カテゴリ:郷土資料館
【令和5年夏季展示_あなのあいた壺】浅間下遺跡の墓に使われた土器
今回の展示では、主役は権現山遺跡の古墳時代前期の底部穿孔土器ですが、「墓に使われた土器」として浅間下遺跡の縄文時代中期の深鉢を展示しています。
浅間下遺跡航空写真(中央やや下の水色シートが写っている部分が浅間下遺跡、右側は江戸川、左上は神明貝塚、(埼玉県立さきたま史跡の博物館提供))
浅間下遺跡は、春日部市の北東部、西親野井の江戸川堤防沿いに位置します。千葉県からのびる宝珠花台地に立地します。遺跡の東側を流れる江戸川は近世に開削された河川で、もとは野田市側からの台地が続いていましたが、台地部分を掘削し、谷が接続されて一つの河川となりました。浅間下遺跡は、現在の堤防の下や、河川敷まで広がっている可能性があります。遺跡の標高は約10mです。西には、谷をはさんで縄文時代後期の国指定史跡、神明貝塚が立地しています。
浅間下遺跡では、これまで4回の発掘調査が行われています。縄文時代中期(約4500年前)の竪穴建物跡や小竪穴状遺構、縄文時代後期の竪穴建物跡、平安時代の竪穴建物跡、中世から近世の溝などが発見されています。
浅間下遺跡の土器の破片をしきつめた墓(埼玉県立さきたま史跡の博物館提供)
浅間下遺跡では、地面に穴をほり、床面に土器の破片をしきつめた縄文時代中期の墓が発見されています。しきつめられてた土器は、復元すると底部を欠いた2個体の土器になりました。2つの土器の破片はモザイク状にしかれています。この遺構は小竪穴状遺構を墓に転用したものと推定されています。浅間下遺跡の第4次発掘調査では小竪穴状遺構37基が確認されています。小竪穴状遺構は、下総台地で多く発見されており、一般的に竪穴建物が円状に分布する環状集落では、竪穴建物の円よりも内側に作られます。食料を保管する貯蔵穴として利用されたものが多いようです。
土器をしきつめた墓から発見された大木9式土器(埼玉県立さきたま史跡の博物館所蔵・提供)
大木9式土器の展開写真(埼玉県立さきたま史跡の博物館提供)
土器をしきつめた墓から発見された加曽利E式土器(埼玉県立さきたま史跡の博物館所蔵・提供)
加曽利E式土器の展開写真(埼玉県立さきたま史跡の博物館提供)
浅間下遺跡で発見された墓の跡にしかれていた土器は、東北地方の大木9式と関東地方の加曽利E式の土器で、東北地方と関東地方の土器型式の同時性を示しています。大木式は、大木囲貝塚(宮城県七ヶ浜町)で出土した土器をもとに設定されました。大木7a~10式が縄文時代中期に位置付けられています。加曽利E式は、加曽利貝塚(千葉県千葉市)のE地点で出土した土器をもとに設定された、関東一円の代表的な縄文時代中期の土器型式です。なお、2点とも底部の破片は確認できませんでした。
●春日部市郷土資料館 第68回企画展示
権現山遺跡発掘調査60周年記念「あなのあいた壺」権現山遺跡の底部穿孔壺と墓でつかわれた土器
会期:令和5年7月22日(土)~9月3日(日)
開館時間:午前9時から午後4時45分
休館日:毎週月曜日・祝日・8月5日(土)午後・8月6日(日)
会場:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15・048-763-2455)
(関連イベント)
<募集中>記念講演会「権現山遺跡の底部穿孔土器と葬送祭祀」
権現山遺跡出土底部穿孔土器について、古墳時代に見られる葬送祭祀がご専門の古屋氏をお招きし、ご講演いただきます。
講師:古屋紀之氏(横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター所長)
日時:9月2日(土)14:00~16:00
場所:教育センター視聴覚ホール
対象:定員100人(申込順)
費用:無料
申し込み:受付中です!電話(048-763-2455)、直接、電子申請のいずれか
<参加自由>ミュージアムトーク
企画展示会場で郷土資料館学芸員が展示解説を行います。
日時:9月3日(日)各日10:30~、15:00~(30分程度)
場所:郷土資料館企画展示室
費用:無料
申し込み:不要です!時間までに、企画展示室へお越しください。