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カテゴリ:郷土資料館

桜川小学校の3年生が郷土資料館を見学しました

令和6年10月18日(金)に桜川小学校の3年生が郷土資料館を見学しました。

 

今日は楽しい社会科見学の日だそうです!市役所新庁舎、郷土資料館、豊野工業団地(バスの中から見学)、折原果樹園と1日かけて回るとのことで、大喜びの様子♪

 

郷土資料館では、常設展示室、企画展示室、鉄道高架PR展示室を紹介しました。
常設展示室では、縄文時代の竪穴建物の模型や、江戸時代の粕壁宿の模型をみながら学芸委の解説を聞きました。

常設展示室見学風景

縄文時代の人は何を食べていたのか、どういう暮らしをしていたのか、模型の中にある食材や道具などから探っていきました。
衣服がシカなどの動物の皮で作られていることなど知らないことがいっぱいでしたね!

 

企画展示室見学風景

企画展示室では、約80年くらい前の民具について解説を受けました。
現在、企画展示室では「くらしのうつりかわり」展を開催しており、多くの民具が展示されています。
今年は、「むかしのどうぐ人気投票」を行っており、児童たちにも任意で参加してもらいました。それが功を奏してか、投票のために道具の名前に注目する子もチラホラ。普段は民具の外見だけに注目する子が多いのですが、参加型になると展示の見方も変わるようです

 

鉄道高架PR展示室見学風景

鉄道高架PR展示室では、県鉄道高架建設事務所の職員の方に解説をしていただきました。
鉄道の高架化は、鉄道を高い位置に設置して暮らしを便利にする事業です。いわゆる“開かずの踏切”が春日部にも存在しており、児童たちもその存在は知っている様子。そういった身近な問題の解決から、駅周辺の活性化など児童の視点からもわかりやすく解説してもらいました。

モニター釘付けの児童

自由見学の時間には、モニターに釘付けになる児童の姿も(笑)

 

今日は雨が降ったりやんだりとはっきりしないお天気ですが、きっとどんな天気でも楽しめてしまうでしょう!
そんな風に思わせてくれる、元気いっぱいの桜川小3年生でした!
ぜひまた来てください♪

#ハルカイト 見学のススメ(2) 大型 #民具 目白押し

前回の記事に引き続き、ハルカイト(大凧文化交流センター)の見どころをご紹介。

第2弾は、地域の歴史民俗を紹介する展示室。

郷土資料館は狭く、展示スペースが限られていますので、特に歴史時代のパートでは立体的な資料が少なく、よく言えばコンパクト。悪く言えば迫力に欠ける展示です。仮に立体物を展示すると、資料1点だけで終わってしまうから、仕方なく、こじんまりとした展示をしています。反対にいえば、大型の民具があっても、展示できない、日の目を見る事がないということです。

そうした課題もあり、ハルカイトの展示では、郷土資料館では展示しづらい大型の民具をいくつも展示してみました。

その一例が、これです。

写真:タコ

 資料の名称は「タコ」。大人4人を棒をもち、地面をドスン、ドスンをたたく道具です。堤防やあぜ道、土間などの地固めで使ったものです。下吉妻地区で使用されていたものです。次の道具も同じ用途で使われたものです。

写真:ジギョウツキ

名前は「ジギョウツキ」。赤沼地区で使用されていたものです。

「ジギョウ」とは「ジンギョウ」ともいい、漢字では「地形」と書くようです。地形とは、国語辞典では地固めのことを指しますが、地元では水塚(みづか)などの地固めした土地のことを「ジンギョウ」と呼ぶようです(松伏町史資料2『民具』)。

本来は、前の「タコ」と同様に立てて使うものなので、立てて展示したかったのですが、資料の高さが314cmもあり、天井にぶつかってしまうため、残念ながら寝かせて展示です。

いずれも、市民の皆様から寄贈されながらも、長く別置された倉庫に保管されていて、なかなか日の目を見ることがなかった資料です。中川低地の県東部地域で特徴的な水塚(みづか)、あるいは堤防などを築造するのに使われた、特色ある資料といえるでしょう。

ほかにも、郷土資料館では、お目見えできない迫力ある民具が並んでいますので、ぜひ民具マニアの方も、そうでない方も、ご覧いただければ幸いです。

【 #10月15日 】 #今日は何の日? in春日部

今から70年前、昭和29年(1954)10月15日は 市の広報誌が発行された日です。 #かすかべプラスワン

今は「広報かすかべ」と呼んでる市報のはじまりの話。当時は「春日部市政だより」という名称でした。創刊号は、瓦版のような一枚摺り物。もちろんモノクロです。創刊号の紙面はこれです(広報誌縮刷版より)。

画像:春日部市政だより創刊号

(旧)春日部市が誕生が誕生したのは、昭和29年7月1日のこと。紙面の冒頭には、山口宏市長の「市政だより発刊に際して」のあいさつ。小見出しには「田園都市の建設を念願」とあります。

当時の市の人口は3万人余り。かつて宿場町だった粕壁の市街地から少し離れると農村=田園風景が広がるまちでした。それを「田園都市」と言い当てているのでしょう。合併直後は、財政・課税上の問題もあったようで、「本格的な建設に入るのは来年度」と断ったうえで、「学校を相互に結ぶ幹線道路の建設」を掲げ、「生成的な田園都市」を目指すと述べています。

現在の「広報かすかべ」は、市政・制度や諸事業の予定をお知らせする記事が大半を占めていますが、紙面は、市制施行後3か月を経た創刊号ということもあり、議会や様々な事業の報告、各種組織や委員会の構成員の報告など、市民に対して市政をフィードバックする記事が多いのが特徴です。裏面には、市章が決定したこと、東京で開催された全国地方自治綜合大会にて、大畑の「ミロク踊り」(やったり踊り)が三等に入賞したこと、ミス春日部が決まったこと、などを報じています。

