2024年4月の記事一覧

道徳ノート001「短所を武器とせよ」

  001「短所を武器とせよ」

テーマ:自信をもって前向きに
内容項目:希望と勇気、強い意志
< 2学年 >

生徒の学び・気付き

・授業を通して、苦手な事から逃げたりするのではなく、立ち止まって目を向ける事で自分の短所を活かしていくことが大切だと思いました。

・自分も短所、欠点は考えれば考えるほど出てくるけど、それをプラスに考える。その短所を理由に何かを諦めない。挑戦していきたい。

・今まで自分は短所を無理やり長所にしていたけれど短所は人にはあるものだから、無理に長所にせず、短所に向き合っていつか時間をかけてでもいいから長所にできるようにしたい。

・自分のハンデをマイナスにとらえるのではなく、そのハンデをどう活かすのかを考えてプラスとする大切さを知れました。足りないものを埋めようとするのは本能で努力ではないというストイックさがすごいなと思いました。「自分が思うままにやる」自分を信じて一生懸命に活動していく凄さを尊敬したい!!欠点は直らないと思うのではなく、直そうとしていないんだ!!っていうのを気づかされました。自分の欠点をどう生かすかを考えて今後につなげていきたいと思います。

 ・自分にしかできないことをしようと思った。自分のできることをしようと思った。何事も自信をもってやろうと思った。

授業の概略:バレーボール選手としては身長が低いがゆえに、頭を使い技術とスピードを磨くことで逆にそれを武器にして世界と戦ってきた竹下佳江選手。人間は誰でも短所・欠点と向き合うことで新たな創造性に出会う。

道徳教材 ひじり坂をあがると・・・

ひじり坂を上がると…
 
 ぼくは、三郎、聖ヶ丘中学校の1年生。バスケットボール部に所属し、日々楽しく生活している。
 先日、帰り学活のときに、美化給食委員の貴司が
 「今度、21日の放課後、地域清掃を行います。参加希望する人は今週中に申し出てください。」と呼びかけていた。
「部活動がある人はどうするんですか?」という質問が出た。
「清掃活動は、4時半までなので、清掃活動が終わった後、部活動に出られます。」と答えていた。ぼくは、部活動を休んで掃除とかありえないな…と思った。
 その後。貴司から、
「オレも委員として参加するから、参加しないか?」と誘われた。
「いや、清掃は教室だけで充分だから、いいや。」と言って断った。
 
 その日の放課後、部活動の後に、先輩たちが地域清掃の話をしていた。仲のよい裕二先輩や、部長の宏行先輩も1年の時参加したというのだ。ぼくはボランティア活動には全然興味をもっていなかったので、あこがれの先輩たちが参加したということに驚いた。だから思わず、
「清掃活動したんですか?部活動の時間を削ってですか?」
と言ってしまった。すると、宏行先輩は笑顔で答えてくれた。
「オレもね、最初はそう思ってた。正直、面倒くさいと思っていたんだけど、美化給食委員だったから参加したんだよ。でも、参加してよかったと思ったよ。」
由希先輩もうなずきながら答えてくれた。
「わたしも同じようなものよ。美化給食委員の友達に誘われて参加したんだけど、やっぱりやってよかったと思った。」
「三郎もシュート入れる前にゴミ入れてこいよ!」
宏行先輩はシュートを決めながら、すすめてくれた。宏行先輩や由希先輩は一学年先輩だけれど、自分よりずっと大人に感じた。先輩たちがかっこよく思え、ぼくの心は揺れた。その時、クラスの美化給食委員の真理子から、
「三郎も前期、美化給食委員だったんだし、やろうよ。」
と声をかけられた。部活動をやっている方が絶対楽しいと思ったけれど、一回くらいはやってみようかと思い、
「じゃあ、やるか。」
と答えた。そして、ぼくは翌日、貴司に参加することを伝えた。
 
 地域清掃の当日、集合時間の3時半に玄関前に集合した。いつもだったら、練習前のランニングが始まっている時間だ。先輩に誘われて、つい、参加すると約束してしまったが、あまり乗り気ではなかった。

