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展示解説講座その2「梅田ごぼうの献上」

8月20日(土)講師に二ノ宮幹太先生(宮内庁宮内公文書館)をお迎えして、「明治天皇と春日部」展の展示解説講座を開催しました。

テーマは「梅田ごぼうの献上」。二ノ宮先生は、現在開催中の「明治天皇と春日部」展において、「第3章春日部市域の恩賜と献上」の展示設営を担当いただいた方です。梅田ごぼうは、春日部市内では割と知られた特産農産物。梅田女體神社の石碑もあり、大正時代に皇室に献上されたことが語たり継がれてきました。そのことは、前にも紹介しました。

前回の講座に引き続き、今回の展示解説講座では、現在「明治天皇と春日部」展で展示されている資料を丁寧に読み解きながら、皇室への献上の仕組みやプロセス、宮内省・埼玉県・南埼玉郡・内牧村の間で発信・授受される公文書のサイクルをまじえながら、梅田ごぼうがどのような目的で、何のために、どのように献上されていったのかを、解説いただきました。宮内省や埼玉県には梅田ごぼうの献上に関わる公文書が残されていますが、郡・村には文書がのこされていません。資料が限られているなかで、至極丁寧に史料を解釈され、歴史学研究の鑑のような報告だったと思います。

写真:講座の風景

質疑応答では、地元の石碑に刻まれる「大嘗祭御買上」と公文書の「伝献」「献上」はどう違うのか。梅田ごぼうは実際に供物としてささげられたのか、献上の規定の条文の解釈について、など、かなり鋭い質問が投げかけられました。

また、梅田ごぼうを実際に召し上がったことのある方も発言され、「昭和50年頃に甘辛く煮て食べ、香りがよくおいしかった」と、在りし日の梅田ごぼうの味を会場で共有することもできました。

写真:解説される二ノ宮先生

「伝説のごぼう」と言われますが、梅田ごぼうのことが着々と判明してきた貴重な機会となりました。

受講者の方からは、「公文書から梅田ごぼうのことがよくわかった」「丁寧なお話しありがとうございました」などの感想をいただきました。二ノ宮先生には、ご多忙のところ、貴重なご講演、丁寧なご対応、大変ありがとうございました。

展示解説講座は、引き続き、宮内庁宮内公文書館の辻岡健志先生をお迎えして、「埼玉鴨場の設置について」を解説いただきます。ぜひ、お申込みください。

神明貝塚から発掘された装身具などが市の文化財に指定されました!!

 8月18日に開催されました8月定例教育委員会で神明貝塚から発掘された貝輪(かいわ)や耳飾(みみかざり)、そして土偶(どぐう)が文化財に指定されました。

 この3点は、平成28年の夏に行われた発掘調査で発見された5号墓に葬られた女性の縄文人が身にまとっていた装身具や副葬品の土偶です。

貝輪

 

 

 

 

”貝輪”は外洋に生息する「タマキガイ」が用いられ、右手首にまかれたブレスレッドです。およそ全体の1/2が残ります。

耳飾

 

 

 

 

 

 

”耳飾”はなんとサメの椎骨(ついこつ=背骨)が用いられ、側面には赤色のベンガラがみられます。椎骨の直径(25ミリ)からは体長3.5m以上、胸付近に相当する部位と推定され、ピアスのように耳たぶに穴をあけてはさみ込んだ装身具です。

土偶

 ぐうすけ

”土偶”は粘土で作られた素朴なもので、短い手足と顔には粘土粒によってユーモラスな表情につくられています。右はイラスト化したもので、「ぐうすけ」と名付けられています。

 このように装身具を身にまとった縄文人の発掘例は国内でも非常に少なく、3800年前の縄文人の文化や風習をわたしたちに教えてくれます。また、内陸奥地に築かれた神明貝塚まで外洋に生息する生物が持ち込まれていることから、縄文人の往来や交流もうかがうことができます。

 この指定により、市内の文化財は68件となりました。

 本日より、郷土資料館の常設展示で公開しています!!

#大人も子どもも 「明治天皇と春日部」展

9月4日(日)まで絶賛開催中の「明治天皇と春日部」展。内容は大人向け(歴史好きな人向け?)かもしれませんが、子どもでも楽しめる仕掛けを用意しています。今日はそんな一面をご紹介。 #かすかべプラスワン

まずは、以前にも紹介した「まとめすごろく」。白黒印刷の双六を配布していましたが、わりと好評で、カラー刷りの要望も出てくるほど。学校の先生方に教材としても利用していただきたいくらいです。現在は、ちょっぴり無理をして、カラー刷りですごろくを配っています。

さて、すごろくだから、サイコロがほしい、というご要望もあったので、サイコロを用意してみました。担当者としては正直どうかな~と思っていましたが、早速、小学校のご兄弟が夢中になって遊んでくれていました。嬉しいので、写真を撮らせていただきました。

 写真:まとめすごろくで遊ぶ兄弟

結構、白熱していました。「まとめすごろく」は、すごろくで展示の内容を総ざらいできる忙しい人向けの仕掛けです。お子様も「近代の皇室と地域の歴史」がわかるかも・・・しれません。

 

話題はもう一つ。当館の人気コーナーの一つ、体験コーナー。体験コーナーでは、昔のおもちゃで遊んだり、昔の道具を体験できます(もちろん感染症対策は万全です)。実は「明治天皇と春日部」展にあわせて、新たなおもちゃを用意しています。その名も「クロックノール」。

宮内庁が編さんした『昭和天皇実録』の中に、昭和天皇が幼少時代に「クロックノール」という遊びをされていたことが記されているそうですが、詳しいことは不明とのこと。巷では「クロックノール」は謎の遊びといわれています。