丸山鼎市議会議長は、市政だよりの発刊を「その行政を市民に周知せしめ、市民の声を取り入れて、所謂民主的行政の運営を図るべく、即ち役所と市民のつながりとしての役割が極めて大なるもの」と位置付けています。春日部の市政について周知する媒体として、期待されていたことがうかがえるでしょう。

担当者が個人的に面白いと思えたのは、市政だよりの題字です。「春日部市政だより」の文字、「春」「部」「市」「政」はとても美しい草書体です。揮毫した人が誰なのかわかりませんが、非常に格式高い題字だと思います。いかに親しみをもって手に取ってもらえるか、工夫を重ねている現在の広報誌では考えられない題字といえましょう。ちなみに、草書体の題字は次号の第2号(昭和29年11月18日発行)で早くも楷書体に替わり、幻の題字となりました。昭和29年度は創刊号~4号、30年度は5号~10号、31年度は11・12号、32年度は13・14号と発行回数もまばらでしたが、昭和33年度の第15号(昭和33年4月10日発行)から「毎月1回・10日発行」となります。「春日部市政だより」は、第70号(昭和37年11月10日発行)を記念し、「広報かすかべ」に改称し、「紙面の刷新改変をはかる」ことになりました。当時の発行部数は、7500部と記されています。

広報誌(市政だより)のバックナンバーは創刊号に関わらず、広報かすかべの縮刷版でご覧いただけます。図書館や市政情報室などに配架しています。

ちなみに縮刷版は、昭和46年(1971)7月に発行されました。縮刷版の田中市長のあいさつ文には「新庁舎も完成し、進展する社会に即応して、なお一層の施策の充実を期するときにあたり、この17年間における市政のできごとの要約版ともいうべき「広報かすかべ縮刷版」を発刊することとした」とあります。当時、流行の最先端となる旧市庁舎(二代目市庁舎)の完成を記念して、市政が「躍進」するなかで、過去を顧みる試みがなされたといえるでしょう。しかし、縮刷版をみると、原本が破けているもの(第16号など)もあり、昭和46年当時、古い資料が処分されつつあり、17年間の市政をふりかえる(広報誌のバックナンバーを集める)ことが困難であったことがうかがえます。

「温故知新」とは使い古された言葉ですが、過去を顧みて、新しい道を切り拓くことは、70年経ち、新しい庁舎での業務が始まった今にも求められている、と感じるのは私だけでしょうか。

過去の今日は何の日?in春日部シリーズ→1月1日版3月14日版3月27日版4月1日版4月28日版6月2日版6月3日版6月10日版7月31日版9月1日版9月16日版11月25日版

過去の今日は何の日?in春日部シリーズは、上のリンクからお読みいただけます。

郷土資料館【手作りおもちゃクラブ】を開催しました

令和6年10月13日(日) の午前と午後各1回ずつ、郷土資料館手作りおもちゃクラブ「ペーパーローリングを作ろう!」を開催しました。

 

蓄音機上演風景

まずは蓄音機の上演から。
使用している蓄音機は100年ほど前に使われていたもので、電気を使わず、ゼンマイで動きます。

 

紙芝居の読み聞かせ

紙芝居の読み聞かせは「蛇女房」という鶴の恩返しにも似たお話です。この日作ったおもちゃも見ようによっては蛇のようにみえるかも?

 

おもちゃ作り風景

おもちゃ作りでは「ペーパーローリング」を作りました。40年くらい前には、お祭りの屋台で大ヒットしていたようです!

シュルシュルッという音も心地よく、自然に戻ってくるので何度でも遊べるのがうれしいおもちゃです♪

 

缶バッジ作り

最後はおみやげの缶バッジ作りをしておしまいです。
実はこのバッジマシン、来てくれたこどもたちに喜んでもらうべく、毎度他課から借りてきています(笑)
今日も喜んでもらえたようで何よりです!

 

次回の手作りおもちゃクラブは11月10日(日)と14日(木)に開催予定です。
詳しくは広報紙等に掲載いたします。それぞれ別のおもちゃを作る予定なので、ぜひ楽しみにしていてください!

#常設展 #プチ展示替 しました

常設展示の「水とのたたかい」のコーナーの展示資料を展示替えしました。新出資料の武里小学校の日誌です。

今回展示した日誌は、昭和22年(1947)のもの。昭和22年といえば、カスリン台風の水害が起きた年です。

水害のきっかけとなった、利根川の堤防の決壊は、9月16日の午前0時に起こりました。洪水の濁流は、日時をかけて県東部の中川低地を襲い、最終的には東京まで浸水することになったのは、以前も紹介した通りです。

 日誌から、水害発生時の学校の対応が明らかになります。

日誌の9月16日条には次のように記されています。

水害予防により全校児童、授業第一時にて打切、帰宅さす

水害が発生した当日、児童は通常通り、武里小学校に登校したようです。しかし、すでに利根川の堤防は決壊しており、濁流が押し寄せてくることはわかっていました。武里小学校では、「水害予防」、すなわち水害に備えるため、授業を一時間目で終え、児童を帰宅させたことがわかります。学校では、水害に備えるため、急遽宿直を2名体制にもしました(通常は1名)。

武里近辺では日中はさしたる被害がなかったようですが、夜になると半鐘が鳴りやまず、宿直の先生は騒がしい一夜を過ごしたそうです。

宿直の先生の記入欄には次のようにあります。

古利根川より浸水のおそれ時をかさねるに従ひ増大す。されど朝に到るも未だ浸水せず。

16日には、古利根川の洪水の恐れが危惧されながらも、17日朝になっても浸水被害はなかったと記録されています。

しかし、17日には近隣からの避難者が学校に集まり、学校は教室を開放しています。現代でも小学校の校舎は避難所に指定されていますが、戦後直後の時代でも困った方たちが集まる場所だったのですね。武里小は、古利根川の旧流路に発達した自然堤防の上に所在していますので、武里地区のなかでもひときわ標高が高い土地になっていることも、地元の方たちは知っていたのでしょう。

