不便益
今日、12月18日(水)は「東京駅完成記念日(東京駅の日)」「アクアライン開通の日」です。
東京駅は、1908年から工事が開始され、6年半の歳月と、280万円(当時の金額)の費用をかけて1914年(大正3年)12月18日に完成式が行われました。そして、その2日後の12月20日に開業しました。
一方、東京湾の中央部を、神奈川県側の川崎市から千葉県側の木更津市までをほぼ一直線に結んで横断する東京湾アクアラインは、1997年12月18日に開通しました。これにより、木更津~川崎間が約100kmから三分の一の30km、所要時間も約90分から約30分に短縮されました。
当時の人々は「便利になった」と、さぞかし喜んだことでしょう。
ところで、皆さんは「不便益」という言葉をご存じでしょうか。
先日、読んだ「生きづらさを自分流でととのえる(ウェルビーイング的思考100)」という本の中で、京都先端科学大学教授の川上浩司さんが使っていた言葉です。この「不便益」とは、文字通り”不便さがもたらす益”のことで、「不便だからこそ得られる益がある」という、前向きな不便を表わしているそうです。
例えば、富士山頂まで一気に行けるエスカレーターがあったとしたら、一見「便利!」と思えますが、それでは山登りの計画を立てるときのわくわく感や苦労して登ったときの達成感が失われます。また、日頃何気なく使っているナビは、便利なものですが「あなたは考えなくていい。こちらを信じろ」と言っているようなもので、「考えなくていい」は「考えるな」と同じで、そこでは主体性は否定されるというのです。
不便益の重要なキーワードは「主体性が持てる」ということなんだそうです。
1年生の数学の授業で、今年度導入している「答えのない教室」は、まさに不便益の学習です。便利な公式や規則性を教えてしまえば、生徒はそれに数字をあてはめて難なく答えを求めることができるものを、公式や規則性そのものを考えさせるようにしているのです。当然そこには主体性がなくてはなりません。
12月7日(土)、2年生の数学では、「平行四辺形の面積を4等分するには、どうしたらよいだろうか」という学習をしました。生徒たちは、3人グループになり、アイディアを出し合いながら4等分する方法を次から次へと考え出しました。これだって、「4等分するにはこんな方法があるよ」と教えてしまえば知識としては身につくかもしれませんが、そこには主体性は存在しませんし、なによりも記憶に残っていかないのではないかと思います。
不便な思いをしても、遠回りしても自ら考え導き出したものには大きな価値があります。
普段、通勤し慣れている道のり、今度、休みの日に時間があったらぶらぶら歩いてみようかと
思っています。何か新しい発見や面白いものが見つかるかもしれないと思うと、たしかにわくわくしてきます。