郷土資料館の収蔵資料

収蔵資料の紹介

資料名 総桐二つ重ね面箪笥(そうぎりふたつがさねつらだんす)
年代 慶応年間(1865~1867)
法量 上96×43.5×52 下96×43.5×52
資料種別 民俗資料
文化財指定 未指定
収蔵番号等 535
資料写真
 桐タンス(拡大画像はこちら).JPG
解説 この資料は、慶応年間(1865〜1867)の製作と伝えられる、粕壁仲町の老舗カネコ薬局の桐箪笥です。桐は木の中でも軽くて火に強いため、ものを収納する箪笥に向いている素材で、春日部市の木に指定されています。また、桐箪笥は嫁入り道具としても人々の生活と関わっていました。
かつて春日部市周辺は、桐の原木の産地であったと言われており、現在も桐を使った産業(桐箪笥、桐箱、押絵羽子板づくりなど)は伝統として受け継がれています。その中で桐箪笥は明治時代以降、東京市中で販売された箪笥類のほとんどは埼玉県産と言われるほど流通していました。これらの箪笥は生地のまま出荷され、東京で仕上げられることが多く、「東京箪笥」として販売していたのです。しかし、大正元年(1912)10月に埼玉箪笥組合が設立し、大正10年(1922)の平和東京博覧会で「埼玉箪笥」の出品を主導すると、桐箪笥は埼玉の特産物として広く認知されていきます。そして、昭和53年(1978)春日部の桐箪笥は、埼玉県伝統的工芸品に、その翌年には通商産業大臣による伝統的工芸品に指定されました。
桐箪笥にも細かく種類があり、この箪笥は幕末から明治初頭に多く製作された、「面箪笥(重ね面箪笥)」という抽斗を2つ重ねた形態です。加えて、引手の金具は蕨手(蕨型引手)、錠前は雲型と呼ばれる形式をしています。また、箪笥の横についているものは取手で、重ねたときに固定するストッパーのような役割も果たします。時代によって箪笥の形はさまざまで、抽斗の数が違ったり、3つ重ねるようになったり、観音開きの扉がついているものがあったりします。さらに、板の厚みによっても区別があり、この箪笥は天井板・棚板が八分(24㎜)の通し板、帆立板(側板)が七分(21㎜)の通し板で製作されています。厚みのある通し板が用いられている箪笥は高価で優良なものとされ、この箪笥のように天井板・棚板が八分の通し板のものは「八分天井通し」と呼ばれ、等級としては最高級の部類になります。
また、桐箪笥の見た目は重視されるもので、良質とされている1寸(約3.03㎝)に4本の柾目が入った板を、マイタ(図1)という箪笥の前面に用いています。それ以外の見えない部分には、板目・節がある板を使って、美しい部分だけを見せるように作られています(図2棚板)。
図1
図2
図3
図4
語注 平和東京博覧会:東京府が主催の、第一次世界大戦終結後の平和を記念し、日本産業の発展に資するため開催した博覧会。会期は1922年3月10日から7月31日までである。
通し板:厚さが均一の板のこと。
参考文献 『埼玉県民俗工芸調査報告書 第5集 埼玉の桐細工』(埼玉県立民俗文化センター、987年)
『語りだしたらキリがない!桐のまち春日部』(春日部郷土資料館展示図録、2021年)
その他 (令和3年度博物館実習生 天ヶ瀬夕渚)