算額(さんがく)とは、和算(わさん)と呼ばれる日本古来の数学の問題を、神仏の加護によって解けたことを感謝して奉納された額のことをいいます。この算額には立体に関する問題と解答、弘化2年(1845)の年号、和算の先駆者、関孝和(せきたかかず)の流れをくむ岡田暉政の門人、中田善次郎政邦の名が記されており、当地において和算が普及していたことがうかがわれる貴重な資料です。
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(飯沼香取神社の算額(問題部分)釈文ー指定調査資料より)
●釈文
今有方臺積一千七百一拾尺載一拾八段等分只言上方
一拾二尺下方一拾九尺九分零一毫八絲餘竪六尺五分八釐
四毫九絲餘隅登竪八尺六分三釐四
毫九絲餘問各切口幾何
荅曰如圖
上六段積五百七十尺中六段
同積下六段同積一段積九拾五尺
上六段竪二尺九分八釐一毫二絲餘中六段竪二尺零一釐八毫八糸ヨ
下六段竪一尺五分八釐四毫九絲餘
術曰以方錐方臺載及半梯鉤股弦開之各合問
●読み下し文
今、方台の積一千七百一拾尺を、一拾八段等分に載する有り。只言ふ、上方は一拾二尺、下方は一拾九尺九分零一毛八糸余、竪は六尺五分八厘四毛九糸余、隅登竪は八尺六分三厘四毛九糸余。各々、切口は幾何かを問ふ。
答へて曰く、図の如し。
上六段の積は五百七拾尺。中六段は同じ積。下六段は同じ積。一段の積は九拾五尺。上六段の竪は二尺九分八厘一毛二糸余。中六段の竪は二尺零一厘八毛八糸ヨ。下六段の竪は一尺五分八厘四毛九糸余。
術に曰く、方錐を以って方台に載せ、及んで梯を半ばし、鉤股弦これを開かば、各々問ひに合す。
●現代語訳
体積が一七一〇立方尺である正四角錘台を、一八等分したものがある。上方は一二尺、下方は十九尺九分〇厘一毛八糸余り、縦は六尺五分八厘四毛九糸余り、隅登縦は八尺六分三厘四毛九糸余りである。それぞれの切口を求めよ。
上六個の堆積は五七〇立方尺、中六個の堆積も同じ。下六個の堆積も同じ。一個の体積は九五立法尺である。上六個の縦は二尺九分八厘一毛二糸余り、中六個の縦は二尺〇一厘八毛八糸余り、下六個の縦は一尺五分八厘四毛九糸余りである。
一般解は、正四角錘を正四角錘台に載せ、台形を二分の一にし、三平方の定理により、それぞれ問題と合う。
●用語
・方臺(ほうだい) 正四角錘台
・段(だん) 個
・只言(ただいう) 第一条件
・答曰~(こたえていわく、~) 答えは、~
・術曰~(じゅつにいわく、~) 一般解は、~
・方錐(ほうすい) 正四角錘
・半ばす(なかばす) 二分の一にする。
・梯(てい) 台形
・鉤股弦(こうこげん) 直角三角形 |