このたび春日部市郷土資料館では、「明治天皇と春日部」展に合わせて、「クロックノール」という遊びを再現してみました。色々な説はあるようですが、一説には「クロキノール」と呼ばれる、おはじきとカーリングを合わせた対戦型ボードゲームと解釈されています。そこで、明治36年の文献「クロック術」をもとに、これを作ってみました。すべて職員の手作りです。

これも「遊ぶ子はいるかな~」と思っていましたが、先日、兄妹で仲良く「クロックノール」してくれていました。「わいわい」「きゃーきゃー」言いながら楽しそうでした。おはじきのような遊びは今の世代の子どもたちにとって、かえって新鮮なのかもしれません。

写真:クロックノールで遊ぶ兄妹

昭和天皇も遊ばれた「クロックノール」(かもしれないおもちゃ)で、遊んでみてはいかがでしょうか。

企画展示「明治天皇と春日部」は9月4日(日)までです。

【草加市立歴史民俗資料館】連携展示「明治天皇草加行在所」

久喜幸手杉戸越谷に引き続き、宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」の連携展示の紹介。5回目は草加市立歴史民俗資料館です。 #かすかべプラスワン

「春日部の話じゃないじゃないか!」とお叱りを受けそうですが、春日部市内の歴史だけを切り取っても理解は深まりません。視野を広くもって春日部の歴史も考える必要があります。歴史は地域をつなぐ。そんな思いから、連携展示「埼玉県東部と近代の皇室」は企画されました。

写真:草加市立歴史民俗資料館

さて、草加市立歴史民俗資料館さんにご協力いただき、今回、草加市でも連携展示を開催しています。

草加には明治天皇の巡幸のときに、草加の大川弥惣右衛門宅が行在所(あんざいしょ)となりました。このことについて、常設展示に明治天皇の巡幸に関わる宮内庁宮内公文書館所蔵の文書や図面をパネルにて展示していただきました。大川家の屋敷は、近年まで現存しており、図面等も残っていたことから、草加市立歴史民俗資料館では、屋敷の模型を常設展示しています。旧日光道中(陸羽街道)沿いのまちでは、唯一「聖跡」の往時の遺構を復元したもの。今回、御小休所、御昼食所の図面が見出されましたので、草加市さんのような模型が復元できるといいなぁと、羨ましく拝見しました。模型と資料をぜひ合わせてご覧いただければと思います。

され、草加市立歴史民俗資料館は、草加の町なかに所在する草加市立草加小学校の旧校舎(国登録有形文化財)を活用している博物館施設。草加市は旧足立郡に立地するため、行政等では埼玉県南部に区分されますが、博物館関係のまとまりでは「県東部」に区分され、埼玉県博物館連絡協議会などでは大変お世話になっています。ミュージアムスタンプラリーの参加館でもあります。 

小学校の旧校舎という制約を受けながらも、企画展示をはじめ様々な事業を積極的に展開しており、草加の歴史文化発信の拠点となっています。近年は、東北諸藩の参勤交代の展示、マンモス団地「松原団地」の展示など、草加の歴史的な特徴を捉えた企画展示を立て続けに開催しています。江戸時代の日光道中の歴史、そして高度経済成長期を象徴する団地の歴史も、いずれも春日部にも共通する重要な点。いつも陰ながら、注目しています。

ロビーには松原団地の立体模型が展示されていました。職員さんの手作りだそうです。春日部的には、時間と手間と資料さえあれば、武里団地版をつくりたいなと思いました。本音は「どなたか、作ってください!」ですが。

写真:松原団地模型

 

現在は松尾芭蕉に関する企画展示「草加といふ宿」展を開催しています。

写真:草加といふ宿パネル

これも気合が入った企画展示。松尾芭蕉の著名な紀行文『奥の細道』の一節からとった「草加といふ宿」という展示名称もかっこいいです。館蔵の資料や各所から借用した芭蕉の句集などを一同に会して展示していました。キャプションも非常に丁寧に記述されており、見ごたえ抜群です。江戸深川を出た芭蕉の一泊目の地は春日部だったようですので、春日部のみなさんも必見の展示です。

連携展示も「草加といふ宿」展も9月4日まで。ぜひ、あわせて、ぜひご覧ください。

 ◆草加市立歴史民俗資料館「明治天皇草加行在所」

  会期:7月20日(水)~9月4日(日)

  開館時間:9時~16時30分

  休館日:月曜日

  住所:草加市住吉1-11-29

  電話:048-922-0402

  https://www.city.soka.saitama.jp/cont/s2105/030/010/010/PAGE000000000000028926.html

共催展「明治天皇と春日部」展、一部展示替をしました

9月4日(日)まで開催中の「明治天皇と春日部」展も、いよいよ折り返しです。8月9日(火)から一部展示替。後期展示が始まりました。 #かすかべプラスワン

大げさな表現ですが、展示替したのは一点のみ。明治天皇巡幸の錦絵です。明治9年に明治天皇が利根川での鯉猟をご覧になった模様を描く「奥羽御巡幸図会 利根川鯉猟天覧」を、明治9年に明治天皇が蒲生村(現越谷市)で田植えをご覧になった模様を描く「奥羽御巡幸図会 埼玉県田植展覧之図」に展示替えしました。いずれも埼玉県立歴史と民俗の博物館さんからお借りしているものですが、資料保存の観点から、展示期間は1か月との約束があり、このたび展示替えとなりました。

