カテゴリ:郷土資料館
市民夏祭り 旧日光道中にお御輿がズラリと並びました
令和4年7月9日(土)、3年ぶりに春日部夏祭りが開催されました。
ただし、今年は御輿は担がず、展示のみ。屋台や御輿パレードなど、祭り独特の雰囲気はありませんでしたが、旧日光道中の春日部大通りが御輿の見物客でにぎわいました。
春日部夏祭りの歴史については、かつて紹介したことがありますが、もともとは、粕壁宿の市神とされる牛頭天王社(現・八坂神社)の祭礼が起源であり、江戸時代まで遡れる歴史ある祭りの一つです。詳しくは昨年の記事を見てください。
ですから、夏祭りは、藤通りやゆりのき通りといった現代に造られた街路で開催されるのではなく、旧日光道中で開催されることに、歴史的な意味があるのです。郷土資料館的には、この点を強調させてください!
御輿パレードはありませんでしたが、普段はなかなかじっくりみれないお御輿を目の当たりにして、見物客の方は楽しそうでした。でも、各町内会の関係者の方は手持無沙汰なご様子。来年こそは、例年並みの夏祭りになるとよいですね。
さて、夏祭りなので、昨年の記事でも書いていた八坂神社にも立ち寄ってみました。
いつもと変わりなく、静かでした。
ぷらっとかすかべにお御輿が展示されているそうです。
八坂神社のおすすめは、柳内匠の筆小塚。筆小塚は市内では数えるほどしかない貴重な石造物です。
柳内匠は宗教者(神事舞太夫)で寺子屋の師匠でした。地域の子弟の教育に尽力した功績をたたえ、その子弟たちがこの石塔を建てたようです。世話人のなかには、学芸員が密かに注目している、あの牛島のフジのあった庭園のかつての持ち主藤岡宅弘(伊予太郎)の名もありました。
来年こそ夏祭りが開催できますように、とお願いしながら、筆小塚とあわせて訪れてみてはいかがでしょうか。
7月、8月、9月に行われる講座等の電子申請お申込み入り口
7月、8月に行われる講座等の電子申請入り口をまとめました。
お申込みされる際にご活用ください。
小学生向け講座は7月9日(土)、一般向け講座は7月12日(火)、9月3日(土)の記念シンポジウムは8月5日(金)より、それぞれ午前8時30分から受付開始です。
●●●7月9日(土)よりお申し込み開始●●●
春日部市郷土資料館体験講座「dokidoki音楽づくり」
講師:国立歴史民俗博物館 中村耕作先生、国学院大学栃木短期大学 早川冨美子先生、郷土資料館学芸員
日時:令和4年8月7日(日)14時~16時30分
会場:春日部市教育センター視聴覚ホール
定員:20名(申込順)
申込受付:7月9日(土)8:30~
春日部市郷土資料館たんけん郷土資料館「めざせ!キッズ学芸員」
講師:資料館学芸員
日時:令和4年8月27日(土)10時~12時
会場:春日部市教育センター
定員:20名(申込順)
申込受付:7月9日(土)8:30~
●●●7月12日(火)よりお申し込み開始●●●
春日部市郷土資料館歴史講座「鎌倉武士と春日部」
講師:郷土資料館学芸員
日時:令和4年7月31日(日)10時~11時30分
会場:春日部市教育センター
定員:30名(申込順)
申込受付:7月12日(火)8:30~
春日部市郷土資料館古文書講座入門編
講師:郷土資料館学芸員
日時:令和4年8月6日(土)、7日(日)、20日(土)、21日(日)(全4回)
10時30分~12時
会場:春日部市教育センター
定員:30名(申込順)
申込受付:7月12日(火)8:30~
春日部市郷土資料館展示解説講座「江戸川筋御猟場と春日部」
講師:篠崎佑太氏(宮内公文書館)
日時:令和4年8月6日(土)14時~16時
会場:春日部市教育センター視聴覚ホール
定員:50名(申込順)
申込受付:7月12日(火)8:30~
春日部市郷土資料館展示解説講座「梅田ごぼうの献上」
講師:二ノ宮幹太氏(宮内公文書館)
日時:令和4年8月20日(土)14時~16時
会場:春日部市教育センター視聴覚ホール
定員:50名(申込順)
申込受付:7月12日(火)8:30~
春日部市郷土資料館展示解説講座「明治天皇と粕壁宿」
講師:榎本博(春日部市郷土資料館)
日時:令和4年8月21日(日)10時~12時
