校長室から

令和6年3月13日 令和5年度 第77回卒業式 校長式辞 

   式 辞

 柔らかな春の日差しに、校庭の木々の芽も膨らみ始め、自然の息吹を感じる頃となりました。

 本日は、我孫子市副市長、青木 章 様、我孫子市教育委員会教育委員、新山訓代 様 はじめ、御来賓の皆様、そして、多くの保護者の皆様のご列席をいただき、第77回卒業証書授与式を行えることは、この上ない喜びです。

 

  3年生の皆さん、卒業おめでとうございます。 

今、卒業証書を受け取り、どんな思いを抱いているでしょうか?その卒業証書は、学校で様々なことを学んだ証です。たとえ学校に来られなくても、いろいろ考えたり、悩んだりした3年間の証です。

  さて、卒業生の皆さんに尋ねます。中学校の3年間で、得たもの、手に入れたもの中で一番価値のあるものは何ですか。毎日受けた授業。その授業を通じて身に付けた新しい知識や技能でしょうか。初めて本格的に取組んだスポーツや文化活動。その部活動で培った体力やあきらめない気持ちでしょうか。

 こう答える人もいるでしょう。3年間で得た最も価値のあるもの、それは「友達です」と。

  昨年の11月から、3年生全員と面接を行いました。自分の長所や得意教科、趣味、卒業後の進路等を話す中で、友達に感謝しているという生徒が多くいました。

「友達に励まされて、合唱の声がだんだん大きく出せるようになりました」。「友達がいたから部活動を最後まで続けることができました」。

 人間は弱い生き物で、苦しいことや苦手なことから逃げたくなります。でも友達と一緒なら頑張ることができます。みんなで決めた目標ならば、努力することもできます。先生に怒られるよりも、友達に励ましてもらった方がずっとやる気が出ることは間違いありません。

 校長面接で、こう言っている人もいました。「友達に教えてもらって問題が解けました」。「勉強を僕がわかるように教えてくれました」。学校は、教室は、みんなで学習するところで、先生からだけでなく友達から教えてもらうことはとても大切な学び方です。私も仕事をする中でわからないことを他の先生達に訊きます。いろいろな人の意見を聴いて、考えて判断することもしばしばです。人に尋ねることは、自分で考えることにつながります。

  3年生は卒業して、それぞれの道(路)に進みます。我孫子中には、小学校が同じだったり、この周辺に住んでいて価値観が似ていたり、あなたのことを知っている、理解してくれる人が多くいました。しかし、進学する高校は全く知らない人ばかり、我孫子を離れる、千葉県を離れる人もいます。きっと雰囲気も違うでしょう。そして、考え方や価値観が違う人と関わる機会が多くなります。戸惑うこともあるでしょう。しかし、初めての人、自分とちょっと違う人との出会いを恐れないでください。違う価値観の人と付き合うことは、自分の窓を開いて、広い世界を知るチャンスです。「人はこんなふうに考えるのか」「あの人の見方は全く違うな」「すごい経験談で驚いた」等、たくさんの刺激を得ることができます。また、相手の話に心動かされた時は、「自分はここに感動する人間だったのか」という発見もあります。人と話すことは相手を知ることでもあり、今まで知らなかった自分自身を知ることにもなります。

 そこで大切なのは、「他人は自分とは違う」という認識です。だから、相手を否定せずに、歩み寄ることもしてみてください。違う価値観に触れることから新しい発想も生まれます。

  私の友達観も話しておきましょう。私は、誠実に向き合ってくれる人はみんな友達だと思っています。我孫子中の先生達はもちろん、PTA役員の方々、失礼ながら来賓の方々も。相手の方はそう思ってないかもしれませんが、私が思うことは自由です。友達が少ないと悩んでいる人がいたら、私のように一方的に友達だと思っていれば、悩みは軽減します。

 更に言えば、生徒の皆さんにも友達の感覚を持っています。もちろん、教師と生徒という立場や役割の違いはあります。でも、互いに尊重できる関係においては友達です。今日は、教師として生徒を祝福する気持ちと、友達と別れる寂しい気持ちが入り混じっています。

  皆さんには、本校で学んだことを生かして欲しいと願っています。数年後にいろいろな職業に就くでしょう。しかし、人工知能AIの普及によって将来的に無くなる職業もあると言われています。校長面接では、料理人になりたい、保育士になりたい、医療系の仕事に就きたい、という目標を語る人が多くいました。また、人の役に立つ仕事がしたいという人も多くいました。これらの仕事はAIに奪われることはないと思います。料理も保育も医療も、人の役に立つ仕事も、相手のことを考えて、人と関わる仕事だからです。友達と話すこと、人から学ぶこと、時に気持ちがすれ違っても、人と関わる良い経験になります。それは、仕事でなくても、豊かな人生を送ることにつながると思います。

 ちなみに、教師の仕事も学習を教えるばかりでなく、児童生徒の人間的な成長に関わる仕事であり、AIにはできません。この中から、我孫子市内の小中学校の教師になる人が現れる期待もしています。

  地球上に80億人以上の人がいる中で、皆さんと共に過ごしたことは奇跡であり、出会いに感謝します。またいつか会いましょう。それまで元気で

 

  保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。これまでの本校の教育活動への、ご理解とご協力に深く感謝致します。

  結びになりますが、卒業生がそれぞれの幸せの形を自分の力で見つけることを、そして、ご家族のご健康とご多幸をお祈りして、式辞と致します。

 

             令和6年3月13日   我孫子市立我孫子中学校  校長  鈴木与志実