「奥羽御巡幸図会 埼玉県田植展覧之図」は、明治天皇が、蒲生村で馬車をとめ、たすき掛けする農夫の田植えをご覧になったもの。描かれているのは蒲生村ですが、記録によれば、大場村・大枝村(現春日部市)・大泊村(現越谷市)でも同じ光景がみられたとか。馬車は停まらなかったのですが。また、県の行政文書によれば、直前まで大場・大枝での田植えの天覧が計画されていたようです。大場・大枝のあたりでは富士山も一望できてとてもよい景色がみられたといいます。

そういうわけでは、後期展示に登場した「奥羽御巡幸図会 埼玉県田植展覧之図」は、春日部ゆかりの資料とも読み替えられそう。最終日まで展示していますので、ぜひご覧ください。

【越谷市大間野町旧中村家住宅】連携展示「越谷への行幸・行啓と埼玉鴨場」

久喜幸手杉戸に引き続き、宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」の連携展示の紹介。4回目は越谷市大間野町旧中村家住宅です。 #かすかべプラスワン

「春日部の話じゃないじゃないか!」とお叱りを受けそうですが、春日部市内の歴史だけを切り取っても理解は深まりません。視野を広くもって春日部の歴史も考える必要があります。歴史は地域をつなぐ。そんな思いから、連携展示「埼玉県東部と近代の皇室」は企画されました。

さて、越谷市教育委員会さんにご協力いただき、今回、越谷市でも連携展示を開催しています。会場は越谷市大間野町旧中村家住宅。大間野町旧中村家住宅は国登録有形文化財、江戸時代に旧大間野村(現越谷市大間野町周辺)の名主を勤めた中村氏の旧宅で、建築当初の姿に復元されたものです。展示は、屋敷内にパネルにて展示しています。

パネルでは、他の市町の展示と同様に、明治天皇の巡幸に関わる宮内庁宮内公文書館所蔵の文書や図面に加え、越谷市に所在する埼玉鴨場についても展示しています。

埼玉鴨場は明治41年(1908)6月、埼玉県南埼玉郡大袋村(現越谷市)に設置された、現在も宮内庁が管理する鴨猟の施設です。展示では、宮内省が敷地を買い上げたときの図面や、鴨場の敷地図面、建物の図面、鴨場内の写真、関係文書などを紹介しています。鴨場には、普段、一般の方は出入りできませんので、知られざる鴨場の姿がよくわかる展示になっています。

ぜひご覧ください。

 ◆越谷市大間野町旧中村家住宅「越谷への行幸・行啓と埼玉鴨場」

  会期:7月20日(水)~9月4日(日)

  開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)

  休館日:月曜日、祝日の翌日

  入館料:一般100円、小中学生50円、未就学児無料

  住所:越谷市大間野町1-100-4

  電話:048-985-9750

  https://www.city.koshigaya.saitama.jp/smph/toiawase/shisetsu/dentobunka/oomanocyounakamurake.html

博物館実習8日目

実習8日目は、午前中に体験講座の準備と展示コンテンツの発表、午後に体験講座「dokidoki音楽づくり」に参加しました。

 

 体験講座の準備では、会場の設営や必要な道具の準備を行いました。また、準備の際に、講師の中村耕作先生(国立歴史民俗博物館)から縄文土器の文様や特徴について教えていただきました。実習生間で土器の文様や特徴について気づいたことをあげていきましたが、様々な意見や視点があり面白かったです。

写真:中村先生の指導

 

体験講座の準備の後は、7月末から準備を進めてきました展示コンテンツの発表を行いました。各々、種別や年代も異なる資料について展示コンテンツを発表し、発表を聞いている中で初めて知ることも多く、大変興味深かったです。また、自分の発表後には様々な意見やご指摘をいただき、自分では気づくことのできなかった点や改善点を知ることができ、充実した発表の時間となりました。

写真:展示コンテンツの発表

 

 

午後の体験講座「dokidoki音楽づくり」では、参加者の皆さんと一緒に縄文土器の文様にあった音楽づくりを行いました。まずは、縄文土器の文様や特徴をよく観察して、文様のパターンや違いを読みとりました。その後、読みとった文様を身体で表してみたり、文様のイメージに合った音を考えたりしました。

 写真:講座の様子1

 

 

試行錯誤しながら、文様のイメージに合う音を探し、最後にはひとつひとつの音を組み合わせて音楽にしました。自分のイメージしている音を出すことが難しかったですが、班のメンバーと一緒に楽しく音を探すことができました。4つの班に分かれて音楽づくりをしましたが、どの班も素敵な音楽を作ることができたと思います。

 写真:縄文時代の自然素材をつかった音楽づくり

 

 

次の実習は来月となりますが、最後までたくさんのことを学習したいと思います。

(令和4年度博物館実習生)

【体験ワークショップ】ミニ空気砲をつくろう!

8月21日(日)に体験ワークショップを開催します。

体験ワークショップでは蓄音機の上演や昔のおもちゃ作りをします。

今回作る昔のおもちゃは「ミニ空気砲」です。

 

ミニ空気砲

郷土資料館のワークショップで作るのは初めてのおもちゃになります!

厳密には“昔のおもちゃ”とは言えないかもしれませんが、

電気を使わず、身近な材料で簡単に作れるおもちゃということで今回作ってみることになりました!

現在、郷土資料館では企画展示「明治天皇と春日部~巡行・御猟場・梅田ごぼう~」展を開催中しています。展示の中で、御猟場では鷹を用いた猟をおこなっていたという紹介があり、今回のおもちゃは鷹のイラストを張り付けて鷹狩を模してみました!かっこいいと思いませんか!

