ほごログ
花積って思いのほか有名な地名です(広報補足その4)
引き続き、広報かすかべ10月特集号の補足です。今回は、 #考古学 をかじった人は必ず知っている「花積」の #縄文土器 について。 #かすかべプラスワン
広報の記事では、次のように紹介しました。
花積って有名な地名
花積は、考古学をかじった人は必ずしっている地名です。なぜなら花積下層式土器という「花積」の地名がつけられた今から約7千年前の土器の型式になっているからです。
花積には貝塚があり、周辺に比べて小高いため、東京湾が春日部まで広がっていた時代に陸地だったことが実感できます。
花積には、花積貝塚という、県内では数少なく、学術上欠くことのできない縄文時代の貝塚が所在します。なぜ学術上欠くことができないのか。それは、花積下層式土器(はなづみかそうしきどき)の標式遺跡だからです。標式とは、聞きなれない言葉ですが、考古学で一つの型式を的確に示すことのできる典型的な遺跡・遺物を指すものです。考古学上、花積下層式土器という土器の型式を決定づけた遺跡ということです。
花積貝塚は、明治時代中頃には既に貝塚として知られていましたが、広く知られるようになったのは、昭和3年の大山史前学研究所による発掘以後になります。大山史前学研究所は、軍人であり考古学者でもある公爵・大山柏が邸宅内に設置した遺跡の調査研究機関です。
大山史前学研究所の発掘調査により、花積貝塚の貝層は中間に土層を隔てて二層あり、上部貝層から勝坂式土器が多く出土したのに対し、下部貝層からは蓮田式土器が出土しました。のち、後者の蓮田式土器は細分類され、花積貝塚の下層からはじめて発見された土器型式は甲野勇により「花積下層式土器」と命名され、縄文時代前期初頭の土器型式と定められます。
花積下層式土器は、胎土中に繊維を多量に含み、羽状縄文(右撚りと左撚り縄をつなげて文様をつけたもの)や、撚糸(よりいと)が「の」の字形に押し付けられた文様が施されている特徴があります。
大山史前学研究所が発掘した花積下層式土器はこちら。
花積貝塚では戦前の調査でも、その後の調査でも花積下層式土器は破片のみの出土であり、完全な形の花積下層式土器は発見されていません。素人考えだと、完形の土器が出土していないのに、なぜ花積下層式土器はかくも有名なのだろうか、と思うところですが、戦前、大山史前学研究所を中心とする考古学者たちが、小さな土器片であっても、資料に基づき実証的に土器研究を積み重ねてきたため、現在も花積下層式土器という土器型式名称が学術用語として使われ、広く知られているのです。
残念ながら、大山史前学研究所は昭和20年5月の空襲に遭い、収蔵していた貴重な資料は焼失・散逸してしまいました。花積下層式土器の命名の基になった写真の土器は、失われてしまいました。
花積下層式土器は、縄文時代早期と前期を結ぶ学術上重要な土器型式であり、今後の研究も期待されているようです。と同時に、考古学と春日部を結ぶ重要な土器でもあります。
郷土資料館でも、縄文土器について詳しいお客様から、花積貝塚・花積下層式土器についての展示が貧弱だと、たまにお叱りをいただきます。花積貝塚・市内の遺跡から展示に耐え得る花積下層式土器の出土例が乏しい事情をお話して、陳謝することもありますが、「花積」の名が付いた土器から、春日部に興味をもってくださる方もいらっしゃるのです。
次回は、粕壁の大池についてです。
参考文献 『春日部市史 考古資料編』、阿部芳郎『失われた史前学 公爵大山柏と日本考古学』(岩波書店、2004年)
懐かしい暮らしで元気に
11月8日(日)市内の高齢者施設の方々が #春日部市郷土資料館 を見学されました。 #かすかべプラスワン
みなさん、高度経済成長前後の生活道具をご覧になって、「若いころちゃぶ台を使っていた」とか「炭を使って、アイロンを使った」など、昔のことを懐かしんでお楽しみいただけたようです。
郷土資料館はデイサービスなど、高齢者施設の方々の見学も歓迎しています。
なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、入館は一度に30人程度までとさせていただいております。団体でご見学を希望される場合は、事前にご相談いただければ幸いです。
郷土資料館体験講座「ミニぞうりを作ろう」を開催しました
令和2年11月7日(土)に、郷土資料館体験講座「ミニぞうりを作ろう」を開催しました。
江戸打ち紐を使い、10㎝程度の小さなぞうりを編み込んでいくもので、毎年参加者の方にはご好評いただいている企画です♪
ミニぞうり作成前には、郷土の歴史に親しんでいただくため、職員が春日部市域にまつわる伝説の紙芝居を朗読しました。
職員の説明を聞きながら、皆さん丁寧に編み込んで綺麗なミニぞうりを完成させていました。
講座終了後のアンケートには、難しかったけど楽しかったというご意見をたくさんいただき、充実した時間を過ごしていただけたようで私共もうれしい限りです。
こちらはミニぞうりの見本です。飾りにぴったりミニサイズ♪
郷土資料館では、今後も新型コロナウイルスの感染防止対策を徹底しながら、講座などの企画を行っていく予定です。
広報等ご確認いただき、ぜひご参加ください!
