ほごログ(文化財課ブログ)

陣屋遺跡『新編図録春日部の歴史』からのご紹介36

庄和地域の北部、西宝珠花(ほうしゅばな)地区や塚崎(つかさき)地区では、貝の内(かいのうち)遺跡や塚崎遺跡といった、奈良時代から平安時代の竪穴住居が多く作られたムラの跡が発見されています。
今回ご紹介する陣屋(じんや)遺跡も、そういった地域にある遺跡の一つです。

陣屋遺跡は、西宝珠花の南西部、低地に向かって西に突き出した幅250mほどの台地上に立地します。遺跡の標高は約10mをはかります。昭和39年の第1次発掘調査以来、今日まで合計9回の発掘調査が行われ、古墳時代から奈良・平安時代の竪穴式住居跡29軒が発掘されています。

陣屋遺跡で注目されるのは、平安時代の住居跡から『帯金具(おびかなぐ)』や『円面硯(えんめんけん)』といった、主に当時の役人が使う道具が出土していることです。
帯金具は現在のベルトにあたる帯につけられた金具です。円面硯は、筆に墨をつけるくぼみが円形となっている古代のすずりの一つで、中央が平らで高い墨をする部分、周囲は溝状(みぞじょう)で墨をためる「海」と呼ばれる部分になっています。

また、陣屋遺跡では文字が墨で書かれたり刻まれた,、墨書土器(ぼくしょどき)や刻書土器(こくしょどき)が出土しています。円面硯ですった墨を使って土器に文字を書いたのかもしれません。

「古代の葛飾郡・埼玉郡」『新編 図録 春日部の歴史』32ページ

帯金具
帯金具(巡方(じゅんぽう)という金具の裏金具)

円面硯
円面硯(筆に墨をつける円形の部分の一部)

墨書土器
刻書土器・墨書土器(左から刻書「月」、墨書「太」、墨書「月」)