遊びやすいように、的も用意しているので楽しみにしていてください。

 

申し込み不要、おもちゃの材料も用意してありますのでご安心ください!

当日の午前10時30分と午後2時からの計2回開催しますので、お時間までに郷土資料館にお越しください!

小さいお子様でも簡単に作れるおもちゃなので気軽に参加してみてくださいね♪

 

【体験ワークショップ】

日時:令和4年8月21日(日)午前10時30分~・午後2時~

場所:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15)

内容:蓄音機の上演

   紙芝居

   昔のおもちゃづくり(ミニ空気砲)

費用:無料

申込:不要(開催時間までに郷土資料館におこしください)

※参加者多数の場合、人数制限をさせていただく場合がございます。当日はマスクを着用いただき、体調が優れない場合は参加をお控えください。

展示解説講座その1「江戸川筋御猟場と春日部」

8月6日(土)講師に篠﨑佑太先生(宮内庁宮内公文書館)をお迎えして、「明治天皇と春日部」展の展示解説講座を開催しました。

テーマは「江戸川筋御猟場と春日部」。篠﨑さんは、現在開催中の「明治天皇と春日部」展において、「第2章江戸川筋御猟場」の展示設営を担当いただいた方です。江戸川筋御猟場は、明治16年に千葉県・埼玉県に跨り設置された皇室の狩猟場。最も広域だった時代には、埼玉県下では、現在の春日部市をはじめ、幸手市、杉戸町、宮代町、白岡市、さいたま市岩槻区、越谷市、松伏町、吉川市、川口市、草加市、八潮市、三郷市を含むエリアに広がっていました。

今回の展示解説講座では、現在「明治天皇と春日部」展で展示されている資料を丁寧に読み解きながら、江戸川筋御猟場が設置される背景や、その仕組み、管理する宮内省の組織・機構、地域と御猟場の関わりについて、お話しいただきました。資料館の学芸員は「なるほど、そういう意図であの資料を展示したのか」と得心させられ、勉強になりました。

写真:講座の様子

他の御猟場との相違点から、江戸川筋御猟場の特徴を指摘しながら、主猟局長官などを歴任する山口正定の日記(写)を読み解き、御猟場における猟の実態や地域住民との関係を考察されました。山口は地域住民と広く交流し、かつ慕われていた人物であったことが想像されるお話しでした。また、春日部市域と江戸川筋御猟場の関係は、地元から登用された監守の職務、いわゆる「御猟場問題」として顕在化する地主(町村)への手当金の問題から、宮内省と春日部市域に歴史的な関係があることを紹介されました。

以前も記しましたが、江戸川筋御猟場については、わからないことがまだまだ沢山ありますので、今回の話は埼玉県(東部)の近代史にとって、大変貴重な成果になりました。

講演の後には、質疑応答。10名弱の方々から質問につぐ質問。時間いっぱいまで、非常に丁寧にたくさんの質問に応えていただきました。講演終了後にも、質問者の列ができるほど。

写真:篠﨑佑太先生

「とても面白かった」「知らないことばかりだった」など、みなさんとても満足された様子で、お帰りになりました。

篠﨑先生には、ご多忙のところ、貴重なご講演、丁寧なご対応、大変ありがとうございました。先生には、引き続き、9月3日(土)のシンポジウムでもご登壇いただくことになっています。

展示解説講座は、引き続き、宮内庁宮内公文書館の二ノ宮幹太先生、辻岡健志先生をお迎えして、「梅田ごぼうの献上」「埼玉鴨場の設置について」を解説いただきます。ぜひ、お申込みください。

【杉戸町南公民館】連携展示「明治天皇行幸と杉戸」

久喜幸手に引き続き、宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」の連携展示の紹介。3回目は杉戸町南公民館です。 #かすかべプラスワン

「春日部の話じゃないじゃないか!」とお叱りを受けそうですが、春日部市内の歴史だけを切り取っても理解は深まりません。視野を広くもって春日部の歴史も考える必要があります。歴史は地域をつなぐ。そんな思いから、連携展示「埼玉県東部と近代の皇室」は企画されました。

さて、杉戸町教育委員会さんにご協力いただき、今回、杉戸町でも連携展示を開催しています。会場の杉戸町南公民館では、館内の展示スペースを使って、明治天皇の巡幸に関わる宮内庁宮内公文書館所蔵の文書や図面などをパネルで展示しています。

写真:杉戸町南公民館

注目は、明治14年の巡幸で御小休所となった、北葛飾・中葛飾郡役所の図面です。周囲に堀(水路)と矢来が張り巡らされており、行在所、御小休所となった他の施設とは雰囲気が異なります。当時の地方行政は郡役所が一定の権限をもっていたようですが、残念ながら郡役所の文書はまとまって伝来しておらず、詳しいことがわかりません。今回の図面は、巡幸はもちろんのこと、郡役所の性格を考えるうえでも貴重な資料となるでしょう。

担当者は、この資料に初めて接した時、杉戸町の担当者の顔を思い浮かべ、早く報告したいと思ってしまいました。杉戸町の担当者の方も初めてみたと驚いていらっしゃいました。

展示では、パネルですが、限りなく大きく出力して展示しています。細部の文字まで読み取れるはずですので、ぜひご覧ください。ちなみに、郡役所は現在の杉戸町役場の敷地に建っていました。敷地の形や敷地内にある御小休所の石碑がかつての面影を物語っています。

◆杉戸町南公民館「明治天皇行幸と杉戸」

  会期:7月20日(水)~9月4日(日)