【体験ワークショップ】埼玉県民の日(11月14日)パタパタをつくろう
11月14日(土)の埼玉県民の日、体験ワークショップをおこないます。
体験ワークショップでは、手作りのおもちゃを作ったり、蓄音機(ちくおんき)でレコードの音楽をきいたりします。
今回作るおもちゃは「パタパタ」です。板返しとも言って、上から下へ板がパタパタと音を立てて裏返っていく、ちょっと不思議なおもちゃです。
申し込みはいりません。午前10時30分と午後2時からそれぞれおこないます。
県民の日は、郷土資料館でおもちゃを作って、たのしく遊びましょう。
体験ワークショップ「パタパタをつくろう」
日時:令和2年11月14日(土)午前10時30分~・午後2時~
場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)
作るおもちゃ:パタパタ(板返し)
蓄音機の上演もあります。
費用:無料
申し込み:不要。予定の時間に郷土資料館におこしください。
*参加者多数の場合、人数制限をさせて頂く場合がございます。当日、会場で検温させていただきますが、体調の悪い方は参加をお控えください。またマスクの着用をお願いします。
放送大学の方が、郷土資料館を見学しました
令和2年11月1日(日)に放送大学の学生の方が、面接授業「埼玉の街道」の一環として郷土資料館を見学
されました。
皆さん歴史に興味のある方なので、学芸員の解説に深く頷きながら聴いている方や、メモを取られる方、常設展示のパンフレットを手に取る方も多くいらっしゃいました。
資料館を見学した後は、粕壁宿の現在の街並みを見学に行かれました。
今回は20名の幅広い年齢層の方にお越しいただきました。
郷土資料館が皆さんの学びの一端となれば幸いです。
郷土資料館では随時団体見学の受付を行っております。なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、入館は一度に30人程度までとさせていただいております。事前にご連絡の上、ぜひご来館ください。
「1960年代の春日部」の写真を掲示しています
夏季展示でご好評いただいた「1960年代の春日部」展で使用した写真を、資料館入口横の掲示板に展示しています。
しばらくの間、定期的に入れ替えながら展示します。
教育センターにお越しの際は、ぜひご覧ください。
また展示する写真を掲載した展示図録は、下記のリンクからPDFをご覧になれます。
(PDF)1960年代の春日部(春日部市郷土資料館)(2.4MB)
船も車も通れる橋(広報補足 その3)
引き続き、広報かすかべ10月特集号の補足です。今回は庄和北部の西宝珠花の、江戸川に架けられていた橋「宝橋」について。川舟を並べ、その上に板を渡して橋にした船橋でした。 #かすかべプラスワン
人工の河川である江戸川は、その開削以来、舟運が大変盛んな河川であり、西宝珠花は河岸場の町として賑わった集落でした。宝珠花は、中世以来の郷村であり、江戸川が開削されたため、西宝珠花と東宝珠花(千葉県野田市)に「分断」された地域でもありました。そのため、江戸川に隔てられていても、東西の交流は盛んで、渡船場もあったようです。
しかし、明治時代以降の河川改修により、江戸川の川幅が広がり、堤防もかさ上げされ、さらには、東武鉄道の粕壁駅や杉戸駅に連絡する自動車の交通量が増加してきてことにより、架橋への要望が高まっていきます。
大正13年(1924)、西宝珠花の有志が宝橋組合を結成し、県内でも珍しい船橋を架橋しました。永久橋でなく、船橋とした理由は、未だ舟運業が盛んであり、蒸気船や和船の航行を妨げないためでした。郷土資料館では、宝橋組合の資料を保存していますが、そのなかに、次のような宝橋の設計図面があります。
