多い型式名が使われます。
●向ヶ丘弥生町貝塚ではなぜ、壺が完全な形で見つかったのか?現在、貝塚は消えてしまっているのか?
「完全な形」で見つかったのは、土器が埋まっていた深さまで、工事などの影響を受けなかったからです。ちなみに壺の首から口縁の部分は失われています。
1884年(明治17年)、有坂鉊蔵(しょうぞう)、坪井正五郎、白井光太郎が連れ立って、向ヶ丘弥生町の貝塚に出かけ、有坂が「弥生式土器第1号」を発見します。この5年後の1889年、坪井が「帝国大学の隣地に貝塚の痕跡有り」と題する報告を雑誌上で行いますが、この報告は周辺の地ならし工事が盛んになって貝塚が失われようとしていることへの危惧によるものでした。
(石川日出志2008『「弥生時代」の発見・弥生町遺跡』シリーズ「遺跡を学ぶ」050 新泉社)
東京大学構内など周辺地区は「本郷台遺跡群」として埋蔵文化財包蔵地、また国指定史跡「弥生二丁目遺跡」となっています。貝塚としての登録もあります。
●弥生時代の再葬墓について、福島県須賀川市牡丹平遺跡の再葬墓の人骨はなぜそろっていないのか?再葬される骨はどの部位が多いか?地域で残される骨に差はあるか?
牡丹平遺跡の再葬墓人骨は、解体・選別から壺に収納する過程で選別されたものと考えられます。設楽博己氏のご研究によると、東北地方の再葬墓では、全身の骨を部分ごとにくまなく選択して土器に納める傾向があり、関東から中部高地地方では、大腿骨など下半身の大きな骨や歯だけなど部分の骨を納めた例が多いようです。いずれにしても、二次葬の遺跡から発見される人骨は確認例が少ないので、遺跡の新発見により、この傾向が変わる可能性もあります。
(設楽博己2008『弥生再葬墓と社会』 塙書房)
●弥生時代の再葬は一部の人(支配していた人)がされるものか?
残された墓の形態や規模に差別化が少ないことなどから、再葬墓の文化圏では、一部の人ではなく、多くの人が再葬墓に埋葬されたと推測できます。
【出動!出張授業】「でばりぃ資料館」in武里南小学校
令和4年12月1日(木)に武里南小学校出向き、第3学年の児童に向けた、『でばりぃ資料館』を開催しました。
教室と3年生フロアを使用し、昔の学校の道具、昔の家庭の道具、約60年前の武里について、の3ブースを展開して開催です。
約60年前の武里についてのブースでは、空中写真を眺めてもらいました。
実はこの空中写真は武里南小学校(旧校舎:大畑小学校)がまだできていない頃の写真です。学校ができていない当時はどんな土地だったのか知ることができたでしょうか。
昔の学校の道具についてのブースでは、児童にとっても身近な教科書や給食の食器など、見慣れたものの比較でした。現在、給食の飲み物といえば個々に配られる牛乳ですが、当時は脱脂粉乳をポットから注ぐ形式だったので、ポットは珍しく感じたようです。ちなみに、地域の方から昔の暮らしについて伺う機会があったようで、“脱脂粉乳=まずい”というイメージが出来上がっていました(笑)
昔の家庭の道具についてのブースでは、羽釜や洗濯板、火のしなどを展示して、実際に触ってもらいました。見たことがあるという道具も多く、用途を知っている児童もいたのですが、手動式の洗濯機は初めて見る子が多かったようでたくさん質問を受けました。
現代の電気で動く家電と、昔の電機以外を動力とした道具について、エネルギーの変化についても学ぶいい機会になったのではないでしょうか。
武里南小は郷土資料館からやや距離があり、なかなか学校として訪れるのが大変なようで、先生方からも“来ていただけて本当に助かります”と感謝の言葉をいただきました!
第3学年の郷土学習はもとより、それ以外の学年でも内容等打ち合わせをさせていただければ、随時出張いたしますので、ぜひ“でばりぃ資料館”をご活用ください!
「幸松っ子くらぶ」郷土カルタすごろくで遊ぼう
令和4年11月28日(月)に幸松小学校で行われた、放課後子ども教室「幸松っ子くらぶ」で“郷土カルタすごろくで遊ぼう”を開催しました。
幸松っ子くらぶは図書室・図工室・音楽室・幸松ルーム・体育館を使用し、各部屋で異なるイベントが開催され、子どもが自分の興味があるイベントに参加する方式です。(郷土カルタすごろくは幸松ルームでした)
今回は1年生から5年生まで合計9名の児童が訪れてくれました。
すごろくの前に、ひとつ「牛島の藤の伝説」という紙芝居を読みました。牛島の藤は幸松小学校からもほど近く、知っている子も多いようです。そこにはいったいどんな伝説が伝わっているのか、みんな真剣になって聞いてくれました。
続いては郷土カルタすごろく!