会場:春日部市教育センター視聴覚ホール
定員:50名(申込順)
申込受付:7月12日(火)8:30~
春日部市郷土資料館展示解説講座「埼玉鴨場の設置について」
講師:辻岡健志氏(宮内公文書館)
日時:令和4年8月28日(日)14時~16時
会場:春日部市教育センター視聴覚ホール
定員:50名(申込順)
申込受付:7月12日(火)8:30~
●●●8月5日(金)よりお申し込み開始 ●●●
春日部市郷土資料館記念シンポジウム「江戸川筋御猟場ー埼玉県東部・宮内省・民衆」
講師・演題:吉岡拓氏(明治学院大学准教授)「江戸川筋御猟場と民衆」、篠崎佑太氏(宮内公文書館)「江戸川筋御猟場における宮内省と埼玉県東部」、榎本博(春日部市郷土資料館)「御鷹場から御猟場へ」、司会進行:宮間純一氏(中央大学教授)
日時:令和4年9月3日(土)13時~16時
会場:春日部市教育センター視聴覚ホール
定員:60名(申込順)
申込受付:8月5日(金)8:30~
記念シンポジウム「江戸川筋御猟場ー埼玉県東部・宮内省・民衆」電子申請申し込み
【休館のお知らせ】7月9日(土)午後、10日(日)
令和4年7月10日(日)は教育センターが参議院議員通常選挙の投票所として利用されます。そのため、準備を含め下記の日程で郷土資料館は休館となります。ご迷惑おかけしますが、ご来館の際はご注意ください。
〈休館日〉
令和4年7月9日(土)午後(正午から)
令和4年7月10日(日)終日
【ハミ出し夏季展示】近代の皇室史跡まっぷを展示
7月20日(水)からはじまる宮内庁との共催展「明治天皇と春日部」に先立ち、「埼玉県東部地区近代皇室史蹟まっぷ」をロビーにハミ出し展示しました。 #かすかべプラスワン
今回の共催展の見どころの一つに、近隣市町で同時開催する連携展示「近代の皇室と埼玉県東部」があります。この事業は、春日部市の近隣市町(八潮市・草加市・越谷市・杉戸町・幸手市・久喜市)にご協力いただき、各市町の博物館施設や社会教育施設で近代の皇室と地域のつながりについて、展示・紹介するものです(会場等は下記のとおり)。
今回の共催展の準備・調査の過程で、春日部市のみならず、近隣市町ゆかりの資料を多く見出すことができました。春日部市郷土資料館と宮内庁宮内公文書館ではこの成果を生かすため、近隣市町に資料を提供し、連携展示を開催する運びとなりました。
各会場では、宮内庁から提供された資料パネルのほか、その会場でしかみれない実物の資料も展示される予定です。春日部会場では見られない貴重な資料も並ぶと聞いています。合わせてお楽しみいただけると幸いです。
そして、今回、ロビーに展示した「埼玉県東部地区近代皇室史跡まっぷ」は、連携展示会場の紹介にくわえて、近隣に所在する近代の皇室と地域の歴史を物語る史蹟を紹介するものです。展示の準備の過程で、宮内庁の方と実際に踏査したものになります。ダウンロードはこちら→宮内庁共催展東部地区関連マップ(公開用).pdf
この夏は、「明治天皇と春日部」展、各市町の連携展示、そして皇室ゆかりの史蹟をめぐり、埼玉県東部の郷土の歴史をお楽しみください。
連携展示「埼玉県東部と近代の皇室」会場・内容一覧
◆久喜市立郷土資料館「明治天皇と久喜」
会期:7月20日(水)~9月4日(日)
住所:久喜市鷲宮5-33-1
電話:0480-57-1200
◆幸手市郷土資料館「明治天皇幸手行在所―中村家の資料―」
会期:7月20日(水)~9月25日(日)
住所:幸手市下宇和田58-4
電話:0480-47-2521
◆杉戸町南公民館「明治天皇行幸と杉戸」
会期:7月20日(水)~9月4日(日)
住所:杉戸町堤根4089-1
電話:0480-33-6476
◆越谷市大間野町旧中村家住宅「越谷への行幸・行啓と埼玉鴨場」
会期:7月20日(水)~9月4日(日)
住所:越谷市大間野町1-100-4
電話:048-985-9750
◆草加市立歴史民俗資料館「明治天皇草加行在所」
会期:7月20日(水)~9月4日(日)
住所:草加市住吉1-11-29
電話:048-922-0402
◆八潮市立資料館「八潮の御鷹場・御猟場」
会期:7月20日(水)~9月4日(日)
住所:八潮市南後谷763-50