  開館時間:9時~17時

  休館日:月曜日・祝日

  住所:杉戸町堤根4089-1

  電話:0480-33-6476

ミュージアムトークやりました その2

8月3日、「明治天皇と春日部」展を展示室で解説するミュージアムトークを開催しました。関東地方、春日部は記録的な猛暑となりましたが、酷暑の中でも解説を目当てにした皆さまにお集まりいただきました。

写真:ミュージアムトーク午前

展示解説では、担当者が「まとめ」すごろくを用いながら、資料の見どころを解説しました。一通りの解説が終わると、いくつか、ご質問もいただき、説明が足りなかった部分を補足してお話しをしました。

写真:午後の解説

参加された方からご質問をいただき、担当者も今更ながら気づかされましたが、「近代の皇室にとって、春日部は特別な地域だ」と誤解をされている方が多いようです。展示の主題は、巡幸・御猟場・梅田ごぼうの三本立てで、それぞれは独立しているといっても過言ではないのですが、ご観覧いただいた方は、「明治天皇が御昼食で休まれた、だから御猟場が設置され、そして災害時の恩賜や、地元からの献上がされるのだ」と三本柱に歴史的な連関があるようにご理解いただく方が多いようです。そのため、「春日部は近代の皇室にとって特別だ!」と認識されてしまうのかなと思いました。この点は展示の見せ方に問題があると反省する次第です。

今回の展示では「春日部が特別だ」ということを強調しているつもりはなく、むしろ、埼玉県東部にも共通する巡幸、御猟場をめぐる歴史の一コマを紹介しているのですが、「宮内庁共催」のかんむりがつくと、どうしても特別感が醸し出されてしまうようです。

もちろん、宮内庁が所管する普段はなかなか展示できない、貴重な資料が並んでいるのは間違いないので、そのあたりはぜひじっくりと堪能いただきたいと思います。担当者としては、「皇室ゆかりの資料から、春日部の知られざる歴史の一コマが見えてくる」という点を、皆さまに受け止めていただきたいなと思います。

次回のミュージアムトークは、9月4日(日)、展示の最終日となります。展示についてご質問、ご疑問がある方は、担当者にぶつけにいらしてください。

そして、これから展示解説講座が毎週のように開講されます。定員にはまだ至っておりませんので、ご興味のある方は事前にお申込みください。

展示解説講座
 場所:春日部市教育センター2F 視聴覚ホール
 定員:50名(申込順)
  講座①「江戸川筋御猟場と春日部」 令和4年8月6日(土)14時~16時
   講師:篠﨑 佑太(宮内庁宮内公文書館)
  講座②「梅田ごぼうの献上」 令和4年8月20日(土)14時~16時
   講師:二ノ宮幹太(宮内庁宮内公文書館)
  講座③「明治天皇と粕壁宿」 令和4年8月21日(日)10時~12時
   講師:榎本 博(春日部市郷土資料館)
  講座④「埼玉鴨場の設置について」 令和4年8月28日(日)14時~16時
   講師:辻岡 健志(宮内庁宮内公文書館)
 申込:各回7月 12 日(火)より春日部市郷土資料館の窓口・電話・春日部市電子申請にて受付

【受講者募集中】「明治天皇と春日部」展示解説講座

宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」展では、イベントも盛りだくさんです。 #かすかべプラスワン

今回は、宮内庁宮内公文書館と春日部市郷土資料館の展示担当者計4名が、それぞれの展示担当テーマについて座学で資料を解説します。計4回の講座を1日でやってしまったもいいのですが、ちょっと頑張って、4日にわけて開催します。聞く方も大変ですよね。

初回は、8月6日(土)14時から。宮内公文書館の篠﨑佑太さんが「江戸川筋御猟場と春日部」をテーマに解説します。江戸川筋御猟場は、最大で北は幸手から南は八潮・草加(もちろん春日部市域も含まれています)そして東京まで広がる広大の皇室の御猟場でした。江戸川筋御猟場については、これまで御猟場の住民に対する補償金(手当金)をめぐる問題(御猟場問題)をめぐる研究がありますが、実は基本的なあり方や歴史的な変遷などよくわかっていません。実は『春日部市史』には御猟場の記述がほとんどありません。

篠﨑さんのお話は、宮内公文書館の文書や春日部市域に伝わる関係史料をもとに、春日部における江戸川筋御猟場について解説されるものと聞いています。春日部の郷土史とって、重要な成果であることは間違いなし。もちろん、展示もその成果の一部ですので、展示もご覧ください。

まだ若干席が空いておりますので、ご興味のあるかたは、郷土資料館まで、ぜひお申込みください(電話048-763-2455)。お申込みは、春日部市の電子申請からも可能です。

QRコード

 展示解説講座
 場所:春日部市教育センター2F 視聴覚ホール
 定員:50名(申込順)
  講座①「江戸川筋御猟場と春日部」 令和4年8月6日(土)14時~16時
   講師:篠﨑 佑太(宮内庁宮内公文書館)
  講座②「梅田ごぼうの献上」 令和4年8月20日(土)14時~16時
   講師:二ノ宮幹太(宮内庁宮内公文書館)
  講座③「明治天皇と粕壁宿」 令和4年8月21日(日)10時~12時
   講師:榎本 博(春日部市郷土資料館)
  講座④「埼玉鴨場の設置について」 令和4年8月28日(日)14時~16時
   講師:辻岡 健志(宮内庁宮内公文書館)
 申込:各回7月 12 日(火)より春日部市郷土資料館の窓口・電話・春日部市電子申請にて受付

博物館実習6日目

 

実習6日目の本日は午前中に資料整理と神明貝塚の見学、午後は実習を振り返ってのディスカッションを行いました。

 