武里村では、字備後で古利根川が17日午後1時に決壊し、越水が起きています。日誌では「一ノ割方面ニ浸水」ともあり、翌17日には周辺の被害が次第に生じてきたことがわかります。その後、武里小学校はどう対応したのか。学校の再開はいつだったのか。

あまり饒舌に語ると、せっかくの展示を見に来ていただけませんので、この辺りでとどめておきます。

詳しくは展示で紹介していますので、ぜひご覧ください。

【東部地区文化財担当者会リレー展示_都鳥が見た古代】松伏町役場でパネル展が開催されています

10月28日まで、松伏町役場で、「都鳥がみた古代」のパネル展が開催されています。

 

松節町役場パネル展

松伏町役場は北越谷駅から東へ約5㎞の位置にあります。展示は、松伏町役場本庁舎入ってすぐの町政情報コーナーで行われ、この場所には、普段から松伏町内の貝塚である本郷貝塚と栄光院貝塚の出土土器が常設展示されています。

このうち本郷貝塚の土器群は、縄文時代後期の優品の蓋付(ふたつき)注口土器などから構成され、埼玉県指定文化財になっています。

本郷貝塚出土縄文土器及び石器(松伏町ホームページ)

 

公共交通機関でのアクセスする場合、せんげん台駅、北越谷駅から茨急(茨城急行)バスです。北越谷駅からは、平日は約10分ごとにバスが出ていて便利です

見学できる時間は、役場の開庁時間である月曜日から金曜日の8時30分〜17時15分ですのでご注意ください。

この機会にぜひお出かけください。

開催期間 令和6年10月4日(金曜日)~10月28日(月曜日)

開催場所 松伏町役場本庁舎1階 町政情報コーナー 松伏町大字松伏2424番地

開館時間 午前8時30分~午後5時15分

休館日 土曜・日曜・祝日

お問い合わせ 048-991-1873(教育文化振興課直通)

 

リレー展示は、下記日程で開催予定です。

10月4日から10月28日 松伏町役場 パネル展示

11月2日から12月1日 羽生市立郷土資料館 パネル展示

12月14日から令和7年1月13日 越谷市立図書館展示室 パネル展示

1月25日から3月9日 八潮市立資料館 資料展示

3月15日から4月8日 白岡市立歴史資料館 資料展示

4月12日から4月29日 吉川市中央公民館 パネル展示 

5月3日から5月25日 久喜市立郷土資料館 資料展示

6月3日から7月21日 幸手市郷土資料館 資料展示

7月29日から8月24日 蓮田市文化財展示館 資料展示

9月5日から9月19日 加須市パストラルかぞ パネル展示

10月24日から11月26日 三郷市わくわくライブラリ― パネル展示

令和8年1月6日から3月1日 宮代町郷土資料館 資料展示

くらしのうつりかわり展のみどころ(その2)

前に紹介した「くらしのうつりかわり」展。血も涙もない総選挙「むかしのどうぐ人気投票」も絶賛実施中です。

毎年恒例とはいいながらも、地味に展示資料やパネルを変えていますので、少し変わった点を紹介させていただきます。

写真:くらしのうつりかわり展全景

例年の「くらしのうつりかわり」展では、資料をギュウギュウに詰め込んでいました。

ところ狭しと資料を展示するのが、春日部市郷土資料館流。だって、展示室が狭いんですもの。

少し見栄えが悪くたって、背に腹は代えられません。せっかく見に来てくださっているのですから、おなか一杯になるように、資料をたらふく紹介したい。そういう、展示の技法(思想?)です。

しかし、ギュウギュウだと見栄えが悪く、ごちゃごちゃしていて見ている方も(実は並べる方も)疲れます。なので、今回は、春日部市郷土資料館らしくない、若干ゆったり目の展示としました。写真奥の「むかしの家のなかの道具」のケースは例年よりも陳列するものを若干ですが、減らしています。

また、はじめて展示するモノも増やしました。

写真:せんばこき

題して「千歯こき、大集合!!」

職人が一つ一つ手づくりした「むかしの道具」は、同じ名前でも、一つ一つに個性があって、背景がある。

たとえば、写真の左手前の千歯こきの台木には、墨で文字が書かれていますが、他の二つにはその痕跡がありませんし、左上段の千歯こきは、他の2つに比べて歯の数が少なくなっています(歯のことを「穂」というそうです)。

団体見学で来館してくれた小学校のみなさんには、千歯こきの体験をしてもらっています。

体験につかう千歯こきは、別にもう一つありますから、つかったものと並べ、同じ道具でも、よーくみると少しずつ違いがあることに気づいてほしい。そんな思いを込めて千歯こきを招集しました。

実は、展示場所を決めたあと、まだ千歯こきが収蔵されていることに気づきました。本当の大集合はまた別の機会を用意できればと思っています。

 

事業名:くらしのうつりかわりーなつかしのくらしの道具展ー・なぞとき郷土資料館THE THIRD MISSION

会 期:令和6年10月8日(火)~令和7年3月2日(日)

費 用:無料

【手作りおもちゃクラブ】ペーパーローリングを作ろう!

10月13日(日)に“手作りおもちゃクラブ”を開催します。

 

今回作るおもちゃは「ペーパーローリング」です。

 ペーパーローリング

郷土資料館で作るおもちゃは動力に電気を使わない、身近にある材料で手作りできるものになっています。電気を使わない遊びなんて、今日では探す方が難しいかもしれませんね。
もちろん下準備や、作るうえでのコツは必要ですが、懐かしさと手作り感満載に出来上がるおもちゃが“手作りおもちゃクラブ”のウリです♪

ペーパーローリングの遊び方はコチラ


 シュルンッと伸び縮みする剣のようでカッコイイ!
勢いよく振りすぎると、ぐにゃりと折れ曲がって壊れてしまうのですが、そのギリギリを狙うのが楽しかったりします(笑)

 

手作りおもちゃクラブは申込不要、おもちゃの材料も資料館で用意しています。
当日の午前10時30分と午後2時からの計2回開催しますので、お時間までに郷土資料館にお越しください!

