郷土資料館への最古の感想
企画展「サヨナラ、また会う日まで~郷土資料館の軌跡」展がはじまりました。
同展は、郷土資料館のこれまでの活動を紹介し、長期休館する資料館へメッセージを募る企画。展示は小規模ですが、郷土資料館に眠る秘蔵の資料を展示しています。
展示準備の過程で、郷土資料館で保存する郷土資料館のアーカイブズ(記録資料)を確認していたところ、なんと!開館当日の入館票が出てきました!
(知らない人のために)説明しよう。入館票とは郷土資料館に入館した人にもれなく渡し、入館者が記入するアンケート的な紙なのである。
今回、出てきた最古の入館票がこちら。
現在の入館票とは若干記入内容が異なりますが、ほぼ同じ。右下のナンバリングも今も続けています。
開館以来、来館した方には必ず渡しています(もしくはその人の分必ず消費しています)から、当館の入館者は実数です。最古の入館票は、19人目の来館者の方。
ちなみに、開館当日は午後1時にオープンしていますので、午前中の来館者はありません。1~18人目の方は、入館票を書いていただかなかったか、あるいは処分されてしまったか、今となってはわかりません。
19人目の方は、市内にお住まいの大人の男性。当時の入館票には年齢層の欄がないため、年齢は不明。
ご感想の欄には
「春日部氏関係の資料を充実してほしい。総体はスペースが少ないような感じです」
と記されています。
鎌倉・南北朝時代の武士春日部氏については、地元では古くから郷土の偉人として知られてきたところです。春日部重行あるいは時賢など、粕壁地区の寺社にはゆかりの史跡や伝説があります。そういう意味で、地元の方にとって、春日部氏について深く知りたい、というご要望があるのはもっともなことです。現在も同様のご意見・ご要望をいただいているところで、春日部氏に対する関心は変わっていないでしょう。
入館票から、郷土資料館の当時の展示は、それを満足させるものではなかった、ということが読み取れるでしょうか。しかし、実は、春日部氏については、一時的な資料は市内にほとんど残っていません。その後、春日部氏については、特別展を開催し、現在の春日部氏のコーナーは少々資料パネルが追加されています。現在の展示は、果たして19人目の来館者の方のご要望に応えられているのでしょうか。
もう一つ、ご感想の後段「総体はスペースが少ない」とは、春日部氏に関わる展示という意味なのか、それとも郷土資料館全体のスペースという意味なのか。いずれにしても、物足りない、という厳しいご意見であることには違いありません。資料(原物)が少ない、スペース狭い、というご意見は、現在も多くいただくご意見です。
36年間の時を経て、調査・研究の成果を積み重ね、資料館の展示はゆるやかに更新されていますが、開館当日の意見と同様の意見が未だにある、ということは、郷土資料館が抱える核心的・根本的な課題であるということに他ならないのでしょう。
つまり、最古の入館票のご意見は、最古であるにとどまらず、これからの郷土資料館にとっても、とっても大切なご意見といえるでしょう。
さらに、重要なことは、開館当日の入館票が保存されているということ!
郷土資料館は、表向きは、展示で見て知ってもらう、講座で体験してわかる、という発信型の施設でありますが、それにとどまらず資料や記録・情報を保存・保管して、後世へ伝えるという、まちの情報・知的財産・資源を守る施設でもあるのです。
わずか36年前の一枚の紙ペラが、現在、そして未来について考える材料になることを、展示の準備で目の当たりにしました。紙ペラでも、後世の人にとって役に立つものになったり、感動を与えるものになったり、さらなる未来を考えるものになったりするわけです。担当者は、最初の入館票が保管されてきたということに、いたく感動したわけです。
「サヨナラ、また会う日まで~郷土資料館の軌跡」展は、担当者が郷土資料館の歴史を噛みしめながら準備した展示となりました。手前味噌ですが、歴代の特別展のチラシの展示もなかなか圧巻です。
お別れする前に、ぜひ遊びに来て、ご感想・ご意見を残していってください。
ご感想・ご意見は、また郷土資料館で保存し、未来を考える財産として大切に保管していくことになるでしょうから。