今校長室には、7本の優勝旗が大きな存在感をもって飾られています。また、職員室入口近くの棚には、優勝のトロフィーや盾が所狭しと置かれています。これらは、スポーツ各種大会で活躍した証しであり、生徒たちの努力と汗の結晶でもあります。
これまで多くのスポーツ各種大会に足を運び、そのたびに感動したことがあります。それは、試合中の生徒たちの大きな掛け声です。一部のスポーツ(声を出してはいけないスポーツ)を除き、生徒たちは大きな声を出し、試合に臨みます。その凛々しく、潑剌とした姿は、発する掛け声と重なり一段と存在感を示します。躍動感あふれるプレー、決してあきらめない生徒の姿に、勝利の女神は必ずついてきます。
スポーツによって出す声も異なります。本校の場合、例えば、バドミントン部の生徒は、「エイ!」「ヤー!」と声を出します。実に勇ましく、プレーに力強さを感じます。また、ソフトテニス部の生徒は、「ヨシ!」「ソレ!」と声を出し、ゲームを見事に組み立てます。それから、バレーボール部の生徒は、「ヨーシ!」「オー!」など、大きな声を出し、勝利を目指してチームの士気を高めます。
実は、スポーツ時に「声」を出すことで、よい成績につながることが科学的に分析されているのです。それぞれのスポーツシーンで用いている「声」は、「スポーツオノマトペ」と名付けられています。この「オノマトペ」とは、フランス語onomatopée(オノマトペー)に語源をもつ擬音語(物が発する音)・擬声語(人や動物が発する声)・擬態語(状態や感情などの音を発しないものを字句で模倣したもの)を意味します。
スポーツオノマトペ研究の第一人者である藤野良孝朝日大学准教授は、選手が実際に声を出すことで、「自分のプレーが上達する」「リズムやタイミングが保てる」「自分に負けない、絶対に勝つという自己暗示をかける」「モチベーションを高める」などの効果が得られると指摘しています。
実際に、トップアスリート(一流選手)ほど、試合中に声を出しています。ハンマー投げの室伏広治選手は「ンガーッ」と叫び、卓球の福原愛選手は「サー」と大きな声を出します。また、ソフトボールの上野由岐子選手は「ヨイッショー」の掛け声と共に投球するというのは有名な話です。
本校の生徒たちも、トップアスリート(一流選手)に負けず劣らず、「スポーツオノマトペ」を使っています。スポーツは、中学時代で完結するものではありません。これから高校や大学等に進学し、さらには社会人としてスポーツを続ける人もいるでしょう。そして近い将来、オリンピックに出場する人もいるかも知れません。この「スポーツオノマトペ」は、自分を前向きな気持ちにさせる魔法の言葉なのです。