 

【手作りおもちゃクラブ】
日時:令和6年10月13日(日)午前10時30分~・午後2時~
場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)
内容:蓄音機と紙芝居の上演
   おもちゃづくり(ペーパーローリング)
費用:無料
申込:不要(開催時間までに郷土資料館にお越しください)

 

 

考古学講座第1回目を開催しましたー慈恩寺原北遺跡の旧石器

考古学講座風景

9月28日土曜日、今年度の考古学講座が開講しました。5回連続の講座で、1日目の本日は、「考古学とは?」と「春日部のどこに遺跡があるか?」、「春日部の旧石器時代」についてお話いたしました。内容は、昨年度とほぼ同様ですので、ご興味がある方は昨年度の記事などをご参照ください。

また本日は、慈恩寺原北遺跡の石器を会場でご覧いただきました。

慈恩寺原北遺跡は、東武アーバンパークライン豊春駅の北西方向、花積(はなづみ)地区に所在します。大宮台地上に立地し、標高約17mです。

平成17年に開智学園の校舎建設に先立ち発掘調査が行われ、旧石器時代、縄文時代、古墳時代、平安時代の遺構が確認されました。

このうち旧石器時代は、関東ローム層の最下部の約3万年前の層から58点の礫、石器、剥片が出土ました。

特に興味深いのは石器に使われている石材が多様なことです。群馬県域を中心に分布するガラス質黒色安山岩(あんざんがん)、栃木県矢板市高原山(たかはらやま)産の黒曜石(こくようせき)のほか、新潟県阿賀野市笹神(ささかみ)丘陵産と推定される珪質頁岩(けいしつけつがん)、碧玉(へきぎょく)、瑪瑙(めのう)などがあり、当時の人々の活動や交流範囲の広さを示しています。

これらの石器は「慈恩寺原遺跡出土旧石器時代石器群」として、春日部市指定文化財になっています。

慈恩寺原北遺跡の旧石器

 

次回は10月26日(土曜日)、内容は「発掘調査の方法・層位学」、「春日部の縄文時代」です。本日の続きもお話ししますので、お配りしたテキストをお持ちください。

#総選挙 資料がしのぎ削る戦い「くらしのうつりかわり展」幕開けです

毎年、秋から冬にかけて恒例の小学校地域学習展「くらしのうつりかわり~なつかしのくらしの道具展~」が、本日10月8日よりはじまりましたよー

写真:くらしのうつりかわり展

今回で41回目となる「くらしのうつりかわり」展。毎年、同じような内容、同じ資料を陳列する恒例の展示です。なぜ、同じようになるのかといえば、小学校の地域学習の単元にあわせた展示だがら。学習内容は毎年そう変わるものではありません。毎年、小学3年生になる子どもたちが見に来て、社会科学習の参考にしてくれています。

ただ、飽きっぽい性格の担当者は、毎年、同じモノを作業的に並べるのが苦痛でたまりません。

が、、、今年は少し様変わり。どのあたりが変わったのか、何度かにわけて紹介します。

今日は、変更点お知らせの第一弾。今回イチオシの企画。その名も「第一回 むかしのどうぐ人気投票~展示資料、入れ替え計画~」です。

画像:資料人気投票

趣旨は、ご観覧いただいた皆様に、好きな資料、気になる資料、イチオシの資料などなど、なんでもよいので投票してもらい、展示室の人気者(ならぬ、人気モノ)を決定するものです。割とよくある企画だと思います。

ただ、少し違うのは、その結果が次の機会に反映されることでしょうか。順位をつけて、人気モノは、次期(来年度)の展示の”センター”に陳列します。反対に、人気が得られなかったモノは、第一線の展示室から脱落し、郷土資料館の収蔵庫へ。いったん最前線から退いていただき、皆さんへのお見えはまたの機会に。というように、某アイドルグループの「総選挙」のようなやり方で、資料と資料にしのぎを削ってもらおうとする企画です。

企画のねらいはいくつかありますが、一番は、観覧者のみなさんのニーズを知る。展示の担当者が見てもらいたいといくら思って伝えたところで、皆さんのニーズとズレたままでは、結局、敷居の高い、古いくさい博物館になってしまいます。ニーズに鑑みながら、どのような資料をどのように紹介すればよいか、皆さんが郷土資料館に求めているものは何なのか、考えていきたいと思います。

もう一つは、副題の「展示資料、入れ替え計画」に関わるもの。陳腐化されがちな「くらしのうつりかわり」展を蘇らせること。コロナ禍を経て、小学校の団体見学が減り、代わりに出張授業「でばりぃ資料館」の回数が増えました。そうしたなかで、小学校地域学習向けの「くらしのうつりかわり」展は、今までとは違う役割を果たしていかなければならないと、個人的に感じています。皆さんのニーズを知ることにも関わりますが、ニーズを踏まえ、資料や展示方法を吟味、入れ替えを毎回繰り返していけば、展示の内容が次第に洗練されていくことになり、「くらしのうつりかわり」展がまた息を吹き返すことになるのではないか、と期待しています。

ただし、人気が得られなかった資料は、おはらい箱になるのではありません。郷土資料館の重要な使命として、資料を適切に保存し、後世に伝えることがあります。資料にとって、展示室という華やかな舞台に立つことは、喜ばしいことだとは思いますが、照明があてられ、体験コーナーでは不特定多数の方に触られることは、資料の保存上にはあまりよろしくありません。ですから、展示室からいったん下がることで、資料のコンディションを整えることにもなり、その資料が後世に引き継がれることにもつながっていくのです。展示から保存、保存から展示、という博物館資料のサイクルを循環させるためにも、いったん収蔵庫に下がることは何も後ろめたいことではありません。そのあたりが、「総選挙」とやらで、芸能生命をかけて勝ち負けを争うアイドルと違うところでしょうか。

資料と資料を争わせる、血も涙もない企画ですが、どんな結果になるのか、その結果が私たちの宿題にもなるはずで、楽しみでもあります。ご来館いただいた方にはどなたでもご参加いただけます。ぜひ、何度でも投票しにいらしてください。なぞとき郷土資料館も同時開催中です!