電話:048-997-6666
【7/3まで宝珠花の歴史と大凧あげ】僧・浄信の過去帳
7月3日(日)まで「宝珠花の歴史と大凧あげ」春季企画展示を開催中です。
大凧あげの最古の記録として、天保12年(1841)に旅の僧、浄信(じょうしん)が「紙だこ」をあげて占うことを伝えたと記す小流寺の過去帳があります。
小流寺過去帳(クリックすると画像データがダウンロードできます:205KB)
(読み下し文)
釋浄信禅門 天保十二年丑九月十一日
右ノ僧生國出羽國山本郡水沢邑西光寺弟子
廿四輩順拝ニ罷出候処当寺ニ一宿致シ病気重く也
十日斗リ相煩ひ終ニ病死致シ右当人ノ往来一札を以て
村役人同所世話人立會之上取仕末致シ申候念為記ス
占ヒニ紙だこを伝ふ(蚕豊作)
この小流寺の過去帳は、宝暦12年(1762)から嘉永4年(1851)にかけてのもので、天保12年(1841)9月11日に、旅の僧、浄信の記載があります。
記載によれば、浄信は、出羽国山本郡水沢村(現・秋田県山本郡八峰町(旧峰浜村)水沢)の生まれで、秋田県能代市にある西光寺の弟子でした。廿四輩(にじゅうよんはい)旧跡をめぐるため、関東地方にやってきて、当時は上吉妻にあった小流寺に泊まりました。浄信は、この時点ですでに重い病気にかかっていて、10日ほどして小流寺で亡くなりました。寺では、上吉妻村の役人と世話人が立ち会って、遺体を処理したとあります。
そして、最終行に「占ヒニ紙だこを伝ふ(蚕豊作)」と記されています。
まず、「廿四輩」とは、浄土真宗の開祖、親鸞(しんらん)の高弟24人を開基とする寺院で構成されたもので、江戸時代に成立しました。これらの寺院は、岩手県から長野県の広い地域に分布していますが、とりわけ親鸞とゆかりが深い常陸国(ひたちのくに)であった茨城県にその多くが所在します。春日部市の周辺では、茨城県境町の妙安寺、同じく坂東市の妙安寺、西念寺、千葉県野田市の長命寺、埼玉県吉川市の清浄寺が含まれています。『埼玉県の大凧あげ習俗ー庄和町西宝珠花の大凧あげ』では、浄信は、江戸と茨城方面の移動の際に、宝珠花河岸を利用したのではないかと推定しています。
次に、最終行の「占ヒニ紙だこを伝ふ(蚕豊作)」についてです。まず「(蚕豊作)」の部分は、( )の存在や字体からあとから書かれたものとみられています。また「だこを」、「ふ」の部分も「タコヲ」、「フ」の字の上から上書きしています。したがって、元の文は「占ヒニ紙タコヲ伝フ」であり、「浄信は占いのために紙たこを伝えた」となります。宝珠花の凧には、凧が「舞い上がる」が「まゆ(の値段)が上がる」につながり、養蚕のできを占ったとの言い伝えがあります。「(蚕豊作)」の部分は、後世の人が地元の言い伝えとして書き加えたのかもしれません。(『庄和町史編さん資料(十二)民俗Ⅱ-まつりと儀礼』)
浄信の過去帳は宝珠花の凧の最古の記録として重要なものですが、記載をそのまま読めば、宝珠花についた浄信は、すでに重い病気にかかっていて、宝珠花で亡くなるまでの期間も10日ばかりとのこと、このような浄信がどのように凧を伝えたのかは謎です。
しかしながら、浄信のふるさと、秋田県能代市(のしろし)も凧あげが盛んなまちで、毎年行われる能代凧揚げ大会では、「ベラボー凧」(リンク先記事に写真あり)に代表される能代凧が盛んにあげられています。
その後、明治時代初期の宝珠花では、新暦6月5日と6日(旧暦の端午の節句にあたる)に各家で凧があげられて、このころから、凧あげに男子出産の祝いや健やかな成長の意味がこめられるようになりました。明治時代半ばからは、西宝珠花の上町と下町で一面ずつ共同で作るようになり、明治時代の終わりごろには、現在と同じくらいくらいの大凧を上げるようになったようです。
6月5日、6日であった大凧あげまつりの開催日は、昭和29年(1954)から5月5日と6日、昭和40年(1965)から、5月3日と5日になりました。
明治41年(1908)の大凧(「上若」)
参考文献
庄和町教育委員会『埼玉県の大凧あげ習俗ー庄和町西宝珠花の大凧あげ』平成5年(1993)
庄和町教育委員会『庄和町史編さん資料(十二)民俗Ⅱ-まつりと儀礼』平成17年(2005)