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2025年8月の記事一覧

館収蔵資料(文化財)の調査が行われました

郷土資料館では、市指定文化財をはじめ、春日部ゆかりの様々な資料を収蔵・保存しています。

先日、埼玉県内の中世・近世移行期について調査・研究されている方がお越しになり、市指定文化財「西金野井香取神社の棟札」を実見・調査されました。

この棟札は、昭和57年に旧庄和町の指定文化財となり、現在も春日部市指定文化財として引き継がれていますが、実は、知る人ぞ知る史料なのです。ですから、『武蔵史料銘記集』をはじめ、『新編埼玉県史 資料編』など埼玉県内の史料を蒐集した刊行史料集にも収載されてきました。また、『春日部市庄和町史編さん資料(十五)中・近世資料』にも収載されています。

今回、調査された方は、これらの刊行史料集を検討するため、実物の資料を実見したいというものでした。採寸をはじめ、スケッチや写真撮影など。じっくりと、資料を実見されておられました。

 写真:資料調査のようす

さて、この「西金野井香取神社の棟札」をはじめ、西金野井香取神社には貴重な文化財が伝来しています。実は、戦前に、埼玉郷土会という郷土史団体が、史跡・文化財の見学旅行に訪れ、同社の文化財を巡見しています。

埼玉郷土会とは、埼玉県の郷土史誌『埼玉史談』を編集発行する団体です。『埼玉史談』第1巻第5号(昭和5年5月刊)には巡見の様子が次のように報告されています。

(前略)同神社(香取神社)の本殿は寛永十五年五月改築されしものとて彫刻や金具等は、同時代の特徴を遺憾なく発揮せる県下稀なる建築である。又同社の朱印状は天正十九年徳川家康より十石の地を下されたるに初まり、引続き歴代将軍よりの朱印状十二通が完全に保有されて居る。棟札には神田梶取大神とありて、徳治元年五月第一回の屋根改をなせし事を記せる物で同社に取りては有力なる資料ではあるが写し改めた様に思はる。獅子舞の面などは寛永以後の製作で、神威遠近に輝きたるに依り上流地方より奉納せられたりとの説があり、其舞は神秘的な感を与へるとの事である。(下略)

巡見が実施されたのは、昭和5年(1930)3月9日のこと。現在、西金野井香取神社に文化財として伝わるものが目白押しです。現在の評価とは異なる部分もあり、鵜呑みはできませんが、大変興味深い記事です。当日の巡見参加者のなかには、考古学者の柴田常恵や、陸軍の軍人で郷土史家の渡辺刀水、そして、『埼玉縣誌』の編さんや先の『武蔵史料銘記集』の編者である稲村坦元もいました。もしかすると『武蔵史料銘記集』に収録されたきっかけはこの巡見だったのかも、と思ったりもしますが、どうでしょうか。

いずれにしましても、今回の調査の結果・成果は・・・。私たちは、座して待つほかありません。楽しみにしております。

収蔵資料の調査。郷土資料館をご活用いただき、大変ありがとうございました。