学校長の窓

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第6回朝会講話「役立たずから、役立つものへ」

 みなさん、おはようございます。
 10月30日に、政府は2012年度の文化勲章の受章者を発表しました。その中に、ノーベル医学生理学賞に決まった京都大学教授の山中伸弥さんが含まれています。すでにみなさんも知っているように、山中教授はさまざまな組織や臓器になる能力をもつ「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」の開発に成功しました。この細胞は、移植による再生医療への応用や、治療法の開発など医療の可能性を大きく広げました。今回のノーベル賞は開発から6年というスピード受賞となりました。
 その一方で、今までやっかいなものとして、単なるゴミとして捨てられていたものが、役に立つものとして脚光を浴びています。それはカニの甲羅です。カニといえば、おいしい身を食べるもの、あるいはカニミソとして味わう、というようにもっぱら食べるものというイメージがあります。
 ところが、今までゴミとして捨てられていたカニの甲羅が、手術用に使う縫合糸や、やけどの治療に利用する人口皮膚として使えるとして、注目を集めています。カニの甲羅には、アミノ酸多糖類のセルロースであるキチンという成分がたくさん含まれています。カニの甲羅の新しい使用法は、このキチンを取り出して原料とします。縫合糸をキチンで作ると、人体がもっている酵素がこの糸を分解してしまうため、抜糸の必要がなくなるのです。また、やけど治療としての人工皮膚は、キチンがもっているといわれる傷を治す力を利用するものです。
 カニの甲羅は、今までゴミとして捨てていたもの。役に立たないものでした。しかし、キチンという成分に目を向けたことで、役立つものに変身したのです。ノーベル賞とはいきませんが、大発見だろうと思います。カニの甲羅は、私たちに「先入観をもたず、見方を変えろ」「発想を転換しろ」と、教えてくれているに違いありません。
 終わります。