資料整理では、お預かりした民具の虫干しとカビの除去をしました。全員で協力しながらコンテナから資料を出し、日光や風に当てながら文化財専用のウェットシートを使って丁寧にふき取りました。炎天下の中で大変な作業でしたが、カビや汚れが付着していた部分をかなり綺麗な状態にすることができました。地道で時間のかかる作業ですが、作業をしてみて貴重な資料をより良い状態で保存するためには欠かせないことなのだと知りました。大学で授業を聞いているだけではわからない学芸員の仕事を体験することができ、大変勉強になりました。

 写真:資料を拭いている様子

写真:綺麗になった資料  

 また、神明貝塚の見学にも行きました。神明貝塚は春日部市西親野井に所在し、国指定史跡になったことで有名な貝塚です。現地は畑が広がっており、一目で貝塚と認識するのは難しくなっています。しかし地面を見てみると、一面に貝が散らばっている様子が確認できます。この貝はヤマトシジミという貝で、神明貝塚でよく利用されていました。また、土器片もいくつか見られました。神明貝塚を訪れるのは初めてでしたが、思っていたよりも大規模な貝塚で驚きました。

 写真:神明貝塚の風景

 

 実習はまだ続きますが、午後は実習の振り返っての感想や考えたことをディスカッションしました。実習前は利用者としての目線でしか博物館を見ることができませんでしたが、バックヤードや資料館の現状を見てきたことで、学芸員側の立場から資料館のあり方や改善点などを考えることができました。また、他の実習生の意見も聞くことで考えが深まったと思います。

 

令和4年度博物館実習生

コンテンツ作りなど

博物館実習も半分に差し掛かった本日では、基本的に資料紹介の解説作成に1日を費やしました。午後3時からは中高生向けのミュージアムトークを聞きに行きました。

本日は、実習生みんなでそれぞれの興味に合った収蔵資料を選び、それに関する情報を調べて発表するための解説を作成することに専念しました。参考書を見ながら資料の情報を得たり、その結果をパソコンに打ち込んでいたりとペースは違えど実習生のみんなはとても集中していて、こちらも頑張らないと思い刺激をもらいました。
コンテンツ作り1コンテンツ作り2

実習生の一人が、解説を書くにあたり、資料に関して寄贈者のお話を聞きたいとのことで、呉服屋さんにインタビューに行くことになり、私もそれに同行しました。インタビューに応じてくれた方は、寄贈資料のことについてのお話の他に、ミシンと手編みの違いや今の呉服屋の現状、法被など衣類をつくる技法を当時はどのように習得したかなどのお話もしてくれました。

その中でも一番印象的だった話は、藍染めなどに使う染料を水質汚染の関係で川に流せなくなり、このことが原因で今まであった染物屋や呉服屋が店を閉めざるを得なくなったという話でした。私は今まで、水質汚染防止のための行動に悪いことはないと思っておりましたが、この話を聞いて良いことだけでないという視野が広がる感覚がありました。聞けてよかったです。
なべやさん
午後3時にはミュージアムトークという学芸員が来館者の方々に展示を解説するという企画を実習生全員で聞きに行きました。解説を聞いてくれた来館者は中学生2人だけでしたので、少し寂しく感じてしまいました。ですが、学芸員の榎本さんが質問を投げかけるなどの方法で中学生の気を引かせていたので自分もこのように解説できたらと感じました。
ミュージアムトーク

実習も残り少なくなってきたので明日からも気合を入れて頑張りたいです。

 (令和四年度博物館実習生)

他館見学

本日は一日かけて岩槻の博物館、資料館の見学へ行きました。

まず、岩槻郷土資料館、岩槻藩遷喬館にて、旧岩槻市の歴史や民俗資料について学習しました。江戸時代、岩槻は城下町として発展しており、日光御成街道は多くの武士が行き来していたそうです。

岩槻郷土資料館

特別に上げていただいた屋上からはかつての日光御成道を眺めることができ、日光御成道が通っている理由や現代の道幅の拡張についても理解を深めることができました。また、岩槻は台地が多いこと、周辺地域で出土することが珍しい弥生土器が発掘されたことを知りました。当時の環境と資料とのつながりを感じることができました。

岩槻郷土資料館2

岩槻藩遷喬館は、儒学者の児玉南柯が開校した塾で、主に藩士の子供たちが儒学を学ぶための施設です。児玉南柯の自画像と思われる掛け軸も飾られています。

 児玉南柯の掛け軸

また、ここは明治時代には一度住居として改装され、それを再び当時の姿へ復元したものです。手を加えられた箇所は当時の建築を再現するために解体されています。建築から暮らし、暮らしから社会性を紐解いていくのは面白いです。

次に岩槻人形博物館を見学しました。こちらでは、人形の誕生や歴史についてが解説されています。雛人形の五人囃子はそれぞれ楽器を演奏していますが、その楽器の形に合うように一体ずつ手の形を変えて作られているのです。人形職人さんの磨かれた技術が、人形に命を吹き込んでいるようでした。

岩槻人形博物館

そして午後は、東玉人形の博物館を見学しました。人形の誕生から、作り方、種類など、芸能としての人形の歴史深さを目の当たりにしました。「天児」と呼ばれる日本最古の雛人形が展示されていましたが、現在の雛人形とは姿形が全く違います。かなり簡略化された胴体と、こけしのような頭が印象的です。

天児

また、節句のお供でもある人形ですが、元々は人が亡くなりやすい時期に節句という日を設け、死から人を守るという目的で誕生したそうです。今は芸能として親しみを持っている人形も、かつては儀式的なものだった、長い歴史を持つ高貴なものなのだなと、人形の奥深さを感じました。