 「ボランティアの皆さん、ありがとうございます。これから、地域清掃を始めます。皆さんは、4時半まで、落ち葉掃き、周辺のゴミをひろってください。よろしくお願いします。」
 とうとう地域清掃が始まった。ぼくはひじり坂周辺の担当になった。活動は僕たちだけではなく、地域イベントで見かけたことのある地域の方が数名参加していた。
 先輩が担当したときは、歩道一面に落ち葉が広がっていたと聞いたが、そこまでではなかった。でも、道のわきに広がっている落ち葉を見て、
「これ、終わるのかな。」と不安な気持ちにかられた。よく見ると、落ち葉だけではなかった。道の端には、たばこの吸い殻がけっこう落ちていた。植え込みの下の方を見ると、お菓子のビニール袋やマスク、空き缶まで落ちていた。そんなゴミを拾いながら、落ち葉を掃き始めた。
「落ち葉っていつの間にかなくなっているけど、誰かがキレイにしてくれてたのか。」とか、「アスファルトの道に落ち葉が広がっているけど、土じゃないんだし、自然になくなることはないんだよな…。」などと思いながら、掃き続けた。大きなゴミ袋はすぐにいっぱいになった。先生の掛け声で終了したが、時間があっという間に感じた。集合場所に行くと、みんな落ち葉のいっぱい入った袋をもって集合していた。
 
 集合場所で、担当の先生からお話があった。
 「一年生の皆さん、今日、初めて聖ヶ丘中学校の地域清掃に参加していろいろ気付いたことがあると思います。ゴミがあまり落ちていないな?と思った人いますか?」
 半分くらいの生徒が手を挙げていた。
 「先週、2年生がだいぶ落ち葉を掃いてくれたので、みなさんはそこまで大変ではなかったと思います。先週は、2年生には遊歩道も担当してもらったのですが、そこには落ち葉はあってもゴミはほとんどありませんでした。それには理由があります。実は遊歩道付近は、聖ヶ丘子ども・おとしより見守り隊の皆さんが毎朝7時50分から8時半までゴミ拾いをされているそうです。知っていましたか?」
 何人かの生徒がうなずいていた。
「毎日通っている道だけど、そうだったのか…。」裕二先輩がつぶやいていた。
 先生は続けて説明してくれた。
「実は、本日、子ども・おとしより見守り隊の隊長の方がお見えになっています!こちらへどうぞ!」
「皆さん、こんにちは。私は聖ヶ丘子ども・おとしより見守り隊の隊長を務めさせていただいております。聖ヶ丘に在住しています。この地域清掃は聖ヶ丘の青少年問題協議会の皆さんがスタートした活動で、ここ数年、聖ヶ丘中学校の皆さんと地域の我々が一緒に活動しています。この時期、皆さんと一緒に活動するのを楽しみにしています。また、私たちは毎朝早朝にゴミ拾いをしていますが、なぜだと思いますか?」
「キレイな道を歩くと気持ちいいから?」貴司が答えた。
「そうですね。皆さんがキレイな遊歩道を歩いて気持ちよく通学、通勤してくれればいいなと思って毎朝活動しています。きっかけは、実は防犯です。」
「防犯?」首をかしげている生徒が多かった。
「防犯なら、暗くなるころにパトロールをすればよいと思うでしょう。それも行っていますが、防犯はパトロールだけではないのです。実は、ゴミ拾いをすることも防犯につながっているのです。『割れ窓理論』という言葉を聞いたことがありませんか?」
 隣のクラスの美化給食委員の奈緒子が答えた。
「1枚の割れたガラスを放っておくと、いずれ街全体が荒れて、犯罪が増えてしまう…だったと思うんですけど。」
「その通り。逆に言うと、公園や地域の清掃活動などで街がキレイになれば、将来発生しうる犯罪を未然に防ぐ効果があるんですよ。まあ、防犯の為に始めたことですが、地域がキレイになって私たちも朝から爽やかな気持ちになります。もう14年間この活動を続けています。」
「すごい…。」
 みんな絶句していた。地域の為に早朝から毎日活動するなんて…。隊長さんは続けて話してくれた。
「本日みなさんが一緒に地域清掃してくれたことも地域の為になっているのです。皆さんが清掃活動をしているのを多くの方が見ていました。中学生がこんなに頑張っているのだから、自分たちも街をよくしたいという気持ちになった方が多くいると思いますよ。私たちもみなさんが一生懸命活動している様子を見て、元気をもらいました。明日からまた頑張ろうと思います。」
 たった一回のボランティアだけど、少しだけでも地域の為になったのなら、自分が参加した甲斐があったな…と思えた。
「三郎、お疲れ様!やってどうだった?」真理子が聞いてきた。
「やってみたら、結構楽しくなってきて、時間もあっという間だったな。」
「よかった。終わったとき、爽快感あったよね。来年もやろうよ。」
と言われた。
「そうだな!やるわ。」
と答えた。この前とは違う気持ちで答えた。

 翌朝、いつもの時間に家を出た。学校へ行くいつもの道、ひじり坂を上がると、学校が見えてくる。ぼくは、勢いよく坂を駆け上がった。振り返ってみると、いつもの景色がちょっと違って見えた。

                         (三浦 摩利  作)
                         (くどうのぞみ 絵)