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【令和5年夏季展示_あなのあいた壺】野田市宮前遺跡の底部穿孔壺
宮前遺跡第1号方形周溝墓(野田市教育委員会提供)
今回の展示では、おとなりの野田市より、宮前遺跡で発見された底部穿孔壺形土器をお借りし展示しています。
宮前遺跡は、権現山遺跡からは、直線距離で南東に約10㎞、下総台地上に立地します。古墳時代前期の7基の方形周溝墓が確認され、このうち第1号方形周溝墓から2点の焼成後穿孔された底部穿孔壺形土器が出土しています。
いずれも口縁部は、粘土を帯状に用いて段をつくり出す複合口縁で、高さは約34㎝と約40㎝、土器の表面が赤彩されています。穿孔は、外側から打ち欠くようにあけられています。底面ではなく、胴部の最下方にあけているようです。周辺地域での同様なあなのあけ方として千葉県松戸市の富山遺跡で発見された底部穿孔壺形土器が挙げられます。(松戸市立博物館2021『古墳時代のマジカルワールド』)
宮前遺跡1号方形周溝墓の底部穿孔壺1(野田市教育委員会所蔵)
宮前遺跡1号方形周溝墓の底部穿孔壺1のあな
宮前遺跡1号方形周溝墓の底部穿孔壺2(野田市教育委員会所蔵)
宮前遺跡1号方形周溝墓の底部穿孔壺2のあな
野田市域では、この宮前遺跡のほかにも、堤台松山(つつみだいまつやま)遺跡、桜台高崎家前(さくらだいたかさきけまえ)遺跡で古墳時代前期の底部穿孔壺形土器が発見されています。特に堤台松山遺跡は、権現山遺跡から直線距離で南東に約3㎞の位置に所在し、2基の方形周溝墓が発見されています。権現山遺跡と同じく、「方形周溝墓」という用語が誕生する前に調査された遺跡です。
●春日部市郷土資料館 第68回企画展示
権現山遺跡発掘調査60周年記念「あなのあいた壺」権現山遺跡の底部穿孔壺と墓でつかわれた土器
会期:令和5年7月22日(土)~9月3日(日)
開館時間:午前9時から午後4時45分
休館日:毎週月曜日・祝日・8月5日(土)午後・8月6日(日)
会場:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15・048-763-2455)
(関連イベント)
<募集中>記念講演会「権現山遺跡の底部穿孔土器と葬送祭祀」
権現山遺跡出土底部穿孔土器について、古墳時代に見られる葬送祭祀がご専門の古屋氏をお招きし、ご講演いただきます。
講師:古屋紀之氏(横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター所長)
日時:9月2日(土)14:00~16:00
場所:教育センター視聴覚ホール
対象:定員100人(申込順)
費用:無料
申し込み:受付中です!電話(048-763-2455)、直接、電子申請のいずれか
<参加自由>ミュージアムトーク
企画展示会場で郷土資料館学芸員が展示解説を行います。
日時:8月19日(土)、9月3日(日)各日10:30~、15:00~(30分程度)
場所:郷土資料館企画展示室
費用:無料
申し込み:不要です!時間までに、企画展示室へお越しください。
【令和5年夏季展示予告その2】第68回企画展示ーあなのあいた壺
令和5年の夏季展示についてお知らせします。
春日部市東中野の権現山遺跡で、昭和38年(1963)に発掘調査が行われ、方形周溝墓から底部穿孔土器が出土しました。これらは「権現山遺跡方形周溝墓出土底部穿孔土器」の名称で埼玉県の有形文化財に指定されています。
今回の展示は、発掘調査60周年を記念し、普段は埼玉県立歴史と民俗の博物館で展示されている権現山遺跡の底部穿孔土器を中心に墓から出土した土器を展示します。
*埼玉県立歴史と民俗の博物館は、施設改修工事のため秋まで休館中です。
●春日部市郷土資料館 第68回企画展示
権現山遺跡発掘調査60周年記念「あなのあいた壺」権現山遺跡の底部穿孔壺と墓で使われた土器
会期:令和5年7月22日(土)から9月3日(日)
開館時間:午前9時から午後4時45分
休館日:毎週月曜日・祝日・8月5日(土)午後・8月6日(日)
会場:春日部市郷土資料館(春日部市粕壁東3-2-15・048-763-2455)
(関連イベント)
●記念講演会「権現山遺跡の底部穿孔土器と葬送祭祀」
権現山遺跡出土底部穿孔土器について、古墳時代に見られる葬送祭祀がご専門の古屋氏をお招きし、ご講演いただきます。
