2025年7月の記事一覧
【臨時休館のお知らせ】
令和7年7月20日(日)は、教育センターが参議院議員通常選挙の投票所として利用されます。そのため、準備を含め下記の日程で郷土資料館は休館となります。
〈臨時休館日〉
令和7年7月19日(土)午後
令和7年7月20日(日)終日
また、続く下記日程も休館となります。
令和7年7月21日(月)(海の日)
令和7年7月22日(火)(祝日と重なる月曜日の翌日)
ご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします。
甕棺のふるさと福岡県春日市一の谷遺跡
郷土資料館の甕棺については、以前も触れたことがあります。福岡県春日市からお借りしているものです。
【常設展示】甕棺(福岡県春日市出土)のキャプションを更新しました
この甕棺は、福岡県筑紫郡春日町(現・春日市)大字下白水字一の谷に所在する一の谷遺跡から発見されました。今回は、昭和44年(1969)に、旧春日町が発刊した一の谷遺跡の報告書より、当時の調査成果を紹介したいと思います。
一の谷遺跡の調査成果は『一の谷遺跡ー筑紫郡春日町大字下白水字一の谷所在甕棺等の調査』(春日町文化財調査報告書第2集1969年)にまとめられています。
一の谷遺跡は、那珂川、御笠川にはさまれた春日丘陵と呼ばれる丘陵上に立地します。遺跡の標高は約37mです。周辺には須玖岡本遺跡をはじめとして弥生時代の遺跡が集中しています。一の谷遺跡は、以前から甕棺が埋蔵されていることが知られていましたが、昭和43年5月、急遽始まった土砂搬出工事をきっかけに5月から8月までの期間で調査が行われました。
調査では、甕棺および壺棺墓29基、土壙墓22基、石蓋土壙墓1基、箱式石棺墓1基、溝状遺構4条が確認されました。甕棺は29基のうち7基が小児用の小型のもので、うち1基は壺棺でした。甕棺は2個体を用いた合わせ口のものと1個体だけの単棺があり、形の整っていない竪穴を掘り、その一側面に横穴を掘った墓壙に埋められていました。
資料館で展示している甕棺が出土した15号甕棺墓は、上下2個体の合わせ口の甕棺が不整形な隅丸長方形の穴に横穴を掘った部分に埋められていました。下の甕は、「T」字状に右内側まで張り出す口縁とその直下に山形の凸帯が1条、胴部に「コ」字状の凸帯が2条巡っています。上の甕は、肩の部分から口縁を割って使っており、胴部に「コ」字状の凸帯が2条巡ります。
甕棺内からは人骨が出土し、推定伸長149cmの20歳代の女性と推定されています。人骨には丹(に)と呼ばれる赤色の顔料の付着がありました。
一の谷遺跡がある春日市は、福岡市のベットタウンということで、いまでは、遺跡周辺も住宅街になっています。報告書の写真では、発掘調査が行われた昭和43年当時は農地が広がり、遺跡は周囲が見渡せる丘陵の上に立地していました。
一の谷遺跡の場所:33°31'26.48"N130°26'59.23"E (リンク:googlemap 地点の出典:九州大学総合研究博物館データベース)
以前の記事でもお知らせしましたが、春日市には、春日市奴国の丘歴史資料館があり、ドーム内で須玖岡本遺跡で発見された甕棺墓を発掘調査当時の状態で展示しています。
福岡方面にご旅行の際は、ぜひご見学ください。
出張授業「縄文体験教室」 in桜川小学校
7月2日(水)に、桜川小学校で縄文体験教室の出張授業をしました。
今回は、6年生3クラス78名です。
1学期最後の出張授業ともあって、講師も今一度気を引き締めて臨みました。
歴史の授業は飛鳥時代まで進んだとのことで、縄文時代は復習となります。
授業の前半はパワーポイントを使って、縄文時代の春日部や、学校の周りの遺跡について説明をしました。
また、市内の代表的な縄文時代の貝塚・国史跡神明貝塚についてもパンフレットを用いて解説します。
このパンフレットは、3月に刊行されたもので、小学生向けと、大人向けの2パターンを作っています。
続いて、後半では、班ごとに分かれての体験になります。
石器コーナーでは、実際に黒曜石製の石器を用いて段ボールを切りました。
恐る恐る石器を握って段ボールで刃の鋭さを体験しました。
貝コーナーでは、学校の周りに広がる貝塚の貝と、神明貝塚の貝の違いを説明します。
縄文時代の人が食べたものを実際に手に取って触ることができる貴重な機会です!
貝がらのクイズでも盛り上がりました。
土器コーナーでは、縄文時代の土器を実際に触ってもらいました。
持ち上げてもらうと、思ったよりも軽い!という声があがりました。
今回は縄文を付ける道具も持っていき、触ってもらいました。
土器についた模様のどれが縄文なのか、わかりやすかったようです。縄文人は、器用にさまざまな道具を活用して模様をつけていました。
桜川小学校のみなさん、ありがとうございました!
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申し込みいただいていた授業は今回で終了となりましたが、出張授業の申込みはまだまだ受け付けております!