東玉のひな人形

本日の実習では、歴史はもちろん、訪れた博物館の資料展示方法という面でも多くを学ぶことができましたので、明日以降の資料コンテンツ作成に活かせると良いと思います。

実習も折り返し地点となりましたが、引き続き春日部市の歴史、風土を吸収していきたいです。

 

(令和四年度博物館実習生)

【 #7月31日 】 #今日は何の日? in春日部

今から142年前の明治14年(1881)7月31日は、再び、明治天皇が粕壁で昼食をとられた日です。 #かすかべプラスワン

「再び」というのは、以前にも紹介した通り、明治天皇は、明治9年6月3日に東北巡幸のため粕壁の竹内家でご昼食ととられているから。

明治天皇は、明治14年にも山形・秋田・北海道巡幸のため、陸羽街道をたどり、明治14年7月31日に再び粕壁の高砂屋(竹内家)でご昼食をとられました。

現在開催中の「明治天皇と春日部」展では、明治14年に明治天皇がご昼食をとられた高砂屋(竹内家)の屋敷図面を展示しています。前にも紹介したように、粕壁においては、高砂屋(竹内家)の痕跡や記憶はほとんど伝わっておらず、高砂屋に関する資料も断片的でわからないことが多かったのですが、展示の準備調査で見出した竹内家の屋敷図面は、屋敷の部屋割りや構造はもちろん、明治天皇がご入室される行程や宮内省関係者の配置が克明にわかる資料です。常設展示に展示してもいい粕壁の歴史を物語る重要な資料です。レプリカを作りたいぐらいですし、屋敷の部屋割りなどを立体的に復元することができるかもしれません。

画像:高砂屋の図面

資料の写真は、高精細ではありませんが、宮内庁のホームページでも公開されています。こちらからご覧いただけます。8月21日(日)の展示解説講座「明治天皇と粕壁宿」では、高砂屋の図面を詳しく検討したいと思っています。今回の展示の目玉資料でもあり、今後の活用も期待される春日部にとって重要な資料といえますので、この機会に展示を見にいらしてください。

さて、明治9年には、岩倉具視、木戸孝允、土方久元が供奉しましたが、明治14年にはどんな方が来たのか。著名な方では、有栖川宮熾仁親王、北白川宮能久親王、大隈重信、大木喬任らが供奉しています。明治14年の巡幸では、宿割の記録が残されており、大隈重信をはじめ、供奉した方々が滞在・昼食をとられた商家(場所)もわかります。こちらについても展示で紹介しています。必見です。

1 展示会名 明治天皇と春日部~巡幸・御猟場・梅田ごぼう~

2 主  催 宮内庁・春日部市・春日部市教育委員会

3 会  期 令和4年7月20日(水)~9月4日(日)(休館日:月曜日、祝日)

4 開館時間 午前9時~午後4時45分

5 入  館 料 無料

6 会  場 春日部市郷土資料館(住所:〒344-0062 春日部市粕壁東 3-2-15(春日部市教育センター内))

 

過去の今日は何の日?in春日部シリーズ→1月1日版3月14日版3月27日版4月28日版6月3日版6月10日版9月16日版

【幸手市郷土資料館】連携展示「明治天皇幸手行在所-中村家の資料ー」

前回に引き続き、宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」の連携展示の紹介。2回目は幸手市郷土資料館です。 #かすかべプラスワン

「春日部の話じゃないじゃないか!」とお叱りを受けそうですが、春日部市内の歴史を切り取っても理解は深まりません。視野を広くもって春日部の歴史も考える必要があります。歴史は地域をつなぐ。そんな思いから、連携展示「埼玉県東部と近代の皇室」は企画されました。

さて、幸手市郷土資料館は、かつて本ブログでも紹介した博物館です。常設展示では、幸手市史編さん事業の成果をもとに幸手の歴史・文化を通史展示しています。コンパクトながらも、幸手の魅力が凝縮されており、見ごたえ抜群。隣接する民具資料展示室は、昭和24年竣工の旧吉田村立吉田中学校の校舎で、昔の生活・生業の道具が所せましと並んでおり、圧巻です。

写真:ポスター

連携展示「明治天皇幸手行在所-中村家の資料ー」は、明治天皇の巡幸で行在所となった幸手宿(町)の中村家について焦点を当てた展示です。中村家は二度も行在所(天皇がお泊りになった所)となったお宅でもあります。幸手市郷土資料館では、今回の連携展示に合わせて、中村家からゆかりの品々をお借りして、展示しています。埼玉県東部の宿場町には、御宿泊、御小休、御昼食といういずれかで明治天皇がご滞在されていますが、春日部(粕壁)も含めて、残念ながら、ゆかりの品はあまり伝わっていないようです。

しかし、幸手の中村家は、のちの「聖跡」指定にも深く携わられてきたこともあり、代々のご当主が明治天皇のゆかりの品々を大切に保管されてきたようです。戦前の写真にみる御座所を再現したかのような展示、そして中村家の屋敷図面の比較など、内容に深みがあり、とても見ごたえがあります。また、正岡子規の俳句の紹介もあり、内容に広がりがあります。

展示資料は幸手市郷土資料館のホームページに一部紹介されています。ここだけの話、春日部会場よりもよい展示かも(笑)。ぜひご覧ください。

ちなみに、見学に訪れたとき、幸手市郷土資料館の職員さんは、変化朝顔の手入れをされていました。幸手では明治時代に変化朝顔が愛好されていたそうです。花の時期はもう少し後とのことですが、連携展示と一緒に変化朝顔も楽しんでみてはどうでしょうか。

