学校の様子

「第3章、完結」〜自らを律し、自らを育てた1年〜

やわらかな春の光が差し込む中、おおぐろの森中学校では、本日、令和6年度の修了式が行われました。1年間の歩みを締めくくるこの日、子どもたちは清々しい表情で登校し、体育館へと集いました。会場には、緊張感の中にもどこか穏やかさが漂い、この1年間の経験が子どもたちの心と体にしっかりと根づいていることを感じさせてくれました。

修了式の中で、校長先生から全校生徒に向けて、「答えのない教室」と題して、一つの問題が出されました。

問題:「今年度、なぜおおぐろの森中学校は学級・学年閉鎖が0件だったのだろうか」

子どもたちは、少し戸惑いながらも、周囲の仲間と3~4人のグループを作り、話し合いを始めました。「みんなが手洗いやマスクをきちんとしていたからじゃない?」「具合が悪いときに無理をしないで休むようにしていたよね」「友達が風邪をひいたとき、さりげなく気遣っていた」など子どもたちは、積極的に意見を出し合い、具体的な行動に着目した声が多くあがりました。実際に子どもたちから出てきた意見は以下のとおりです。

 人(自分)について考えられる原因

  ・手洗い、うがい、マスク

  ・消毒

  ・生活習慣(食事・睡眠・運動など)

  ・早寝早起き

  ・清掃をきちんとした

  ・体調が悪くても無理をしなかった

  ・栄養バランスがとれている

 施設(校舎や立地条件等)について考えられる原因

  ・新しい校舎で衛生的

  ・掃除をしていた

  ・加湿器

  ・二酸化炭素濃度を測る装置

  ・風通しが良かった

  ・周囲に植物がたくさんある

 他の人(周りの人、保護者、先生等)について考えられる原因

  ・周りの人も気をつけて生活していたから

  ・保健委員会や給食委員会の人が活発に活動していた

  ・マスクをした方が良いとか自分なりに考えて判断することができていた

子どもたちの意見や考えを確認したあと、校長先生が考えた原因も紹介されました。

 人(自分)について考えられる原因

  ・手洗い、うがい、マスク

  ・生活習慣(食事・睡眠・運動など)

  ・人混みを避けていた

 施設(校舎や立地条件等)について考えられる原因

  ・木造校舎(ヒノキチオール)→殺菌作用

  ・自然が多い環境(癒し効果)

  ・自然換気システム

 他の人(周りの人、保護者、先生等)

  ・栄養バランスを考えた食事の提供

  ・食育、保健教育の充実

  ・保健委員の加湿器設置

これらの問いに「正解」はありません。しかし、“正解がないからこそ考える”、それがこの問いの本質です。校長先生は、全校生徒に向けてこう話しました。

 「とにかく、考えることをやめないでほしい。『答えのない教室』にこそ、人としての成長の種が隠れている。たくさん考えれば、脳が育つ。そして、それは心の成長、人間性の成熟にもつながっていく。校則やきまりがなくても、自分自身で“どうすべきか”を判断できる人になってほしい。」 校長先生は、令和6年度の子どもたちを「自律を意識し、その力を確かに伸ばしてきた1年だった」と振り返りました。そして、新たな年度を迎える1・2年生には、「主体性をもって、さらに自律を深めていってほしい」と、期待を込めて言葉を贈りました。

学校教育において、私たちはどうしても「答えのある問題」ばかりに目が行きがちで、「正解にたどり着くこと」を評価しがちです。しかし、現実の社会や人生においては、明確な正解が存在しない問いや課題のほうが多くあります。人との関わり、進路選択、社会の中での役割……それらは一人ひとり異なる背景や価値観の中で選び、悩み、決断していかなければならない“答えのない問い”です。

 だからこそ、今回の修了式での校長先生の問いかけは、子どもたちにとってとても大きな意味を持つものだったと思います。自分たちの行動を振り返り、仲間と意見を交わし、様々な視点に触れながら思考を深めていく。それは、知識を得ることとはまた違った、心の成長や価値観の広がりを生む時間でした。

 このように「常に考えること」思考を止めないこと」は、まさに本校が教育目標として掲げている「自律」に直結する力です。他者からの指示を待つのではなく、自ら問い、自ら選び、自らの意思で行動できること。それが「自律」の本質であり、これからの社会を生きていく子どもたちにこそ求められる姿勢です。

 「答えのない教室」――それは、これからの時代においてますます必要とされる学びの場であり、私たちがこれからも大切にしていきたい教育の在り方です。

また、新年度、新学期に向けて生徒指導主任の田根先生からは、「悩みがあるときは、一人で抱え込まず、周囲の大人や相談機関を頼っていい」「自分自身や、周囲の大切な人を守る時間であってほしい」という言葉が伝えられました。

 修了式後には、各教室で通知表の配付が行われました。担任の先生から一人ひとりの生徒へ、1年間の歩みについて丁寧に言葉がかけられ、子どもたちは静かに、そして真剣な面持ちでそれに耳を傾けていました。通知表に書かれた文字だけでなく、先生方が伝える言葉に込められた想いや、これまでの姿を見守ってきたまなざしが、子どもたちの心にしっかりと届いていたように思います。

 ある教室では、「この1年、周囲に気を配って行動できていたね」と伝えられた生徒が、照れくさそうにしながらも誇らしげに頷く姿が見られました。また別の教室では、少し苦戦していた教科について「途中から取り組み方を工夫しようとしていたこと、ちゃんと見ていたよ。その姿勢がとてもよかった」と語りかけられた生徒が、嬉しそうに微笑んでいました。

 各教室の空気は、1年前とは明らかに異なっていました。不安げだった表情、戸惑いがちな姿、緊張していた声・・・そうしたものが、今ではすっかり落ち着きと自信に変わり、子どもたちの顔ににじみ出ていました。中にはすでに「来年はこんなことにチャレンジしたい」と、次の目標を自分なりに見つけている生徒もいました。まるで、自らの手で次の一歩を切り拓こうとしているかのように、期待と決意に満ちていました。

 こうして、令和6年度おおぐろの森中学校の「第3章」は、静かに、そして確かに幕を下ろしました。この1年間、子どもたちは実に様々な経験を積み重ねてきました。日々の授業はもちろん、体育祭や合唱コンクール、学年ごとの校外学習や宿泊学習、部活動や委員会活動に至るまで、学びと挑戦の連続でした。時にはうまくいかないこともあり、悔し涙を流したこともあったでしょう。しかし、そのすべてが「自分と向き合い」「仲間と支え合い」「乗り越える力」となって、子どもたちの中に息づいています。

 4月からは、新たな1年が始まります。1年生は2年生となり、後輩を導く立場になります。2年生は3年生として、学校の中心となって行動することが求められます。それぞれが、それぞれの立場で「自律した姿」をどう表現していくか。そして、どんな新しい物語を紡いでいくのか・・・おおぐろの森中学校の「第4章」に、今から大きな期待が膨らみます。

 最後になりましたが、保護者の皆様、地域の皆様におかれましては、今年度も本校の教育活動に多大なるご理解とご協力を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。日々の見守りや行事でのご支援、地域との連携活動へのご協力など、子どもたちの成長の礎は、まさに皆様の温かいお力添えによって支えられております。

 令和7年度も、どうぞ変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。おおぐろの森中学校の新たな1年が、子どもたち一人ひとりの輝きと可能性に満ちた素晴らしい歩みとなることを願っております。今後とも、よろしくお願いいたします。