画像:チラシ

事業名:くらしのうつりかわりーなつかしのくらしの道具展ー・なぞとき郷土資料館THE THIRD MISSION

会 期:令和6年10月8日(火)~令和7年3月2日(日)

費 用:無料

【なぞとき郷土資料館The Third Mission】今年もいい“なぞ”入ってます

先日ブログにも書きました通り、今年も「なぞとき郷土資料館」を開催します。
なぞとき郷土資料館ポスター
開催期間中は郷土資料館の受付で、なぞときプリントを配布していますので、「なぞときやります」とお声がけください。

 

今年のなぞとき郷土資料館は、ちょっと優しめの「天使コース」と、天使コースクリア者のみが挑むことのできる難しめの「悪魔コース」をご用意しています!
というのも、例年「難しいけど楽しい」といったありがたいご意見も多くいただくのですが、難しさゆえにリタイアされる方もいらっしゃるため、どうにかクリアする喜びを感じていただけるよう、難易度を2段階に分けてみました。

 

「天使コース」は15~20分、「悪魔コース」は25~30分をクリア時間の目安としています。
「天使コース」のみで終了しても問題ありませんし、「天使コース」と「悪魔コース」を続けてやる時間がない方は、「天使コース」をクリアして、後日「悪魔コース」に挑んでいただいても大丈夫です!(その際は、受付で「天使コースクリア済み」とお伝えください)

 

今年も参加料なし!年齢制限なし!記念品あり!
ぜひ郷土資料館の見学がてら、なぞときにもチャレンジしてみてください!お待ちしています♪

 

なぞとき郷土資料館The Third Mission ティザームービー

 

 

“愛されて第3弾”
【なぞとき郷土資料館The Third Mission~重なるトゥー・リドル・ペーパーズ~】
期間:令和6年10月8日(火)~令和7年3月2日(日)
場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)
内容:なぞときプリントの配布(受付で「なぞときやります」とお声がけください)
   クリアした方には記念品をプレゼント
   自由参加
※期間中は第41回小学校地域学習展「くらしのうつりかわり」展を開催しています。合わせてご覧ください。

#ハルカイト 見学のススメ(1) #社会科見学 でご活用ください

今年8月にオープンした「ハルカイト」(大凧文化交流センター)。数回にわけて、展示の見どころを紹介します。 #かすかべプラスワン

まずは、何と言っても「大凧あげ」。毎年5月3日・5日に西宝珠花地区で行われる大凧あげは、もはや春日部の代名詞、一大観光イベントにもなっていますが、宝珠花の大凧揚げは、市指定無形民俗文化財、国選択の無形民俗文化財「関東の大凧揚げ習俗」の一つにもなっている、地域がはぐくんできた文化遺産でもあるのです。

2階の大凧文化展示室では、床面にはみ出さんばかりに貼られた、実寸大の大凧のシートをはじめ、大凧揚げの起源や歴史、大凧づくりの過程を模型や資料・パネルで紹介しています。

写真:ハルカイト大凧文化展示室

ところで、埼玉県内の小学校4年生の社会科学習では、県内の伝統・文化や特色のある地域を学ぶ単元が設けられています。春日部市の社会科副読本では川越の川越まつりや蔵造りのまちが教材として取り上げられていますが、県内の市町村では、「春日部の大凧あげ」がテーマや教材として取り上げられることもあるそうです。ハルカイトの大凧文化展示室は、その課題に応えられる、もっとも相応しい施設といえるのではないでしょうか。

市内には、巷で注目されている防災施設・首都圏外郭放水路(龍Q館)もありますので、防災学習で首都圏外郭放水路を見学したのち、県内の伝統・文化を学ぶため、ぜひハルカイトをご利用いただく、そんなルートでの社会科見学をぜひご計画ください。

そして、展示を見学するだけでなく、来館の思い出に写真も撮れます。

写真:大凧揚げ記念写真

こちらは、担当の職員がひねりにひねって出したアイデア、トリックアートで体験する大凧揚げです。手元の縄は本物の縄を使用しており、とても臨場感のある仕上がりになっています。子どもだけでなく、大人の方もはしゃいで記念撮影をされ、好評のようです。

大凧あげは、毎年5月3日・5日の2日間限定のイベントなので、年間を通じて春日部の大凧あげの魅力を発信することは、なかなか厳しい状況にありました。しかし、ハルカイトがオープンしましたから、これでもう、年がら年中、大凧あげ。いつでもその魅力に接することができるようになりました。

子どもだけでなく、大人も楽しめる展示となっています。ぜひ、ふるってご来館ください。

9月の近隣博物館・資料館の考古学情報

9月の近隣博物館・資料館の考古学情報をお届けします。(毎月28日ごろに掲載します。随時、情報を更新します。)

見学の際は、休館日等、よくご確認の上お出かけください。

(展示会_閉会日順)
・10月28日(月曜日)まで 松伏町役場 都鳥が見た古代(パネル展)

・10月31日(木曜日)まで 神川町多目的交流施設(神川町)「鏃のうつりかわりinかみかわ」

・11月4日(月曜日・祝日)まで 松戸市立博物館「異形土器 縄文時代の不思議なうつわ」

・11月8日(金曜日)まで 立正大学博物館(熊谷市)令和6年度館務実習生 ミニ企画展「立正大学のDOGU-土偶ー」

・11月14日(木曜日)まで 国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館(東京都三鷹市)「野川中流域の旧石器時代―ホモサピエンス 氷期の暮らし」