図面から読み取れるように、合計11艘の舟が板橋を支え、中央部の舟が旋回することで、幅11.2mの舟が通過できる航路をつくりました。
宝橋の架橋によって、舟運業を妨げず、自転車・自動車・リヤカー・人力車など、渡船では向こう岸に渡りづらかった車両も通行することが可能となりました。橋の維持管理のため、通行料が必要な有料の橋でした。通行の回数券や定期券も発行されていたようです。
戦後、自動車輸送が普及し、江戸川の舟運が衰退していくと、県道の整備にあわせて、宝橋を永久橋に架け替えすることが計画され、昭和33年(1958)3月、鉄筋コンクリート製の宝珠花橋が架橋されました。橋開きの当日には、西宝珠花・東宝珠花の両岸の住民が押し寄せ、混雑した様子がうかがえる古写真もあります。
「船も車も通れた」というのが、舟運と陸運が共存していた当時の市域の交通事情を象徴しているようです。わたしたちが、普段は何気なく渡っている橋にも、そこに橋が架けられた経緯があると思いを巡らせると、ワクワクするのは私だけ!?
次回は、豊春地区の花積、花積下層式土器の話です。
武里中学校が、郷土資料館を見学しました
令和2年10月29日(木)に武里中学校特別支援学級の生徒が、郷土資料館を見学に訪れました。
館内の竪穴式住居や宿場の模型を見学しながら学芸員の説明を受けました。
学芸員が説明をしながら質問やクイズをだしたところ、“勘がいいな~”と感じたり、“よく知っているな~”とこちらが感心してしまうような回答を聞く場面もありました。
今と昔の春日部市の航空写真を見比べて、武里中学校の場所が変わっていることに気付くと、
「ホントだ!」「えっ、知らなかった」という声が聞こえてきました。通っている学校の歴史を学ぶよい機会になったようです。
郷土資料館では随時団体見学の受付を行っております。
なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、入館は一度に30人程度までとさせていただいております。事前にご連絡、ご相談のうえ、ぜひご来館ください。
【常設展】 #博物館実習生 による展示【 #展示替 】
春日部市郷土資料館の常設展示の1コーナーを展示替しました。この展示は、8月にお手伝いいただいた博物館実習生の皆さんによるプロデュース展示です。 #かすかべプラスワン
展示のテーマは「道具を受け継ぐ」。粕壁地区の大工さんの道具について寄贈者ご本人から聞き取り調査し、調書を作成、キャプションもつくってもらいました。みなさん、真剣に、そして懸命に資料を一つ一つ丁寧に調査し、どうしたらご覧いただくみなさんに伝えたい事が伝えられるのか、苦心しながらキャプションをつくってくれました。そのときの記事はこちら。資料の陳列まで実習でできれば、良き実習だったのですが、時間切れ。少し時間が経ってしまいましたが、このたびその成果をお披露目することになりました。
今年の12月末まで展示予定です。ぜひ、ご覧ください。
松栄学園高等学校が、郷土資料館を見学しました
令和2年10月22日(木)に松栄学園高等学校が、課外授業の一環として郷土資料館を見学に訪れ、竪穴式住居や粕壁宿の模型を見学しながら、学芸員の説明を受けました。
粕壁宿の模型を見ながら、宿場の特徴を答えてもらったところ、「畑が多い」「建物が整っている」など、計画的に整えられた町場の雰囲気を感じ取ってくれたようです。
千歯こき(せんばこき)を使った脱穀体験後の自由時間には、生徒さんが各展示コーナーに散らばり、幅広く見回ってくれたことが印象的でした。
郷土資料館では随時団体見学の受付を行っております。
なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、入館は一度に30人程度までとさせていただいております。事前にご連絡、ご相談のうえ、ぜひご来館ください。