写真:朝顔の鉢植え

 ◆幸手市郷土資料館「明治天皇幸手行在所―中村家の資料―」

  会期:7月20日(水)~9月25日(日)

  開館時間:9時~17時

  休館日:月曜日(月曜日が祝日にあたる場合は翌日の火曜日)

  住所:幸手市下宇和田58-4

  電話:0480-47-2521

  https://www.city.satte.lg.jp/sitetop/soshiki/kyoudomuseum/index.html

 

資料の取扱いと発表準備

実習三日目の本日は、午前中は「日章旗」や「掛軸」の資料取扱いを行いました。午後には8月7日の展示コンテンツの発表に向けてそれぞれが準備を行いました。

日章旗の取扱いでは、年代を探るため、春日部町という文字に注目をしました。春日部町は戦争中の昭和19年(1944年)、内牧村と春日部町が合併し、春日部氏ゆかりの名をとって春日部町が誕生しました。その為、日章旗は昭和19年(1944年)のものだということが分かりました。文字の持つ情報の重要さを感じました。

写真:日章旗

掛軸の扱いでは、矢筈を使い壁に展示を行いました。実際に展示をしてみると、掛け軸が傾いているかが分かりにくく、難しさを感じました。展示の際はお客さんの目線になって展示するように工夫をしたいと思いました。

写真:掛け軸の取り扱い

午後の発表準備では、それぞれ興味関心のあるテーマを決め、資料紹介の資料作成を行いました。各自が担当した資料は円筒埴輪、古墳時代の直刀、江戸川で使用された漁業の網、粕壁町の半纏、江戸川の河岸場の文書です。

発表原稿を作成するため、春日部市史などを活用しました。発表まではまだ日にちがありますが、頑張りたいと思います。

写真:文献の調査

写真:資料の撮影

残りの実習も楽しみつつ、一生懸命取り組んでいこうと思います。

 

(令和4年度博物館実習生)

#博物館実習 二日目

2日目は、内容も本格的な実習となりました。まず、午前中は資料整理。市内の某施設に収蔵保管されている民具を整理してもらいました。

郷土資料館所蔵の資料はすべて館内で保管できればよいのですが、そうもいかず、別置されているものも多くありません。資料の整理作業は資料を活用するための基礎的作業として重要です。

資料の整理札を確認しつつ、資料の採寸をしながら、カードを記述していきます。なかには整理札が紛失して、資料名や出所がわからなくなってしまったものもありました。実習生のみなさんは、資料をよく観察しながら、道具が使われた時代や使い方を考えながら、整理を進めてくれました。

午前中は気温・湿度も高く、蒸し風呂状態のなかの作業でした。汗だくになりながら、またお召し物も少し汚れてしまったかもしれません。お疲れさまでした。

写真:資料の採寸

 

午後は、本物の縄文土器を教材にして、梱包の実習をしました。梱包する前に、まず梱包具「綿布団(わたぶとん)」を作ってもらいました。続いて、縄文土器の梱包。考古資料担当の学芸員に指導しながら、恐る恐る梱包していました。実物の土器を触るのが初めてだった人もいたことでしょう。感触はいかがでしたでしょうか?

 写真:縄文土器の梱包

引き続き、頑張ってください。

【久喜市立郷土資料館】連携展示「明治天皇と久喜」

今回から、宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」の連携展示の紹介。初回は久喜市立郷土資料館です。 #かすかべプラスワン

「春日部の話じゃないじゃないか!」とお叱りを受けそうですが、春日部市内の歴史を切り取っても理解は深まりません。視野を広くもって春日部の歴史も考える必要があります。歴史は地域をつなぐ。そんな思いから、連携展示「埼玉県東部と近代の皇室」は企画されました。

さて、久喜市立郷土資料館は、旧鷲宮町の郷土資料館で、鷲宮神社のそばに立地します。常設展示では旧石器時代から、近現代までの久喜市の歴史が紹介されます。とりわけ、鷲宮神社が県内でも屈指の古社であり、文化財の宝庫でもあることから、鎌倉時代以降の鷲宮神社をめぐる展示、国指定重要無形民俗文化財「鷲宮催馬楽神楽」の展示が特徴的です。

写真:建物の外観

連携展示「明治天皇と久喜」では、明治天皇の巡幸を中心にした展示です。久喜市内には、春日部と同様に明治9年・14年に栗橋で明治天皇が御小休になり、9年には利根川で鯉漁をご覧になっています。また、明治29年には、埼玉県での近衛師団の演習をご覧になるため、鷲宮神社に立ち寄られ、御休憩となっています。展示では、宮内庁宮内公文書館のパネルのほか、久喜市立郷土資料館で収蔵する資料を展示しています。また、明治天皇ゆかりの人物として、久喜の偉人本田静六の事績も紹介されています。本田静六は「公園の父」とも称される久喜出身の林学者で、明治神宮の造営にも携わったそうです。

写真:展示のポスター

明治天皇の巡幸のみならず、本田静六にまで広げて展示されており、久喜市の歴史の特徴が出ています。春日部会場では展示していない資料も多く並んでいますので、ぜひご覧ください。

また、近隣には鷲宮神社をはじめ、明治天皇の聖跡の地に石碑が遺されています。あわせてお楽しみください。

 ◆久喜市立郷土資料館「明治天皇と久喜」

  会期:7月20日(水)~9月4日(日)

  開館時間:10時~18時

  休館日:月曜日、7月29日、8月12日、8月26日

  住所:久喜市鷲宮5-33-1

  電話:0480-57-1200

  https://www.city.kuki.lg.jp/miryoku/rekishi_bunkazai/kyodoshiryokan/