・11月17日(日曜日)まで 栃木県埋蔵文化財センター(栃木県下野市)巡回展「栃木の遺跡&発掘調査速報展」

・11月24日(日曜日)まで 埼玉県立嵐山史跡の博物館(嵐山町)ほか 比企歴史の丘巡回文化財展「比企の縄文時代ー縄文時代の道具」

・11月24日(日曜日)まで 群馬県立歴史博物館(群馬県高崎市) 第111回企画展「弥生人は二度死ぬー再葬墓ってなに?ー」

・10月12日(土曜日)から11月24日まで(日曜日) 行田市郷土博物館 第37回企画展「布をまとう―古代人の衣(ころも)―」

・11月24日(日曜日)まで 谷田部郷土資料館(茨城県つくば市) 巡回企画展「中根・金田台地区の遺跡」

・12月1日(日曜日)まで 埼玉県立さきたま史跡の博物館(行田市) 令和6年度 企画展「古墳時代の装い-おしゃれな古代人-」

・12月1日(日曜日)まで 観音塚考古資料館(群馬県高崎市)令和6年度 第36回企画展「地方から見た律令国家成立前夜 - 群馬の7世紀史を考える -」

・12月1日(日曜日)まで 大田区立郷土博物館(東京都大田区)「矢を放て!~関東の弓矢、1万年~」

・10月16日(水曜日)から12月8日(日曜日)まで 東京国立博物館(東京都台東区)挂甲の武人国宝指定50周年記念 
特別展「はにわ」

・12月22日(日曜日)まで 国立近代美術館(東京都千代田区)「ハニワと土偶の近代 」

・10月12日(土曜日)から12月22日(日曜日)まで 本庄早稲田の杜ミュージアム(本庄市)「埴輪ー本庄とその周辺地域における埴輪の導入から終焉まで」

 ・10月19日(土曜日)から12月15日(日曜日)まで 草加市歴史民俗資料館 秋季企画展 「古墳時代の草加地域」

 

(現地見学会)

・10月19日(土曜日)山野貝塚(千葉県袖ケ浦市)袖ケ浦市教育委員会

・11月16日(土曜日)真福寺貝塚(さいたま市岩槻区)さいたま市教育委員会

 

レファレンスがレファレンスを生む

春日部市内の様々なことについて、郷土資料館にお問い合わせいただくことがあります。これに的確にお応えするのも郷土資料館の一つの役割。いわゆるレファレンス(情報探し)です。 #かすかべプラスワン

先日、春日部市内の小学校・中学校・義務教育学校の校歌について調べている方から、調べ方などについてお問い合わせいただきました。昔のことだけでなく、今・現在のことも尋ねられられることもしばしばあります。今のことを理解するためには、歴史を紐解く必要があるわけですから。今と歴史はつながっていると実感させられます。

実は、校歌について調べていらっしゃる方は、庄和地区市民大学のグループの自由課題に取り組まれている方で、市内の校歌にどのようなことが歌われているのか、を調査されているそうです。校歌には、地域の名所・旧跡や自然的な景観が詠みこまれていますが、とくに「富士山」に着目して、市内の浅間信仰にも派生して、様々なことを調べていらっしゃるそうです。そうした観点から校歌を捉えてみるということ、非常に興味深く感じました。

さて、今回は、資料の利用について相談のためご来館いただきました。「学校の校歌ができたころ、かつて校舎から富士山がみえたに違いない。それを証明するために、学校の周りに建物が少ないころの写真を提供してほしい」とのご相談でした。

思い当たるものはいくつかあるのですが、さしあたり、次の写真を提供させていただきました。いずれも昭和45年(1970)に撮影されたものです。

ほごログの読者の方から、画像が小さいというご意見もいただいているので、今回はめいいっぱい大きな画像で掲載します。拡大してご覧いただくのはスマホをスワイプしてください。ちなみ、右クリックでダウンロードもできます(利用は個人で楽しむ範囲でお願いします)。

まずは、豊春小学校。写真の上に横断する道は現在の県道2号(かつての国道16号)です。

写真:昭和45年豊春小

校舎はかつての木造校舎。道沿いに大きな池がみえます。古隅田川の旧流路沿いにあたるようです。これだけ大きな池なので名前もあることでしょう。ご存じの方がおられましたら教えてください。

次は、幸松小学校です。

写真:昭和45年幸松小学校

 こちらも、かつての木造校舎。円形の体育館は、今も幸松小のシンボルです。

もう一つの円形の体育館といえば、武里小学校。

 写真:昭和45年武里小学校

こちらも、かつての木造校舎がみえます。

いずれも、周辺がまだ住宅地として開発される直前であることがわかります。

白黒ですが、もう少し俯瞰した写真をみれば、さらにその状況がよくわかります。

写真:昭和45年武里小学校の周辺

写真の中央が武里小学校。左上には武里中学校がみえます。注目されたいのは、小学校の東側(右側)の敷地。Dの字を逆さにしたような形で田んぼが広がっています。いまや戸建て住宅が立ち並ぶ備後西の住宅街となっていますが、それは、この写真の少し後のことのようです。

いずれも本邦初公開の写真です。とくにカラー写真は当時はまだ少なかったのでとても貴重な写真となります。

ご来館いただいた方に、これらの写真を提供したところ、大変喜んでいただきました。

校歌・富士山・富士浅間信仰の調査は、記録としてまとめられると聞いています。成果がまとまりましたら、まとめたものを郷土資料館にご提供いただけますと幸いです。なぜなら、次のレファレンスにつながるからです。

そうして、レファレンスは次のレファレンスに続いていくのです。私たち学芸員は、資料と資料、そして資料や歴史と人をつなぐ「コンシェルジュ」といったところでしょうか。またのご利用をお待ちしております。

#民具 のクリーニングをしました

暑い盛りも過ぎたようなので、民具のクリーニングをしました。今回の民具は、今夏に寄贈を受けた桐下駄の製作用具です。 #かすかべプラスワン

写真:クリーニング

寄贈を受けた桐下駄製作道具は、埼玉県立民俗文化センター編『埼玉の桐細工』(1987年)に報告されているもので、桐下駄製作の職人さんが亡くなられた後、使用されず保管されていたものです。

