校長室より

2014年5月の記事一覧

失敗学とは?

 私は小さい頃から落ち着きが無く、熟慮せずに行動してよく失敗をしたものでした。そして、先生や親から「もっとちゃんと考えなさい」「落ち着いて行動しなさい」と叱責を受けたものでした。じっとしていられない性分だったことは間違いありません。

大人になり自分が教員となってからは昔の自分を見ているような子供も小学校には多くいるような気がします。

今回はその失敗についてお話をします。この世に「失敗学」という学問があることをご存じでしたか。今から7~8年前に、あるテレビ番組で「失敗学」という言葉を初めて聴いて直ぐに興味を持ちました。それから、機会あるごとにこの学問について色々と本を読み調べてきました。

「失敗学」とは、「失敗を正しく学び、生かす」ことであります。

想像力が必要な現代社会は、多くの失敗も必要となります。この失敗を否定的に捉えるのではなく、むしろプラス面に着目して、有効利用しようとするものであることが分かりました。 

 人は、必ず失敗をします。

これが「失敗学」の基本にあります。

失敗とは隠すものではないという文化をつくることが大切であると「失敗学」を長年に渡り研究されてきた東京大学名誉教授の畑村洋太郎先生は述べております。

畑村先生の様々な著書から失敗について私の心を揺さぶった言葉(キーワード)について簡単に書きました。

 

<失敗学の主なキーワードベスト10> 

 失敗は確率現象である

 ヒヤリ体験の時から真剣に向き合う姿勢が大切である。ハインリッヒの法則

 失敗は放っておくと成長する

 未然の防止策を取らないと、いつか大きくなり破裂する。「知りながら害をなすな」

 途中変更が諸悪の根源になる

 生産現場の失敗はほとんどがこれ。最終計画を常に最終として組織全体が認識する。

 特に運動会・林間学校・修学旅行・入学式・卒業式等は最終の訂正版を配布する。

 失敗には階層がある

 個人の無知・不注意・誤判断からの失敗(個人性)。組織や企業の運営不良、行政や政治の怠慢(社会性)。未知への遭遇(誰も防げない失敗・良い失敗)。

 失敗は予測できる

 失敗を隠さず失敗の体験を積極的に学ぶ。失敗の特性をきちんと分析する。

 失敗情報は時間が経つと急激に減衰する。

 過去に津波の大被害(明治29年にも2万人以上の死者)があった東北の三陸地方にある石碑。「ここから下に家を建てるな」。家が立ち並び今回も大被害に遭った。

 失敗は隠れたがる

 失敗の原因は変りたがる。責任問題等で失敗の本当の情報は組織の上には行かない。

8 リーダーの資質と失敗

 トップが安全管理に意識しているか否かで、罹災率は3倍違ってくる。

9 失敗情報を「知識化」していく

 現実の失敗事例を自分や他人が将来使える知識としてまとめる。

10 「想定外」を想定する

 東日本大震災で行政や専門家は、「想定外」として責任逃れをしてきた。

 

運動会は負ける練習の場

いよいよ新緑の季節である5月になりました。今月の一大イベントはなんと言っても24日に予定されている運動会です。学校行事であり日頃の体育学習の成果を発表する場でありますが、私は「運動会とは負ける体験をする絶好の機会」だと思ってきました。

 だいぶ前のことですが、勤務していたある学校でこんな場面に遭遇しました。運動会の閉会式後、校庭の片隅で6年生女子応援団が10名位丸くなって嗚咽を上げて泣いていました。訳を聞くと総合優勝できず、しかも応援賞も取れず悔し泣きをしていたのです。応援団女子が、今日までいかに真剣に応援練習に向き合ってきたかがその姿から分かり大変感動したことを覚えています。

 練習を一生懸命に積み重ねて、ダンスなどで上手に演技したり徒競走で良い結果を出したりすることは素晴らしいことであります。

子ども達は必要以上に勝ちにこだわります。自分が一番になりたいと願うのは当然です。しかし、現実は誰もが一等賞は取れません。どんなに頑張っても結果が伴わないこともあります。大人になれば、絶対に勝ち続けることはあり得ないと分かります。子どもの時期に、「負ける体験や失敗する体験」をすることで、冷静に自分自身と向き合うことができます。

負けた時にこそ学ぶことが多いものです。その時に教師や保護者の助言が大切であり、そして仲間からの思いやりの言葉が何よりも心の糧になり、大きく成長できる機会にもなると考えます。運動会の時にこそ負けた時の態度も学ばせたいものです。