カテゴリ:郷土資料館
展示替はじまっています
7月2日までの企画展の資料を撤収しました。素丸書の松尾芭蕉の肖像画の軸を巻き、まさにしまおうとしたところ、軸の表紙に目がとまりました。
墨書や蔵書印があるのですが、注目は次の蔵書印です。
鼎(かなえ)を模している印なのでしょうか。やかんでしょうか。形はよくわかりませんが、文字はちょっと読みづらいかもしれませんが、印には「宜春園(ぎしゅんえん)」と印刻されているようです。
宜春園とは、江戸中期の備後の文人・石井文龍が、師匠の溝口素丸から与えられた号です。素丸も宜春園を名乗っていたといい、文龍にとっては誉れ高き名跡だったはず。その後、宜春園の名跡は、地元の文人に継承されていきました。
詳しくは、松尾芭蕉の肖像が春日部に伝来した理由を参照してください。
つまり、芭蕉の肖像の軸に「宜春園」の蔵書印が捺されているということは、まぎれもなく石井文龍の持ち物だったといえるわけです。今後、「宜春園」の蔵書印に注目しながら、他の資料を検討していけば、何か新たな発見があるかもしれません。撤収のさなか気づいた今後の課題です。終わりは始まりなのです。
さて、撤収後、次の企画展示「あなのあいた壺」展の設営が始まりました。
前の展示は、紙ものばかりでしたが、今度はうってかわって立体的な土器が並びます。資料の種別や特性によって、取り扱い方も全く違います。倒れないように、土器専用の台やテグスなどでしっかり固定しています。立体的な資料なのでどの部分を見せたいのか、担当の学芸員の個性が出るところでしょう。
終わりは始まり、ですが、展示の設営が始まったということは、これもいつか終わりを迎えるのです。
終わりは始まり、始まりは終わりなのです。
企画展示は期間限定ですので、お見逃しなく。
●春日部市郷土資料館 第68回企画展示
権現山遺跡発掘調査60周年記念「あなのあいた壺」権現山遺跡の底部穿孔壺と墓でつかわれた土器
会期:令和5年7月22日(土)から9月3日(日)
開館時間:午前9時から午後4時45分
休館日:毎週月曜日・祝日・8月5日(土)午後・8月6日(日)
会場:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15・048-763-2455)