寄贈されて直ぐに展示、というわけにはなかなかいきません。資料の活用の前に、一つ一つ調書をとって整理を進めることになりますが、さらに、その前にクリーニングを行います。

たとえば、このカンナ。

写真:カンナの写真

よってよくみると・・・

写真:白い斑点

白い斑点が。カビなのかもしれません。水洗いをして、よーく陰干しをして除去しました。

つぎは、木製の道具。

写真:木製の道具

おそらく、ゲタを製作するときのカタ(型)や作業の台なのだろうと思われます。

ゴキブリの卵の跡や埃もついていましたので、水洗いしましたが、裏をみると・・・

写真:木製の道具裏面

虫に喰われて、大きく破損しています。

こういった脆弱なものは丁寧にクリーニングをしました。

クリーニングをするなかで、大正時代の墨書のあるものがありましたので、古くは大正時代から桐下駄製造をされていたお宅であることがわかりました。

今後は、『埼玉の桐細工』などを参照しながら、調書をとっていくことになります。

 

それにしても、桐箪笥や桐箱のみならず、桐下駄製作まで。春日部は本当に「桐のまち」だったこと、実感いたしました。

9/27 #ハルカイト で #ミュージアムトーク 西宝珠花の歴史を学ぶ

8月にオープンした大凧文化交流センター「ハルカイト」でミュージアムトークを行います。

当日は、ハルカイトと郷土資料館の職員が、各展示室を解説します。

どうぞこの機会に、大凧文化交流センター「ハルカイト」にお越しください。

 

日時:令和6年9月27日金曜日 10:00から12:00

場所:大凧文化交流センター「ハルカイト」(春日部市西宝珠花593 宝珠花小学校跡地)*集合場所2階大凧文化継承室

定員:30名(お申し込み順)

講師:ハルカイト職員 春日部市郷土資料館学芸員

お申し込み:9月25日水曜日までに、下記へお電話でお申し込みください。

春日部市大凧文化交流センター「ハルカイト」 (048)748-1833

受付時間8:30~17:15 休館日:毎週火曜日

 

(過去のほごログより)

8月8日に行われたミュージアムトークの様子

#大凧文化交流センター 「 #ハルカイト 」オープン

大凧あげの背景 #ハルカイト 展示室より

【新発見!】見川喜蔵の文書(2)

前回紹介した安永3年の借金証文。差出人の安左衛門が郷土の偉人見川喜蔵であると紹介しました。

なぜ、安左衛門が見川喜蔵といえるのか。その秘密は、文書に捺されているハンコです。拡大してみましょう。

画像:安左衛門のハンコ

印文を見ると、右から「知擧」と彫られているようです。安左衛門の諱と考えられます。

「知擧」の名は、前回紹介した見川喜蔵と同じ諱です。粕壁・成就院の見川喜蔵の墓(市指定文化財)には、喜蔵の事績とともに彼の諱が「知擧」であったことが刻まれています。安左衛門という通り名は、喜蔵の息子も名乗っていますので、見川家当主が襲名する名前であったと考えられます。ですから、この安左衛門は見川氏、そして後に活躍して様々な事績を遺す見川喜蔵であると考えられるのです。

実は、これまでの調査で、見川喜蔵の名前が確認される最古の史料は、安永9年(1780)4月のもの。粕壁宿喜蔵が、捉飼場御用のため人馬を差し出す旨を藤塚村名主へ通知する古文書でした(慶応義塾大学文学部古文書室蔵「村鑑雑集 上」)。同年に喜蔵は粕壁宿の問屋(宿場役人)を勤めているので、おそらく問屋の職務として藤塚村名主へ通知したものと考えられます。

喜蔵の最古の古文書が安永9年なので、これ以前「喜蔵」は何と名乗っていたのか、わかりませんでした。そのため、他の記録の見川家に関する記事をどのように理解すればよいのかが課題となっていました。その記事の内容は次の通りです。

(安永8年)正月、名主・問屋八郎左衛門、家開発以来両役相勤、御検地帳預り居、帳元名主ニ有之、然所病身ニ付、伊奈半左衛門様御役所江休役願上、跡役見立候迄相名主鉄郎次壱人ニ而相勤、同人親安左衛門後見、二月御検地帳鉄郎次江引渡(「公用鑑 下」『春日部市史』近世史料編Ⅱp712)

意味は、安永8年正月、名主八郎左衛門(関根氏)が病身のため名主・問屋役の休役を願い、跡役が決まるまで相名主鉄郎次が1名で両役を勤めることにになった。鉄郎次の親安左衛門がこれを後見し、同年2月には関根家の検地帳が鉄郎次に引き渡された。粕壁宿では、安永7年まで関根氏と見川氏の両家が名主・問屋役を勤めていましたが、関根氏(八郎左衛門)が休役したため、鉄郎次(見川氏)が名主と問屋と勤めることになったのです。しかし、鉄郎次は、後の喜蔵と同一人物であるのか、はたまた親の安左衛門が、後の喜蔵と同一人物であるのかが、上の記事から読み取ることができません。

しかし、今回発見した安永3年の借金証文によれば、安左衛門が「知擧」(後の喜蔵)と名乗っていますので、のちの喜蔵は当時安左衛門と称していたことがわかりました。したがって、安永8年正月の名主鉄郎次は、喜蔵の息子(後の安左衛門)、後見人となった親の安左衛門が後の喜蔵であるということが、ほぼ確定されることになったのです。

ちなみに、喜蔵と名乗って以後は、今回の借金証文とは別のハンコが使われていますが、印文はやはり「知擧」。安左衛門を改め、喜蔵と名乗る時期がいつなのか、今後考えなければなりませんが、息子の鉄郎次が安左衛門を名乗ったタイミング、すなわち後見人が不要になった段階に、喜蔵と名乗ったのではないかと推察されます。喜蔵という名前は宿行政の前線を退いた後のいわば隠居的な名乗りだったのかもしれません。