郷土カルタすごろくは、春日部郷土カルタをモチーフにした郷土資料館オリジナルのすごろくです。一般的なすごろくとは異なり、サイコロの出目の数だけ進むのではなく、出目に割り当てられたマスにワープしながら進みます。
大きなサイコロ!
みんな溢れんばかりのパワーで投げていました(笑)
止まるマスによってはクイズに答え、ポイントをゲットしながら進行していくのですが、これが大盛り上がり!低学年から高学年まで楽しそうに遊んでくれました♪
最後に郷土資料館から持参した手作りおもちゃでも遊んでもらいました!
郷土資料館に置いてあるから、遊び足りなかった子はいつでも遊びに来てね♪
子どもたちからは「世界一面白かった!!」との感想が(笑)
想定した以上にみんな夢中になって楽しんでくれて、私たちも笑顔で帰路につきました。
幸松小のみなさん、またお会いしましょうね!
放課後子ども教室「幸松っ子くらぶ」~お囃子教室~
11月28日(月)、幸松小学校では放課後子ども教室「第3回幸松っ子くらぶ」が開催されました。
当日は、お囃子教室をはじめ、多くのボランティアさんにより5つの教室が催され、66名の児童が参加してくれました。
お囃子教室では、地元で伝統芸能の市無形民俗文化財に指定されている「不動院野の神楽」を伝承されている東不動院野神楽保存会から4名が指導者としてお出でいただきました。
幸松小学校の1年生2名、3年生1名、4年生1名に加え、ボランティアとしてお手伝いいただいている共栄大学教育学部から1名の計5名がお囃子に取組みました。
保存会の皆さまによる模範演奏
円熟した伝統芸能の軽快な祭り囃子です
最初に保存会の皆さまによる基本的な祭りばやしをじっくりと見聞き。太鼓・締め太鼓・笛・鉦による軽快なリズムに踊り出す児童も。続いてタイヤを用いた練習、最後に祭りばやしの演奏にもチャレンジしました。
初めて体験する児童も終始集中、一心不乱に太鼓を叩きました。また次回2月に第4回目の開催が予定されていますので、この機会に興味を深め、伝統芸能を担う後継者が誕生すること期待しています。
ご多用の中、保存会の皆さま方には感謝するばかりです!
郷土資料館体験ワークショップを開催しました
令和4年11月27日(日)の午前と午後各1回ずつ、郷土資料館体験ワークショップ「紙でっぽう・ぶんぶんゴマを作ろう」を開催しました。
ワークショップで作成しているおもちゃは現在8種類ほどあり、リピートして来てくれる子も多いのですが、今日は初めて参加の子が多い日でした!
まず初めに蓄音機でレコード鑑賞です。今回は「口笛吹きと子犬」という曲です。テレビCMにも使われている曲で、曲名は知らなくても聴いたらピンとくる人も多いと思います♪
次は「火事よけ天狗」という秋葉神社の夫婦松に纏わる伝説の紙芝居を朗読しました。
起承転結がわかりやすく、読みやすい紙芝居を探している方にはおすすめですよ!
今日作ったおもちゃは2つ。まずは、紙でっぽうからです。
新聞紙など長方形の紙を1枚用意するだけで作れる紙でっぽう。折り方もさほど複雑ではなく、折り紙で遊んだ経験があれば小さな子でも簡単に作れちゃいます!
2つ目はぶんぶんゴマです。
これも作り方は簡単!板に2つ穴をあけ、糸を通して結んだら完成です。糸を引っ張って、緩めるタイミングを見極めることが遊び方のコツ!コツさえ掴めれば永遠に回していられますよ。
そしてお土産の缶バッジづくり。初めて参加してくれた子は興味津々!
嬉しそうに持ち帰ってくれて、こちらも嬉しくなります♪
次回の体験ワークショップは令和4年12月11日(日)に開催予定。おもちゃは「からくり屏風」です。
年内最後のワークショップとなります。2週間という短い間隔での開催となりますが、お時間がありましたらぜひお越しください!
広報誌等でも告知をいたしますので、詳しくはそちらをご確認ください。