学校長の窓

1. 『生徒会誌』第53号に寄せて「発想を変えよう」

投稿日時: 2013/03/11 益子中学校
  2012年12月10日、スウェーデン・ストックホルムのコンサートホールでノーベル賞授賞式が開催され、山中伸弥京都大学教授がカール16世グスタフ国王からメダルと賞状を授与されました。ノーベル医学・生理学賞は、1987年に利根川進教授が受賞して以来2回目、実に25年ぶりの快挙です。
  山中教授の受賞理由及び貢献は、4つの遺伝子を導入することで成熟した細胞の運命を初期化し、多分化能を有する人工の多能性幹細胞(iPS細胞)を作成することが可能であることを発見したことにあります。山中教授が創りだしたiPS細胞により、脊髄損傷や肝硬変などの組織や臓器が機能不全に至った患者に対する再生医療の現実化や、アルツハイマー等の難病に対する創薬開発の加速化が大いに期待されています。今回のノーベル賞は、開発から六年というスピード受賞となりました。
  その一方で、これまで始末に困る厄介なものとして捨てられていたものが、いま脚光を浴びています。それはカニの甲羅です。カニと言えば、おいしい身を食べるもの、あるいはカニミソとして味わう、というようにもっぱら食べるものというイメージがあります。ところが、今までゴミとして捨てられていたカニの甲羅が、意外なところで人間と繋がるのです。それは、やはり再生医療の分野であり、手術用に使う縫合糸や火傷の治療に利用する人口皮膚として、注目を集めているのです。
  カニの甲羅には、アミノ酸多糖類のセルロースであるキチンという成分がたくさん含まれていて、このキチンを取り出し原料とすることで、カニの甲羅は見事に生まれ変わりました。キチンで縫合糸を作ると、人体がもっている酵素がこの糸を分解してしまうため、抜糸の必要がなくなります。また、火傷治療としての人工皮膚は、キチンがもっていると言われる傷を治す力を利用しているのです。つまり、キチンという成分に目を向けたことで、カニの甲羅は人間にとって役立つものに変身したのです。ノーベル賞受賞とはなりませんが、すばらしい発見だと思います。
  この発見は、私たちに示唆を与えてくれます。それは「発想を変えなさい」「考え方を変えなさい」「ゼロから考え直しなさい」ということです。まさに、スティーブ・ジョブズの言葉「Think different」です。従来の考え方に固執せず、現状に拘らず、新しい発想で物事を変えていくことが、生徒会に求められていることだと思います。
  自分が生徒会を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に生徒会を変えることができるのです。生徒会が新しい学校文化を創出する原動力となり、また学校生活に潤いと感動を与えてくれる牽引力となって、魅力ある学校生活を実現させてほしいと願っています。