長年、見川喜蔵を追いかけてきた担当者は、上の古文書のハンコが「知擧」であるとわかったとき、小躍りする気持ちになりましたよ。個人的には、見川喜蔵の「知擧」のハンコを来館記念スタンプにしてもよいかもと思っていますが、喜ぶのは担当者だけですね。

この発見は、日本の歴史にとっては小さな一歩ですが、春日部・粕壁宿の歴史にとっては偉大な飛躍です。

【新発見!】見川喜蔵の文書

見川喜蔵といえば、天明の飢饉前後、粕壁近辺で水害が多発した時、私財を投げうって堤防の修復や、地元の人たちを指揮し、地域を水害から守った郷土の偉人として知られています。喜蔵は、のちに江戸幕府から褒賞され、また地域の人々からも慕われ、粕壁の成就院の見川喜蔵の墓(市指定文化財)には供花が絶えなかったといわれています。

史料整理を見直していたところ、一通の借金証文に目がとまりました。今回はマニアックです。

写真:古文書

古文書は次のように記されています(画像は紙が折れて一部文字が読めませんが)

   借用申金子之事

 一、金壱両壱分也

右は当午ノ御年貢ニ差詰り、貴殿江

御無心仕、只今不残慥ニ請取申所

実正ニ御座候、然上ハ何様之義有

之候共、当暮迄之内急度返済

可仕候、為後日仍而如件

         粕壁町

  安永三年午七月  安左衛門(印)

       同所 半六殿

内容は、安永3年(1774)7月に、粕壁町の安左衛門が粕壁町の半六から金1両1分を借用した、いわゆる借金証文です。借金の理由としては、当午の年貢の支払いに支障があるから、というものですが、「御年貢差詰り」は江戸時代の借金証文の常套句ですから、実態はよくわからず、詳しい理由は不明です。7月なので、夏に支払う「夏成年貢」の年貢金に不足が生じたのでしょうか。今年の暮れまでに必ず返すとしています。

宛名の半六は、粕壁で塩問屋として商売を大成する山田半六です。

注目したいのは、差出人の安左衛門。実はこの安左衛門こそ、冒頭に紹介した見川喜蔵だと考えられるのです。

どうして喜蔵なのか? その理由は・・・(つづく)

【東部地区文化財担当者会リレー展示_都鳥が見た古代】杉戸町カルスタすぎとでパネル展が開催されています

9月29日まで、杉戸町「カルスタすぎと」で、「都鳥がみた古代」のパネル展が開催されています。

「カルスタすぎと」は杉戸高野台駅から南東に直線で約1.2㎞の位置にあります。平成13年(2001)にできた、図書館、生涯学習センターが入る施設で、外観は近未来的なイメージですが、内部は木材が多用された空間になっています。図書館も、とても広い面積で作られています。

都鳥が見た古代のパネル展示は、創作室1で開催されています。

ご興味のある方はぜひお出かけください。

杉戸町都鳥が見た古代会場

開催期間 令和6年9月7日(土曜日)~9月29日(日曜日)

開催場所 カルスタすぎと 創作室1 杉戸町大字大島477-8

開館時間 午前9時00分~午後7時00分

休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)

お問い合わせ 0480-33-6476(社会教育課直通)

杉戸町ホームページ「東部地区文化財担当者会40周年記念リレー展示「都鳥が見た古代」開催のお知らせ」

杉戸町社会教育課町史・文化財担当公式インスタグラム

 

リレー展示は、下記日程で開催予定です。

9月7日から9月29日 杉戸町カルスタすぎと パネル展示

10月4日から10月28日 松伏町役場 パネル展示

11月2日から12月1日 羽生市立郷土資料館 パネル展示

12月14日から令和7年1月13日 越谷市立図書館展示室 パネル展示

1月25日から3月9日 八潮市立資料館 資料展示

3月15日から4月8日 白岡市立歴史資料館 資料展示

4月12日から4月29日 吉川市中央公民館 パネル展示 

5月3日から5月25日 久喜市立郷土資料館 資料展示

6月3日から7月21日 幸手市郷土資料館 資料展示

7月29日から8月24日 蓮田市文化財展示館 資料展示

9月5日から9月19日 加須市パストラルかぞ パネル展示

10月24日から11月26日 三郷市わくわくライブラリ― パネル展示

令和8年1月6日から3月1日 宮代町郷土資料館 資料展示

 

武里南小学校の3年生が郷土資料館を見学しました

令和6年9月12日(木)に武里南小学校の3年生が郷土資料館を見学しました。

武里南小3年生集合!

 

例年10月から開催の企画展「くらしのうつりかわり」展に合わせて来館してくれる学校が多く、その時は常設展示室と企画展示室を見学してもらうのですが、現在企画展示室は準備中です。
そこで、今回は常設展示室と“鉄道高架PR展示室”を見学しもらうことに!

鉄道高架PR展示室見学風景

鉄道高架PR展示室では、将来の春日部駅をイメージした模型や、平成28年に市内の小学生たちが作った粕壁宿の模型などを見学しました。
約10年後に鉄道高架が完了することを知ったこどもたちからは、「もうすぐ大人じゃん!」との声が!まさに、今日見学に来たみんなが新成人となる18歳、19歳の時代ですね!
これからみんなが活躍していく時代に春日部も変わっていくんです!

 

常設展示室見学風景

常設展示室では、縄文時代の竪穴建物や、粕壁宿の模型を見学しながら、学芸員から説明を受けました。

磨製石斧を持ってみる

自由時間には特別に竪穴建物内の磨製石斧(ませいせきふ)なども触ってもらいました!

自由見学の時間

自由見学の時間2

 

実をいうと、武里南小は本来別のところに行く予定だったのですが、急遽予定が変更となり、訪問先として郷土資料館を選んでくれたとのこと!
武里南小にはでばりぃ資料館で伺ったことがあるのですが、なかなか資料館に見学にくることが難しいようでしたので、今回は丁度良い機会になりました!
今年度もでばりぃ資料館の依頼をいただいているので、今度はこちらから伺います!
武里南小3年生のみなさん、またお会いしましょう!