校長室から
令和6年9月2日 2学期始業式 校長の話
7月から夏休み中の部活動では、どの会場に行っても「楽しく、一生懸命」に取り組む姿を見ることができて、多くの感動を得ました。運動部では、自分の力を発揮できた人、悔しさを味わった人。吹奏楽部や合唱部のコンクール、演劇部の公演、パソコン部の発表会等、一生懸命にやったからこそ感じられることがあったでしょう。部活動以外でも、英語スピーチコンテストや広島平和派遣の人たちも良い経験、学びになったと思います。
皆さんは、パリオリンピック・パラリンピックは見ましたか?オリンピックでも、甲子園でも、葛南大会の試合でも、気になった瞬間があります。それは、「タイム」です。試合の途中にタイムをかけてベンチに集まったり、野球のマウンドに集まったりします。何のためでしょう。さあ、周りの人と10秒間、話し合ってください。きっとバレーやバスケ、野球部員は答えられたと思います。その目的は、「嫌な流れを断ち切り、具体的な対策、作戦を共有する」ということです。バレーボールで、相手のサービスエースが連続で決まったり、バスケで3ポイントシュートを決められたり、相手に傾いた流れ、押されているムードを切って、具体的な対策・作戦を確認します。長尾先生もそういう場面で、すかさず「タイム」をかけていました。私の質問は、「みんなそれを理解していますか?」。もちろん試合に出ている人は大丈夫ですよね?ベンチやスタンドにいる下級生は、わかっていますか?更に言うと、「やばい」と思ったら自分達で「タイム」を取ることができますか? 顧問の先生に、「タイムとってください」と言えますか?
ある卒業生の話をします。一昨年の夏の葛南野球大会準決勝。顧問の先生たちがベンチに入れなくなり、急遽、私と他の先生が入りました。1点リードの6回表、エラーにフォアボールでピンチになり、悪い流れを断ち切ろうと思ってタイムをとり、ベンチからA君という選手がマウンドに行きました。効果むなしく、次のバッターにヒットを打たれ、逆転されてしまいました。すると、Aくんが「もう一回タイムをとってください」と直訴してきました。私も久々の監督代行で、もう一回タイムを取ることは直ぐに思いつきませんでした。言われて、ハッとしました。そして、もう一度タイムをとり、A君がマウンドに向かい、対策を確認しました。結果、次のバッターでダブルプレーを取り、ピンチを脱しました。7回裏最終回、同点に追いついた我孫子中が押せ押せムード。バッターが初球をサヨナラヒット!翌日の決勝戦には顧問の先生が復帰して、見事に優勝しました。私はA君に救われました。多分、私の教員人生の中でも思い出深い一つになるでしょう。その時の野球部の強さは、控えの選手が「タイムをとってくれ」と言えるくらい試合の流れをわかっているということです。
皆さんはどうですか?試合の流れ、なぜタイムか、顧問の先生の指示は何なのか、相手どう防ごうとしているのか、わかっていますか?私は時々、いろいろな部のベンチやスタンドで、「先生の言っていることわかる?」と訊くことがあります。「わかります」という子もいれば、「わかりません」と答える人もいます。「わかりません」のまま上達するでしょうか。「上級生になってから」では遅くないですか。わからなかったら、友達や先輩に尋ねるべきです。そういうお喋りが重要です。
授業も同じです。わからなければ、授業中に尋ねるのです。先生は一人しかいませんから、友達に訊きます。「後で」では、できるようになりません。我孫子中では、互いに教え合う、学び合うことを積極的に取り入れて行こうとしています。実際、いろいろな教科の授業で、人と相談したり、自分の考えを書いたりする授業になってきていると思います。それは、これからの未来を生きていく生徒の皆に必要な力を身に付けて欲しいからです。その力は、いつもの「自律」と「協働」です。自律は自分で考え、判断して、行動することです。しかし、「一人で考えろ」ということではありません。協働により、相談したり、意見を聴いたり、新たな考えを生み出したりして、自分の判断と行動に生かします。この2つの力はセットで相乗効果を生みます。我孫子中では、授業でも部活動でも、全ての学校生活を通してこの2つの力をつけていきたいと考えています。皆さんもこの2つを意識して、学校生活を送ってください。
最後にもう一つ。教えてもらったり、助けてもらったりしたら、何て言いますか?そう、「ありがとう」。一番言われて嬉しい感謝の言葉です。「感謝の気持ち」は人として最も価値のあるものです。「ありがとう」が言える人は素晴らしいと思います。そして、「ありがとう」と言われる行動をしている人も素晴らしいと思います。いろいろな場面で「ありがとう」が聞こえることを期待しています。
我孫子中の「あ」は、ありがとうの「あ」です。いつも真剣に話を聴いてくれて、ありがとう。そして、校長の話が終わると拍手してくれて、ありがとう。でも、教師の話に拍手は要りません。生徒が、友達が、頑張って発言したことに、賞賛とねぎらいの拍手を送ってください。