講師:古屋紀之氏(横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター所長)
日時:9月2日(土)14:00から16:00
場所:教育センター視聴覚ホール
対象:定員100人(申込順)
費用:無料
申し込み:7月11日(火)から電話(048-763-2455)、直接、電子申請
●展示解説講座
古墳時代の権現山遺跡出土底部穿孔土器を中心に、弥生時代の須釜遺跡の資料などについて、郷土資料館学芸員が解説します。
講師:郷土資料館学芸員
日時:7月29日(土)10:00から12:00
場所:教育センター視聴覚ホール
対象:定員50人(申込順)
費用:無料
申し込み:7月11日(火)から電話(048-763-2455)、直接、電子申請
●ミュージアムトーク
企画展示会場で郷土資料館学芸員が展示解説を行います。
日時:7月22日(土)、8月19日(土)、9月3日(日)各日10:30~、15:00~(30分程度)
場所:郷土資料館企画展示室
費用:無料
申し込み:不要
権現山遺跡の底部穿孔土器については下記の記事もご覧ください。
【令和5年夏季展示予告その1】底にあながあけられた壺
令和5年7月22日(土)から9月3日(日)まで開催する第68回夏季展示では、権現山遺跡(古墳時代前期)や須釜遺跡(弥生時代中期)の底にあながあけられた壺を紹介する予定です。
詳細が決まりましたら、ほごログでもお知らせします。
今回は、展示予定の権現山遺跡から出土した、底にあながあけられた土器を紹介します。
権現山遺跡については、過去の記事もご参照ください。
権現山遺跡の底部穿孔壺形土器『新編図録春日部の歴史』からーその8
権現山遺跡は、春日部市の南東、東中野地区の下総台地上にあります。昭和38年の発掘調査で、「方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)」と呼ばれる古墳時代のお墓から、底にあながあけられた土器が13点出土しました。これらの土器は、昭和62年に埼玉県指定文化財に指定され、普段はさいたま市にある埼玉県立歴史と民俗の博物館(令和5年秋まで休館)で展示されています。
「底部穿孔(ていぶせんこう)土器」と呼ばれています。
「孔」は”あな”とも読み、一般的な「穴」の字とほぼ同じ意味です。また「穿孔」とは「孔を穿つ(うがつ)」、すなわち「穴をあける」ということです。
<底部穿孔土器(実測図番号1)>
<底部穿孔土器(実測図番号1)の底>
底部穿孔土器13点のうち、12点は壺形の土器です。ほぼ同じ大きさ、形も似かよった12点が発見されています。
これらは骨などを収めた蔵骨器ではなく、葬儀を行ったり死者を埋葬する方形周溝墓を飾りたてるために設置されたと考えられています。
底の部分は穴があけられ、何かを入れても底から抜けてしまいます。死者に供える土器として、通常の使用ができないようにされたものと推測されています。
<12点の壺形土器の実測図>
12点のうち11点の土器は、焼く前に底に穴があけられています。これを「焼成前穿孔(しょうせいぜん(まえ)せんこう)」と呼んでいます。
焼成前にあけられた穴は、まだ粘土のうちに、粘土を切り取るように穴をあけるので、縁が整えられています。
また、焼く前に底に穴をあけてしまうということは、お墓に使うためだけの土器をわざわざ作っているということです。古墳時代ごろには、こういった文化も芽生えたようです。
<底部穿孔土器(実測図番号12)>
< 底部穿孔土器(実測図番号12)の底>
12点のうち、1点だけ、土器が焼かれたあとに穴をあけている「焼成後穿孔(しょうせいごせんこう)」の壺があります。大きさは他のものとほぼ同じなものの、この壺のみ全体が赤く塗られています。
底の穴の部分をよく見てみると、外側から硬いものでたたくように穴をあけている痕跡があります。
<底部穿孔土器(実測図番号12)の底の穴>
なぜ、1点だけ焼成後の穿孔なのか?、土器を焼いてすぐに穴をあけたのか、それとも亡くなった方のそばで、生前使われていた土器に穴をあけたのか?、疑問は尽きません。
権現山遺跡の底部穿孔土器は、近隣では類例が少なく、とても珍しいものであるとともに、とても丁寧に作られたきれいな土器です。
令和5年7月22日(土)から開催する第68回夏季展示で、ぜひ実物をご覧ください。