最近の学校の様子から

第39回卒業式

3月25日、第39回卒業式を挙行いたしました。
6年生と6年生のふたばの児童99名に卒業証書を渡しました。
  
今年は呼びかけもすることができました。

学級ごとに卒業写真を撮りました。
 
 
最後は、ソメイヨシノの木の下を通ってお別れです。
おめでとうございました。
 
【校長式辞】
校庭の桜が、一輪、また一輪と花を咲かせ始めました。
開花からのスピードのもどかしさは、まるでコロナ禍の1年間を象徴しているかのようです。
そして、その中でも、たくましく育った卒業生のみなさんの、今日は、卒業式です。
保護者の皆様。
本日は、多摩市立南鶴牧小学校、第39回卒業式にお越しくださり、ありがとうございます。
お子様のご卒業、おめでとうございます。
6年前のうららかな春の日の入学式に手をつないで門をくぐったことや、数々の行事や出来事、
小学校生活の今日までの記憶が蘇(よみがえ)り、
その成長の足跡に、およろこびもひとしおかとご推察いたします。
6年間にわたる、小学校生活への変わらぬご支援に、改めて感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。
さて、99名の卒業生の皆さん。改めて、ご卒業、おめでとうございます。
先ほど皆さんは卒業証書を一人ずつ手渡され、小学校の全課程を終了することとなりました。
小学校生活のたくさんの出来事が浮かんでは消え、浮かんでは消えと同時に、
4月からの中学校生活という新世界への希望に胸を膨らませていることと思います。
手にしている卒業証書には、みなさんが小学校生活でがんばり成長し続けた皆さんの汗や涙。
そして、これまでみなさんを励まし、支えてくださったご家族、地域の方々、
先生たちの熱い思いが込められていることに思いを馳(は)せ、どうか、かみしめてください。
そう、たくさんの方々の温かいまなざしのもとに成長できた、幸せの証(あかし)となる、
一枚の証書なのです。

みなさんの門出を祝し、私の願いを、お話させてください。
時は遡り、1970年4月13日。
有人月面着陸を目的として出発し、宇宙空間を飛んでいた、アメリカの宇宙船アポロ13号に、
突如爆発音が響きます。
アポロ宇宙船は、燃料やエンジンを積んでいる機械船。飛行をコントロールする司令船。
そして、月面着陸船の3つから構成されています。
そのうちの機械船に積んであった酸素タンクが、
電気回線のショートによる火花で爆発してしまったのです。
アポロ宇宙船は、酸素と水素を燃料として、電気や水を作り出していました。
もちろん乗組員3名の呼吸に必要な酸素もここから取り出していました。
地球から離れること32万1860km。
地球から、地球7周分ほども離れた、深淵なる宇宙空間での出来事でした。
「ピンチ」
不気味なほど真っ暗で静かな宇宙空間で「ピンチ」という言葉でしか表現できない状況です。
月面には到底行けるはずもありません。
ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターと交信し、地球帰還への道を探ります。
爆発した機械船を切り離し、一番小さな空間である、
定員が2名の月着陸船に3人の乗組員が移動します。
燃料や酸素を節約しながら使用し、地球帰還への周回軌道に乗せるためです。
わずかな計器の電力の消費を節約するために、
針の腕時計のストップウォッチで時間を計りながら
手動でなんとか地球帰還への周回軌道に乗せることができました。
もちろんその後も様々な工夫をして、乗組員3人の生存区間を維持していきます。
そして、いよいよ地球帰還への大気圏突入が近づいたとき、3人は司令船に移り、
月着陸船を切り離します。
司令船は無事太平洋に着水し、3人は無事生還することができました。
想像できないほどの困難がある宇宙空間で「ピンチ」に直面した乗組員たちの気持ちは、
どれほどのものだったでしょうか。想像だに尽きません。
後にこの事実は、「成功した失敗」「栄光ある失敗」と称(たた)えられることになります。

さて、私たちを振り返ってみましょう。
コロナ禍による休校で始まった令和2年度。
6年生による1年生のお世話や、委員会やクラブでのリーダー役など、
期待をもって進級したにもかかわらず、スタートから不透明な日々が続きました。
運動会や移動教室も中止になりました。
先生たちもひどく落胆しましたが、6年生の皆さんにとっては、
それはもっともっと大きなものであったと思います。
「ピンチ」
私たちの毎日が、小学校生活最後の1年が、「ピンチ」でした。
しかし、君たちが一番よく知っているように、
君たちは、君たちの担任の先生は、諦めなかった。
それはまるで、宇宙空間に放り出されたアポロ13号のようでした。
そして、卒業生の皆さんは、「ピンチはチャンス」プロジェクトを立ち上げます。
校内宿泊やミニ運動会、卒業遠足など、慎重に、そして丁寧な手順を踏まえて、
まさに自分たちの意志で、自分たちの手で、自分たちの知恵で、次々に実現させていきます。
その過程では、困難に直面したり、落胆を味わったり、
無力感にさいなまれることもありました。
しかし、皆さんは諦めなかった。一筋の光明を信じて、止まなかった。歩みを止めなかった。
小学校生活で学んだこと。
それは、これまでに積み重なったものが、この1年間でまさに結晶となった、
あきらめない意志と、それを実現するための知恵であったのではないでしょうか。
それが、皆さんを育ててくれた素晴らしい先生たちが、
皆さんに授けたことではないでしょうか。
言い換えれば、このピンチな状況に直面したからこそ、
それが鮮明になったとも言えるでしょう。
「ピンチはチャンス!」
君たちに宿る、未来への合言葉です。

ふたば学級のみなさん。学級担任が替わるなど、落ち着かない日々もありましたが、
皆さんに多くの先生方が関わり、授業を行いました。
多くの方と関わる楽しさ、安心感を小学校生活で学ぶことができたのではないでしょうか。

さあ、いよいよ旅立ちの時がやってきました。
これから皆さんに課せられているのは、この南鶴牧小学校で学んだことを、
そして、授かった思いを、周りに、世界に、広げていくことです。
皆さんが社会に出る2030年代は、決して安楽な世界ではありません。
数えきれないほどの困難な事態が待ち受けているはずです。
しかし、君たちならば、乗り越えて行ける。
君たちならば、新しい世界を創って行ける。
私は、先生たちは、そう信じています。
未来は、あなた次第。あなた、自身。
皆さんの生きる未来が、希望にあふれることを祈念して、はなむけの言葉といたします。
ご卒業おめでとうございます。
令和3年3月25日
多摩市立南鶴牧小学校 校長 關口 寿也