小中学生向けの「縄文体験教室」出張授業に関しての詳細は、文化財課文化財担当までお問合せください。
お待ちしております。
県立春日部女子高の皆さんと、春日部の歴史を考えました
7月4日、県立春日部女子高の皆さんが郷土資料館を見学されました。
今回の企画は、同校の社会科担当の先生から、郷土資料館の展示解説+ミニ講座をやってほしいとオファーいただいたものです。高校は、いま試験期間中だそうで、試験勉強の最中だったためか、生徒さんは2名でしたが、社会科の先生2名、そして校長先生にもご来館いただきました。
まずは、常設展示の解説。市域の地形を考えながら、人びとの拠点がどのように変化し、歴史を歩んできたのかを、特製のワークシートを使いながら、解説させていただきました。
上の写真は、江戸時代の道しるべに刻まれた文字を読んでもらっているところです。近世の人(キンセイジン)は粕壁からどこを目指したのでしょうか、という問いです。高校生のお二人は、難無く文字を解読してくれました。
展示解説の途中、ちょうど飛び込みでデイサービスの団体さんの見学が重なり、高校生に対する解説を、お年寄りが一緒に聞く、という状況に。
いつのまにか、昔の女学生だった皆さんと、現役の女子高生と混交の団体見学に。若者からお年寄りまで、同じ資料を目の当たりにしながら、郷土や歴史について考える光景は、博物館ならでは、だと思います。
展示室の説明の後、後半戦は研修室に移って、ミニ講座。
ただいま準備中の「麦わらのかすかべ」展でも展示する資料を読んでもらいながら、春日部の近代の麦稈真田産業の歴史について考えてもらいました。
皆さんに読んでもらったのは、次の葉書です。
まずは、はがきの差出人と宛名、そして年代を読み取ってもらいました。読みなれない墨の字、旧字で解読に苦戦したようでした。
差出は、粕壁町の麦稈真田紐・帽子類の卸商野澤市十郎。宛名は、南桜井村金野井(西金野井)の汽船拠所「〇ツ」会社です。「〇ツ」とは、〇に通のマークで、現在の日本通運の前身の内国通運株式会社を指します。つまり西金野井に内国通運株式会社が運航する汽船が就航していたことを示します。年代は、葉書の消印から。消印には「丗七年」とあり、「丗」をなんと読むのかを考えてもらいました。「丗七」は37(ご名答)。ですから、明治37年6月20日投函されたことがわかります。
さて、文面を読んでみましょう、などとやっていると大学の歴史学科の演習になってしまいますので、解読した文章を一緒に読んでみました。「どんなことが書いてあるのかな」と問いかけると、非常に明解な説明をしてくれました(さすが春女生!)。葉書には、高浜(現茨城県石岡市)に送ったはずの帽子籠が届いていないと、送り先から連絡が来たので、荷物がどうなっているか確認してほしい、と書かれています。つまり、明治後期に春日部の麦わら帽子は、北関東方面に蒸気船で流通していたことがわかるのです。
そして、当時麦稈真田は西欧への重要な輸出品目として位置づけられていました。日本が近代国家へと歩んでいくなかで、春日部では麦稈真田産業が展開していくのです。さらにいえば、麦稈真田を編んでいたのは、農家の女性たち。女性たちの副業が、日本の近代化を支えていた、ともいえ、春日部の近代産業は世界の需要を支えていたともいえるわけですが、詳しいことは企画展「麦わらのかすかべ」展で。ちなみに本資料は最近公開された収蔵資料データベースでご覧いただけます。
資料を読んだあと、麦稈真田を編んでもらう簡単なワークショップにもチャレンジしてもらいました。今回は、モールを使って三つ編みの真田(三平)を編んでもらいました。写真を見ながら編んでもらいましたが、ちょっと苦戦。近代の農家の女性たちが真田を編んだことをイメージしていただけましたでしょうか。
高校生には「「汽船」って何のことでしょう」「〇に通のマークは知っていますか」などと問いかけると、知っていたり、知らなかったり。「歴史は雑学だ」というのは、担当者の恩師の言葉ですが、雑学によって、歴史世界・当時の情景がより豊かに想像できるのではないかと思います。高校生の皆さんはまだまだ若いので、いろいろなことを経験し、学び知り、自分の視野を広げていってもらえると嬉しいです。郷土資料館の見学・ミニ講座がその一助となったのならば幸いです。
試験中にもかかわらず、ご来館いただいた高校生のお二人、ご多忙のなかお付き合いいただいた先生方には改めて感謝申し上げます。担当者的にも、皆さんの反応がうかがえたので、実りある一日となりました。
春女とのコラボ、これからもどうぞよろしくお願いします。
熱い暑い夏季例大祭ー民俗芸能の公開ー
7月一週目という、例年では見聞きしたこともない短い梅雨明けとなり、この後は酷暑が予報されている令和7年の夏。その中で次週12日(土)には埼玉県から指定された無形民俗文化財『やったり踊り』が、13日(日)には春日部市指定無形民俗文化財『銚子口の獅子舞』と『赤沼の獅子舞』がそれぞれ地区の祭礼で公開されます。
それに先だって、インターネットラジオ「ゆめのたね放送局」では、春日部市内の伝統芸能に携わる皆さまの生の声が放送されます。
やったり踊り保存会の渡辺大介さんが主宰する『だいすけが勝手に応援するラジオ』では7月8日(火)午後11時~11時30分に『銚子口獅子舞保存会』『赤沼民俗文化財保存会』、そして渡辺さんと、3団体のみなさまがラジオ波で小学校での出張授業や後継者の育成・獲得など、民俗芸能が抱える課題や取り組みについて熱く語ってくれます。ラジオへのアクセスは検索サイトから「ゆめのたね放送局」へ。
乞うご期待!! そして祭礼当日の見学をとおして伝統芸能に触れてみませんか!!